『宴のビーナス』(第12夜)

作:九尾きつね

 薄暗い地下の廊下を一団の影が歩いてくる。
 男の影がふたつと、それに挟まれるように足下で這い蹲って蠢いている影がひとつだ。 
 足下で蠢く影は、懸命に進もうとしているようだが、思うように身体を動かせないでいる。
「何をもたもたしているんだ!。さっさと歩けっ!」
 足下で蠢く者の後ろにいる男が、イライラしたように怒鳴ると、手にしている鞭を打ち下ろした。
 ビシィィーッ!。
 乾いた音を立てて鞭が跳ねる。
「きゃっ!」
 小さく悲鳴を上げたのは、優子の先輩である村上綾であった。
 綾は、全裸の姿で手足を四足のようにして、四つん這いで歩いている。
 しかしただの四つん這いではない。
 手首は二の腕の付け根にピッタリと付くように、腕を折り曲げられベルトで固定されている。
 足も同じように、足首が太股の付け根に付くようにして折り曲げられ、ベルトでガッチリと固定されている。
 このため肘と膝を直に床に着けて歩く姿は、四つん這いというよりはまさに這い蹲った姿と言ってよかった。
 綾はこの姿で懸命に歩こうと苦心していた。
 しかし、本来は肘も膝も足の代わりをする部分ではない。当然の事ながら意志に反して自由に動かすことが出来ない。
 綾の首に填められた首輪からのびた手綱を持って、前を歩く男との間に距離が出来る。
 男はグズグズするなと言いたげに、手綱をグイッと引っぱる。
 息が詰まり、咳き込む綾の背中や尻を、後ろにいる男がおもしろそうに鞭を打つ。
 綾は鞭に追われながらも、懸命に前を歩く男についていく。
 だが、今の綾の身体を責めているのは、それだけではなかった。
 身体中の随所に、卑猥な文字が焼き印で付けられているのだ。
 乳房にも、恥丘にも、背中やお尻にも、それどころか綾の額にも、恥ずかしくて言葉には出すことの出来ない文字が、焼き印で付けられていた。
 その上、傷ついた綾の身体にはリングのピアスが着けられているのだ。
 鼻にも、乳首にも、剃毛処理のされたヴァギナのラビアにも、そして包皮を切り取られたクリトリスにもピアスが通されている。
 特に、クリトリスのピアスには細い鎖が付けられていて、それは小さな重りに繋がっていた。
 綾はクリトリスで重りを引っぱるときの痛さに堪えながら、地下の廊下を這うように男たちに連れられていく。
 これから、綾が死ぬまで暮らす場所となるであろう、地下の奥深くにある地下牢に向かって………。
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 綾は優子の脱糞を顔に浴びせられたあの後、部屋から連れ出されある地下室に連れて行かれた。
 そこで性奴隷と名乗る女性から、顔についているウンチの痕を少々荒っぽく洗浄された後、休む間もなく数人の男たちの手によって、ベッドのような台の上に仰向けに寝かされ、万歳をした格好で手足を固定された。
 綾の身体に無理やりピアスを付けるためである。
 それも麻酔も掛けられずに………。
 その為、身体を貫く大きな針の痛さを感じた綾は、小さな呻き声を立て何度も気を失った。
 男たちはそのつど綾にバケツの中の冷水をかけ、綾を覚醒させ続けたのである。
 こうして綾の身体に全てのリングのピアスが付けられたのだった。
 次に男たちは綾を台の上にうつ伏せに寝かせ、ピアスを付けた時と同様に万歳の格好で手首足首をベルトで固定した。
 綾は、この後どんな責め苦を受けることになるのだろうかと、不安げな表情を見せた。
 男が顔を近づけて「さて、これからが楽しいイベントの始まりだぜ」とつげる。
「楽しいイベント?」。
 綾は不安の中に怪訝な表情を示した。
「へへへ、お前の身体を綺麗に飾り付けてやるのさ」。
 男は太い指先で綾の背中を撫でながら話をする。
 背中に悪寒を感じながらも「………か、飾り付け………?」と綾は聞き返す。
「ああ。肉便器になるお前の身体に焼き印を入れて、綺麗に飾り立ててやるからな」
「や、やきいん………?」
 男の口から「焼き印」の言葉を聞いて、綾は信じられないといった表情で男の顔を見直した。
 学生時代に歴史の授業か何かで習った、何百年も前に存在した「奴隷狩り」や「奴隷売買」で、奴隷たちの身体に入れられたという焼き印の事を思い出したのだ。
 それが今この時になって、自分の身体にされるとは信じられなかった。
「見な」。
 男が顎をしゃくってある方向を示した。
 綾はそれに吊られて、顔をそちらに動かす。
「ひっ。う………うそっ」
 綾の目に大きな鉄の入れ物がうつる。
 その中ではゴーゴーと燃え盛る炎の中に、何本もの焼き印用の焼きゴテが真っ赤になって、取り出させるのを待っていた。
「お前の身体を、あの真っ赤に焼けた焼き印が、綺麗に飾り立ててくれるぞ。どうだ嬉しいだろう?。へへへ………」
 男は綾をネチネチと責めるように言った。
「い………いやぁ………。焼き印なんて………肉便器なんて………」
 綾は激しく頭を振り、目に涙を溜め泣きそうな声を上げる。
 そこには、探偵としてこの別邸に忍び込んだときの力強い綾の姿は既に無く、只のか弱い女となった綾がいた。
「いやもなにも………、自分の事を便器だと言って後輩の糞をうまそうに食っていたじゃないか?………忘れたとはいわせんぞ」
 男の言葉に綾はハッとする。………しかしあの時は、拳銃で狙われていた優子を助ける為には、ああいう行動しか取りようがなかったのである。
 男もそんなことは百も承知で、綾に話し掛けているのだ。
「しかし………あのときは………」
 綾は震える口を開いて呟く。
「残念だが、お前が一度便器になると宣言した以上、ここで死ぬまで肉便器として生きていくんだよ」
 綾は呆然とした顔で男の言葉を聞いていた。
「そんなにイヤだったら、やめてやってもいいぜ。焼き印を」
 男の思いもしない申し出に綾は「え?」と顔を上げた。
「ほ、ほんとうですか………?」
 綾は藁にもすがる思いで男に聞き返した。
「そのかわりにだ………」
 綾はその言葉を聞いて急いで色々と考えを巡らした。
『確かに、このまま助かるとは思えないわ。………この部屋にいる男たちに輪姦されることぐらいは覚悟しなくちゃ。それとも便器として男たちのウンチを食べることになるのかしら………?、それとも………』
「優子の身体に焼き印を押すことになるが、それでもいいな」
「そ、そんな………」
 男の思いも掛けない言葉に、綾は狼狽する。
「焼き印を入れるのは、お前か優子のどちらかひとりなのでね。お前がイヤなら優子と言うことになるぜ」
 綾の脳裏に優子の顔が浮かんでくる。
『いつも失敗ばかりしているくせにどこか憎めない愛らしい笑顔。………それに私が侵入に失敗さえしなければ、優子ちゃんをこんな目には会わす事はなかったのだ。………若い優子ちゃんには幸せな未来もある。焼き印を打たれた身体になれば、全てを失うことになってしまう。………そんな事はさせられない。優子ちゃんは私が守らなければ!』
 綾の顔が探偵の顔に代わる。
「私が焼き印を受ければ、優子ちゃんには手を出しませんね!」
「あ………うん。お前が受ければ、優子には焼き印をしない」
 男は一瞬、綾の剣幕に押され真顔で答えた後、手下に始める合図を送る。
 綾の顔に目隠しがされボール型の口枷が填められる。
 綾はどこか処刑される囚人の心境になっていた。
 すでに覚悟は出来ている。
『身体に焼き印を入れられたら………もう二度と水着は着れなくなるのね………せめて一度でいいから、とってもきわどいビキニの水着を着たかったなぁ………』
 そんなことを考えている綾の耳元に男が顔を近づけ話し掛けた。
「ああ。言い忘れたが、お前の身体に焼き印を入れている最中に、2回以上気を失ったら、お前の後輩の優子にも焼き印を入れることになるからな。」
「ふへぇ?(ええ?)」
 男の言葉に綾が驚いた声を上げた。
「可愛い後輩の為にも、気を失わないようにがんばるんだぞ。へへへ………」
 綾は烈しく顔を左右に振った。
「ひゃくひょくが………ひ、が………う。(やくそくが………ち、が………う)」
 綾は口枷で不自由な口で抗議をした時、ジュウウウウウ、という肉を焼く音がした。
 肉は肉でも、綾の皮膚と肉を焼き印で焼く音であった。
「ふっぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
 抗議を言った口から、今度は悲鳴が上がった。
 口枷をされている為、部屋中に響き渡るような悲鳴とはならない。
 最初の焼き印は背中に入れられた。
 焼き印を押し終わった焼きゴテが、綾の背中から離れた。
「何という文字が押されたか言ってやろう。………『便器奴隷』だ。」
 男は含み笑いをしながら、綾の耳元で囁いた。
「あ………ふぁ………ぁぁぁ」
 綾は覚悟をしていたとはいえ、焼き印を押されたショックと、火傷の痛さで呻く声しか出せなかった。
 ジュゥゥゥゥゥゥゥ!。
「ぎえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 二つ目の焼き印が、右の尻に押された。
「二つ目は『糞便器』の文字だ。」
 ボールの枷を強くかみしめている綾に男が囁く。
 目が見えていれば、まだどこに焼き印を入れられるかを知って、心の準備をすることが出来るが、目隠しをされている為、どこにされるか皆目見当がつかない。
 そしてそれは、綾の予想もしない場所に入れられることが多かった。
 それは、綾の気力と体力を確実に奪い取っていった。
 ジュウウウウウウウッッッ!。
「ぎひぇぇぇぇぇぇぇ!」
 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ。
「ぎゃはぁぁぁぁぁぁっ!」
 焼き印は綾の後ろの身体に入れられていく。
 腕、肩、背中一面、尻に、太股の裏に、足の裏にまで………。
 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 何度目かの焼き印が入れられたとき、綾はグッタリと気を失ってしまった。
 と同時に、シャバァァァァァーッ。ブリブリブリブリーッ。と小便と大便が綾の身体から垂れ流された。
 漏れた小便が台の上を伝って床へと落ちる。
 ひねり出された大便の塊が台の上に転がる。
 モワァー、と大便から湯気が立ち、臭いを部屋中に広める。
「けっ。顔に似合わず、けっこう臭い糞を出すもんだな。………肉便器なんだから、これが当たり前か。へへへ………」
 男は鼻を手で押さえながら呟き笑った後、「おい」と手下の1人に顎で合図をした。
 サバァァァァ。
 バケツの冷水が綾の身体と、台の上に固まっている大便にかけられ、床へと流された。
 綾の身体は半回転させられ、うつ伏せから仰向けにさせられた。
 手足はさっきと同じように万歳の格好で、ベルトで固定されなおされた。
 水をかけられ、意識を取り戻した綾の耳元で男が囁く。
「今度気を失ったら、後輩の子が同じ目に遭うからな。しっかりとがんばれよ。へへへ………」
 男の手がいやらしく、綾の右の乳房を揉んでいる。
『その場所に焼き印が入れられるのかしら?』
 綾は乳房に入れられるであろう焼き印を、覚悟を決めて待った。
 ジュウウウウウウウウッッッ!。
「ひゃぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 焼き印が入れられたのは、乳房では無く無毛となっている恥丘にであった。
 入れられた文字は『ザーメン処理便器』であった。
 その後、綾の身体に背中同様に、幾度となく焼き印が押されていった。
 胸にも、乳房にも、腹にも、太股にも、手のひらにさえも焼き印が入れられたのである。
 入れられた文字も『小便便器、糞便器、便器奴隷、家畜用便器、肉便器、ザーメン処理便器』等々、ありとあらゆる卑猥な文字の焼き印が綾の身体を飾っている。
「はう、はう、はう、は………う………」
 綾はもう何も考えられなくなっていた。
 頭の中が真っ白になっているのだ。
 しかし焼き印の火傷の痛みは、津波のように綾の神経を駆け上ってくる。
 男の手下が、綾の頭を両手で押さえる。男が耳元で囁く。
「これで最後だ。これでお前はもう肉便器として、ここでしか生きていくことは出来ないんだぜ。へへへ………」
「ひゃぁぁぁぁっっっ。(いやぁぁぁぁっっっ)」
 綾は絶望的な悲鳴を上げた。
 それを合図に綾の額に『肉便器』の焼き印が入れられた。
 ジュュュュュュュュュュュューッ!。
「ほぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」
 今まで身体に押されてきた時の、肉の焼ける臭いとは一団と違う焼ける臭いを感じて、綾は最後の悲鳴を上げた。
しかしそれも、やはり口枷に邪魔をされて悲鳴の叫びとはならなかった。
 ただ、噛まされているボール型の口枷についている小さな穴から、綾の涎とも唾ともつかない液体が飛ぶのが見られた。
 綾の身体は小刻みに痙攣をすると、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ、と小便を空中に飛ばして、グッタリと気を失ってしまった。
 男はそんな綾の姿を腕組みをしながら眺めていて、押し殺した笑いを浮かべながら独り言を呟いた。
「とうとう、おねんねか………。ま、約束どおり、優子の身体には焼き印は入れないでおいてやるよ。焼き印はな………」
 そして綾の髪の毛を撫でながらこうも告げた。
「それから、肉便器には立って歩く足も、物を掴む手も必要ないのさ。そのうち肘から先の手と、膝から先の足を切り取ってやるからな。肉便器には小さな足が4本付いていればいいんだからな。へへへへへ………」