『くノ一物語』淫虐修行の巻 三、算盤責め

 真由がぐったりと横たわってから、どれ位時間が経ったであろうか。
 幻舟斎が板壁の所から、何か引き出してきた。
「真由、今度はそろばん責めじゃ、こちらへ参れ」
 真由はけだるい体を、起き上がらせた。また、辛い拷問にかけられることは判っているのだが、これも修行とあれば仕方がない。
 真由は乳房と股間を手で押さえて、いそいそと板壁側に歩みよる。
 そこに置かれていたのは、二尺四方の台の上に、山型の木を並べてある算盤台であった。算盤台の山は七つある。そして、後ろ側にあたる箇所には柱がついている。
「真由、その柱を背にして行儀よく座るのじゃ」
 幻舟斎の指示に、真由は素直に従っていく。
 右手で乳房を押さえて前かがみになり、左手を一番前の山に置いた。そして右脚を曲げて、算盤台の上にスネを乗せる。正座するために左脚を引き上げると右スネに全体重がかかる。
「うっ、・・・」
 真由は小さな呻きをあげたが、それでも静かに正座していた。
 一番前の山はスネに当たっていないが、六つの山に体重が分散してかかるからだろう、この程度の痛みなら耐えられる。
 真由がそう感じていた時、胸を押さえていた両腕を、後ろへ引き絞られた。
 真由の体は、柱を背負うように縛りつけられてしまった。腕は肩から後ろへ引っ張られ、胸を突き出すような姿勢になる。顔を伏せても隠しようがない。
 真由は晒し者になっていた。
「この責めはこんなものではないぞ。あそこにある石を、腿の上に乗せることになる」
 幻舟斎が指さした先には、重そうな石が何枚も積まれてある。
「あれは一枚十貫目(37.5Kg)ある。責め方次第では、何枚も乗せることになるぞ」
 確かに算盤台の上に座っているだけなら、拷問のうちに入らないことは、真由にも判る。
「今日は重石は抱かせぬ。算盤台のスネへの食い込みを、よく味わっておくのじゃ」
 幻舟斎は手にしていた竹を、真由の腿の上に突き立てて、体重を掛けた。
 真由のスネには、算盤台の山が深く食い込む。
「うっ・・・」
 真由はそれでも、声をあげずに耐えていた。
「石を抱かされれば、この程度ではすまぬ。よく味わって、覚悟しておくことじゃ」
「うっ、う・・・、はい・・・」
 結局、真由は一刻(約二時間)ほど放置された。
 正座するだけなら、板張りの上でも、一刻程度は平気な真由であったが、それでも算盤台の上では辛い。算盤責めを許された時には、ヒザから下の感覚が失われたようになっていた。
 真由は全裸のまま幻舟斎にかかえられ、土蔵の奥に連れていかれる。
 二階へ昇る急な階段の下に、扉がついており、奥には更に部屋があったのだ。部屋といっても格子のはまった牢であり、畳四枚敷ける程度の広さである。
 牢格子の中程に、一カ所だけ出入り口がついていて、そこから真由は入れられた。
「真由、今度の修行が終わるまで、この牢内で過ごすことになる。その間中、着物の着用は許されぬ、よいな」
「はい」
 真由は、ただ指示に従うしかない。
「裸で過ごすのは、羞ずかしさに耐える訓練じゃ。だが、羞恥心を捨てろと言っているのではない。忍びが発覚するまでは、普通の娘でなければならぬのじゃ、解るな?」
 幻舟斎は、この先の進め方や、牢内の過ごし方を告げて、去っていった。
 拷問訓練は、休養を兼ねて一日おきに実施すること。拷問の厳しさは、三段階に分けて苛酷にしていくこと。
 第一段階では、拷問の種類を知るための実体験。
 第二段階では、その拷問に更に負荷を加えること。
 第三段階では、くノ一であることが発覚してからの拷問、となる。

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