夏期講習の最初の授業は担任でもある坪井の数学だった。
夏期講習の授業は基本的に担任の坪井と、副担任で国語科の和田由利子が交互に行うことになっている。
もちろん二人が担当する教科以外はあらかじめ担当の教師に用意してもらったテキストを使うという形である。
足取りの重い葉月が講習室に入ると、すでに皆は着席して坪井が授業を始めるところだった。
「矢代、どこに行ってたんだ。遅いぞ」と坪井が、葉月に注意をする。
葉月は、「すいません」と会釈をして講習室に入り、いちばん後ろの空いている席に座った。
早めに講習室に入っていた亜矢子は窓際の後ろの方、つまり葉月と同じ並びにいた。
葉月がチラッと亜矢子の方を見ると、亜矢子は何でもなかったように、笑顔で小さく手を振った。
葉月は亜矢子がどうして自分にこんな事をするのか分からず、それだけを考えていて、授業に集中できなかった。
逆にそのおかげで、自分が下着をつけていないノーパンで授業に出席してるという事は余り意識しなかった。
正確には、周りのクラスメートの事を意識しないで済んだ。
とりあえず授業は終了して、葉月が夕食まであと3時間ちょっと我慢すればと思ったときに、亜矢子の声が響いた。
「先生、授業が始まる前に廊下で拾ったんですけど」
亜矢子は席を立って前の方に行くと、坪井の前に明らかに女性用の下着であるパンツを差し出した。
葉月が履いていたパンティである。
葉月は驚いて目を見張ったが、次の瞬間には、その持主が誰か言われるのを恐れて顔を下に俯けた。
「廊下に脱ぎ捨ててあったんですけど」
亜矢子は何でもないかのように言う。
言われた坪井の方は坪井で、どう応じていいのか分からない。
「なんだなんだ、下着履いてないヤツがいるのか」と男子の声。
「なに想像してンのよ」と女子が恥ずかしいそうに言う。
「ゴムが切れて落ちたんじゃあないよなぁ」などと坪井がマヌケなことを自分でもおかしいと思いながら口走ってしまった。
亜矢子は無邪気に、「やっぱり持主に返した方がいいですよね」と坪井に尋ねた。
坪井は、「そうだなぁ……」としか答えられなかった。
すると、亜矢子はことさら大きな声で、みんなの方に振り返って、パンティを広げてみせながら、「はーい、廊下にパンツを脱ぎ捨てた人、手をあげて下さい。返しますよ」
「そんなこと言われて出るわけないでしょう」
「でも、誰が落としたのか知りたいよなぁ」
そうやって、皆が盛り上がってると明らかに一人だけ浮いてるのが分かった。
葉月だけが全くパンティに視線を上げず、俯いているのだから当然だ。
皆の中にどよめきがさざ波のように広がっていく。
その声が聞こえて、葉月は顔が熱くなるのを感じた。
そんな葉月の表情の変化はさらに、そのパンティの持主が葉月であることを如実に示していた。
「これ矢代さんのパンティなのね」と、亜矢子が大きな声で言うと、葉月も思わず無言で頷いてしまった。
「ホントかよ!?」という素直な男子の声と、「なんで廊下なんかに?」と好奇心の混じった女子の声が次々と出てくる。
口々にそう言われて、葉月は亜矢子にパンティを脱ぐように要求されたことを言おうと思ったが、すぐに自分が脅迫されてることを思い出して、口をつぐんだ。
葉月が口をつぐめば喋るのは亜矢子である。
「じゃあこれ矢代さんに返してあげる。でも、あとでなんであんな所に脱ぎ捨ててあったのか皆に教えてよ」
なんでも何も、亜矢子が脱がせたのだが、とにかく約束の時間よりも早く下着を返してもらえるのは良かったかもしれない。
葉月は近づいてきた綾子からパンティを受け取ると、講習室を出ようとした。
ところが、そこでまた亜矢子に引き止められた。
「待って矢代さん、その下着が本当に矢代さんのパンティだって証拠あるの? いま履いてないなら、ここで履いてみなさいよ。」
「履いてるかどうかスカートをまくってくれた方が良いけどなぁ」と男子が言うが、それには他の女子が「馬鹿言わないでよ」と反論した。
しかし、亜矢子が「じゃあ私が履かせてあげる」と言って、葉月の手からパンティをまた奪ってしまった。
そして亜矢子が、葉月の前にしゃがんでパンティを広げると、葉月を促して小さく足を上げさせて入れ、もう片方の足も入れると、亜矢子がスルスルッと葉月の太ももへパンティを上げていった。
男子たちは、亜矢子が葉月のスカートめくってくれるのではないかと期待したが、それは叶わなかった。
亜矢子の手は葉月のスカートの奥へと入れられ、そしてしばらくモソモソと動いた感じがしただけでスカートから手が出た。
男子たちからは、「あ~あ」という残念がる声が漏れた。
葉月はそれで少し安心したが、しかし、それは甘かった。
亜矢子がこう言ったからだ。
「じゃあ矢代さん、皆の前でスカートをまくって見せて」
「どうして!?」と思わず反抗してしまう。
いや、当然ではある。
しかし、当然というのは往々にして立場や状況で変わる。
「当たり前でしょう。下着が矢代さんの物だってことを証明しなくちゃいけないんだから、スカートをまくって見せて。パンツを一つしか履いてないってことだったら、それはパンツが矢代さんのパンツだったって証拠になるじゃない」
葉月は抗議しようとした。
すると亜矢子は携帯電話を手に持って見せて葉月に目で合図をした。
「早くまくって見せて」と今度は口で。
すると他の女子までもが、「そうよね。普通パンツを廊下の落とすなんてことないんだから、それがいいわ」とか、「本当に葉月さんの物だったことを見せてもらわないと」と言い出した。
亜矢子が何かしら葉月に対して仕掛けているのは明白だった。
個人的に恨みは無くても、優等生の葉月が恥をかくのは面白く感じたのだろう。
これに男子たちはスケベ心から乗って、「そーだ見せろよ」とはやし、「見せないと証拠にならないぞ」などと声をかける。
葉月は坪井がこの暴走を止めてくれることを期待したが、何故か坪井はことの成り行きを見守るだけで何もしようという素振りが見られなかった。
まさか、坪井も自分の恥ずかしい姿を見たいのではないかという疑念がよぎる。
ところが一瞬、葉月と目が合うと、坪井はそそくさと講習室を出て行ってしまった。
「矢代さん。せっかく私が下着を履かせてあげて何も履いてないアソコ見せことは無いようにしたんだから、せめて証拠ぐらい見せなさいよね。そうでしょう、みんな」
「そーだそーだ」
「そうよね」
葉月にしても、もしこれでまた下着を脱がされることがあって、それでスカートをまくるということになったとしたらと考え、スカートの生地を指先でソロソロと上げていった。
「矢代さんそれじゃよく見えないでしょう。ちゃんと端を持って上まで上げなきゃ」と亜矢子。
葉月は顔を伏せて背を前に曲げ、誰とも目が合わないようにしながら、スカートの裾を胸の高さまで上げた。
葉月はミニスカートでは無かったが、そこまですれば、さすがに下着が皆の前に晒された。
「これを本当に一枚しか履いてないんだぁ」と亜矢子が強調する。
クラスメイト達も何かを言ったようだったが、今の葉月には耳に入らない。
葉月は、「これで……いい………?」と、下を俯いたまま訊いた。
「いいわよ。でも……」と言葉を続けて葉月に近づいた。
「せっかくだからスカートをもっと短くしてみたらどう?」
それには葉月は「えっ? いや…」と答えた。
そんなやりとりをしてる時も亜矢子は講習室の前の方を、チラチラと見ていた。
次の授業が始まる時間を確かめていたのだ。
休憩時間が終わり、次の授業が始まる時間を。
ちょうどその時間になり、和田がドアを開けて入ってきた。
皆は一斉に散って席に着こうとする。
亜矢子は、「ほら、矢代さんも早く」と言って軽く葉月を突き飛ばした。
よろめいた葉月は、「あっ」と転んでしまった。
「ほら、早く席に着きなさい」と、和田は誰というではなく、皆に向けて言った。
これに慌てて葉月は自分の席に戻り、そして椅子の感触をヒンヤリと感じて気がついた。
───スカート履いてない!?
亜矢子の方を振り向くと、スカートは亜矢子の手の中に握られていた。
葉月は立ちあがって、亜矢子のところに行こうとしたが、その時にはすでに皆が座っていて、とても立ち上がれる状況で無くなっていたので、葉月はドキドキしながら座り続けるしかなかった。

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