『ブレーク・パーティー』…第3話〈 偶には寄り道もしてみるものだの巻 〉

〈 偶には寄り道もしてみるものだの巻 〉
 夜になると2つの月が浮かんでいるその空に、今は青空の中、昼間の太陽が明るい光を地上へと照らしている。
 この摩訶不思議な大陸の世界でも、空に浮かんでいる太陽はひとつである。
 ここは「マーランティス大陸」にある、国家のひとつの「ムーサリアス王国」である。
 そしてこの場所は、ムーサリアス王国のある大貴族の治める領地である。
 町には商人のかけ声と行き交う人々で生き生きとしている。
 村の畑では作物が多く実り、また家畜達が草を腹一杯に食べていた。
 町から少し離れた場所に、ここを治める領主にして大貴族の住まう大きな館が見える。
 館の回りの大きな庭には、青々とした芝生や草木が一面に生えている。
 その中で、館の主人と思われる1人の紳士が椅子に腰かけ、テーブルに置かれている紅茶を優雅に飲んでいた。
 その側ではお付きのメイド達が静かに立っている。
 そしてメイドの側には2匹の犬がいた。・・・いや、犬ではない。全裸姿で犬のように四つん這いになっているのは、2人の幼い少女達であった。
 その2人の首には犬の首輪が填められていて、そこから伸びている手綱は2人の側に立っている2人のメイドの少女達の手に握られていた。
 よく見ると犬の首輪の内側に、もう1つの本来の首輪がしっかりと填められていた。
 それは他のメイド達の首に填められているのと同じ「隷属の首輪」であった。
 犬のように四つん這いにさせられている2人の幼い少女達は、ナナーとニニーという名前の姉妹であった。
 姉は「ナナー」と言う名前の、10歳の少女である。白い肌の色に目の色は黒だ。腰まである黒髪が綺麗な女の子である。
 また、妹の名前は「ニニー」と言う、6歳の少女である。肩まで伸びた黒髪。肌と目の色は姉と同じであった。
 ナナーとニニーの姉妹は、遠くの異国から奴隷商人によって連れて来られ、奴隷市場で売られていたところを、ここにいるフォレックス公爵によって買い取られたのであった。
 そして2人には、さっそく奴隷としての調教が施され始めたのだった。
「う・・・うう、あう・・・あ、ん」
「ひっ、・・・いぅぅぅ、ん・・・ん」
 ナナーとニニーのまだ幼いヴァギナの回りや奥に、メイドの手によって不思議なゼリー状の液体が塗り込められたのだ。
 その液体は、ヴァギナの中から2人の幼い身体に強い刺激を与えだし、彼女たちの股間の間に溝のように走っている秘裂の口から、ジュクジュクとした液体を湧き出させた。
 彼女たちは膝をつけずに四つん這いなっているので、尻が頭より高くなった姿になっている。
 その為に、ヴァギナの奥から溢れ出した彼女達のトローとした淫液は、ヒクヒクとヒクついている秘裂の口から腹へと、ツツツーと伝って流れていった。
 ナナーとニニーの2人は、自分の身体から・・・それもいつもはオシッコをするところから、このようなキラキラ光りながら流れ出てくる液体を、初めて見て驚いていた。
 ヴァギナの中やその回りが焼けるように熱く感じる。熱いだけではない、我慢出来ないほどの痒みも感じる。手をそこに持って行き掻きむしりたい程であった。
 普通ならば、手をヴァギナに持って行ってオナニーをしたいと思うところだが、まだ幼い2人には、そんな考えは浮かびもしなかった。そもそもこのような感覚を味わうじたいが、生まれて初めての事だった。
 またゾクゾクとした感じが背筋を何度も駆け上がっていき、2人の息使いは段々と荒くなっていった。
「うぐ、う・・・はぅ、・・・う、ん」
 腰や両脚が・・・ブルブルと震えてきて、力が抜けていきそうであった。
「はぅ、ひっ・・・うふっ、・・・ひへっ・・・」
 2人は生まれて初めて経験するこの言い様のない刺激に、戸惑いながらも懸命に堪えていた。
 なぜならば2人は、どんな事があっても四つん這いのままでいるようにと、主人の公爵から命令をされていたからだ。
 だがそんな命令に関係なく、幼い2人の身体に着けられている枷が、彼女達の動きをしっかりと封じていた。
 2人の口に噛まされているボール形のギャグが、うめき声と喘ぎ声を2人の幼い姉妹から奪い取ってしまっていた。しかも四つん這いになっている両手の手首には、短い鎖の付いた手枷が填められていた。
 その為2人のヴァギナがどんなに刺激を受けて疼いていても、ナナーとニニーは手を自分の身体を疼かせている部分に持って行く事が出来なかった。
 裸の身体中から玉のような汗が噴き出してくる。
「ふぎゅ・・・しゅてぇ・・・、ふぎゅ・・・しゅてぇ。(ゆる・・・してぇ・・・、ゆる・・・してぇ)」
「ひょへぇしゃん・・・ひゃしゅひぇふぇ!(お姉ちゃん・・・助けてぇ!)」
 喘ぎ声を漏らしている口に噛まされたボールギャグからは、涎がダラダラと垂れ、それに涙と汗が加わり、幼く可愛らしい2人の顔はグチャグチャになっていた。
 2人のヴァギナからは今もドクドクと淫液が無限に溢れ出してきていて、腹まで流れて来ていた淫液は、まだ膨らみが始まっていない胸のところまで伝って流れていく。
「ううう・・・ぐす、う、ぐすん・・・ううう・・・」
『もう許して欲しい・・・早く終わらせて欲しい・・・』
 ナナーはそう思いながら地面に着けている掌をギュッと握って拳を作る。
 突然誰かが、涙と汗と涎とそれに流れて来ていた淫液で濡れている、ナナーの顎に手をやって顔を持ち上げた。
 ナナーの涙の溜めた目に、公爵の秘書役のメイドの顔が映った。
「ナナー。あなた達はまだ子供だから、オマンコに塗ってある『ワサビで作ったゼリー状の液体』は、かなり薄めてあるのよ。だからまだまだ我慢をしないとダメよ。他のメイドの子たちは、もっとキツイ液体で調教を受けているのよ。・・・それどころかお仕置きを受けたあるメイドの子は、ワサビをオマンコの中やお尻の穴の中にまで塗られて一日中放置されたのよ。動けないようにされて・・・。だからこれ位は我慢をして堪えるのよ」
 秘書役のメイドはナナーにやさしく諭す。
 それでもやはり2人にとっては、このような責めをいつまでも堪える事は、とても苦しく難しい事だった。
 ナナーとニニーの2人は段々と気が遠くなっていくような気がして、思わず身体がフラっと崩れそうになった時、
ピシーン!。「ふぎゃっ!」
パシーン!。「ぎゃんっ!」
 高く突き出している尻に乗馬用の鞭が打ち下ろされ、2人の感覚は再び覚醒させられた。
 鞭を振り下ろしたのは、2人の首輪から伸びた手綱を持っているメイドの少女達であった。
 膝を地面に付けずに四つん這いになっている為、幼い姉妹の尻は鞭が打ちやすいような高さになっていた。
 パシーン。「うぐっ」。鞭が再び入れられる。
 2人が気を失い掛ける度に、そして強制的なオーガズムを迎えそうになる度に、メイドの持つ鞭が容赦なく振り下ろさせた。
 ビシーン!。ビシャーン!。パシーン!。バシーンッ!。ピシャーンッ!
 ビシーン!。ビシャーン!。パシーン!。バシーンッ!。ピシャーンッ!
 何度も何度も鞭の音が響き渡った。
 ビシーン!。ビシャーン!。パシーン!。バシーンッ!。ピシャーンッ!
 ナナーとニニーの幼い姉妹の尻には、痛々しい何条もの鞭の痕が赤く付けられ、しかも数カ所の傷口からは血が流れ出していた。
「ナナー、ニニーいいこと。ここではご主人様の許しが無ければ、どんな事があっても勝手にイクことも気を失うことも許されないのよ。ようく覚えておくのよ」
 秘書役のメイドがナナーとニニーに告げた。
 秘書の声を聞いたナナーは大きく肩で息をしながら、涙と涎と汗でクシャクシャになった顔をゆっくりと上げた。
 涙を溜めたその瞳は許しを求めていた。
「あ、ぐ、わ、ぐ・・・あ、う・・・ん」
 ナナーは懸命に何かを訴え掛けていたが、ギャグを噛まされていて、空しい呻きだけが声となって出ているだけであった。
 ナナーは、ワサビで出来たゼリー状の液体が塗り付けられた自分のヴァギナから、刺激を与え続けるこの状態に、もうどうする事も出来なくなっていた。
 刺激の波状攻撃が、ナナーの思考能力を毟り取るように奪っていく。
 ビシーン!。パシーン!。
 鞭が2人の尻を打ち据えたが、ナナーとニニーの瞳は虚ろになり反応は次第に緩慢になっていった。
「公爵様、ナナーとニニーはもう限界のようですが・・・」
 姉妹の顔を覗き込んでいた秘書役のメイドが公爵に告げた
「そうか。ではこの2人の奴隷のヴァギナに塗ってある液体を、洗い落としてやるんだ」
 紅茶を飲みながら、ナナーとニニーの幼い姉妹の調教を楽しんでいた公爵は、2人の首輪の手綱と鞭を持っている、2人のメイドの少女達に命令を下した。
 哀れな幼い姉妹の奴隷は、やっと腰を下ろして地面に座る事を許された。
 そして手綱を持つメイドに向かって、両脚を大きく開くことを命令された。
 精神的にも肉体的にも疲れ切っているナナーとニニーの姉妹は、ただ言われるままに自分の両脚を大きく開いて、陰毛がまだ生えていない綺麗な恥丘とヴァギナをメイドの少女の目にさらした。
 これで身体中を疼かせる刺激を出している、ゼリー状の液体を洗って拭き取ってくれると思うと、ナナーはホッとした気持ちになったのと同時に、同じようにヴァギナからの刺激の責めを受けていた妹のニニーの事が気になって彼女の方を見た。
 肩で大きく息をしているニニーも、命令通りに正面にいるメイドに向かって両脚を開いていた。
 でも、顔は疲れとショックの為にガックリとうなだれていた。
 ナナーはそんな妹に声を掛けたかったが、ボールギャグの口枷をしているので、声を発することさえ出来なかった。
 しかたなく、ナナーは心の中でニニーに向かって励ましの言葉を掛けたのだった。
『ニニー・・・がんばって。これで今日の調教は終わるからね。もう少しの辛抱よ』
 奴隷として、この遠くの異国に売られてきた幼い姉妹にとっては、新しいご主人様に気に入ってもらうためにも、ひたすら堪え忍ぶことしか取るべき道はなかったのである。
『もうあたし達は・・・お家に帰ることも・・・お父さん、お母さんに会えることも・・・もう2度と出来ないのよ・・・。それにニニーも見てきたでしょう。あたし達のような奴隷が・・・市場で母娘や兄弟姉妹達が無理やり引き離されて、バラバラにされて売られていったのを・・・。でもここではあたし達は姉妹で一緒に居る事が出来るのよ・・・』
 ナナーの心の言葉は、そのまま自分自身を納得させる言葉でもあった。
「よし。始めろ」。
 ナナーの耳に公爵の命令の言葉が聞こえてきた。
 ナナーは疲れ切った身体の力を振り絞って、顔を上げて正面に立っているメイドの少女を見た。
 2人のメイドの少女は、自分の着ているメイド服のミニのスカートの前を持ち上げると、綺麗に剃毛されているヴァギナの部分を露わにした。
 この館のメイドの少女達は、着ているメイド服の下には、いっさいの下着を付けていないのである。
 ヴァギナを僅かに前の方に突き出す格好をして、立っているメイドを凝視していたナナーは、考えたくないある事が頭の中を光のように駆け抜けて行った。
『ま、まさか・・・いや・・・そんなこと』と心の中で叫ぶと、急いで開いていた両脚を閉じようとした時、首に填められていた隷属の首輪が鈍く光、ナナーの身体を石のように固めてしまった。
 見上げているナナーの目に、無表情で見下ろしているメイドの少女の呟く口の動きが見えた。
「あたし達も、これと同じ調教を受けてきたのよ。・・・これであなたも、あたし達の仲間になるのね・・・」
 シャァァァァー。バシャ、ビチャ、ビチャ、ビチャ・・・。
 立っているメイドの股間から、勢い良く小便が滝のような弧を描いて飛び出し、ナナーとニニーの液体が塗られているヴァギナに降り掛かり始めた。
 小便のムッとする臭いがナナーの鼻をついた。
 これがさっき公爵が言っていた、「洗い落としてやるんだ」の奴隷に対しての方法であった。
『いやぁぁぁぁぁぁーっ!』
 脚を閉じる事も逃げる事も出来なく、ただ先輩メイドの暖かい小便を股間に浴び続ける自分が、段々と惨めになっていく気持ちがナナーの心の中を占領していくのであった。
 そしてショックの連続で、ナナーの頭の中は何も考える事が出来なくなっていくのであった。
 そんなナナーの表情を見ながら、小便を掛けているメイドの少女は、「何もかも今までの事は、頭の中から洗い流してしまいなさい。これからあなたは新しいナナーになるのよ。・・・そして、公爵様の好みの奴隷になっていくのよ」と呟いていた。
 小便を掛ける音を聞きながら紅茶を飲んでいた公爵に、秘書役のメイドがそっと尋ねた。
「公爵様、ナナーとニニーの事ですが・・・」
「ナナーとニニーはメイドにはしない。・・・ちょうど子供の牝犬を飼ってみたいと思っていたところだったのでね」
 フォレックス公爵の一言でナナーとニニーの幼い姉妹は、牝犬奴隷としてこの館で飼育される事となったのである。
 それは同時に一層厳しい調教が、2人を待っているという事でもあった。
「この2人には、いろんな躾や芸が出来るように調教してやるとしよう。・・・もちろん私の精液や大小便を喜んで食べる事が出来るようにもな。それと人前でも躊躇無く、いろんな痴態な事が出来るように仕込んでやらないとな。・・・ふふふふ・・・今から考えるとワクワクするな」
 楽しそうな表情で話す公爵の足下には、いつの間にそこに来たのか、全裸姿の1人のメイドの少女がしゃがみ込んでいて、太く大きくなっている公爵の男根を口にくわえ入れ、フェラチオをしていた。
 秘書役のメイドは「あらら、いつの間に?」と言った表情で、メイドの少女を見下ろした。
 公爵は言葉を発する事なく、メイド達個人個人に対してテレパシーを使ってこのような命令を出すので、廻りの者が気が付かないと言う事がちょくちょくあった。
 その為、秘書を含めメイド達は、常にスタンバイの出来ている状態で、毎日を過ごしているのである。
「うぐ、うぐ、うんぐ・・・むぐ、う、んぐ・・・」
 チュパ。チュパ。ニュパ。チュパ。ネチャ。
 フェラチオをしているメイドの口から、舌で男根の陰茎や亀頭部分を愛撫する湿った音が漏れてくる。
 ニュパ。チュパ。ネチャ。チュパ。チュパ。
「むぐ、う、んぐ、うぐ、うんぐ・・・」
 口から溢れた涎が、メイドの顎を濡らし下へと滴り落ちていく。
 秘書役のメイドが『あぁ、いいなぁー』と言うような表情で見つめていると、メイドに語りかける公爵の声が聞こえてきた。
「しっかりとシャブリ続けるんだぞ。後で褒美として、ワサビ入りの浣腸責めを一晩中してやるからな。そのかわり、もし手を抜いたりしたら罰として、ワサビをオマンコとケツの穴にたっぷりと入れて、一晩中責めてやるからな。分かったな?」
 秘書役のメイドは「どちらにしてもこの子は、地獄のような夜を過ごすのね」と思うと、ちょっと引いてしまうのであった。
 ふと公爵は何かを思いだしたようにポツリと言った。
「そう言えば、山犬の魔物を倒してからもう3週間も経つけども、ブラッド・オパールを持ったライラックとチャームの2人は、いったい何処をほっつき歩いているんだ?。とっくにここに着いても良い頃だぞ」
 秘書役のメイドも不思議そうな顔で呟いた。
「もしかすると・・・、ライラック殿の身に何か危険な事が起こっているのでは?。・・・まさか、どこかの森の中であのお二人はすでに・・・」
 秘書がそこまで言った時、公爵は手を振ってその考えを否定した。
「そんな事は心配ないな。あの2人は殺しても死ぬような連中じゃないから。・・・不死鳥みたいな・・・いやそんないい物じゃないか・・・どちらかと言うと、ゴキブリみたいな生命力を持った連中だからな」
「ゴ、ゴキブリ?・・・何もそこまで言わなくても、公爵様・・・」
 秘書役のメイドが苦笑いをする。
「それよりも、実に単純な事に引っかかって、ここに戻れなくなっているのかもしれないな。・・・あの2人の事だから・・・ははははは・・・」
 公爵は笑いながら言った。
 その言葉を聞いていた秘書役のメイドは、「え?・・・。単純な事で戻れなくなっているのですか?」と呟くと、不思議そうに小首を傾けるのであった。
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「ハックショーン!」。チャームが大きな声でくしゃみをした。
「あーん。風邪を引いてしまったわ。どうしよう・・・、やっぱりか弱いチャームには、野宿での夜風は身体に毒なのね。」
 チャームは、何も言わずに背を向けて立っているライラックに、聞こえるように声を出して独り言を言った。
 だがライラックは腕組みをして、向こう側に見える山や村を見つめているだけだった。
「ライラックさーん、チャーム風邪を引いて、病気になって死んでしまうかも知れませーん。・・・佳人薄命って言うでしょう。・・・どうしましょう?」
 チャームはライラックの背中に寄り添うと、猫なで声で弱々しく呟いた。
「はいはい・・・。天国でも地獄でも好きな方に行ったらいいわ」
 ライラックは怒りを抑えるように、チャームに答えた。
「どうしてそんな事を言うんですか?。今まで何度もライラックさんの危機を救い、ライラックさんの勝利の手助けをしてきた、大事なパートナーが生きるか死ぬかと言う時に、そんな事を言う事はないでしょう」
 チャームが怒った声を立てる。
『なーにが生きるか死ぬかよ。十分に元気じゃないの』。とライラックは思う。
「怒りたいのはあたしの方よ!」
 ライラックの言葉に、チャームは「え?」と言う顔をする。
「いったいどうしたんですか?。ライラックさん」
 チャームはライラックのご機嫌を取るように、笑顔を急いで作って尋ねた。
 ライラックは正面に見えている山や村を指さして言った。
「向こうに見えているのはね、隣の国の山と村なのよ。変よね。そもそも公爵の館に帰る予定だったのに、どうして隣の国境まで来てしまうの?。帰る道がまるっきり逆じゃないの。大魔道士のチャームさんご説明して・・・」
 ライラックは嫌みっぽく言うと、冷たい視線をチャームに投げ掛けた。
「ライラックさん、そんなの説明するも何も、道に迷って逆の場所に来てしまっただけじゃないですか。
 そんな事この状態を見れば、子供でも理解出来ますよ」
 今度は、チャームの批判的な視線がライラックに投げ返された。
「何を白々しく言っているのよ!。チャームのおかげでこうなったんでしょうが!」
 それをライラックの怒りが打ち砕いた。
「あーん。どうしてあたしのせいにするんですか?」
 チャームは目に涙を溜めて抗議をすると、
「何を言っているのよ!。・・・公爵の館に帰る途中で、何カ所もの所で道が2つに分かれていたり、3本に別れていた所で、あたしが館への道はこちらだと指を指したら、あなたはその都度訳の分からない呪文を唱えて、帰る道はあっちだとまるっきり逆の道をその都度示していたわよね。・・・それで、あたしが文句を言うと『あたしは大魔道士のチャームですよ。信用しないんですか?』と答えたわよね。信用しない訳にもいかないから、それであなたの言う通りに歩いて来たのよ。・・・その結果がこれよ。どう、言い訳ができて?。ましてや忘れたなんて言わせないわよ」
 ライラックが一気に捲し立てた。
 チャームはプーッと膨れた顔になると、クルリと身体を向けると道から外れ、森の中にへと入って行った。
 ライラックは驚いてチャームの後を追った。
『ちょっと強く言い過ぎたかな?。・・・ハーフエルフの魔道士と言えども、まだ15歳の女の子なんだものね』
 ライラックはそう思うと、背後からチャームの身体を両腕でそっと抱くと、顔をチャームの耳に近づけてそっと囁いた。
「ごめんなさいね。あたし、ちょっときつく言い過ぎたかも知れないわね。・・・別にチャームが嫌いで言った訳ではないのよ。気分を害さないでね」
 歳上のライラックは、チャームの頬に軽くキスをした。
 膨れていたチャームの顔がみるみる笑顔に戻っていく。
「ライラックさんが謝ってくれたんですから、チャーム許してあげますね。・・・じゃ、今夜の野宿用の焚き火の用意をしましょうね。チャームは心が広いんです」
 チャームはそう言うと、ルンルン気分で焚き火用の木を探しに、森の中に入って行った。それを目で追っていたライラックは、何か煙に巻かれたような気分になっていた。
『あたし、チャームに許しを請う事なんか、何かしたかしら?・・・』
 やがて太陽が沈み、2つの月が山の陰から出てきた。
 夜の森は暗闇に支配されている。数メートル先が、まるで墨で塗りつぶしたように、真っ黒である。旅をして野宿をするのが慣れている者達でも、こう言う所では言い知れぬ寂しさと恐怖を感じてしまうものである。動物や鳥の鳴く声が聞こえない時には、特にそうであった。
 今、目の前にはパチパチと音を立てて燃えている火がある。
 小さな焚き火程度の炎であったとしても、暗闇の場所に身体と心を置いている者にとっては、心に安心感と暖かさと明るさを与える物である。
 ライラックとチャームは並んで座り焚き火に当たっていた。
 バサッ。ライラックが木の枝を燃えている火の中に放り込む。
 ゴワァァァー。燃えている火の勢いが強くなり、辺りを一瞬明るくする。
「ふぁぁぁぁ。・・・眠くなってきちゃった。・・・むにゃむにゃ・・・早く柔らかいベッドの中で寝たいわ・・・」
 チャームはコテンとライラックの身体に寄り掛かると、クーと寝てしまった。
 ライラックは、そっとチャームの身体を地面に横たえて寝かせてやった。
「あたしだってそうしたいわよ。・・・誰のせいでこんな野宿をしていると思っているのよ・・・って、そんな反省の気持ちはまるっきし無いわよね、チャームには・・・」
 ライラックは小言を呟くと、小さく溜め息をついた。
 ガサッ。その時、暗闇の中から音がした。
「!!」。
 ライラックは、とっさに横に置いてある自分の剣に手を伸ばした。
 ガサ、ガサ、ガサ。音が近づいて来る。何者かがこっちに来る。
 ライラックは剣の柄を握り、直ぐにでも剣を抜いて戦えるように身構えた。
 ガサ、ガサ、ガサ。
「チャーム・・・起きて!」。
 ライラックは足下で寝ているチャームの身体を、靴の爪先でこづいた。
「・・・何ですかぁ~・・・」。
 チャームが寝ぼけ顔で起き出す。
「しっ!。気を付けて。何かが近づいて来ているわ」
 ライラックの言葉に、チャームは急いで音のする方に顔を向けた。
 ガサ、ガサ、・・・ガサ。
 ライラックとチャームは、焚き火の側から離れ、太い木の影に身を隠した。
 ガサ・・・ガサ・・・・・・ガサ・・・・・・・・・ガサ。
 近づいて来る足音の間隔がゆっくりとなってくる。
『我々の事を、警戒しているのか?。・・・それとも、攻撃を掛けるタイミングを計っているのか?。・・・それとも・・・』。剣を握る手に汗が浮かんでくる。
 ・・・ガサ・・・。近づいて来ていた物が立ち止まった。
「・・・・・・・・・」
 ライラック達と、暗闇の中の謎の訪問者との間で、息詰まる時間が流れた。
 ドサッッ!。暗闇の中で、何かが倒れる音がした。
 顔を見合わせたライラックとチャームは、用心しながら、倒れた音のした場所に近づいた。
 ライラックのかざす松明の明かりには、何も変わらない森の中の光景が、浮かび上がっていた。
「何もいないって?・・・。そんなはずはない。私には、この近くに何かがいる気配が感じられる」
 ライラックとチャームは、物音ひとつしない森の中で、息を殺して聞き耳を立てている。
「?。・・・!。・・・」。2人の耳に微かにうめき声が聞こえてきた。
「ライラックさん・・・」
「こっちね・・・」
 ライラックとチャームの2人は、うめき声が聞こえてくる場所に、近づいてみる。
 草の中に、腕から血を流して倒れている少年がいた。
 先程の、ここに近づいて来ていた足音は、この少年が立てていたものだった。
「ライラックさん、この子こんなにも血を流していたら、死んでしまいますよ」
 チャームは怖々とライラックに告げた。
「どうしてこうなったかは知らないけども、とにかく急いで手当をしましょう」
 ライラックは少年の身体を抱き上げると、焚き火が燃えている場所に連れて来て、地面に敷いている毛布の上に寝かせた。
「あん。・・・あたしが寝る毛布の上に・・・」
「何を言っているのよ。この子を地面の上に、直に寝かせる訳にいかないでしょう」
 チャームの文句の言葉を軽くいなし、ライラックは腰の小さな入れ物から薬を取り出した。
 少年の右腕には、刃物で切られた傷口が口を開けていた。
「ライラックさん・・・よくそれだけの流血を目にしていて、お医者でもないのに平然と治療が出来ますね?」
 ライラックの背後から、チャームが声を掛ける。
「あたしは剣士よ。戦いでの流血は付き物だし見慣れているわ。それに自分の命にも関わる事だから、傷の手当や初歩的な治療ぐらいは心得ているわ。・・・さあ。これで手当は終わったわ」
 ライラックの手により、少年の腕の傷口はしっかりと止血処理をされ、包帯を綺麗に巻き付けた。
「うわー。さすがは手際がいいですね。・・・やっぱり傭兵ギルドの中で流れていた噂は、本当だったのかな?」
 感心した様子で見ていたチャームは気になる事をポツリと呟いた。
「チャーム・・・何よ、その噂って?」
 ライラックはチャームの言葉に、何か言い知れぬ不安を感じて聞き返した。
「ライラックさんが治療の手当が上手なのは、倒した敵がイイ男だった時に、死なない程度に手当をしてやって、その上その男性のチンチンに勃起をする薬を付けて、男性の精力と命を下の口で吸い尽くす為だからって言う噂が・・・。知りませんでした?」
「知るかぁぁぁぁ!。・・・そんな噂が流されたんじゃ、冗談じゃないわ。・・・どうしてあたしがそんな事をしなくちゃならないのよっ!。」
 ライラックは、始めて聞くとんでもない自分の噂に、憤然とした。
「そもそも、誰がそんな噂を流しているのよ?」
 ライラックは心当たりを懸命に考えるが、どうも思いつかない。
「あたしは人から恨みを買う事はしていないけども・・・。それとも誰かがあたしを陥れる為に流しているのか?・・・あたしが美人で容姿端麗で頭脳明晰の上に、剣術の力もトップだと知っている者で・・・あたしの事を妬んでいる人物ね、犯人は・・・。そうだ流している者は、きっとあたしよりも美人で容姿端麗で、頭脳が明晰の上に、持っている能力もあたしよりトップだと思っている人物じゃないかしら・・・だとしたら・・・」
 ライラックはそう言ってチャームの顔をそぉーと横目で見ると、チャームは両方の指で自分の顔を指さして、ニコニコしていた。
「やっぱりチャームかい!。噂を流していた張本人は!」
 ライラックは顔を真っ赤にして、怒鳴りだした。
「いやですよぉー。そんな言い方は・・・。ライラックさんの名声を高めるためですよ。遠くの国の王様や貴族にまで、記憶に残るようにね。・・・それに興味ある噂があると、ライラックさんがあちらこちらの王様や貴族から、引っ張りだこになるでしょう。よく言う恐い物見たさと言うやつで。そうするとパートナーであるあたしにも、一緒のお仕事が来る・・・と言う訳なの。もしかすると、チャームはライラックさんのマネージャーかも知れませんね」
 ボコォォォォッ!。「わぎゃぁぁぁぁぁー」。チャームの頭に大きなタンコブが膨れ上がった。
「あたしは見せ物かい!。何がマネージャーじゃっ!。そないな事を考え出すチャームのドタマ(奴頭)を一寸(約3.3㎝)刻みに切り刻んだろうかっ?」
 ライラックは頭から角を出して、関西弁で捲し立てた。
「あーん。ライラックさん冗談ですってばー・・・」
 言い訳の言葉を言うチャームを見ながら、ライラックは『絶対チャームとは、コンビを解消してやる』と強く思うのであった。
「・・・ま、そんな事はどうでもいいわ。それよりもこの子に傷が早く治る魔法の呪文でも掛けてよ。・・・出来るでしょう?」
 気分を切り替えたライラックは、チャームに問い掛けた。
 チャームは魔法書を呼び出すと、該当する項目のページをめくりだした。
「う~ん。・・・これでいいかな?」。チャームはそう呟くと、呪文を唱えだした。
 少年の身体が、ボワーと光に包まれる。
 光はしばらくの間、少年を包んでいたが、次第に薄くなっていき霧のように消えていった。
「これで、この少年の腕の傷は、朝には元道理に治っていますよ」
「そう。・・・やはり魔道士の魔法は役に立つわね」
 ライラックは感心したようにチャームに言ったとき、「う~ん・・・」と、声を漏らして少年が目を開けた。
「あら?。気が付いたわね」。ライラックが少年を見下ろして、声を掛けた。
「わっ!!」。ライラックとチャームの顔を見た少年は、驚いた声を立てると跳ね起き、逃げるように数歩後ずさりをした。
 ズキン!。傷口の痛みが少年の身体を走り抜けた。
「あうっ」。少年は腕を押さえて蹲った。
「ダメよ、動いちゃ。せっかく治療をしたんだから」
 ライラックが少年に注意をした。
 少年は「え?」と驚いた顔で、自分の腕に巻かれている包帯を見た。
「この包帯・・・お姉さん達が、僕の傷の手当をしてくれたんですか?」
「そうよ。今動くと傷口がまた開いてしまうわ」。とライラックが言う。
「魔法も掛けましたから、朝には完治しますからね」。とチャームが話す。
「・・・・・」。少年はどうして助けられたのか、いぶかしげにライラック達を見ていた。
 ライラックとチャームは顔を見合わせた。
 少年が脅えているのではないかと、思ったライラックは、
「あたしの名前はライラックと言うの。彼女はチャーム。・・・あたし達は旅の途中で、今夜ここで野宿をしていたら、あなたがこの近くで倒れていたのよ。いったいどうしたの、その傷は?」
「ぼ・・・僕はグリーンと言うんだ。お姉さん達と同じに旅の途中なんだよ。それがこの村に立ち寄った時に、突然、僕を魔物の生け贄にすると言われて、やっとここまで逃げて来たんだよ。傷はその時に付けられたんだ」
 懸命に話をする、グリーンと名のる少年を、ライラックは観察するようにまじまじと見つめた。
 女の子のように可愛い顔立ち・・・言うなる美少年だ。ショートヘアの緑色の髪の毛の中央を前面から後部に髪を金色に染めている。目の色は茶色だ。年齢は14歳だと言った。
 着ている服装は、半袖のTシャツ形の服にベルト付きの半ズボン。ズック製の靴を履いている。
 肩からは、日用品が入っているのか、大きなカバンを掛けている。
 ライラックは、こんな可愛い少年を魔物の生け贄にしようとする村人達が、許せなくなっていた。
『こんな可愛い子を、生け贄にするなんて・・・』
 ふと、瞳を周りへと移動させた時、ライラックの表情に緊張が走った。
「なに?」。
 ライラックは闇の中で多くの松明が燃えているのを目にした。
 同じようにチャームも、ライラックの背後から多くの松明がこの場所を囲むように近づいて来るのが分かった。
「囲まれたわね」。
 ライラックが呟いた。
 剣の柄を握りしめ、いつでも剣が抜けるように身構える。
「僕を捕まえに来たんだ」。
 グリーンが、ライラックの身体にしがみつく。
 取り囲んでいる村人達が魔物の一味なら、容赦はしないでこちらから攻撃をするのだが、もし普通の人間達ならそれも出来ない。
 いくら傭兵の剣士と言えども、理由もなく多くの人を傷つけたり殺したりする事は、許されない。
 それに暗闇の中にいる村人達の数が把握できていない。
 しばらくの間、ライラック達と取り囲む村人達との間に、静寂が流れていた。
 焚き火のパチパチと木の枝が燃える音だけが、暗闇の森の中に響いていた。
やがて、1人の老人が明かりの中に現れた。
「儂は近くの村の長をしている者じゃ。突然の事で驚かれたと思うが、そこにいる少年を私達に渡してもらいたいのじゃ。旅のお方」
 村長は物静かにライラックに告げた。
「あなた達は、この無実の少年を魔物の生け贄にするのでしょう?・・・」
 ライラックは村長に向かって質問をした。
 村長は静かに顔を左右に振ると、「その少年が、あなたに何と言って誤魔化したかは知らないが、その少年は大きな罪を犯している、よそ者の盗賊なのじゃ」と答えた。
「盗賊?」。
 ライラックはチラッとグリーンの顔を見た。
 グリーンの顔が一瞬青くなった。
「さようじゃ。その少年は村の宝である『宝神』を盗み出したのじゃ。・・・どこかの町で高く売るつもりなのじゃろうが、それは許されぬ事じゃ」
 ライラックの耳に、グリーンが「ちぇっ!」と口を鳴らしたのが聞こえた。
「それで儂らは、宝神を持って逃げたその少年を追って、山狩りをしていたのじゃ。」
 村長の言葉を聞きながら、ライラックはグリーンがしっかりと抱えているカバンが怪しいと睨んだ。
 ガバッ。ライラックがグリーンのカバンを突然取り上げた。
「何をするんだ!。返してよ!」。
 グリーンが驚いて叫んだ。
「グリーン、この中に盗まれた物が無ければ、あなたは生け贄にされなくてすむのよ」
 ライラックはそう言うと、カバンの蓋を開けて、カバンの口を下に向けた。
「あっ!!」。
 ドサササァァァァー。
 グリーンの叫ぶ声と、カバンから中身が落ちる音が、同時に上がった。
 それに続いて、村人達の声が上がった。
 カバンの中からは、ロープ、合い鍵、その他泥棒の必需品に混じって、盗まれた宝神が転がり出てきた。
「あ~あ・・・。見つかっちゃった・・・」。と呟くグリーンに、みんなの怒りの視線が集中していた。
 次の日、魔物が隠れ住んでいる沼の岸辺の岩に、鎖で後ろ手に縛られ、足にも同じ様な鎖の枷が填められ岩肌につながれているグリーンがいた。
「・・・よって、盗賊のグリーンを村の宝神を盗んだ罪で、生け贄の刑に処する」
 村長が判決文を読み上げる。
 グリーンの廻りにいた村長と男達は、岩場を逃げるように離れた。
 岩場に1人ポツンと取り残されたグリーンは、目に涙を浮かべてワナワナと震えている。
 やはりまだ子供であった。
 遠くの場所から、村人達と一緒に眺めていたライラックの心の中では、2つの物が葛藤をしていた。
 昨夜は、グリーンに騙されたことで腹を立て、村人と一緒にグリーンを捕まえる方に協力をしたが、今グリーンが魔物の生け贄にされるところを目にしていると、やっぱり後悔の念が出て来ていたのだ。
 やはり・・・生け贄なんて・・・。
 ライラックは決意を固めると、村長達のいる前に飛び出して行った。
 もちろんライラックは、土壇場でチャームが逃げ出さないように、チャームの手をしっかりと握りしめていた。
「生け贄なんてとんでもないわ!。その魔物は、あたし達が退治をします!」
「あ、あんたはいったい?・・・」。
 村長がいぶかしげに聞いた。
「あたしは、剣士のライラックです」。
 ライラックは告げた。
「おおぉぉぉぉー」。と村人達の間から、どよめきの声が上がった。そしてあちらこちらでヒソヒソ話が起こる。
「ラ、ライラックって・・・どこかで聞いたような?」
「そう言えば・・・、ほら、この前ここに来た傭兵達が言っていた、噂の女剣士だ」
「あ!。・・・あの赤ん坊から老人まで見境無く、男の精気と命を吸い取ると言う・・・」
「そうそう、それに彼女のアソコからは、ヘビのような舌がニュウウウと、1メートルも伸びて出てくると言う噂だぞ」
 廻りに一瞬の沈黙が流れたあと、突然「ひぇー。逃げろっ!」。「うわぁー。助けてくれぇ!」。「殺さないでくれぇぇぇー」。
 ライラックの廻りにいた村人達が、大声を上げて、蜘蛛の子を散らすように逃げ出して行ってしまった。
 残されたライラックは、「赤ん坊から年寄りまで見境無く精気と命を吸い取る?・・・。あたしのアソコからヘビのような舌が1メートルも出てくる?・・・。チャーム・・・」
 ライラックは低い声でそう呟きながら、チャームの顔をジロリと睨んだ。
 確かに、あまりと言えばあまりの噂である。
「うわっ。殺気を感じるんですけども・・・。ラ、ライラックさん・・・、あたしはそこまでは酷い噂を流して
はいませんよ!。噂には良く尾ひれが付くでしょう・・・あれですよ。あれっ!。あは、あははははは・・・」
 チャームはひきつった笑い顔を無理やり作った。
『尾ひれどころじゃないわ。腹ビレや背ビレまで付いているじゃないの!』
 チャームが流した小さな噂は、知らない内に化け物みたいな噂に、育ってしまったようであった。
「ライラックさん、そんな事よりも早くグリーンさんを助けに行きましょう」
 チャームは、まるでその話題から目を逸らすようにライラックに言うと、元気良くグリーンがつながれている岩場に駆けて行った。
「な、なによ他人事(ひとごと)みたいに・・・」
 ライラックは腹が立ってしょうがなかったが、チャームにとっては完全に他人事であった。
「ライラックさーん。早く来て下さいよぉ」。チャームが手招きをしている。
「はいはい、分かったわよ・・・」
 ライラックは重い足取りで岩場へと歩き始めた時、
 ザバァァァァァーッ!。と音を立てて、沼の水面が盛り上がった。
「なにっ?」。
 ライラック達の目の前に、沼の底から巨大な怪物が姿を現した。
「ブシュゥゥゥゥー」
 怪物は巨大なミミズの姿をしている。全身には真っ黒な体毛が覆っていた。
 身体の先端には、口と思われる穴がヒクヒクと閉じたり開いたりしていた。
 巨大ミミズは沼の水面から出ているだけでも、言うに10メートルはあろうか?
 だとしたら、水面の下に沈んでいる部分はいったいどの位の長さと大きさになるのか、見当がつかない。
「こいつが、村人達から恐れられている魔物か?」
 ライラックは怪物を見上げながら呟いた、その時、怪物の先端でキラリと光る物があった。
「あれは?。・・・こいつもブラッド・オパールを体内に入れているのか?」
 ライラックは言うのが早いか、サァーッと剣を鞘から抜きさった。
「ブシュゥゥゥゥー」
 怪物は獲物となる生け贄のグリーンを見つけると、近づいて行った。
「はっ!。チャーム!。グリーン!」。ライラックは叫ぶと駆け出した。
「うわぁー!。怪物がこっちに来るぅ!。まだ死にたくないよぉ!」
 岩場につながれているグリーンが、逃げる事も出来ずに、足をバタつかせて叫んでいる。
「あーん!。グリーンさんのつないでいる鎖が解けないよぉ!」
 グリーンの側にいるチャームも、同じように一緒になって叫び声を上げている。
 ドンドンと近づいて来る巨大ミミズの魔物を目にしていたチャームは、もうこれまでと言う気持ちになると、呪文を唱えだし魔法書を光の中から取り出した。
 魔法書を開くと、グリーンに向かって、
「グリーンさん。実に切迫した状態になっていますけども、あたしはそろそろここから脱出しますからね。なにも無理をして、2人もあの怪物に食べられる事はないんですから。そもそもグリーンさんが、今日の生け贄だったんですから。・・・と言うわけで、グリーンさんの今後のご無事を祈っていますからね」と告げると、テレポートをする為の呪文を唱えだした。
 それを見たグリーンは、「わぁぁぁ!。そんなぁぁぁ。助けてよぉぉぉ。まだ死にたくないよう。僕なんか食べても美味しくないよう!。チャームの人で無しぃぃぃ!」と、あらん限りの叫び声を上げた。
 チャームはグリーンの顔を覗き込むと、残念でしたねと言った表情で告げた。
「あいにくでしたが、あたしはハーフエルフなの。人間じゃないのよ」
 唖然とするグリーンの顔を横目に、チャームは呪文の残りを唱え始めた時、2人の居る岩場にライラックが飛び込んできた。
「チャーム何をしているの?。早くグリーンを連れて逃げなさい!」
 ライラックがチャームに早口で命令をした。
「グリーンさんのつないでいる鎖が取れないのですよ。そこで、ライラックさんが来るまで、魔法を使ってグリーンさんを守ろうとしたんです!」
「ええ?」。
 まるっきり逆のチャームの言葉を聞いて、グリーンが一瞬目を丸くする。
 ライラックは、つないでいる鎖を見て、剣で切り離す事にした。
 ピンと鎖を伸ばさせ、振り上げた剣を気合いと共に振り下ろした。
「やぁぁぁぁぁっ!」。
 ガシャァァァーン。
 鎖のリングが砕けて飛び散った。
「チャーム!。あたし達をここから別の場所へテレポートをしてっ!」
 近づいて来た巨大ミミズをチラッと見て、ライラックがチャームに大声で叫んだ。
 チャームは素早く呪文を唱えると、3人の身体を風が取り囲むように強く吹きだし、渦巻きのようになっていった。そして3人の身体はフッと岩場の場所から消えた。
 その瞬間、巨大ミミズの巨体が、3人の居た場所にのしかかってきた。
 ズシャァァァァーンッ!。
 細かく砕けた岩を跳ね飛ばして、衝撃で岩場が崩れた。
 その頃、岩場から数十メートル離れた場所の風が渦を巻くように舞ったかと思うと、3人が空間から浮かび上がるように姿を現した。
「ふううう。危機一髪と言う所だったわね」。とライラックが呟く。
「ライラックさん、スリルがありましたね」。楽しそうにチャームが喋る。
『冗談じゃないよ。恐ろしくて・・・思わず・・・オシッコがちびっちゃったなんて、・・・ううう、このお姉さん達には知られたくないよぉ』
 その横でグリーンが青い表情になっている。
「ウギャオォォォォォ」
 そんな3人の耳に、巨大ミミズの叫び声が響いてくる。
 3人はほぼ同時に声のしてきた、沼の方に目を向けた。
 ズシュー。ズシュー。ズシュー。
 巨大ミミズが長い巨体をくねらせて、陸地に上がって来るところだった。
「あーん。毛むくじゃらのお化けミミズなんか、大嫌いですぅぅぅ」と、声を上げるチャームにライラックが、「只のお化けミミズの怪物じゃないわ。・・・ヤツの先端を見て。赤く光っているのは、ブラッド・オパールよ」と告げた。
 チャームの目はライラックの指の指す方向を見た。
「あらら・・・。こんな所にも居たんですか?。・・・それでどうします?」
 チャームが聞く。
「何を決まり切った事を聞いているのよ。あのミミズの化け物を倒して、ブラッド・オパールを手に入れるのよ!」
 ライラックはそう言いながら、グリーンの身体を縛ってある鎖を外してやった。
「これでいいわ。グリーン安全な場所に逃げて!。チャーム魔法の援護を頼むわよ!」
 ライラックは剣を手に巨大ミミズの方に振り向く。
「大きなミミズさんって・・・気持ち悪いなぁ・・・」と呟きながら、ライラックの背中越しに魔法書を開く
 チャーム。
「あたし達の戦う相手に、可愛い物なんかいないわよ。・・・それとも可愛く見えるか、あのミミズの頭にリボンのひとつでも付けてみる?」
「あんまり想像したくないから・・・いいです」
 ライラックの提案に、チャームは顔を左右に振って拒否をした。
「それじゃ会議は終わりね。行くわよ!」と、ライラックは言った。
 チラッと回りを見渡す。グリーンの姿は見えない。どこかに無事隠れたようだ。
「ブシュュュュュュー」。巨大ミミズがいよいよ迫って来る。
「あいつは、ミミズと言っても巨大な身体だから、それほど敏感には動けないと思うわ。身体の側に付いてしまえば、死角だらけだと思うから、あたし達の方に勝機があるわ。・・・チャーム、あたしがヤツに取り付けるように、注意を引きつけておいてよ。いいわね!」
 ライラックとチャームは急いで左右に離れた。
 進んで来た巨大ミミズは動きを一瞬止めた。明らかに、どちらの獲物に目標を決めようかと、迷っているようだった。
 ライラックが目で合図をする。
 チャームは魔法書のページを破り取り、巨大ミミズの方に投げつける。
「氷刃っ!」。チャームが叫ぶ。
 シュューッ。ズシャッ、ズシャッ、ズシャッ、ズシャッ、ズシャッ。
 十数個の氷の刃物が巨大ミミズの身体に突き刺さる。
「ギュオォォォォー」
 巨大ミミズの頭部がチャームの方に向いた。
「今だっ!」。
 ライラックは一気に巨大ミミズの身体の近くに走り込んだ。
 近くで見ると、巨大ミミズの身体は黒く長い毛で覆われていて、皮膚はぶよぶよと動いていた。
 剣でひと刺しすれば、アッという間に体内の物が出てしまい、この怪物ミミズは直ぐに死んでしまうとライラックには思えた。
 ライラックは剣の柄を両手で握りしめて、大きく振り上げた。
「やぁぁぁぁっ!」。ズバァァァァ!。
 ライラックの剣が巨大ミミズの身体を突き刺した。
「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!」
 ズババババババババババァァァァァー!。
 突き刺した剣を一気に移動させていき、巨大ミミズの身体を切り裂いていく。
 切り裂かれた傷口から、黄色みかかった液体がドロローと流れ出してくる。
 しかしそれだけだ。・・・それ以上の物は出てこない。
「なに?」。ライラックは思わず声を上げた。
「ブシュュュュュー」
 ズニュュュュー。巨大ミミズの頭部が持ち上がりライラックを見下ろす。
 口の部分が大きく開き、ヒクヒクと動いている。
 その口でライラックを飲み込もうとして、ライラック目掛けて迫ってくる。
「はぁっ!」。ライラックはその場所をジャンプをして離れる。
 グワッシャーン。突然目標を失った巨大ミミズの先端が地面に激突して、地面の土を弾き飛ばした。
「ギュュュュュー」。直ぐに頭部を満ち上げて、目標のライラックを探す。
 十数メートル先に立っている。
 ズギュウウウウウ。巨体をうねらせてライラックに迫って行く。
 巨大ミミズの先端には、赤く輝くブラッド・オパールが浮き出ている。
 ライラックは迫って来る巨大ミミズの動きから身をかわし、手にしている剣を巨大ミミズの身体に再び突き刺した。
「これでどうだっ!」。グサッッッッッ!。
 巨大ミミズは、身体を急には止める事が出来なかったので、突き刺されただけの剣で身を大きく切り裂く事になった。
 ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュー。
 数メートルにわたって一直線に切り裂かれた身体の部分から、決壊した洪水のように体液がドッと流れ出してきた。
『これで、こいつの動きも少しは鈍くなるだろう』
 ライラックはそう思って、巨大ミミズの先端を見た。
 しかし巨大ミミズには、それだけではダメージを与える事にはならなかったのか、それとも痛みを感じる事がないのか、一向に動きが鈍くなる様子はなかった。
 その証拠に巨大ミミズは、身体をグッと縮めると、信じられない事に地面を縮めた身体の後部で、地面を蹴って百メートル先まで飛んでいった。
 ギュウウウーン。・・・ズガシャァァァァーン!。
 地響きを立てて、巨大ミミズが着地する。
「う、う・・・うそ?」
 ライラックは、信じられない物を見たというような顔で、目を丸くしていた。
「グニュウウウウウー」
 ズザザザザザザァァァァァー。
 巨大ミミズがライラックの方へ向かって、一直線に向かって進んで来る。
「ば、ばかなっ!」。ライラックは自分の目を疑った。
 巨大ミミズの動きはヘビのような速さで迫って来た。
 予想もしない相手の動きを見て、ライラックの反射神経は一瞬、動くのが遅れた。
「し、しまった!」
「シュグワァァァァァァ」。ズザザザザザザザザー!。
 巨大ミミズの開いた口と巨体が、ライラックの正面に迫って来た。
「う、うわぁぁっ!」
 巨大ミミズがライラックの身体に触れそうになった瞬間、すんでの所でライラックの両足が地面を強く蹴り、身体を横の方に飛ばす事が出来た。
 身体が地面の上を転がった。
 ライラックは完全に体勢を崩してしまっていた。しかも持っていた剣が手からこぼれ落ちてしまった。
「くそっ!」
 倒れているライラックの身体を通り過ぎた巨大ミミズは、土煙を上げて俊敏に身体の動きを止めると、上半身を持ち上げるように上空に上げた。
「グワァゥー!」。
 巨大ミミズは巨大な身体をくねらせて、ライラックの頭上から襲いかかって来た。
 俯せに倒れているライラックには、逃げ出せる時間的余裕がなかった。
「うわぁっ!」。
 ライラックのひきつった顔が頭上を見上げる。
 ライラックの面前に、巨大ミミズの身体がすごい速さで近づいて来た。
『だめだ!。もう逃げられないっ!』。ライラックは叫んだ。
「ライラックさん、危なぁい!。雷破(らいは)!」
 チャームは魔法書のページを1枚取ると、空中に投げ上げ叫んだ。
 すると、投げ上げられたページは瞬時に空中でフッと消えて無くなり、その瞬間、目も眩む雷光が、一筋上空から巨大ミミズの身体に向かって、大音響と共に流れ落ちた。
 ピカッ!。ドワッシャーン!。
「グギャァァァ!」。雷が巨大ミミズの身体を直撃をした。
 巨大ミミズは雷の雷撃に弾かれるように吹き飛ばされ、ライラックの居る場所を逸れて地面に叩き付けられた。
 ドドドォォォォーン!。
 巨大ミミズは全身を雷の電気で焼かれ、黒こげの身体のあちこちからは、煙や炎が見えていた。
青い空の何処から雷が落ちて来たのか、ライラックには見当がつかなかった。
「ウギャーオォォォーン!」
 巨大ミミズは尚もライラックを襲おうと身体を動かした時、再度チャームが叫んだ。
「雷破っ!」。ピカッ!。ドシャァァァーン!。
 青空の一角から突然大音響と共に、稲妻が巨大ミミズめがけて落ちて来たのを、今度はライラックの目がはっきりと見ていた。
「グギェェェェェェーッ!」
 高電圧の雷が巨大ミミズの身体を再度直撃した。
 バリバリバリ!・・・。
 雷の電気に打たれて、硬直したように身体を伸ばした巨大ミミズは、ドドドドドー・・・と、音を立てて倒れた。
 そして、ズシャァァァァーーーン!。
 再び雷に打たれた巨大ミミズは、全身黒こげになって地面に転がった。
 ピクピクと痙攣をしていた巨大ミミズは、次第に動きを止めていった。そして身体全体が砂へと変化していった。
 巨大ミミズの形をした砂の塊は、やがてザザザァァァーと崩れていった。
 コロコロコロ・・・。砂の中からブラッド・オパールが転がり出てきた。
「これで、前回の山犬の夫婦のと合わせて・・・3つになったわね」
 ライラックはブラッド・オパールを掴むと、皮の袋に詰め込んだ。
「ライラックさん、あたしが間違えた道を教えたから、ブラッド・オパールを手に入れる事が出来たんですからね」
 チャームがウインクをしながら、ライラックの耳元でそっと囁いた。
「はいはい。・・・感謝しています」。ライラックは溜め息の混じった言葉で答えた。
「すごいなぁ」。そんな2人を、グリーンが岩陰からじっと見つめていた。
 その夜ライラックとチャームは、いつもの通り野宿をする為に森の中にいた。
 ・・・あの後2人は村へ行き、村人達が恐れていた巨大ミミズの怪物を倒したからと言っても、誰も家の中から出て来てはくれなかったのだ。やはりライラックのあの噂が災いしていたようだ。
 2人の淡い期待は脆くも崩れてしまった。・・・今夜は村を救った勇者として、温かい食事や、ベッドの中での睡眠が・・・。
 普通ならば、文句の言葉のひとつも出てくるチャームであったが、噂の原因のもとが自分であるので、今回はチャームは何も言わなかった。
 ただ、「ライラックさん、人の噂も75日と言いますから、その内にそんな噂も消えてしまいますよ」と、慰めにもならない言葉を言っただけであった。
 ましてや2人は、一文無しにはかわりはないのであった。
 ライラックとチャームの2人は、焚き火をはさんで座っていた。
 そこにグリーンが近づいて来た。
「グリーンじゃないの?。こんな夜更けにどうしたの?」
 ライラックの問い掛けに、グリーンは「僕は・・・何処にも行く当てがないんです。・・・もし良かったら、ライラックさん達と一緒に行ってもいいですか?」と寂しそうな声で答えた。
 グリーンの寂しそうな顔を見て、ライラックは「かまわないわよ。あたし達は、ある公爵の館に帰るところなのよ。行く当てが無いのなら、ついて来るといいわよ」と軽く承諾した。
「ありがとうございます。・・・これ・・・僕を魔物の生け贄から助けてくれたお礼です。食べて下さい」
グリーンは満面の笑みを浮かべて、カバンの中から取り出したパンと塩付け肉とワインの小瓶を、ライラックとチャームに渡した。
「これどうしたの?。あなたまさか・・・」。ライラックが聞き返した。
「違います!。違います!。これは僕のお金で買ってきた物ですから・・・。遠慮しないで食べて下さい」
 グリーンのその答えに嘘が見えなかったので、ライラックは、「それでは、ありがたくいただくわ」と嬉しそうに答えた。
 ライラックとチャームとグリーンは焚き火を囲んで、ささやかな夕食の宴を取った。
「ふぁぁぁぁぁ。眠くなってきちゃった・・・」
 チャームが大きなあくびをすると、ウトウトとしだした。
「昼間、あのミミズの怪物と戦ったから、その疲れが出てきたのかも知れませんね」
 グリーンはチャームに語りかけると、ライラックの方に目を向けた。
 ライラックも、すでに夢の中へと入り始めていた。
「毛布を着ないと、風邪を引きますよ」。グリーンが声を掛ける。
 ドサッ。ライラックとチャームは倒れるように横になると、寝息を立てて寝込んでしまった。
 2人が寝込んだのを確認したグリーンは、「ワインに入れてあった、眠り薬が効果を現したな。・・・さてと、あの親方に早いところ知らせてくるか」と含み笑いをしながら立ち上がった。
「・・・・・・・・・・・・」
 ぐっすりと寝込んでいるライラックの顔は、それは幸せそうであった。
 何も心配事が無いような表情である。
「むにゃむにゃ・・・。う~ん、ドンドンともっと来てよ。・・・こんなもんじゃ・・・まだ足りないんだから。・・・むにゃむにゃ・・・。う~ん・・・、もっと精力の強い・・・男はいないの?。・・・むにゃむにゃ・・・」
〔ライラックがどのような夢を見ているのかは、これを読んでいる読者の想像に任せる事としよう(笑)。〕
 しばらくして、『ライラック。聞こえるか?。ライラック・・・?』と呼び掛けてくる声がしてくる。
『う~ん・・・。誰よ、あたしの楽しみの邪魔をするのは・・・?』
 夢の中でライラックは、謎の声に向かって抗議の声を上げた。
『邪魔をして悪かったな。・・・私はフォレックス公爵という者でね』
 公爵は皮肉めいた挨拶を告げた。
『フォレックス・・・公爵・・・?。・・・フォレッ・・・クス・・・。きゃっ!。フォレックス公爵なの?。』
 ライラックは夢の中で飛び起きてしまった。・・・だがこれはまだ夢の中だ。
 寝ているライラックの頭の中に、久しぶりにフォレックス公爵の声が、聞こえてきたのだ。
『公爵?。・・・本当に公爵なの?』
『ああ、私だ。お前達が填めている隷属の首輪によって、お前達に私の言葉を伝える事が出来るのだ』
 やっぱり公爵からのテレパシーだ。・・・ここまで届くようだ。
 それにしても、こういうところで聞くと、何かしら心が安心する気持ちになる。
『・・・長いこと戻ってこないと思っていたら、随分と場違いな所に居るんだな。』
 公爵の声が笑いを堪えているのがよく分かる。
『公爵。変な我慢をしていないで、笑いたかったら笑いなさいよ。・・・どうせ、どういう道筋をたどったら、館からまるっきし逆の国境まで行くんだ・・・と思っているんでしょう?。・・・あたしだって好き好んでここまで来た訳じゃないんだから!』
 ライラックは、今までの溜まった不満を一遍に吐き出すように、捲し立てた。
『ははは・・・。その言葉からすると、かなり訳ありの状態を体験したんだな。ははは・・・』
『もういいわよ。好きなだけ笑いなさいよ。公爵!』
 ライラックは半分自棄気味に、公爵の言葉に対応した。
『ふふふ・・・。これは失礼・・・。それでこれからどうやって戻って来るんだ?』
 公爵が聞いてくる。
『どうもこうもないわよ。来た道を戻るしかないでしょう。・・・チャームと一緒だから、問題なく戻れるかどうかは、分からないけども・・・』
『ははは。・・・そうか不安か。・・・それでお前達は歩いて帰って来るのか?。それとも食事付きの馬車に乗って帰って来るか?。どっちにするライラック?』
『え?。・・・食事付きの馬車?。・・・公爵!、それがあるのなら、もっと早く用意してよっ!。これ以上無一文の状態で、ダラダラと歩いて帰るわけには行かないわよ。』
 ライラックは公爵の提案に喜んで飛びついた。
 公爵の笑い声がライラックの頭の中から消えていくと、ライラックは「はっ!」として目をさました。
「・・・ゆめ?・・・」
 ライラックの記憶の中には、夢とも真実とも付かない公爵の声が残っていた。
「あれは・・・、公爵からのテレパシーだったんだろうか?。・・・確か、公爵は・・・帰りの馬車を用意してくれるような事を、言っていたような・・・。それとも、夢だったのかな?」
 ライラックは2度3度と顔を左右に振って、頭の中を整理しようとした。
 ライラックの目の前には、安らかな顔で寝ているチャームがいた。
「心配のない顔で寝ているわね。・・・くすくすくす・・・」と微笑んだライラックは、一緒にいたグリーンの姿が見えなくなっているのに気が付いた。
「グリーン?。・・・グリーン、何処に行ったの?」
 ライラックはそう言った後、急いで剣を取ろうとした時、自分の横に置いてあったはずの剣が、無くなっている事に気が付いた。
 大事な剣がないっ!!。
「まさかグリーンが、あたしの剣を?・・・チャーム・・・はっ!」
 ライラックは寝ているチャームに声を掛けて起こそうとした時、ガシャッという音と共に、数本の剣先がライラックの首筋に突き付けられた。
「ふぁぁぁー。・・・らいらっくさんどうしたんですか?・・・え?」
 異変を感じて目を覚ましたチャームの身体にも、数本の剣が突き付けられた。
「ほぇぇぇぇー。ライラックさーん、この人達は何ですかー?」
 チャームは情け無い声で聞いた。
「奴隷狩りをしている連中のようね。・・・どこかの奴隷商人の手下じゃないの?。・・・くそっ!」
 ライラックは吐き捨てるように呟いた。
 ガチャン。ガチャン。
 男達は、ライラックとチャームの両手を後ろで手枷でつないだ。
 両方の足首にも、短い鎖の付いた足枷が填められた。
 ライラックとチャームは、男達に引きずられるようにして、奴隷商人の所に連れて行かれた。
 奴隷商人の隊商は、森を出てしばらく歩いた原っぱの場所に、数台の馬車を止めて夜営をしていた。
 馬車の荷台には、あちこちの町々の市場で売る為の荷物や商品が、シートを掛けられて積み込まれていた。
 そして多分それは、ライラックのように息をしている、『奴隷』という名前の商品だろうと思われた。
 奴隷商人は、馬車の側に立ててある大きなテントの中にいた。
 ライラックとチャームを見つめている奴隷商人は、エラの張った四角い顔をしていた。太い眉毛に細い目、細長い口髭が左右に生えている。薄い髪の毛の生えた頭には、小さなキャップのような帽子を被っていた。着ているチャイナ服は足下まである長い服だ。
 奴隷商人は、ライラックとチャームの横にいる手下達に、2人の着ている服を剥げと指で合図を送った。
 ビリビリビリッ!。奴隷商人の目の前でライラックとチャームの着ている服が、男達の手で容赦なく引きちぎられていく。
「や、やめろっ!」。ライラックが叫ぶと、首筋に剣先が突き付けられる。
「静かにしなっ。奴隷は裸でいるのがお決まりなんだよ。へへへ・・・」
 ライラックとチャームの裸体は、奴隷商人に嫌と言うほど、身体中をジロジロと眺められた。
 ぐにゅう、ぐにゅう、ぐにゅ。
「この女の胸は、揉み心地がいいですぜ」
 男の手がライラックの乳房を乱暴に揉んで、揉みごごちを商人に嫌らしく告げた。
 ずにゅ、ずにゅ、ぐにゅ。
「見て下さい。こいつは処女ではないですが、まだそれほど使い込んでは、いないようですね」
 無理やりヴァギナに指を入れられ、左右に押し広げられて、中を見られてしまう。
 ぐっ、ぐっ、ぐにゅぅぅぅ。
「ケツの穴の方も、まだ締まりがいいですぜ。へへへ」
 腰を屈めさせられ、細長い棒を無理やり入れられて、アナルの締まり具合も調べられてしまった。
「へへへ・・・。親方、こいつらを色々と仕込んだら、いい商品になりますぜ。」
 男の指がライラックのヴァギナの中で、いやらしく動かされている。
 ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。
 ライラックの意志に関わらず、ヴァギナの奥からは淫液がトロローと溢れ出し、指に絡まって濡れた音を立てていた。
「くっ!」。
 ライラックはこの屈辱的な検査を、顔を恥ずかしさで赤くしながらも横に向け、歯を食いしばって堪えていた。
「ぐへへへへ・・・」。
 ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
 男はそんなライラックの姿を楽しむように、しばらくの間、指を動かし続けていた。
「ぐっ・・・。うっ、・・・はぁ、ん・・・あん、あう・・あう・・・あ、う・・・」
 指の動きは、ライラックの身体と感性を段々と高揚させ始めた。
 ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。
「はぅ、はぅ、はは、ぁぁ。あん、あ、ん。・・・うん。い、いい、いいい・・・」
 ライラックの口の隅から涎が滴り落ち、ヴァギナの口から溢れ出た淫液が、陰毛と太股を濡らしてキラキラと光っていた。
 ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。
「はが、はが、はう、はう、・・・はぐ、は、ぐ・・・」
 いやらしい音を立てて、淫液の中で指が動き続ける。
 ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
 ライラックの歯が小刻みに振るえ、ガチガチと音を鳴らした。
 ヌチャ。ヌチャ。ヌチャ。ヌチャ。ヌチャァァァァァ!。
「ひゃ、ひゃ、あう。ひゃ、ひゃぁぁ。・・・」
「そろそろ、ゴールインさせてやるか。へへへ・・・」
 男はそう言うと、ライラックの大きくなっているクリトリスの頭を指で軽くつね回した。
 グニュッ!。グニュッ!。「ひゃぁぁぁぁぁ!」。背筋に電気が流れたような感じがした。
 男の舌が硬く立っている乳首を舐め回す。
 ネチャ!。ネチャ!。ネチャ!。ネチャ!。
「だ、だ、だぁ、だっめぇぇぇぇぇっ!」
 ライラックは絶頂のオーガズムを迎えた叫び声を上げると、身体全体をガクガクと痙攣したように大きく振るわせ、ガックリと首をうなだれた。
 ライラックは男の指で、屈辱的にイカされてしまったのであった。
 ガシャーン!。
 馬車の荷台にある2つの檻の中に、裸のライラックとチャームは手枷と足枷を填められたまま、それぞれ入れられた。
 男の指で弄ばれイカされたライラックのヴァギナは、淫液でベトベトに濡れ頭の中はボーとしていた。
 身体も火照って熱くなっていた。
 檻の中でライラックの情け無くグッタリとした姿を、ニヤニヤした顔で見ていた奴隷商人は、馬車の影から現れた人影の方に顔を向けた。
「どうだい、良い獲物だったろ?」。
 人影はそう言いながら、松明の近くに近づいた。
 明かりに照らし出されたその顔は、「グリーン」だった。
 グリーンは、檻の中のライラックとチャームを覗き見て、ニヤリと笑い、手を開いて奴隷商人に突き出した。
「奴隷狩りに協力したんだ。さあ。約束の金をもらおうか。奴隷2人分だよ」
「金を払う前に約束の確認をするあるネ。・・・たしか、捕らえた奴隷はその身体を含め、その持ち物も全て、私の所有物となるあるネ。奴隷狩りに協力したあなたには、奴隷の人数分の礼金を支払う。・・・そうだったあるネ?」
 奴隷商人がグリーンに確認の言葉を言った。
「そうだよ。さあ。さっさと渡してよ」。
 グリーンが答える。
「あなたが約束を忘れていないならば、この女から奪い取った、剣とオパールの宝石を入れている皮の袋を、私に渡すあるネ。猫ババはイケナイあるネ」
 奴隷商人はグリーンの背中に背負っている剣と、肩から下げているグリーンのカバンを指さして告げた。
「な、何を言っているんだよ。こ、これは元々僕が隠し持っていた剣なんだ。それにカバンの中になんか、そ、そんな宝石は入っていないよ」
 グリーンはしどろもどろになりながら反論をした。
「坊や。私の目は誤魔化せないあるネ」。
 奴隷商人がズバリと言った。
 グリーンはこれはマズイと思ったのか、急に夜の森の中へ逃げようとした時、背後に商人の手下の男が棒を持って立ったかと思うと、「ガァーン」と後頭部に強い衝撃が走って、グリーンは気を失ってどっと倒れた。
 奴隷商人は吐き捨てるように呟いた。
「子供が嘘をつくイケナイあるネ。嘘は泥棒の始まりと言うあるネ」
「親方、この小僧は元々盗賊ですぜ」。
「確かにそうだったあるネ。わっははははは・・・」
 手下の言葉を聞いて、奴隷商人が大声で笑った。
「それでこの小僧をどうします?。首を縄で縛ってテルテル坊主のように木に吊しますか?。それとも
 身体中を縄でグルグルに縛って、蓑虫のようにして木に吊しますか?」
 縄を持った手下が聞いてくる。
「そうあるネ。・・・この世界(業界)でルールを守らないとどうなるか、その身体に教えてやらないといけないあるネ・・・」
 奴隷商人は2つの月を見上げながら、グリーンの処置を考えていた。
 一方、気を失って倒れているグリーンの少女のような可愛い顔に、女の子のような華奢な身体を見て、奴隷商人の手下の1人が髭面の顔をニヤつかせながら、『ぐへへへ・・・。可愛い尻だぜ。・・・まったく俺好みの尻でたまらないな・・・』と半ズボンの上からグリーンのお尻をいやらしく撫で回していた。
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 その頃、同じ月の下、北方のある国の王宮の中では、強力な魔法を使う謎の魔女によって、せい惨な状態に陥っていた。
「オーホホホホ・・・。もう何処にも逃げられないわよ」
 豪華な家具やシルクのカーテンで覆われた部屋の一角に、この国の若い王妃と幼い王子と王女が、追い詰められていた。
「もうこの城の中には、私に手向かう者は誰ひとりいないわ。オーホホホホホ・・・」
 王子と王女を背中に隠した王妃が、魔女を睨み付けた。
「王室占い師として入り込んだ、あなたの正体にもっと早く気が付いて、国王に伝えるべきでした!。・・・」
「残念だけども、伝えるべき国王はこうなったわよ」
 魔女が呪文を唱えると、突然天井から頭や手足をバラバラにされ、身体中を引き裂かれた国王が、血だらけになって床に落ちてきた。
 グシャッ!。飛び跳ねた鮮血が、王妃の着ている白いドレスを赤く染めた。
「見ちゃだめっ!」。
 国王の無惨な姿を幼い子供達に見せまいと、王妃は子供達の身体を強く抱きしめて蹲った。
「もう、お前達には何も出来ないのさ。オーホホホホホ・・・」
 魔女の恐ろしく冷たい笑い声が、殺戮がおこなわれた王宮に、いつまでも響き渡っていた。
《 あとがき 》
 こんにちは。九尾きつねです。
 ブレーク・パーティーの第3話目を、読者の皆様にお届けいたします。
 今回はサブタイトルにもある通り、公爵の館へ帰る道筋での、ちょっとした寄り道編です。(笑)
 ライラックに言わせれば、「好き好んでここに来た訳じゃない!」との事ではありますが・・・。(笑)
 ここで新たに出てきた人物達が、ライラック達と物語の中で、今後どのような関わりを持っていくのか?。・・・盗賊少年のグリーンは敵か味方か?。ライラックとチャームを買い取った奴隷商人は何者か?。小説の最後に出てきた謎の魔女とは?。・・・そして、奴隷商人に捕らえられたライラックとチャームの運命は?。・・・そうそう、フォレックス公爵の牝奴隷として飼われる事となった、ナナーとニニーの幼い姉妹に待ち受ける調教の責め苦とは?。そして最後に、グリーンのお尻に迫る危険は回避できるのか?。(笑)
 何やらこう書いていくと、今後の展開が気になって、作者本人が妙にワクワクしてしまう、気持ちになってしまいます。(笑)
 そのくせ、これからの展開は、何も考えていないんですから。(笑)
(本当に大丈夫なのか?。作者よ。)
 それでもこれだけは言えます。ライラックとチャームの活躍を、次回以降もどうぞお楽しみ下さい。・・・と。
 ・・・と言う訳で、次回は今回よりも面白くなるような小説を書いていきたいと思いますので、どうか今後も応援をお願いいたします。
 それではまた、次回の作品でお会いいたしましょう。