『宴のビーナス』(第10夜)

 一人残されたような気持ちになった優子は、辺りの檻を見回して、向かいの女性に小さく声をかけた。
「…あの………」
 するとその女性は、すぐに「ワン」と鳴いてみせて、優子の言葉をさえぎった。
「ワン…カメラとマイクがあるのよ……ワンワン…。余計なことを喋ってると……ワン…あとでお仕置きされるわよ……ワン」
 そう言った彼女は、ごく自然にお座りの姿勢をしていた。
 人間の顔をしていながら、彼女は紛れもなく牝犬なのだ。
 優子は四つん這いになってはいたが、まだ意識してやってる。
 だが、いずれ自分も人間の顔をした牝豚となるのだろうか………。
 自分を人間だと意識しなくなる日が来るのだろうか………。
 そうやって逡巡しているうちに、優子はペタリと床に尻をついて座っていた。
 しかしそれは、動物しての座り方ではない。
 腰が抜けたような、人間としての座り方だ。
 そしてそれは監視カメラで確実に捕らえられていた。
 ガチャリと鍵が上がり、入口の扉が開いた。
 他の牝奴隷たちはそれぞれお座りの格好をして姿勢を正したが、優子だけはうつろな表情で座り込んだままだった。
 男が1人と、3人の女性が入ってくる。
 男は黒に近い警備員のような服を着ており、女性たちは黒皮の下着、いや拘束服を着ていた。
 女性たちの下着は肝心の乳房や陰部は隠されてなく、とても下着の意味をなしていなかった。
 そして首には赤い首輪をつけられていた。
 一見して、牝奴隷として調教されているであろうことは分る。
 しかし、ここの檻に入れられている牝奴隷たちとは、明らかにその表情が違う。
 うつむき加減のどこか薄汚れた感じのする牝奴隷たちと違って、小奇麗で背筋をピンッと伸ばした牝奴隷として美しさを備えていた。
 だからと言って、決して美人と言うわけではない。
 素材としての美しさは、優子の方が上だろう。
 そんな彼女たちは、それぞれ手に金属製の皿の載ったトレイを持っていた。
 檻の下のほうにある小さな扉を開けて、その皿を置いていく。
 皿を置かれた牝奴隷たちは、口々にそれぞれの動物としての鳴き声に人間の言葉を混ぜてお礼を言った。
 ワンワン、ブーブー、ニャ~などの異様な声が通路に響き渡る。
 それでも優子は、虚ろでいた。
 男が優子の檻の前に立っても、優子は気がつかないようだ。
 鞭が優子に飛ぶ。
 もちろん、檻の中には届かない。
 だが、乾いた音と空気を切る風に、優子もハッとして顔を向けた。
 それでも姿勢を正すまでは頭が回らない優子に、トレイを持った牝奴隷の1人が怒鳴った。
「何してるの!? 早くお座りしなさい!!」
 一瞬ムッとした優子だが、同時に男にも鋭い視線でねめつけられ、慌ててお座りの姿勢をした。
「あら、返事が無いわね」と、怒鳴った牝奴隷がつぶやいた。
 すると男がニヤニヤと下卑た笑みを口元に浮かべながら、その牝奴隷に命じた。
「こいつはまだ連れてこられたばかりだからな。まず先輩奴隷としてお前が自己紹介してやれ」
 命じられた牝奴隷は、トレイを床に置くと両手で自分のアソコを開いてみせた。
「性奴隷の久美子です。鞭で叩かれるのが好きな変態です」
 頬を少し赤らめているが恥ずかしさからではない。
 その行為、挨拶をすること自体に興奮しているようだ。
 その証拠に、彼女のアソコの毛を伝って愛液がしたたってきている。
 男は久美子のアソコに鞭の柄を当てながら、久美子のことを教える。
「この女はな、ケツを叩かれることを想像するだけで濡らしてしまうマゾなんだ」
 そう言いながら、久美子のアソコに当てた鞭の柄を中へと押し込む。
 久美子はその程度では喘ぎ声はあげなかったが、息遣いは少し荒くなっていた。
 男が鞭をアソコから引き抜いて久美子の目の前に持っていくと、命じられてもいないのに久美子は舌を這わせて舐め始めた。
 優子は何を思えばいいのかさえ戸惑いながら、その様子を呆然と見上げていた。
 不意に男が久美子の口から鞭の柄を離すと、あからさまに久美子は残念そうな顔をした。
 そんな久美子にかまわずに、男は優子の方に命じた。
「お前は牝豚奴隷だったな、優子。先輩奴隷たちに挨拶しろ」
 突然のことに優子は戸惑った。
 すると久美子は鉄棒越しに優子の髪を掴んで、強く引き寄せた。
 優子の顔が鉄棒に叩きつけられる。
「私に挨拶できないの!?」
 気分を出して舐めていた鞭の柄を取り上げられた腹いせのようでもあった。
 男が久美子の手を優子から離させて、もう一度命じる。
「さあ、早く挨拶をするんだ。餌をもらいたくなのか?」
 そう言われて優子は、床に置かれた金属製の皿を見た。
 ごはんと何かを乗せただけのようなみすぼらしい食事だ。
 もちろんそれは見た目だけで、飼育するための栄養は取れるように作られている。
 だが、とても食べる気にはなれない。
 それでも優子自身お腹がすいてきていた。
 何よりも向かい側などの他の牝奴隷たちは、目の前の餌を無断で食べることはできないとでも言うように、優子に怒りにも似た目を向けていた。
 これからどんな生活になるのかはまだ分らないが、一緒に飼育される『仲間』に嫌われてはとても耐えていけないだろうと直感した優子は、おずおずと頭を下げて挨拶した。
「ブヒー…、牝豚の優子と……言います…ブー。今日からここで…飼育していただくことに…なりました……ブーヒー」
 挨拶を終えると、優子はゆっくりと男と久美子を見上げた。
 もし今の挨拶に満足してもらえなかったら、何を言われたりされるか分らない。
 そんな不安げな表情を浮かべる優子に、挨拶への叱咤は無かった。
 だが、それ以上にショックなことを告げられる。
「ペットの飼育は、久美子たち性奴隷がする。お前は人間としての奴隷の彼女たちより下の身分だからな。彼女たちを人間として敬うんだぞ」
 目を見開いて、うっかり優子は「そんなっ…!」と口にしてしまった。
 久美子がまた優子の髪を掴む。
 そして優子を侮蔑するような目で見下ろした。
「私はあなたたち牝奴隷の前でアソコをさらしても恥ずかしくなんか無いのよ? なんでか分る? ペットの前で裸になっても恥ずかしくないからよ。 あなたたちは人間じゃないんだから」
 久美子はわざと他の檻の牝奴隷たちも見回して大声で嘲笑した。
 餌を置き終わって空のトレイを抱えた性奴隷たちも、声を出して嘲笑に加わった。
 どう贔屓目に見ても、優子の方が4人の性奴隷たちより格段に美人だ。
 それだけにいっそう優子は憐れだった。
 むしろだからこそ久美子は、優子を蔑みたくて仕方がないのだろう。
 さらに優子の大きな乳房の先についている乳首をつまむと、爪先でギリギリとすり潰すようにした。
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 優子は絹を引き裂くような悲鳴を上げた。
 その艶っぽい悲鳴は、ますます久美子たちの嫉妬を買う。
「デカイオッパイしちゃって。頭の栄養もオッパイに行っちゃてるんでしょ。頭悪そうな顔してるものね」
 久美子は、さらに乳首をねじるようにしてつまみあげる。
「ひぃぃいいいいいいい!!」
 優子の悲鳴が一段と上がると、鞭が肌を打つ音が響いた。
 性奴隷たちを連れた男が、久美子を鞭で打ったのだ。
 優子に代わって、久美子が悲鳴をあげる。
「久美子。お前はなんだ?」と、男が鞭の柄で久美子のお尻を撫でる。
「はい…、性奴隷です……」
 そう答えた久美子は、怯えているようだった。
 さっき自分で鞭で叩かれるのが好きだと言っていた久美子が怯えている。
「性奴隷とはなんだ?」
「はい、ご主人様の性欲を満たして差し上げる奴隷です」
「ここでの仕事は?」
「牝奴隷の飼育です……」
「牝奴隷の調教は誰がやるんだ?」
「調教師です」
「牝奴隷に傷つけるようなことをしていいと思ってるのか?」
「申し訳ありません」
「このお仕置きはあとでするからな。覚悟しておけ」
「はい……」
 優子は、助かったと言う安堵した気持ちで二人のやりとりを見てはいなかった。
 だが、男の矛先は今度は優子に向かった。
「お前はさっき、勝手に人間の言葉を使ってお喋りをしようとしたな。ちゃんと分ってるんだぞ」
 ビクッと優子が顔を上げた。
「それに、性奴隷の久美子が怒ったのも無理は無い。牝豚のクセに、人間を敬うことを拒もうとしたんだからな」
「それは…」と、また口をついて出そうになり、優子は下を向いて黙った。
 男は久美子に、優子への餌を与えるように命じた。
 檻の小さな扉が、カチャリと開けられる。
 優子は、おずおずと四つん這いでお座りをし直した。
 ここでまた怒らせて、餌を取り上げられてはたまらない。
 だが、久美子が餌皿を檻の中に入れようとすると、男が信じられないことを久美子に命じた。
「久美子。この牝豚には、その餌だけでは牝豚になりきれないかもしれん。お前のクソを食わせてやれ」
 優子は下を向いたまま蒼ざめた。
 一瞬呼吸をすることも忘れるほどに硬直した。
 命じられた久美子は、先ほど叱られた時の表情とはうって変わって、嬉しそうに「はいっ! かしこまりました」と答えた。
 そして優子の餌皿にまたがるようにしゃがみ込むと、久美子は自分の指を舐めて濡らしてから、それをお尻の穴へと運んだ。
 自分のお尻の穴を刺激して息んでいる久美子を優子は、そっと顔を上げて、まさかと言う思いで見つめた。
 すると、優子が食べるはずの餌の上に、ポトリと親指の先ほどのウンチが落ちるのが見えた。
 優子の唇が、ブルブルと震える。
 そうこうしてるうちに、今度はムリムリムリと音が聞こえるかと思うほどに、太くて長いウンチがひり出されてきた。
「ずいぶん溜めていたんだな、久美子」と、男は下卑た笑顔を浮かべて声をかけた。
 久美子は、まだ息んだまま答える。
「んん…。はい……。ご主人様に浣腸をしていただいり……、ううっん…、ペットたちに餌を…あげないといけないですから……」
 そう言い終えた頃に、ウンチも出し終わったようだ。
 餌の上に、まさにその餌と同じ量ほどのウンチがこんもりと盛り付けられた。
 強烈な悪臭が漂い、さすがに誰もが顔をしかめた。
 だが、優子だけは硬直して、ただ餌皿を見つめていた。
 こんなことが現実な訳は無い。
 まさか、本当に食べさせられるわけは無いと、かすかな希望にすがった。
 しかし、その希望はすぐに打ち砕かれた。
 ウンチを出し終えた久美子が、すぐに自分のウンチを盛り付けた餌皿を、優子の檻の中に入れたのだ。
「さあ、残さず食べるのよ」と久美子は意地悪く微笑んで優子を見下ろす。
 優子は「そんなもの食べられません!」と叫びたかった。
 叫びたかったが、それもできずにただ泣きそうになるのを肩を震わせるだけで耐えた。
 他の牝奴隷たちは、檻の中から黙って優子を見つめていた。
 それは憐れみでもあったし、同時に怒りにも似ていた。
 すると、さっき優子が喋ろうとしたのを止めた真向かいの牝犬奴隷が、明らかに優子に同情の目を向けていることに男が気づいた。
「どうした、唯(ゆい)。人間の糞を食べさせてもらえる優子が羨ましいのか?」
 ビクッとして、唯と呼ばれた牝犬奴隷は顔をそらした。
 だが、もう遅い。
「羨ましいんだろう。お前も欲しいんだな?」と、男は唯の前に向かった。鞭をわざと目の前に見せながら。
 これはただ、逆らったら鞭だという意味ではない。
 それ以上のお仕置きが待っていると言うことだ。
「欲しかったらちゃんとおねだりするんだ。うん?」
 おねだりしなければ、どんな目に合わされるか分からない。
 いや、唯は分かっていた。
 唯は観念したように、顔を上げた。
 そして、絞るような声で男にねだる。
「ワン…どうか……、人間様の…ウンチを食べさせて下さい………ワンワン…」
「そんなに糞が食いたいのか。意地汚い糞犬だな。腹一杯食べたいのか?」
 これはもっとねだれと言うことだ。
 唯はそれに応えなければならない。
 それこそヤケクソのように声を張り上げる。
「ワンワン…私は意地汚い糞犬です! ウンチをお腹一杯になるくらいたくさん下さい! ワンワン! お願いします! ワン!」
 唯は無様に尻まで振ってねだってみせた。
 すると男は満足そうに、久美子以外の性奴隷たちに命じた。
「美紀、沙羅、靖子! この糞犬にお前たちの糞を食わせてやれ」
 優子は自分の前に置かれてるウンチのことを忘れて唯を見やった。
 だが唯は目を合わせようとはしなかった。
 もちろんそれどころではない。
 一度檻の中から取り出された唯の餌皿に、三人の性奴隷たちが次々と脱糞していく。
 そして大量の糞便がうずたかく盛り付けられた餌皿が、唯の檻の中に戻された。
 さっき久美子が脱糞した時以上に臭気があたり一面に充満している。
 男もさすがに手で口と鼻を押さえる様にして、牝奴隷全員に餌を食べるように命じた。
 優子以外は、それぞれの鳴き声を混ぜながら「ありがとうございます」とお礼を言って、自分の餌をむさぼり始める。
 唯もウンチの山の中に顔を埋める様にして食べ始めていた。
 その様子を優子が黙って見つめていると、牝奴隷たちの視線が集まっていることに気づいた。
 それは同情でも憐れみでもない。
 怒りだ。
 背筋がゾクリとする。
 男もそれに気づいて優子を振り返った。
 どうやら狙い通りだ。
 唯は、いわば優子のために犠牲にさせられたのだ。
 ここで優子が食べなければ………。
 優子は四つん這いになって、ウンチの乗った餌を見下ろした。
 思わずその上に吐きそうになる。
 少しつづ顔を降ろしていくと、鼻先にウンチの臭いばかりでなく温かさまで感じる。
 意を決して口を開いて食べようとする。
 すると男がそれを止めた。
「待て! 礼はどうした」
 優子はウンチに唇が触れる瞬間に動きを止めて、つぶやくように答えた。
「ブ、ブヒー…ありがとう……ござい…ます……ブー…」
「よし、食え」
 そう言われて優子はついにウンチを食べ始めた。
 泣きながらウンチを盛り付けられた餌を貪る。
 涙と鼻水でウンチの臭いがまぎれるのがせめてもの救いだった。
 だが、喉を通る時には焼け付くようだ。
 牝豚となった優子は、何度も吐き気が込み上げてくるのをこらえて食べ続けた。

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