『くノ一物語』淫虐修行の巻 八、最後の羞恥責め

 次の日の朝、まだ暗いうちに真由は起こされた。
 ズキズキ痛む股間に悩まされながらも、余程疲れていたのだろう、真由は幻舟斎に声を掛けられるまで、眠りこけていた。
「真由、拷問訓練は総て終わったが、もう一つ試練がある」
「?・・・」
「その試練を乗り越えて、初めて一人前のくノ一ということじゃ」
「はい」
「着物を着て、一緒に来るのじゃ」
 幻舟斎は、携えていた真由の着物を与える。
 真由の顔がパッと輝いた。やっと着衣を許されたのである。
 真由はいそいそと着物を着て、ふとんを片付けた。
 この後、もっと羞ずかしい思いをさせられることも知らないで・・・。
 幻舟斎が立ち上がって、出ていこうとするので、真由もあわてて従う。
 真由はこの時、チラッと厠のことが気になった。だが、幻舟斎に告げるのも羞ずかしいし、それにここの厠を使うのも、ためらわれる。まだ切羽詰まっていた訳でもないし、そのまま土蔵を後にすることにした。
 幻舟斎は家の方には向かわず、土蔵の横を抜けて、反対の方向へ歩いていく。
 暗闇の中の小道も、すぐに途切れた。道なき道の急な林の中を、幻舟斎は、明かりも持たずに進んでいく。(あの祠に行くのかしら?)
 このまま登っていけば、小さな祠がある。
 春の五穀豊饒祈願、秋の収穫感謝等のために、里人が建立した祠である。
 小さな祠といっても、酒を酌み交わすこともあるのだろう。中は二十人位が、車座になれる程の広さがある。(あの祠で何を? 儀式のようなことかしら?)
 真由は、自分が人身御供か、生け贄に捧げられることを想像して、妖しい気分になっている。
 そんな真由の気持ちを、知ってか知らずか、幻舟斎はどんどん登っていく。
 普段なら何でもない林の坂道だが、今の真由には、ついて行くのが精一杯だった。
 とある段差に差しかかった時、後方の脚を引き上げようとして、つい腰をひねってしまった。
 とたんに、木馬責めの痕跡に響く。
「あっ・・・」
 真由の口からは、つい呻きがもれてしまう。静寂な夜の林では、小さな物音でもよく聞こえる。
 幻舟斎が立ち止まって、振り向いた。
「どうした? 大丈夫か?」
「つい足をすべらせてしまって、もう大丈夫です」
 真由は、股間の現状のことを、覚られたくなかった。
 幻舟斎も、気がつかないフリをしているのだろう、すぐにまた、歩き始めた。
 四半刻(30分)も登り続けて、やっと祠の前へたどりついた。
 幻舟斎は、祠に向かって静かに一礼して、中へ入っていく。
 真由も荘厳な気持ちにさせられて、幻舟斎をまねている。両手のひらを重ねて前に置き、深々と頭を下げて、祠の中へ入った。
 祠の中はきれいに整頓されていて、板張りの広間は、広々として見えた。
「真由、今からそなたはくノ一に生まれ変わるのじゃ、よいな?」
「は、はい・・・」
「着ている物を総て脱ぎなさい」
 真由は、幻舟斎の指示に従い、何のためらいもなく、着物を脱いでいく。
 生まれ変わるのだから、生まれたままの姿になるのが、ごく自然に思えたのである。
 幻舟斎は懐から、布包みを取り出していた。その袋の中には、真新しい白い縄が入っている。
 一瞬ハッとした表情を見せたが、真由の気持ちは、それを当然のように受け入れていた。
 真由は吸い寄せられるように、神棚に向かって正座した。そして頭を垂れ、両腕を後ろに廻して、手首を重ねる。
「真由、よい心掛けじゃ」
 幻舟斎は、真由に縄を掛けていく。
 手首を縛って、乳房の上下に縄を廻すだけの、簡単な高手小手縛りである。
 真新しい太めの縄は、ごつごつしていて、これなら成程、結び目もほぐれ易い。縄留めは、真由のへそ当たりで結ばれたが、縄尻はまだ余っている。
「真由、この縛しめなら抜けるのも、そう難しくはあるまい?」
 真由は肘を張ったり、手首を動かしてみた。
「はい、簡単に抜けられるはずです」
「よし、それなら立ち上がるのじゃ」
 真由が立ち上がろうとして、正座から腰を浮かし片ヒザを立てた時、縄尻が
 両脚の間に落ちてきた。そしてその縄は、後ろ側から引かれた。
「あっ、そ、そんな縄・・・」
 真由の割れ目に、深々と食い入った縄は、手首を縛った縄に連結された。
「真由、この縄があるだけで、縄脱けは少し難しくなる。それでも抜けられるはずじゃ。」
「・・・・・」
「縄を外したら、神棚にその縄を奉納して戻って参れ、よいな」
「・・・はい・・」
「もう空も白みかかっておる。わしは先に戻っておる」
 幻舟斎は真由を正座させて、戻っていった。
 確かに祠の外は、少し明るさが出てきている。真由は急いだ。
 後ろ手の手首を捻じってみた。そのとたん縦縄が食い込む。
「あっ、い、いや・・・、い、痛い」
 縦縄は、羞ずかしいだけではなかった。木馬責めの痕跡をこすり上げるのだ。
 その上、縦縄に膀胱が圧迫されたためか、尿意も湧き上がってきた。(あーっ、早くしないと洩れてしまう)
 祠の中でオモラシをする。オシッコで濡れた縄を奉納する。真由の感性では、そんなことが許されるはずがなかった。
 真由は縄目を撓ませるために、転がってみた。前側と背中側に反転するたび、縦縄が意地悪く、真由の割れ目をこすり上げる。
 その縦縄も、痛みだけではなくなって、ムズ痒いような甘い感覚に変わっていた。傷口をふさいだカサ蓋の下の、ムズ痒さである。
 それでも、転げ回っているうちに、真新しい縄は緩む。手首を縛っている縄に絡ませた、縦縄の結び目が、ついに外れた。
 今まで真由を悩ませていた縦縄が外れると、後は大きく動かすことができる。
 真由は、肩を揺すりながら、括り合わされた後ろ手の、手首をこねている。
 真新しい太い縄だけに、こねればこねる程、確実に緩んでいく。
 何回もこね回しているうちに、真由は手首を引き抜くことができた。
 縄にこすられた手首は、真っ赤に腫れあがっている。
 普通の縛しめなら、肩や肘の間接を外さなければ、縄脱けなどできないのだが、これも幻舟斎の配慮だろうか。「縄脱けの稽古」ではないのだから。
 ともあれ真由は、外した縄を畳んでいく。途中、割れ目に食い込んでいた所が、濡れて変色していることを発見して、顔を赤らめた。
「こんな縄を奉納しても、いいのかしら?」
 真由はためらったが、ゆっくり考える時間がない。(しっ、仕方がないわ・・・)
 真由は束ねた縄を、神棚の奥に置いた。尿意も限界に近づいているのだ。
 真由は、祠の中から外を窺って確かめると、一目散にそばの薮の中に駆け込んだ。
 そして、適当な場所にしゅがみ込み、放出を始める。
 真由は野良仕事の時、林の中で用足ししたことこそあるが、素っ裸では勿論初めてのことである。土蔵の中とは違った心もとなさが、胸を締め付ける。
 長い放尿が終わると、尻まで垂れた滴を、真由は手で拭うしかなかった。
 祠のそばに、小さな御手洗(みたらい)がある。
 樋を使って、清水を引いているのだろう。柄杓も準備されている。真由は汚れていない方の手で、柄杓を掴み手を洗う。(ああ、こんなことしたら、バチが当たるかしら。でも忍びの里の神さまだもの、解ってくださるに違いないわ)
 真由は勝手な理屈をつけて、股間にも水を掛けた。片方の手で割れ目を押し開き、中の溝を洗うと少し滲みた。木馬責めの痕跡か、股縄でこすれた傷か、真由は清めるような気持ちだった。
 そして洗い終わると、真由は立ち上がって、祠に手を合わせた。(神さま、ごめんなさい。真由は、きっと一人前になって見せますから)
 真由は、心の中で誓っていた。

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