拷問蔵では真由の石抱きがまだ続いている。
抱き石を乗せては下ろし、下ろしては乗せる。何度繰り返されたであろうか。
真由の歪んだ顔は、汗みどろになっていた。したたり落ちた汗は、抱き石の上に、水溜りを作っているが、それも汗だけではないだろう。
「しぶとい女じゃ、これ程責めても音をあげぬとは」
責め手も、ボヤキの一つも言いたくなるのであろう。
その時上がり框の座敷に、お恵の方が姿を現わした。
「こ、これはお方様!・・・」
「何か判りましたか?」
静かだが強い口調で尋ねたその後、何と弾正も現われたのだ。
侍たちは恐縮した。
「それが、なかなかしぶとい奴でして・・・」
「そやつ、お館さまをもたぶらかして、探りを入れようとした太い女子じゃ、充分に絞めあげてやらねばならぬ」
「はっ、ごもっともで・・・」
「忍びの責めは、忍びがよかろう。そなたたちには無理じゃ、お下がり」
配下の忍びが五人現われた。真由を取り押さえた連中である。
黒装束でこそないが、いかにも忍び、といった面構えの男たちである。
侍たちは面目なさそうに下がっていった。
「さ、お館さま、これからくノ一の責めを、たっぷりとご覧にいれましょう。まず、吊るしておやり!」
真由はやっと石抱きから開放されたと思ったら、今度は背中の縄尻を引かれ、天井から吊り下げられてしまった。
「うっ、・・・」
真由は小さく呻いても声はあげず、歯を食いしばっている。
「その腰の物も外しておしまい! お館さまによく見えるように」
真由の腰巻きは、簡単に剥がされた。
「あっ・・・」
さすがの真由も、羞ずかしさには耐えられなかったのか、小さな動揺をみせた。
左脚をくの字に曲げて、股間を隠している。
「やはり生娘だったようね。くノ一ともあろう女が、その程度で羞じらいを見せるとは。どこまで耐えられるか楽しみね、ふふ」
お恵の方は、弾正の顔と真由の姿を見比べながら、妖しくほくそ笑んだ。
真由の体は、吊り縄を支点にして回らされ、尻や太腿にムチが当てられていく。
さんざん打たれた肩辺りと違って、無傷の白い肌に、色鮮やかな紅い筋がきざみつけられていく。
ピシッ! ピシリ、ピシピシッ!
「あっ・・・、うっ、うーむ・・・」
真由はそれでも悲鳴を噛みころして、耐えている。
その姿を見つめる弾正の眼は、血走っている。
(女の責めが、これ程興奮するとは・・・)
そんな表情である。
吊り下げられた真由の、回転が止まった。真由は肩で荒い息をついている。
吊り責めは、ムチで打たれることよりも、胸や二の腕を締め付ける縄目の方が辛いのだ。
「くノ一の責めなら、やはりあれね」
お恵の方は、壁際の方へアゴをしゃくった。
三角木馬が置かれてある。すぐさま真由の足元に運ばれた。
ハッと目を見張る真由。
自分の足下に跨り易い形で、鋭い背中をした三角木馬が据えられた。
いくら体験しているとはいえ、敵方の手で木馬責めにかけられるのである。
真由は思わず顔を背けた。
そんな真由の心の揺れを、お恵の方は見逃さなかった。
「お館さま、あれに女子が跨ればどうなるか、お判りでしょう? さすがのく一も、泣き声をあげて悶えることになりますわ」
お恵の方は、真由の拷問を見世物にしているのだ。
「は、早く跨らせろ!」
煽られた弾正は、興奮して叫ぶ。
真由にもお恵の方の意図が解った。それでも真由には、どうする力もない。
屈辱に打ち震えるだけだった。
真由の体は静かに降ろされていき、三角木馬の尖った背中が、割れ目に食い入った。
真由の首は一瞬のけ反り、吊り縄が緩みきった時には、うな垂れた。
両腿は痙攣するように、木馬の胴を挟みつけている。
真由は、体を丸めようとしているのだが、吊り縄が許さない。
「うっ、うーっ・・・、ああ・・・」
真由の哀しげな悲鳴は、苦しみだけではないだろう。
責め手は真由の前髪を掴み、顔を上向かせた。
「どうだ! 吐いた方が身のためだぞ」
「だ、誰が!・・・(誰がお前たちなんかに・・・)」
屈辱にまみれた真由の、精一杯の抵抗だった。
責め手たちは真由の体を揺さぶり、ムチをあびせた。
「くっ、くーっ・・・、うっ、うっ・・・」
のけ反った真由の眦からは、新たな涙があふれた。悔し涙であろうか。
お恵の方が目で合図を送ると、男たちは木馬のそばから離れた。
真由は崩れた体勢を立て直そうと、両腿を蠢かせている。
その姿をジッと見つめる七人の眼。
体勢が安定したといっても、楽になる訳ではないのだ。
三角木馬の上に股間を乗せていることには、変わりはない。
体の沈み込みを少しでも防ぐためには、両腿で木馬の胴体を挟みつけることが、唯一の方法である。
後ろ手に縛られた真由にとって、切ない仕種であった。
それでも、そうしなければならないのは、もう苦しさから逃れるための本能に近い。
お恵の方は弾正にしなだれかかり、時々、真由を指差しながら、何事か囁いている。
弾正は、手に持った盃を取り落とさんばかりに、身を乗り出した。
お恵の方が、欲情を刺激しているのに違いない。
(おのれ! お恵の方・・・、わたしを嬲り者にするために・・・)
真由の心に初めて<憎しみ>という感情が芽生えた。
それでも真由にはどうすることもできない。みじめな泣き顔を見せれば、嗜虐のいけにえにされるだけである。
真由は石になろうと念じた。幻舟斎の言葉を思い浮かべた。
(真由、石になれ。石になって耐え忍ぶのじゃ)
真由は苦しみを噛みころして、能面のような無表情を装った。
そんな真由の心の裡も、お恵の方は読んでいる。
「ふふ、小癪な、この程度では物足りないようね」
お恵の方はまた、男たちに目で合図を送った。
真由の体は、背中の吊り縄によって、浮き上げられていく。
「あっ・・・?」
真由は何か判らないうちに、吊り上げられていた。
そして股間がこぶし二つ分くらい離れた時、いきなり落とされた。
「ぎゃあーっ!・・・」
大きくのけ反った真由の体は、痙攣するように全身が硬直した。
硬直は長くは続かない。筋肉が弛緩し始めた時、ガックリと首を垂れた。
上体も前に傾き、吊り縄に体を預ける形になった。
不意打ちをくらった激痛には、さすがの真由の知覚神経も、耐えられなかった。
弛緩しきった体は、失禁したのだろう、太腿を伝って足先から水が落ちている。
気を失った真由はぐったりと、三角木馬の上で晒し者になっていた。
「ふふ、口ほどにもないわね。目を覚ましておやり」
真由は失神のやすらぎさえ、奪い取られてしまう。
男たちは手桶の水を、頭から浴びせた。
「あっ? あっ、うう、イ、イターッ・・・!」
覚醒した神経には、木馬責めの苦しみだけが蘇る。
また全身を硬直させて、木馬との闘いを続けなければならなかった。
そんな真由の体が、再び吊り上げられる。
真由はヒザ頭で木馬の側面を挟みつけ、落下の直撃を避けようとしていた。
吊り縄は更に引き上げられ、一尺(約30Cm)ほど浮かされた所で、吊り縄は緩められた。
真由は必死で体を支えようとしたが、太腿にもヒザ頭にも、もう余力はない。
それに自分の流した尿と、ぶっかけられた水のため、木馬の側面もすべり易くなっている。
両方のヒザ頭は、木馬の側面をすべり、両腿は割られていく。
落下の直撃ほどではないが、かなりの衝撃が、真由の割れ目に走った。
「あっ! あっ、あーっ・・・!」
引きつるような痛みを耐えて、真由は必死に体勢をととのえている。
そんな哀しい真由の努力も、責め手の嗜虐の血を煽るだけであった。
三度目、四度目と吊り落とされた。
「今度は、足首に重石をつけておやり」
一番無慈悲なのは、お恵の方であろうか。
真由の両足首には、それぞれ二貫目(約7Kg)の重石が括りつけられた。
もう太腿に力が残っていない真由にとって、下から足を引っ張られるようである。
真由はのけ反って悶えるだけだった。
括り合わされた後ろ手の手首も、よじり合わせる仕種が切ない。
その前方には、ギラギラさせて見つめている弾正の眼があった。
その横で、何か囁きかけているお恵の方の姿。
(お、おのれ、お恵の方・・・、この恨みは・・・きっと、きっと・・・)
真由は、お恵の方を呪うような気持ちになっている。
そんな真由の尻を、太い棒が後ろから突いた。
「ぎゃあーっ!・・・」
真由の体は木馬の峰を、二尺(約61Cm)程すべって移動させられていた。
ガックリと首を落として気絶した。
真由が移動した分だけ、木馬の背は赤く染まっていた。
「また気を失ったようね、今日はこの位にしておきましょう。牢に放り込んでおやり」
お恵の方はそう言い残すと、弾正をうながして拷問蔵より去っていく。
二人は廊下伝いに引き上げていく途中、寝所の前に差し掛かった。もう弾正は堪えきれなかったのか、お恵の方の肩を抱き、部屋の中へ引きずり込んだ。
「あれっ、お館さまっ、まだ早うございます」
お恵の方は、口ではそう言っているが、計算どおりなのだろう。
「かまわん、来いっ!」
弾正はお恵の方の着物を、荒々しく引き剥いだ。
そして、腰巻きも奪い取ったお恵の方の乳房に、むしゃぶりついた。
「あっ、お館さま、そんな乱暴な・・・、お許しを・・・」
お恵の方の小さな抵抗は、益々弾正の欲情に火をつける。
「めぐ、どうじゃ、もう堪らんぞ」
乳房から口を離したと思ったら、弾正の熱くいきり立った肉棒は、お恵の方の中にえぐり込まれていた。
「あっ、あっ、お館さまーっ・・・」
「めぐっ、いくぞ、めぐっ!」
二人の欲情の爆発は、あっけなく果てた。
真由は元の牢の中で、ぐったり横たわっていた。
意識が戻った時は、素っ裸のままだった。そばに投げ入れられていた着物を見つけると、真由は這いずり周るにして、それを身に着けたのである。
全裸のままでいることが、耐えられなかったのであろう。
そして今はもう横になったまま、寝返りをうつことさえ辛い。
太腿や尻は、自分の体でないように、感覚がなかった。
それでも股間とスネの傷口は、一人前に痛む。
真由は、小十郎に喜んでもらいたかった。幻舟斎に褒めてもらいたかつた。
その一心だけで、任務に励んできたのだ。
(責め殺されてしまうかも知れない・・・)
真由の頭の中には、小十郎、母親、幻舟斎の顔が走馬灯のように駆け巡り始めた。
それが速度を増し、グルグル回り始め、誰の顔か区別がつかなくなった時、真由は深い眠りに落ちていた。

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