黒水晶事務局

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年前

    〈 心強い?仲間達が大集合の巻・後編 〉
    「なに?。今の悲鳴は?」。ライラックが歩く足を止めた。
     ライラックは顔を左右に向けた。何処から聞こえてきた悲鳴か探そうとした。
    「今のは悲鳴だったな?」。ルドが確認のため聞いてくる。
    「あたしも聞きました」。チャームも答えた。
    「うわぁぁぁぁ!」。今度ははっきりと聞こえた。近くの空き家からだ。
     ライラック達は空き家に近づいた。
     ライラックとルドは、危険を避ける為、空き家の壁に身体をつけた。
    「やはり、正面から飛び込んだら、危険かも知れないな」
    「あなたもそう思う・・・」。ルドの言葉に、ライラックも同意する。
     ライラックとルドは壁に耳を当てて、中の様子を窺った。
    「何か聞こえるか?」。ルドが聞く。
    「しっ。静かに」。ライラックは中の音や声を聞こうと、耳に神経を集中した。
     ライラックの耳に、家の中から声が聞こえてきた。
     それは・・・、
    「ごめんくださーい。誰かいませんかー」。チャームの叫ぶ声だった。
    「あ、あのねー・・・」。ライラックとルドは思わず顔を見合わせた。
    「誰もいないんですかー?。入って行きますよー」    チャームはそう叫びながら、家の中にドンドンと入って行く。
    「ライラックの連れは、随分と度胸があるな」
     ルドは感心したようにライラックに言った。
    「単に怖い物知らずなだけよ」。ライラックは呆れたように答えた。
     少なくとも、チャームが歩いて行った所には、トラップは無いと言う事だ。
     ライラックとルドはチャームの後を追った。
     ライラック達が家の中に飛び込んだ時、奥の方から「あ、グリーンさん見っつけたぁ」とチャームの嬉しそうな声が聞こえてきた。
     それに続いて、「あれれ・・・。グリーンさん、魔物ともお知り合いだったんですか?」とチャームの突拍子もない声が聞こえてくる。
    『なに?。魔物も一緒にいるのか?』
     ライラックは腰の剣の柄を握り、直ぐにでも剣を抜く事が出来るように用意をして、チャームの声が聞こえてきていた部屋へと走り込んだ。
    「チャーム!」。ライラックはチャームの背中を確認すると、声を掛けた。
     見ると、正面に6本脚の昆虫のような姿の魔物がいた。
     その横にはグリーンが泣き顔で蹲っていた。
     ライラックはいかにしてグリーンを助け出すかと、頭の中の脳を回転させた。
    『どうする?』。ライラックが一瞬思った時、サァァァーッと彼女の側を何かが旋風のごとく通り過ぎた。
    「え?」。ライラックは今のは何だ?と言った顔になって、回りを見渡そうとした時、「もらったぁぁぁ!」とルドの大声が部屋中に響き渡った。
     ライラックはギョッとして声のした方向に急いで顔をむけた。
     見るとルドが腰の剣を抜いて、魔物に飛び掛かって行くところであった。
     ズバァァッ!。たちまちルドの剣が魔物の脚を切り落とした。
     ズシャッ。跳んだ脚が壁に当たって床に落ち、ザザザー、と砂に変わっていく。
    「がははは。見たか!。戦いは先手必勝だっ!」。ルドは剣を上げて叫んだ。
    『な、何なのよ?・・・この男は』
     ライラックは目を丸めて、キョトンと見つめてしまった。
    「オギャァァァ」。脚を切り落とされた魔物が、雄叫びを上げた。
    「まだ叫び声を上げる元気があるのか?」
     ズバアアッ。再びルドの剣が魔物の脚を切り落とした。
    「ウギュウゥゥゥ」。両脚の傷口からドス黒い体液を流しながら、魔物が叫ぶ。
    「どうだライラック見たか?。俺の剣の腕を!」
     魔物の声以上の大声で、ルドはライラックに向かって叫んだ。
    『なんなのよ?』。呆れた顔で見ていたライラックは、急にひきつった顔になった。
     魔物の切り取られた脚が、傷口から段々と再生していっているのを、目にしたのだ。
     とかげの尻尾やかにの手足のように・・・。
     再生した前足を振り上げると、ルドの背後に爪を振り下ろした。
    「伏せてっ!」。ライラックはルドに叫ぶ。
     ルドは「おわっ!」と大声を上げながら、飛び込むように床に伏せた。
     魔物の鋭い爪が音を上げて中を切った。
    「な、何で切り取った脚が元通りになっているんだぁ?」
     ルドの叫びを聞いたライラックは、「魔物を前にして、有頂天になってあたしの方を見ていたからよ。んとに・・・少しは今の状況を考えなさいよ」と、頭を抱えながら呟いた。
     直ぐに、魔物の側にいたグリーンの方に目を移す。
     グリーンはチャームに助けられて、ライラックの側に戻ってきた。
     ルドも這いずくばって、ライラックの所に戻ってきた。
    「グワオォォォォ」
     魔物は横にしている巨大な身体を持ち上げた。
     魔物の身体が、家の屋根を突き破って、家の外に出現する。
     ドドドドー。ズシュアズシュアズシュアー!。
     その衝撃で家が崩れだし始めた。
    「いけない!。直ぐに脱出するわよ」
     ライラックの言葉で、みんなは外に向かって懸命に走った。
    「あーん!。天井が崩れてくるぅ。当たると痛いよう」
     チャームも騒ぎながら走り続ける。
    「おわあああ!。俺はまだ死にたくないぞう!」。ルドが必死に走る。
    「わぁぁー。僕まだ裸のままなんだよう」
     ライラックに手を引かれているグリーンが訴えると、ライラックは「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ!。裸でいるくらい我慢しなさいっ!」と声を張り上げて答えた。
     ズドドドドドォォォォォー。
     音を立てて、家が崩れていった。
     ライラック達は、すんでの所で外に飛び出す事が出来た。
    「ぜえぜえぜえぜえ・・・。何とか間に合ったわ・・・」
     ライラックは肩で大きく息をしながら、他の3人の姿を確認していた。
     ホッとした気持ちになったライラックの頭上で、「グギャァァー」と魔物の叫び声が響いてきた。
     ハッとして頭上を見上げる。
     家を崩した魔物が、ライラック達を見下ろしていた。
     一瞬どうしようか?・・・と思ったライラックであったが、いつものように取り敢えずは、
     ライラックの生き残りの原則その1、『危ない時は36計逃げるが勝ち』にしたがって、
     この場所から逃げる事にした。
     ライラックの後を追って、チャームとルドが後に続いた。
     グリーンはまだライラックに手を引っぱられたままだ。
    「あーん。そんなに引っぱらないでよー。腕が抜けちゃうよー」
     グリーンの悲鳴に、「腕は2本有るんだから、1本ぐらい抜けても気にしないの!。男の子でしょう!」
     ライラックはむちゃくちゃな返答をして、グリーンを引っぱって走り続ける。
    「おーい。いったいどこまで逃げるつもりだ?」。ルドが走りながら聞いてきた。
    「そんな事、1番後ろから追い掛けて来る魔物に聞いてよ。どこまで追いかけて来るんだって」
     ルドは、ソッと後ろを眺めた。
     魔物が6本の脚を動かして迫って来る。
    「げっっっ!」。ルドは直ぐ側まで迫って来ている魔物を見て、真っ青になって走るスピードを上げた。
     うわぁ。きゃぁ。わわぁ。ぎゅあぁ。・・・。
     走ってくるライラック達の後から、巨大な魔物がついて来るのを目にした町の人達は、大騒ぎとなった。
     家の中に隠れようとする者、町から逃げようとする者、・・・。
     ライラック達を追って、町の中に入り込んだ巨大な魔物は、目の前の家を壊しだした。
     ガラガラガラ・・・。
    「ウグワオッ」。魔物は雄叫びを上げると、隣の家も破壊し出す。
     グワシャーン。ガラガラガラ・・・。
    「おい。俺達、魔物を町の中に招き入れちゃったかな?」
     町を破壊し始めた魔物を見て、ルドが首を傾げながらライラックに言った。
    「何を言っているのよ。あの魔物が勝手にあたし達を追い掛けて来て、この町の中に来たんじゃない。・・・絶対にあたし達に落ち度は無いんだから!」
     ライラックは暴れる魔物を睨みながら、はっきりと言った。
    「そうそう。あの暴れている魔物が一番悪いんです」
     チャームもライラックに賛成の意見を言う。
     そ、そうなのか?。と、何となく思うルドであった。
    「とにかく、あの魔物を倒して町を守るのよ!」。ライラックが無理矢理そう宣言をする。
     タタタタタ・・・。
     ライラックの回りに衛兵隊が集まってくる。
    「援護をして!。・・・やぁぁぁぁっ!」
     ライラックは言うと、剣を抜いて魔物に飛び掛かって行った。
    「氷刃!」。チャームは魔法書のページの1枚を魔物に向かって投げた。
     シュッッッッ!。ズバッ。ズババババッッッ。ズバァッ。
     魔法により、十数個の氷の刃になった刃物が、魔物の身体に突き刺さる。
    「ウギャァァァァー」
     ライラックに行っていた魔物の注意が、チャームの方に向いた。
     ライラックはその隙を見逃さずに、魔物の身体に取り付いた。
     ズバァァァ!。ライラックは魔物の身体に、剣を力一杯突き刺した。
     ビュシュゥゥゥゥ。深く突き刺した剣を抜く。ドス黒い体液が傷口から噴き出る。
    「たぁぁぁぁ!」。グサッ!。ライラックは再び剣を突き刺す。
     ビシュッ。剣を抜きさるとまた黒い体液が出て来る。
     魔物の顔が首を曲げてライラックを眺めている。
    『くっ!。効き目がないか?・・・ダメかっ?』
     魔物の身体から離れようとした時、びゅんっ!。と言う空気を切る音がして、魔物の尻尾がライラックを跳ね飛ばした。
     ビシィィィン!。
    「きゃっ」。ズシャッ。ライラックは、建っている家の壁に叩き付けられた。
    「うぐっ」。ライラックは新しい鎧を着ていたので、衝撃をかなり防ぐ事が出来た。もし着ていなかったら、大怪我をしていただろう。
     ライラックは剣を杖がわりにして立ち上がろうとした時、ガッ!。と魔物の前足がゴムのように伸びてきて、ライラックの首を握りしめた。
    「あぐっ!」
     回りにいたチャーム達も、魔物の前足がゴムのように伸びるなんて、考えもしなかったので、呆然と眺めていた。
    「魔物の前足が十数メートルも、ゴムのように伸びるなんて・・・」
     ルドがポツリと呟く。
     地面に蹲っている裸のグリーンは、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。・・・だがグリーンの手にはブラッド・オパールの入っている皮の袋がしっかりと握られていた。
     この皮の袋だけは、自分も気が付かない内に持って来てしまったようだ。
    「あっ。いけないっ!」。突然チャームが叫んだ。
     ライラックの首を握りしめていた魔物が、ゆっくりと立ちだしたのだ。
    「あ・・・ぐ・・・。ぐ、ぐ、く、る、し、い・・・」
     首吊りにあった状態のライラックは、全身から汗が噴き出してくる。
     ライラックの両足が地面から離れて、ライラックの身体は中吊りになった。
    「あーん・・・。どうしょう。どうしょう・・・。このままじゃ、ライラックさんが死んじゃう!」
     チャームは何かライラックを助ける魔法は無いかと、魔法書を急いでめくる。
     その時ルドが、「俺が助ける!」と言って、剣を抜いて魔物に向かって行った。
    「衛兵のみなさーん。ボオーッと見ていないで、支援をして下さい!」
     チャームは回りで見ている衛兵達に叫ぶ。
    「ゆ、弓矢で魔物を射るんだ!」。隊長が命令をする。
     ピュン、ピュン、ピュン・・・。
     ブスッ、ブスッ、ブスッ・・・。
     衛兵達の矢が、音を立てて魔物の身体に突き刺さる。
     魔物はいくら矢が当たっても、気に止めるような事がなかった。
    「あーん。これじゃ、あたしの氷刃攻撃の方がまだましです」
     泣きそうになっているチャームの耳に、魔物を切り裂く剣の音がしてくる。
     見ると、ルドが魔物の足下で剣を振り回している。
    「うおぉぉぉぉ!。この!。このっ!。このっ!」
     ズバァッ!。ズバァッ!。ズバァッ!。
     ルドの振り回す剣が、魔物の脚や身体を切り裂くが、直ぐに傷口が再生してしまうので、魔物にダメージを与える事が出来なかった。
    「くっ・・・。あ・・・あ、脚を・・・切るんだっ」
     ライラックは息苦しさの中で、声を振り絞ってルドに聞こえるように叫んだ。
    「うおぉぉぉぉ!。そうかぁぁぁ!。ライラック。今助けてやるからなっ!」
     バサッ。バサッ。バサーッ!。
     ルドはライラックからのアドバイスを聞いて、さっきより一層力を込めて剣を振り回し、魔物の脚を切り裂きだした。
     立っていた魔物は脚を切り裂かれて、バランスを崩して倒れそうになり、魔物は掴んでいたライラックの首を思わず放し、ライラックの身体は地面に落ちた。
     ドシャッ。「うーん・・・。げほげほげほ・・・」
     ライラックは自由になって息を整える。
     ライラックは手を首に持っていき、2,3回首筋をなでた後、力を振り絞って立ち上がり、槍を持っている衛兵の所に走り寄った。
    「槍を貸してっ」。槍を手に取ったライラックは、魔物の方に向き直って槍を構えた。
    「やぁぁっ!」。ライラックは手にした槍を、大きく開けた魔物の口めがけて投げた。
     ジュシャッ!。槍が口の奥に突き刺さり、槍先が魔物の首筋から突き出した
    「ウギャァッ!」。魔物は叫びを上げると、ドドドォーと地面に身体を俯せにして倒れた。
     ライラックは止めを刺そうと、魔物の背中に駆け上がると、魔物の頭目掛けて剣を振り上げた。
    「死ねっ!」。ライラックは叫ぶと、振り上げていた剣を一気に振り下ろした。
     その瞬間、バサァァァァッ!。と言う音と共に、「うわぁぁっ!」とライラックの身体が弾き飛ばされた。
    「ライラックさん、大丈夫ですかぁ?」。チャームが走り寄って来る。
    「なにっ?」。倒れた身体を起こしたライラックは、魔物の変化をした身体を目にした。
     魔物の背中から巨大な羽根が現れたのだ。
     羽根は4枚ある。トンボの羽根を巨大にしたような形だ。
     ライラックは剣を握り直して構える。
     ルドも剣を構えている。
     チャームはライラックの背後に隠れている。
     夜空に浮かんでいる2つの月の光を受けた魔物は、ライラックをギロリと睨むと、巨大な羽根を動かし出した。
     ブゥゥゥーンと言う音と共に、土煙が舞い上がった。
    「うっ!」。土煙が一瞬、ライラックの視界を塞いだ。
     だが、魔物が高速でライラックの方向に突っ込んで来るのが、瞬間的にわかった。
    「あぶないっ」。ライラックは背後にいるチャーム共々地面に伏せた。直ぐ頭上を魔物の羽根音と共に、ゴォォォォーと言う、魔物が通り過ぎて行った空気の速い流れが、ライラックとチャームの身体を包み込んだ。
     ガバッ。地面に伏せていたライラックは、急いで身体を起こして、夜空に飛んで行った魔物の後を目で追った。
     ライラックは夜空を見渡したが、もう魔物の姿は何処にも見あたらなかった。
    「何処に行った?」
    「見あたらないぞ!」
     ライラックの他に回りにいた人達も、夜空に消えた魔物を捜すように、夜空を見上げ続けていた。
     回りの人達と一緒に夜空を見上げていたグリーンは、みんなの注意が魔物の去った方向に向いている事に気が付いた。
    「そうだ。誰も僕の事に気が付いていないぞ。今の内にここから逃げ出そう」
     グリーンは裸になっている事にはお構いなしに、ライラック達のいるこの場所から、一刻も早く逃げ出しにかかった。
     どうせ新しい服なんか、直ぐに手に入ると思っていた。
     なぜなら、グリーンは盗賊を仕事としているので、普通の服ぐらい何処からでも手に入れる事が出来た。それに彼の手にはブラッド・オパールが入った皮の袋が握られていた。
    『それじゃ、さよなら。オパールはしっかりと貰って行くからね。・・・早いところ町のどこかに隠れよ。・・・ほとぼりが冷めた頃どこか他の土地でこれを売っぱっらってしまえばいいや。・・・くくく、きっと良い値段で売れる事まちがいなしだ』。と心の中で呟いたグリーンは、逃げようと身体を動かした時、自分の身体に今まで経験のした事がない違和感があるのを感じた。
    「???・・・???」。グリーンにはそれが何であるのかは、ちょっと分からなかった。
     グリーンは視線を落として、自分の身体を見てみた。
     いつも見慣れている自分の胸部と腹部とその下半身が目に映っている。
     別にこれと言って変わったところは・・・。
     ん?。ちょっと左右の胸の部分が、腫れているように膨れてはいるが・・・。
     腰の辺りがキュッと締まったような?。
     股間の所だって、いつもの通りに・・・お毛毛に囲まれた、僕のオチンチンが付いて・・・?。
    「ん?。・・・いっ!!!。・・・あ、う、あ・・・う。・・・あ、あああ、うっそぉぉぉぉっ!!!!!!」
     グリーンは自分の股間を凝視した時、信じられないと言った思いで、思わず大きな悲鳴を上げてしまった。
    「どうぉぉぉしてぇぇぇー?。ないよぉ!。ないよぉ!。ぼ、ぼ、僕のオチンチンが無くなっているようぉ!」
     グリーンは叫びながら、股間の辺りに手を懸命に動かしていた。
     本来なら、その場所にしっかりと生えて付いているグリーンのペニスが、今の股間には消えたように無くなっていて、代わりに上から下へと、股間の間を小さな裂け目が出来ていた。ヴァギナだ。
     真っ青な表情になったグリーンは、ヘナヘナと力が抜けて、その場所に座り込んでしまった。
    「うわぁぁぁん!。ぼ、ぼ、・・・僕は女の子になっちゃったよぉ!」
     ライラック達は、一斉に悲鳴を上げたグリーンの姿を見た。
    「え?、ええー?」。と同時に、驚きの声が上がった。
    「グリーン・・・あなたは・・・本当は女の子だったんじゃなかったの?」
     グリーンに近づいたライラックが、信じられないと言った風に聞いた。
    「ち、違うよぉ。・・・僕は生まれた時から、ずっと男だよぉ!。・・・あーん。どうしょう・・・僕、女の子の身体になっちゃったぁ!」 
     グリーンはそう大声で叫ぶと、わあわあと泣き出した。
     ライラックはグリーンが泣いている姿を見下ろしながら、どうして女性の姿になってしまったのか、不思議でならなかった。
    『本来の姿が、別の物に変化してしまう原因は・・・薬で?・・・手術で?・・・魔法で?・・・魔法に掛けられて?』
     ライラックは「はっ!」と気が付くと、チャームに話し掛けた。
    「ね、チャーム。グリーンはもしかすると、先程の魔物に女の身体になる魔法を、掛けられたんじゃないかしら?」
     すると、魔法書を手にしているチャームが答えた。
    「ライラックさん、その考え半分だけ、ピンポーン、です。・・・でもあの魔物が魔法を掛けた形跡は、ありませんね」
    「何よ。その半分だけって?。・・・」
     チャームの答えに、ライラックは怪訝な顔をした。
    「それじゃ、グリーンに魔法を掛けた人物は、他に誰かいたかしら?・・・」
     ライラックがそこまで言った時、「まさか?」とチャームの顔を見た。
    「チャーム。あなたがグリーンに、女性になるような魔法を掛けたの?」
    「残念ですけど、その答えは、ブゥー、です。あたしはグリーンさんに、傷が早く完治する魔法しか掛けていませんよ」
     チャームはニコニコとした笑顔で答える。
    「ああ。グリーンが国境の近くの村で村人から付けられた傷を、あたしが治療した時に、チャームに頼んでグリーンに掛けてもらった魔法ね。・・・確かにあの魔法は効果があったわ。朝には傷口が治っていたんだから。・・・それではどうして?」
     ライラックは不思議に思って首を傾げた。
    「はい。あの魔法はとっても効果がありました。・・・が・・・」
     チャームの口から出てくる言葉を聞いていたライラックは、最後の『が』の一言に、とっても不安になり聞き返した。
    「チャ、チャーム・・・何よその最後の、が、って?」
    「いえいえ、大した事ではないのですよ。ライラックさん。・・・ただあの魔法を掛けると、ちょっとした副作用があると言う事が、さっき魔法書を読み返してみたら、書いてあったんです。もしかすると、それが原因かな・・・と思いまして」
     ライラックはチャームの話を聞いていて、またあなたなの?、と言いたげに頭を抱えた。
    「副作用って?」。ライラックの問い掛けに、チャームは、
    「ズバリ、あの魔法を掛けられた人は、副作用で身体が男女逆になると言う変化なんですよ。男性ならば女性の身体になってしまい、女性ならば男性の身体になるという風に・・・。ね、大した事ではないでしょ?」
    「あのねぇー・・・。それって十分大変な事だと思うわよ」
     微笑みの表情ひとつ変える事無く、平然と言ってのけるチャームに、ライラックは額を押さえながら呻くように答えるのであった。
    「でもね、でもね、もしライラックさんが大怪我をしたら、グリーンさんに掛けた魔法を使って、傷を治して上げますからね。」
    「ははは。・・・大怪我をしないように十分に気を付ける事にするわ」
    「ライラックさん、何もそんなに遠慮する事はないんですよ。水くさいですよ。それにこの魔法、少なくとも効果がある事が分かったんですから」
    「・・・ちょっと待てっ。・・・効果がある事が分かったって、・・・その魔法は今まで使った事がなかったの?。」
     ライラックは驚いて早口で聞き返した。
    「ライラックさん・・・だって、今まで使う機会が無かったではありませんか。・・・でもこれで心配しないで大怪我をして下さいね。ちゃんと魔法で治して上げますからね」
    『いやだ!。この年齢になってから・・・今頃になってから、男性の身体になんかには、変わりたくはないわよ』
     ライラックは冗談じゃないと、きっぱりと拒否する気持ちを固めた。
    「とにかくそんな事よりも、グリーンの身体はどうなるの?。元には戻せるんでしょ?」
     ライラックは話題をグリーンの事に戻すと、チャームに聞いた。
    「あーん。チャーム、僕の身体を元に戻してよぉぉぉー」
     グリーンは泣きながらチャームの足下にしがみついた。
     チャームは手にしている魔法書を開くと、中の文字を読み始めた。
     ライラックは読んでいるチャームにそっと近づいて、読んでいる魔法書の中を覗き見てみた。
    「えっ?」。魔法書のページが真っ白で、何も文字が書かれていない、見えない。
     チャームは驚いているライラックに気が付くと、説明をした。
    「この魔法書に書かれている文字は、持ち主であるあたし以外読む事が出来ないように、魔法が掛けてあるんですよ」
    「ふーん」と、ライラックはちょっとガッカリする。ハーフエルフの魔道士がどのような魔法文字を使っているか、見てみたいと思っていたからだ。もちろんライラックには、その文字を読むことは出来ないのだけれども・・・。
    「グリーンさん、わかりましたよ」。チャームが開いていた魔法書をパタンと閉じた。
    「グリーンさんが女性の身体になっているのは、『日没から日の出までの夜の間だけ』で、『日の出から日没までの昼間は』本来の男性の姿に戻る事が出来るようですよ。よかったでしたね」
    「それの何処がよかったんだよ!。僕は完全に男の身体に戻るの?。戻らないの?」
     グリーンは顔を青くして叫んだ。
    「ズバリ、今は戻りませーん!。グリーンさんに掛かった副作用を消滅させる為の魔法を使うレベルまで、私の能力が達していませんので、あきらめて下さーい」
     チャームはケロッとした表情で、グリーンを地獄に落とすような宣告を告げ続ける。
    「でもグリーンさん、何も悲観する事はありませんよ。・・・一度の人生で男と女の2つの身体を経験できるなんて、そんな人間はいませんよ。・・・それに『1人Hをする』時も、『相手の異性とHをする』時も、グリーンさんは『男と女の両方のタイプで体験』出来るんですよ。どうです夢のようでしょう?」
     チャームが、グリーンへの慰めのつもりで言っている言葉を聞いていたライラックは、『その言葉は、絶対に慰めにはなっていないぞ。』と思っていた。
     その証拠に、グリーンは驚きと失望感で、口をポカンと開けたままでいたのであった。
     流石にチャームもちょっとマズイかなと思ったのか、「グリーンさん、そう心配しないで下さい。その内レベルアップをして、その魔法を消滅させて上げますから。・・・1年先か・・・10年先か・・・あ、もしかすると50年先かもぉ」と笑顔で言った。
    『あ。チャームのバカ!。そんな事を言ったら、余計不安になるだけじゃないの・・・』
     ライラックは心の中で叫び声を上げて、頭を再び抱え込んだ。
    「そんなのイヤだぁぁぁぁぁー!」
     ライラックの心配通り、グリーンは火のような鳴き声を上げだした。
    「やだぁ、やだぁ、やだぁ、やだよぉー!」
     ライラック達は、暫くの間、グリーンが泣き叫ぶままにしていた。
     その内、隣にいたルドの肘がライラックの腕を小突いた。
     ライラックはルドの方に顔を向けた。 
    「こういう状態ですまないけどもよ。やっぱし盗賊のこの子を、逮捕しないとならないと思うんだけども。・・・」
     ルドが小声でライラックに語りかけた。
    「う~ん・・・」。グリーンをかわいそうに思っているライラックは、隣にいるルドに「どうしても?」、と言った顔をむけた。
     ルドは、「厳しいようだが、公爵の持ち物を盗んだんだ、見逃す訳にはいかないだろう」と冷たい口調で言った。
    「う~ん・・・」。ライラックは小さな声で唸った。
     ライラック達の前で、グリーンはわあわあと泣き続けていた。
     グリーンの泣き声は、今は公爵の館の中から聞こえてきている。
     罪人として、両手を後ろにロープで縛られているグリーンは、町の中ではわあわあと泣いていたが、フォレックス公爵の前に引き立てられて来たここでは、すっかりと大人しくなって、ただシクシクと静かに涙を流しているだけだった。
     少女のように可愛い顔に、全裸の姿で縛られている、この14歳の女の子が、男だとは公爵には信じられなかった。
     小さく盛り上がった左右の乳房。恥丘に薄く生え始めている緑色の陰毛。・・・髪の毛とやはり同じ色だ。ピッタリと1本の線のように閉じたヴァギナの口。・・・女の子に変身した今のグリーンのヴァギナは、まだ処女のままだろう。
     豪華な椅子に座っているフォレックス公爵は、「さて、盗賊のグリーンへの刑罰であるが・・・」と、ゆっくりと話し始めた。
     グリーンを見ていた皆の視線が、公爵の方に集中した。
     ライラックも、公爵の顔に視線を向けた。
     つられて、泣いていて目を赤くしたグリーンも、公爵の顔を見上げゴクリと唾を飲んだ。
     公爵は、グリーンの顔を見ながら、刑罰を言い渡した。
    「盗賊グリーン。お前はこの土地の領主である私の持ち物の「ブラッド・オパール」を盗み出した罪は重罪なり。よって「死刑」を言い渡す」
     公爵の冷たい口調の宣告と同時に、グリーンの「えぇぇぇぇっ」と言った驚きの悲鳴が上がった。
    「なお、刑の執行方法であるが・・・」
     公爵はそこまで言うと、秘書役のメイドの女性に目線で合図を送った。
     秘書役のメイドは「はい」と頷いて、手に持っている紙を広げると、書かれている文章を読み出した。
    「死刑の前に、罪人グリーンに対して、鞭打ちの刑を3日間おこなう。昼間は男のグリーンに対して、夜は女のグリーンに対して・・・それぞれ百回おこなう」
    「それじゃ・・・1日二百回も鞭で打たれるの?」。グリーンが声を上げた。
     秘書役のメイドの読み上げは、まだ続く。
    「刑の執行4日目は、罪人グリーンの両腕を、肩の所からノコギリを持って切り落とす」
    「ええー!」。驚くグリーン。
     秘書役のメイドの読み上げは、まだまだ続く。
    「刑の執行5日目は、罪人グリーンの両足を、太股の所からノコギリを持って切り落とす」
    「い、いやだぁー」。グリーンの顔がみるみる青くなっていく。
     秘書役のメイドの読み上げは、まだまだまだ続く。
    「刑の執行6日目は、罪人グリーンに対して、昼間は男のグリーンに対して、男根と睾丸の切断除去をおこない、夜は女グリーンに対して、左右の乳房の切り取りと、ヴァギナとクリトリスの切り取りと、肛門を抉り取る事をおこなう」
    「げ、げげーっ」。グリーンの両目から、枯れていたと思われた涙が、また流れ出した。しつこい用だが、秘書役のメイドの読み上げは、まだまだまだまだ続く。
    「刑の執行7日目は、罪人グリーンの腹を割いて、内蔵を全て引きずり出す」
    「ゆ、ゆるして・・・ごめんなさい・・・」。グリーンの顔が涙でグチャグチャになる。それでも秘書役のメイドの読み上げは、なおも続く。
    「刑の執行8日目は、罪人グリーンの両目を抉り出し、両耳と舌を切り取る」
    「もう・・・もう・・・も、も・・・」。グリーンはただ口をパクパクと、動かしているだけだった。
     くどいようだが、秘書役のメイドの読み上げは、なおもなおも続く。
    「刑の執行9日目は、罪人グリーンの身体を、先の尖った鉄の杭を使って、肛門のあった穴から口に掛けて櫛刺しにして、町の広場でさらし者の刑にする」
     グリーンはただただ呆然とした表情になっている。
     秘書役のメイドの読み上げも、最後の方になってきた。
    「刑の執行10日目は、櫛刺しにした罪人グリーンが、まだ息をして生きていたら、生きたまま火あぶりの刑をおこなう・・・以上です」
     秘書役のメイドは顔色ひとつ変える事無く、文章を全て読み上げてしまった。
     かわいそうにグリーンは腰を抜かして、その場所にペタンと座り込んでしまっていた。
     部屋の中にいるライラック達も、水を打ったように静かになってしまっていた。
     ライラックも、どうしたらよいか、わからなくなっていた。
     それでも、傍らにいるルドに「これじゃ死刑じゃなくて、子供のなぶり殺しと同じよ」と、ポツリと呟いた。
    「何とかして、グリーンを助けられないかしら・・・?」
     ライラックは何とか救う道はないかと考えを巡らした。
     だが、公爵は「グリーン、直ぐに死なないで、刑を受けて苦しんでいるお前の姿を、長く見せて、私を楽しませてくれよ」と言うと、手を挙げて衛兵に合図を送った。
     2人の衛兵が入って来て、座り込んでいるグリーンの肩に手を掛けた。
     館の地下牢に連れて行く為にだ。
     その瞬間、人形のように白い顔で静かに座り込んでいたグリーンが、突然壊れたサイレンのように、わあーわあーと声を上げて泣きだした。
     しかも座りこんでいる床に、失禁の小便を漏らしてしまっていた。
    「公爵さまー、まだ死にたくないよー!。どうか助けて下さい。お願いします!」
     グリーンは泣きながら公爵の足下まで張って行くと、床に額を付けて命乞いをしていた。いくら日頃から強がりを言っていたとしても、グリーンは所詮は14歳の子供である。
     自分の身に突き付けられた、現実味となった死の恐怖には、どうしても勝てるはずがなかった。
    「助けて下さい。助けて下さい。助けて下さい・・・」
     グリーンは、繰り返し許しを求める哀願を、言い続けていた。
     グリーンの尿道の筋肉が恐怖で緩んでしまったのか、股間からはタラタラと小便の液が床に垂れ続けている。
     見ていたライラックは流石にいたたまれなくなって、グリーンを助けようと、公爵の方へ行こうとした時、ルドがライラックの行動を止めた。
    「なぜ止めるの?。いくら公爵と言えども、あんな子供をいたぶって、何がおもしろいのよ!」。ライラックはそう言って、ルドの顔を睨んだ。
    「公爵は、グリーンをいたぶって楽しんでいる訳じゃないのさ。グリーンに躾をしてやっているのさ。ま、見ていな」
     ルドはそう言うと、顎で公爵の方を見ろと、合図をした。
     ライラックは示された方向に目を移した。
     公爵が身体を屈めて、床に這い蹲っているグリーンに何かを話していた。
    「グリーン、それほど言うのならば、お前の死刑を停止してやってもいいぞ」
     公爵の言葉に、グリーンは目を輝かせて顔を上げた。
    「ほ、本当ですか?。公爵様!」
    「ああ。その代わり・・・」。公爵は目で、秘書のメイドに合図を送った。
     秘書のメイドは、ケースの中から「隷属の首輪」を取りだして見せた。
     その首輪を填めるのが、死刑の停止の条件のようだ。
     グリーンは、まさに藁にもすがる思いで叫んだ。
    「公爵様。どうかその首輪を僕の首に填めて下さい。お願いします!」
     フォレックス公爵は呪文を唱えると、グリーンの首に、光が輝いたかと思うと、隷属の首輪がしっかりと填められていた。
     フォレックス公爵は「ふっ」と笑ってイスから立ち上がると、足下で座り込んでいるグリーンに言った。
    「グリーン。お前の小便で汚した床を、舌で舐めて綺麗にしておくんだぞ」
    「は、はい」。今は少女の姿になっているグリーンは、床に舌を這わせると、小便水で出来た溜まりを目をつぶって、ペロペロと舐めだした。
     しかしその表情は、先程の恐怖に支配された顔とは違い、ホッとした安堵感のある顔になっていた。
     グリーンが床を舐めているのを見ていた公爵は、ライラックの所に近づいて来て、
    「あのグリーンを、ライラックのパーティーに加えたら、役に立つかも知れないぞ」と告げると、笑いながら、部屋を出て行った。
     その後を、メイドの少女達が付いて行った。「公爵は、始めっからグリーンを死刑にするつもりはなかったのさ。自分から首輪を填めるように仕向けていたのさ。・・・グリーンもあの首輪を填めれば、もう盗賊のような、悪い事は出来なくなるからね」
     ルドの言葉を聞いたライラックは、改めて床を舐め続けているグリーンを見て、感心したようにポツリと呟いた。
    「フォレックス公爵は・・・そこまで・・・考えていたの?・・・」
     だが突然、そんなライラックの気持ちを打ち崩すようなルドの言葉が、ライラックの耳に飛び込んで来た。
    「親方の許可が出たら、ライラックと一緒に、ブラッド・オパール探しに参加してやるよ。その時はまたよろしく頼むな」
     ルドはライラックの肩をポンと叩くと、笑いながら部屋から出て行った。
    「え・・・?。ちょっと・・・。そんな・・・。いざと言う時あまり期待出来ないハーフエルフの魔道士に・・・剣の腕は一流だけども、それ以上に指のテクニックが超一流なイヤラシイ猪突猛進剣士に・・・はっきり言って半人前の盗賊少年・・・こんなパーティーメンバーでどうしろと言うのよぉ・・・」
     ライラックはメンバー達の事を指を折りながら考えた時、目の前が暗くなり、全身から力が抜けていって、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
     そしてライラックは、「もうイヤっ!」と泣きながら叫んだ。
     その頃自分の部屋に戻ってきた公爵は、秘書役のメイドから聞かれていた。
    「公爵様。グリーンに使う予定だった、拷問用と死刑用の器具と、広場にさらし者にする時に出すおふれ書を用意していましたが、どういたしますか?。もう使う事はありませんね?」
    「・・・そうだなぁ。・・・せっかく人間の子供のグリーンを拷問に掛けて、苦しむところの楽しい光景を、見る事が出来ると思っていたんだが・・・、ライラック達の見ている前で、突然グリーンが命乞いを始めたからなぁ・・・。助けないわけにはいかなくなっちゃったよ。あれは予想外だったな・・・。ま、しかたがないか・・・」
     公爵が溜め息混じりに呟くのを、聞いていた秘書役のメイドは、「楽しい光景を見る事が出来なくなって、それは残念でございましたね。・・・」と言うと、クスッと小さく微笑んだが、直ぐに真顔になって「ライラック殿のパーティーに、あの2人を加えられたようですが、ブラッド・オパール探しは大丈夫なんでしょうか?」と心配になって聞いた。
     するとフォレックス公爵は、秘書役のメイドの顔に自分の顔を近づけると、
    「ニーナ、君はどう思うかね?。・・・私はブラッド・オパール探しが失敗する方に、『一枚の銀貨』を賭けようと思うが・・・」と彼女以上の真顔でそっと囁いた。
    「は?・・・。公爵さまぁ・・・。あのねぇ・・・」
     秘書役のメイドのニーナは、何を考えているんですか?、と言いたげに頭を抱えた。
     そんないろんな人々がいるこの館を、包んでいた夜の帳が薄らいでくる。・・・もうじき山の陰から、朝日が顔を出すことだろう。
    ----------------------------------------
    「ひぎゃっ!。・・・も、もうゆるして・・・もうやめてぇ」
     太陽の光がいっさい射さない地下深くに造られたこの中は、薄暗さとジメジメとした湿気だけが、この場所を支配していた。
     ここは北方にある、ある王国の王宮内の地下の拷問部屋である。
     普通の人なら、直ぐに息が詰まりそうになるこの場所で、今日も若い女性の悲鳴がこだましていた。
     悲鳴を上げている主は、この王宮の住人であった若い王妃である。
     王妃は両脚を大きく左右に開いた状態で、身体に巻き付いた鎖によって、中吊りにされていた。
     王妃のヴァギナを隠していた陰毛は、全て剃毛をされていて、貞操なヴァギナも慎ましいクリトリスも、全て露わにされてしまっていた。
     両手は背中に回せられて、鉄の枷を填められている。開かれた足首にも、鉄の枷が填められていた。首にも、鉄の首輪がガッチリと填められている。
     そして、以前は綺麗に輝いていたであろう純白の着ているドレスは、全体的に黒く汚れ、あちこちには鮮血が付着していた。
     そればかりか、王妃の身体を包んでいるドレスは、今や多くの部分が引き破られ、乳房やヴァギナの所が露わになっていた。もはやドレスとは言えないただのボロ布の残りが、王妃の体に巻き付いていると言った方が良かった。
     その中吊りにされている王妃の前には、頭から黒いフード付きのマントを被った、謎の魔女が立っていた。王室占い師として、この王宮に入り込んで来たこの魔女は、強力な魔法を使って、かつての主であった国王や抵抗をした人々を、尽く死へと追いやり、今では王宮ばかりか、平和であったこの国をも、残酷な恐怖で支配していた。
     ブシュッ!。「ぎゃっ!」
     魔女の持っている太い針が、王妃の大きく開かれたラビアを貫き通した。
     そして針が抜き取られ、素早く小さなリングが、鮮血を吹き出している針の穴に通される。ラビアから流れ出た鮮血は、黒く汚れたボロ布のようなドレスに、ドス黒い染みを着けた。「オーホホホホホ・・・。ラビアのこんな所に、リングを6個も着けている王妃なんて、世界広しと言えども、お前ぐらいだろうね。オホホホホホ・・・」
     魔女は、左右のラビアに取り付けた計6個のリングを、下から上へとなぞってみせた。
    「あうっ。い、痛いっ。・・・や、やめてっ」
     リングが動く度に、開けたばかりの傷口から痛みが伝わって、痛さで王妃は身体を仰け反らせていた。
    「ここは包皮を切り取った後にしようと思ったけれども、ついでだから、ここにもリングを着けてあげるわ。王妃様。ホホホホホ・・・」
     魔女はそう言うと、王妃のクリトリスの先端に、指を這わせ出した。
     ニュグ、ニュグ、ニュグ・・・。
    「ひゃっ・・・。い、いあやぁ。あう、あ・・・。あ、う」
     ニュギュ、ニュギュ、ニュギュ、ニュギュ・・・。
    「はぎゃ、は、うや・・・はんあん・・・」
     王妃の身体が、魔女のクリトリスへの刺激に反応を起こし始めた時、魔女の瞳が冷たく光った。
     ニュグ、ニュグ、ニュグ、ニュグ、ニュグ。
    「ひゃ、あああ、ああぁぁぁぁ。あう、あ、う、・・・あぅぅぅぅぅ・・・」
     ブチュゥゥゥゥゥ。
     太く鋭い針先が、王妃のクリトリスの先端を、左右に貫き通した。
    「うっぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
     全身を覆っていた快感が、突然激痛に変わり、王妃は身体を痙攣させながら、気を失ってしまった。
    「この程度の痛さで一々気を失っているなんて、この王妃には、まだまだ厳しい躾が必要ね。」
     魔女は、王妃のクリトリスにリングの輪を通しながら呟いた。
     ガチャ。・・・ギギギー。
     拷問部屋の重い扉が開いて、数人の人間の男の姿をした魔物達が、王妃の幼い双子の王子と王女を、連れて入って来た。
     この魔物の男達は、魔女の強力な魔法によって作り出された、魔女の手下達であり私兵達でもあった。
     連れて来られた王子と王女の双子の兄妹は、首に填めた首輪以外、一切の衣服を剥ぎ取られた全裸姿で、お互い身体を寄せ合ってガタガタと震えていた。
     しかも首輪から伸びた鎖のリードを、魔物の男の手がしっかりと握っているので、何処にも逃げる事が出来なかった。
    「いらっしゃい、王子様に王女様。・・・気を失ってしまったお前達のお母様の代わりに、お前達の身体を使って楽しませてもらうからね。・・・オーホホホホホ・・・」
     魔女はそう言うと、魔物の男が差し出した鞭を受け取ると、身体を小さくさせて脅えている幼い兄妹に近づいて行った。

     こんにちは。九尾きつねです。
     ブレーク・パーティー、第4話をお届けしました。
     いかがでしたでしょうか?。
     今回ライラックのパーティーに、新たにルドとグリーンが加わる事になり、いよいよもって、ライラック達のブラッド・オパール探しの冒険が始まる事となりました。
     チャーム、ルド、グリーンを率いて、ライラックがどのような活躍を見せてくれるのか?。
     それにこの3人が、ライラックの良きパートナーとなるのか、それとも単なる足の引っぱるお邪魔虫の存在になっていくのか?。・・・どちらにせよ、ライラックの気苦労はまだまだ続きそうですが・・・(笑)。
     その上、フォレックス公爵は本当にブラッド・オパールを集める気があるのか?、と疑いたくなる言動をするし(笑)。
     ゲテークや謎の魔女とが、ブラッド・オパールとどのように関わっていくのか?。
     まだまだ謎を包んだ物語が続いていきますので、今後もライラック達への応援を、よろしくお願いいたします。
     それでは次回の作品で、またお会いいたしましょう。
    (・・・って、あまり物語のフィールドを広げると、整理するのに苦労しそうだな。・笑)

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年前

    〈 心強い?仲間達が大集合の巻・前編 〉
     バサッ!。
     檻を覆っているシートが捲り上げられ、檻の外側に1人の男の顔が現れた。
     手には食べ物の入った食器が握られていた。
    「ほらよ、今日の分の餌だぞ」
     ガチャ。男はそう言いながら、ライラックの入れられている檻の扉を開けると、手に持っている食器をライラックの前に置いた。
     檻の中のライラックは、一糸まとわぬ全裸の姿にさせられ、両手は後ろ手に枷によって拘束されていた。
     また、両足首にも鎖でつながった足枷を填められていた。
     入れられている檻は縦横1メートル四方の大きさしかないので、中のライラックは一日中そして寝る時も、身体と足を折り曲げた息苦しい姿勢でいなければならなかった。
     この苦痛を心身に与える姿勢は、檻の中にいる者の反抗心を、完全に奪い取っていくのである。
     しかし、ライラックはこのような檻の中に入れられて、すでに半月位たっているが、ライラックの心の中には、屈服すると言う気持ちは一切無かった。
    「相も変わらず、くさい臭いの小便と糞だな」
     男は檻の隅にある、ライラックの排泄した大小便が入っている容器を、檻の外に取り出した。
     この容器は、昨日の朝に食べた餌を入れていた容器である。
     ライラック達に与えられる餌を入れた容器は、食べ終わったらそのままライラック達が排泄をする、大小便を入れる便器になるのである。
     最初このような扱いを受ける事に、怒りを覚えていたが、とにかく今は生き延びていく為に、屈辱的な扱いにも堪えていこうと思っていた。
     だから犬のように容器の中に顔を入れて、餌を食べる事もしている。
     また、空の容器の中に大小便をこぼさずにする事も、出来るようになった。
     だが初めのうちは、1メートル四方の檻の中で、後ろ手に拘束され、足首には肩幅程度の長さの鎖の付いた足枷を填められた姿では、容器の上に上手く身体をしゃがませられなくて、容器の中に大小便を排泄する事がなかなか出来なかった。
     よく回りにこぼしてしまい、そのつど男に屈辱的な事を、言われ続けたのであった。
     それにこの容器は、あまり綺麗に洗っていないようで、餌を食べる時に顔を近づけると、プーンと大小便の臭いがしてくるのである。
     もちろんこの臭いがライラック自身の排泄した物とは限らないのだ。
     それよりも別の檻に入れられている、女奴隷達の出した臭いの可能性の方が高かった。
    「大きな1本糞と・・・色のない小便水か。・・・よしよし、病気はしていないようだな」男は鼻をつまみながら、容器の中を観察するように眺め、ライラックに聞こえるように言った。
    「それに最近は、小便や糞を容器からまき散らさずに出来るようになってきたようだな。檻の床が濡れていないから」
     ライラックは男の話す言葉を、顔を赤らめながら聞いていた。
     この狭い檻の中では、何処にも逃げていく場所はない。
     両手は後ろ手に拘束されているので、声を聞かないように耳を塞ぎたくても、それも出来ない。
     男に反論したくても、口枷が噛まされているので、声を立てる事もできない。
     ライラックは、男の卑猥なそしてライラックを屈辱する言葉を、怒りでブルブルと震えながら聞いていることしかできなかった。
     睨み付けているライラックの目には、涙がこみ上げてきていた。
     しかし男はそんな事は気にもしないで、更なる屈辱の姿になることを、ライラックに命令をした。
    「おいライラック。尻とオマンコを、俺の方に見えるように向けるんだ。・・・いつものように、手が使えないお前に代わって、俺が代わりに大小便をして汚れている尻とオマンコを拭いてやるから。へへへへ・・・」
     男のゴツゴツとした手が、薄汚れた布を取り出し、向けられたライラックの排泄器官の出口を、ネチネチとした動きで拭きだした。
     ヌチャ、ヌチャ、ヌチャ。
    「うぐっ」。ライラックは、恥ずかしさで目をつぶり、噛まされているボールギャグを強く噛んだ。
     ライラックは、他人には見せたくない自分の排泄器官の場所を、誰とも知らない男の手によって、綺麗に拭かれているとはいっても、それは屈辱の何者でもなかった。
     ニュチュ、ニュチュ、ニュチュ・・・。
     布を持つ男の指が、ライラックの尿道口や肛門の周辺を、イヤらしく撫で回す。
    「ひぐっ」。ライラックは低く声を飲み込むと、身体をヒクヒクと震わせた。
     ネチュ、ネチュ、ネチュ、ネチュ、ネチュ。
    「おいライラック。オマンコに付いていた小便の残りカスを拭いてやっているのに、オマンコの中から、トロトロとした液が流れ出て来ているが、これは何だ?。・・・ははは。お前の小便は、ネトーとしていて糸を引いているのか。・・・ははは・・・」
     男が笑いながら言った言葉を聞いたライラックは、恥ずかしさで開いていた両脚を閉じようとした。
     パシーン!。「ひぐっ!」。
     突然、男の平手がライラックの尻を強くひっぱたき、ライラックは口枷の奥から低い悲鳴を上げた。
    「こらっ!。誰が脚を閉じろと言った。命令されていない事をするな!」
     ビシッ!。男の平手が、ライラックのヴァギナを強く叩いた。
    「ふぎっ!」。ライラックは小さな悲鳴を上げると、恥ずかしさと痛さで目に涙を溜めて、身体をフルフルと小刻みに震わせた。そして脚を開き続けた。
     男はニヤッとすると、自分の3本の指を、ライラックのヴァギナの中に入れてきた。
    「うぐっ!」。ライラックの口から苦痛の呻きが出た。
    「いくらライラックでも、オマンコに3本の指を入れたら、やはりキツイか。・・・へへへ・・・、てっきり3本の指でも、お前のオマンコはもうユルユルかと思っていたよ」
     ヴァギナの口に指を3本も入れられて、もうこれ以上は裂けるんじゃないかと思われるくらい広げられた痛さで、顔を歪めているライラックを男は笑いながら眺めていた。
    「うぐぐぐぐぅぅぅ」。ライラックは、口に填められているボールギャグを強く噛んだ。
    「ライラック、随分と辛そうだな。・・・それじゃ、楽にさせてやるか。くくく・・・」
     男はそう言うと、ヴァギナの中に挿入している3本の指を、動かし始めた。
     ズニュ!。「ぐあぅっ!」。ヴァギナからの痛さが、ライラックの身体中の神経を切り刻む。
    「ぐふふふふ・・・。痛いのは最初のうちだけさ。次期良くなるぜ」
     男は笑いながらそう言うと、ヴァギナの中の指を、何度も何度も上下に動かした。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
    「ふぎゃっ。ふぎゃっ。ふぎぇぇ。あぐっ!」
     ライラックはヴァギナから受ける激痛で、涙を溜めた目を大きく見開き、塞がれた口からは、涎を垂らしながらくぐもった悲鳴を上げ続けた。
     男は、そんな苦しむライラックにお構いなく、いやそれどころか、それを楽しむように、残酷な指の上下運動を続けている。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
    「うぎゃ。ふぎゃ。うあっ。あうっ。ああ!」
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
    「あぐっ。うあっ。あうっ。ひゃっ。ひぇっ」
     痛撃がライラックの身体と神経を引き裂いていき、身体全体がフルフルと小刻みに震えてくる。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ギュニュ。グニュ。
     グニュ。ジュニュ。ジュニュ。ニュチャ。ニュチャ。
     ヴァギナを上下に摩擦している男の指に、生暖かいライラックの淫液が絡み付いてきた。
     ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ギュニュ。
    「うぐっ。あうっ。あう、ひゃっ、う、ああ、あん・・・」
     男は、ライラックの身体の反応が、苦痛から別の方向に変化を始めた事を、見逃さなかった。
    「おい、ライラック。オマンコの奥からのイヤラシイ汁が、俺の指に絡み付いてくるぞ。どうした?。苦痛だったんじゃなかったのか?。へへへへへ・・・」
     男の指は、最初ライラックの身体に痛撃を与えていたが、しだいに淫靡なオーガズムへと変えていった。
    「はがっ・・・あがっ・・・あう、えぐっ。・・・えげっ」
     ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。
     ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。
     ヴァギナの奥から溢れ出したライラックの白い淫液が、男の指を伝って手首へと流れていき、檻の床に滴り落ちていく。
     そしてヴァギナからの淫液が潤滑油となって、きつく辛かった指の動きが滑らかになっていった。
     ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。
     湿った音を立てて、指がヴァギナの口を上下に出入りをする。
    「は、はぁ、あうう、あん、あ、ん、はぁぁん・・・」
     涎を垂れ流しているライラックの口からは、艶めかしい喘ぎ声を洩らし続けていた。
     ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。
     いつしかライラックの腰は、快感を自ら求めるかのごとく、独りでに動かし出していた。
     男の指をライラックのヴァギナは、ぎゅっぎゅっと、強く締め付けてくる。
     グチュ。グチュ。ヴァギナが指を締め付ける度に、溢れ垂れている淫液が、回りに飛び散った。
    「ははははは。ライラック、自分から腰を動かすほど、お前の身体は淫らになってきたんだな。剣士では無くまさに牝奴隷の姿だぞ」
     男は笑いながら、指をヴァギナにくわえ込んで、ひたすら腰を上下に動かし続けるライラックに告げた。
     だがライラックの耳にはそんな言葉は、すでに聞こえていなかったようであった。
     ライラックの頭の中は、オーガズムをひたすらその身に感じ続ける事だけしか、ないようであった。
    「ひゃが。ひゃが。・・・ひゃ、あう、・・・ひゃ、あ、ん」
     グチェ。グチェグチェ。グチェ。グチェ。
     ライラックの瞳が、快感を感じてトロンとしている。
     背中の陰に隠れて気が付かなかったのだが、ライラックの胸の乳首が飛び出るように尖っている。指で乳首を触ってやれば、きっと電気を流されたような痺れを、感じる事だろう。
     だが男は、ライラックのこの姿を見ていて、別の事を考えていた。
     男の目の前には、無防備になっている、ライラックの尻の穴が見えていた。
     指をくわえ込んでいるヴァギナの締めつけに気がいって、オーガズムを感じているせいなのか、アナルの締まりが驚くほど緩くなっていて、ヒクヒクとヒクついていた。
    「それじゃ、そろそろフィニッシュと行くか」
     男はそう言いながら、もう片方の人差し指を、ヒクヒクとだらしなく生き物の口のような丸い穴をひくつきさせながら、開いている穴に目掛け、狙いを付けて指を差し込んだ。
     グニュッ!。「ふぎゃっ!!」
     小さな叫びを上げて、ライラックの腰の動きは、突然止まってしまった。
     人差し指がアナルの中に深々と刺されている。
    「うぐ、うぐ、うぐ・・・」
     アナルの中に指を入れられて、違和感を感じたライラックは身体を小刻みに震わせている。
    「くくくく・・・」
     男はヴァギナとアナルに入れている指先を、L字に折り曲げると、アナルに差し込んでいる指を、グリグリと円を描くように動かし出した。
     グニュ、グニュ、グニュ、グニュ、グニュ。
    「ひぎゃ。ひぎゃ。ひぎゃ。ひぎゃぁぁぁぁ」
     ライラックは、アナルからの責めに背筋を反り返して、オーガズムを全身に感じて、身体全体を痙攣させて、イッテしまった。
    「あはははは・・・。何かあっけなくイッテしまったな。・・・あははは・・・」
     ヴァギナとアナルから、ビチョビチョになった指を引き抜いた男は、強制的にイカされて気を失って、俯せに倒れているライラックを見下ろしながら、せせら笑った。
     男はボールに水を注ぐと、淫液で汚れた手を洗った。そしてその水の入ったボールを手にすると、気を失っているライラックの頭に中の水を掛けた。
     ザバァァァァー。「あうっ!」。驚いたようにライラックが目を覚ました。
    「ライラックいつまで寝ているんだ。・・・俺様の指は、気を失うほど気持ちが良かったみたいだな。ライラックのよがり狂う姿はいつ見ても面白いぜ。あははははは・・・」
     男の言葉を聞いて、また無理矢理にイカされた、屈辱感を感じたライラックは、顎に力を入れてボールギャグをガチッと噛んで、男を睨み付けた。
     ライラックの顔が赤くなっているのは、イッタ事による高揚のせいなのか、それとも怒りのせいなのかは分からない。そんな事は男に取ってどうでも良い事であった。
     ぐっ!。「起きな」。男はライラックの髪の毛を掴んで、身体を引き起こした。
    「ひぃぢゃ!」。痛さでライラックの顔が歪んだ。
    「それじゃ、いま口枷を外してやるからな」
     男がそう言うと、ライラックのギャグの口枷が外され、やっと容器の中の餌を食べる事を許された。
    「よし、ライラック餌を食べろ。但し分かっていると思うが、餌を食べる時間は5分間だけだぞ。時間が過ぎたら、食べている最中でも、お前の口にギャグの口枷を填めるからな」
     男はそう言って、砂時計を床に置いた。
     砂時計の砂がサラサラと落ち始めた。
    「どうした?。・・・俺の顔を睨んでいたら、餌を食う時間が無くなるぞ。くくく・・・」
     男の顔を睨んでいたライラックは、ギュッと唇を噛んで、目の前の容器に顔を埋めた。
     容器の中の食べ物は、明らかに目の前にいる男達の、食べ残しの残飯であった。
     それでも、日に1度しか与えられない餌と呼ばれている食べ物なので、ライラックは何も考えずに懸命に食べ続けた。
     少ない量でも食べ物を食べて、体力と精神力を維持すれば、必ずここから脱出できると考えていたし、その間にどんなに屈辱を受けたとしても、最良のチャンスは必ずあると思ってもいた。
     その証拠に、砂時計や男の顔をチラチラと横目で見るライラックの瞳には、今も強い輝きを失っていなかったのである。
     ライラックは長い間、傭兵の剣士をしているので、絶望とか失望とか言う気持ちを持たないようにしているのだ。なぜなら戦場での闘いや妖魔の怪物との闘いで、この気持ちを少しでも持ったら、それはそく死へと繋がるからだ。
     はぐはぐはぐ・・・。がつがつがつ・・・。
     ライラックは動く事の出来ない檻の中にいて、何処にこんなに食べる体力があるのかと思われるほど、勢いよく容器の中の食べ物を胃袋の中へと入れていった。
     もちろん食べる時間が限られていると言う事もあるが・・・。
    「それにしても、お前の意志の強さには驚くよ。何処からそんな強い気持ちが涌いて来るんだ?。・・・普通の女達ならば、半月もこの檻に入れられていたら、どんなに反抗的な心を持った女でも屈辱的な行為に屈服して、最後にはすっかり牝の奴隷になって従順な気持ちと姿になるのによ。・・・なのにお前は今も抵抗の意志を持っている・・・。いや抵抗どころか、チャンスがあれば俺様の寝首をかく事を考えている目だぞ」
     男が話をしている間中、ライラックは容器の中の餌をガツガツと勢いよく食べ続けていた。
     しかしライラックの男を睨み付けている瞳は、獣が獲物を狙うみたいに冷たく、そして威圧感を投げ掛けていた。
     がつがつがつがつがつ・・・。
     もぐもぐもぐもぐもぐ・・・。
     ライラックの目の視線が、砂時計の砂に注がれる。
     はぐはぐはぐはぐはぐ・・・。
     むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ・・・。
     砂時計の砂の残りがあと僅かとなってきた。
     ぺろぺろぺろぺろぺろ・・・。
     砂が全て落ち終わった時、ライラックは容器の中の餌を全て食べ終わり、残り物がないように容器の中を綺麗に舐め終わっていた。
    「ほほー。時間内に全部食べ終わったのか」
     男はクスッと笑いながら、容器の中を覗き込んだ。
     その後男は、檻の扉を閉めて、ライラックの排泄物が入った容器を手に持つと、シートの外に出て行った。
     暫くして、シートの外から男の声がしてきた。
    「ほら、お前を奴隷として買ってくれるかも知れない、お客さんの屋敷に着いたぞ」
     男はそう言うと、ライラックの檻に掛けてあるシートを勢いよく引き剥がした。
     ガバァァァァー。
     音と共に薄暗かった檻の中に、太陽の明るい光が強烈に射し込んできた。
    「うっ」。ライラックは一瞬まぶしさで目をつぶった。
    「おいおい。こんな所で目をつぶすなよ。お前の売値が下がっちまうからな・・・」
     男は檻に掛けていたシートをたたみながら、ライラックに話し掛けた。
    「いいか言っておくが、ここの貴族様は、質の良い物や、品の良い物しか買ってはくれないんだ。だからお前も出来るだけレディーらしく振る舞えよ。きっと高値で買ってくれることは間違いないから」
    『冗談じゃないわよ。レディーらしくなんて出来るわけないでしょう!。・・・そもそも何であなた達の金儲けの為に、あたしがそんな事をしなくてはならないのよ!。・・・そうだわ、もし檻から出された、思いっ切り暴れてやれば、うまくいったら逃げる事が出来るかも知れないわね。・・・今に見てなさいよ』
     ライラックはそう考えると、話をしている男に気が付かれないように、急に従順な姿を取り出した。
    「はい・・・貴族様に、ライラックを高く買ってもらえるように、レディーらしく振る舞わせてもらいます」
     ライラックのしおらしい姿に、男は「やっと自分の立場が分かったようだな。・・・そうだライラック、その気持ちでいれば、辛い思いをしなくてすむんだぞ。忘れるなよ」と告げると、ライラックの口の中にまたボールギャグの口枷を押し込んで、ベルトで固定をした。
     そうこうしているうちに、ライラックの入れた檻を積んでいる馬車が、動きを止めた。
     その大貴族の館に着いたようだ。
     明るさに目が慣れてきたライラックは、檻の鉄格子の間から回りを見渡した。
     まず、大きな館の建物が目に飛び込んできた。まるで檻の中にいるライラックを、威圧するような感じの大きさだ。
    『こんなでかい屋敷に住んでいる貴族なんて、きっと領民達から税金を搾り取って、そのお金で若い女性達を奴隷として買い取って、調教とか拷問とか夜伽なんかをさせて楽しんでいる、イヤラシイ、エロじじーのやつに違いないわ。そんなやつはあたしがきっと天罰を与えてやるから!』
     ライラックはそんな事を考えながら、建物を見続けていた。
    『?。・・・でも・・・、この建物・・・どこかで見た事があるような・・・?。』
     傭兵家業をしているライラックとしては、今までいろんな所の貴族のもとで働いてきたから、目の前の建物を見て、直ぐに建物の主の顔を思い出す事が出来なかった。
    『う~ん。思い出せない・・・あの貴族かな?、それともこの貴族だったかな?・・・』
     ライラックの頭の中では、たくさんの貴族達の顔が浮かんできていた。
     その中には、ハンサムで紳士的でライラックを能力ある剣士と認めてくれていた若い貴族がいれば、歳を取ってイヤラシイ事しか興味がなく、ライラックを剣士とは見ずに1人の女としてしか見ず、ライラックに夜伽を命じた老貴族もいたのだ。
     ライラックとしては、もしそのようなイヤラシイ貴族にでも買われたら、どうしょうかと思ってしまうのであった。
     それでもライラックは、逃げ出せる場所を探して目を回りに移した。
     大きな庭中に、多くの芝生や草木が植えられている。
     しかもそれらの芝生や草木は、綺麗に剪定作業がされている。
    『う~ん。・・・この庭も・・・どこかで見た事があるような・・・?。うっ!。思い出せない・・・』
     懸命に記憶を絞り出しているライラックの目に、この館のメイドの姿が飛び込んで来た。メイドの少女は、館で飼っている子犬を散歩させているようで、手に持った手綱の先には2匹の子犬が歩いていた。
    『・・・ん?』
     ライラックは見ていた2匹の子犬の姿に違和感を感じて、よく見えるように檻の鉄格子に身体を張りつけた。
    『なにっ!?。・・・あれは?』
     2匹の子犬だと思っていた、四つん這いになっているあれは、裸の2人の少女達であった。
     2人の少女達の首には、犬の首輪が填められていたのだ。
    『じょ、冗談じゃないわ。・・・ここの館の貴族は、奴隷の女の子を犬のようにあつかうの?。・・・いったい何者なのぉ?』
     ライラックが驚きで目を丸くして見ていると、メイドの少女が顔を上げ、ライラックが入れられている檻の方を見た。
     檻の中のライラックと、手綱を握っているメイドの少女との両方の視線が合った。
    『えっ!。あのメイドの子は・・・?』
     ライラックが一瞬狼狽したように、口枷の奥から声を捻り出すように上げた。
     メイドの少女も檻の中のライラックを確認すると、一瞬、困ったような顔をしたが、直ぐにニコリと微笑むと、ぺこりと頭を下げた。
    『ふぇぇぇぇー!。ここの館って?、ここの貴族って?、もしかして・・・えぇぇぇぇー!』
     ライラックのくぐもった悲鳴が、青空に響いた。
    ----------------------------------------
     それから暫くして、館の謁見室から、この館の主人であり貴族の大笑いをする声が外にまで聞こえてきていた。
    「わあーははははは・・・」
     今までの話を聞いていたフォレックス公爵は、大笑いをして椅子から転げ落ちるのではないかと、思われるほどであった。
    「公爵!。笑い事じゃないわよっ!」
     ライラックは顔を真っ赤にして公爵に噛みついた。
     フォレックス公爵の前には、檻から出されて自由になったライラックとチャームが立っていた。2人は胸と腰を薄汚れた布で隠しただけの、半裸の姿であった。なぜなら、ライラックとチャームが奴隷商人に捕まった時、着ていた唯一の服を男達の手で、引き破られたので、いま身を包む物と言えばこれしかなかったのである。
    「ひゃははは・・・こ、これは失礼した・・・くくくくく・・・」
     いつまでも笑いを止めない公爵に頭に来たライラックは、ズカズカと座っている所まで近づくと、公爵の顔の前に自分の顔を近づけて睨み付けながら質問をした。   「こうしゃくぅー!。どうしてあたし達が奴隷商人の檻に入れられなくてはならいのよ!。・・・帰りは食事付きの馬車を用意するって、あたしに言わなかったですか?」
     公爵を睨み付けるライラックの目が血走っている。
    「ラ、ライラック、そんな怖い顔を近づけるな。・・・綺麗な顔が台無しだぞ」
     公爵がポツリと呟く。
    「こうーしゃーくっ!」。ライラックが怒鳴る。
    「わかった、わかったから・・・そんなに怒鳴るな。」
     公爵はライラックを宥めるように言った。
    「しかし私は嘘は伝えていないぞ。ちゃんと食事付きの馬車に乗って、この屋敷まで帰って来ただろう」
     公爵の言葉を聞いて、ライラックは思わず「え?。」と声を上げてしまった。
    「え?・・・え?・・・それじゃ・・・食事付きの馬車って・・・あ、あ、あれの事だったの?・・・」
     ライラックは、一瞬、目が点になってしまった。
     公爵はひとつ咳払いをすると、眼鏡を掛け直し、「ライラックは、王侯貴族の貴婦人や姫君が乗るような馬車に乗って、帰って来るつもりだったのか?」と、ライラックに聞いた。「うっ・・・」。ライラックは一瞬答えに詰まる。
    「そうですね・・・。よく考えれば、一応毎日食べ物はもらえたし、ここまでずっと馬車に載せられて来たのですから、公爵様の言われた通りですね」
     ライラックの代わりにチャームが答えた。
    「チャーム何を言っているのよ、食べ物と言ったってこいつらの残した残飯じゃないの、馬車に載っけられたって檻の中に入れられてよ!。しかも食器と便器の容器は一緒の物だし。チャーム不満じゃなかったの?」
     それを聞いたライラックは腹が立ってきて、チャームに質問をした。
    「奴隷として捕まっちゃったんだから、仕方ありませんよ。それに、あたしまだ死にたくなかったでしたから・・・。それはそれであたしの運命ですもの。エルフ族は身に降り掛かった事は、運命として受け入れるんですよ」
     チャームは平然とした顔で答える。
    「それにですよ・・・」
     チャームはそう言いつつライラックに近づき、耳元でそっと囁いた。
    「ライラックさん・・・結構いい思いをしていたんじゃありませんか?。・・・毎日ライラックさんの喘ぎ声が聞こえていましたよ」
     ライラックの顔がサァと赤くなった。檻に入れられていたライラックは、毎日食事を与えられる時、男によって色々な屈辱的な行為をされた後に、必ず乳房やヴァギナや肛門などをなぶられて、強制的にイカされていたのであった。
    「それは・・・あのあの・・・」
     顔を赤くしたライラックは、慌てたように口ごもってしまった。
     チャームはそんなライラックを見て、キャッキャッと笑いながらライラックの側を離れた。
    「どうだ。納得したか?」。公爵の声に、ライラックは「うー」と唸りながらも、もといた場所に戻るのであった。
     そして横目でチャームを睨み付けた。『チャーム、あなたはいったい誰の味方よ?』と。
     取り敢えず問題は解決したと理解したフォレックス公爵は、ライラックとチャームの立っている姿を、改めて見直した。
     身体に傷の跡が無く綺麗な肌の19歳の女性剣士。
     人形のように白い肌に綺麗な顔立ち、それに整ったプロポーションの15歳のハーフエルフの少女魔道士。
     この2人が公爵の目の前で、乳房と股間を布で隠すだけの姿になって、立っているのである。しかも首には「隷属の首輪」を填めた姿で。
     事情を知らない人が見たら、絶対に、2人の女奴隷が品定めをされるために、公爵の前に立たされているのだと、思う事であろう。
     少しの間、謁見室の中は静寂に包まれていたが、突然「ゴホン」というライラックの咳払いの声が響き渡った。
     ニヤ付きながら、ライラックとチャームの身体を眺めていた公爵が、「あっ」と言うと急いで普通の顔に戻った。
     ライラックは部屋の隅にいる商人の一団の方にも、キッと目を向けた。
     彼らも公爵同様、ライラックとチャームの身体に色んな意味での視線を、投げ掛けていたのであった。
     ライラックには、その視線が痛いほど突き刺さって来るのが分かっていた。
     商人の一団は、ライラックと目線を合わせないようにと、急にあらぬ方向に視線を向けた。「こいつらは・・・」。そう小さく呟くと、ライラックは両手を腰に当て公爵に質問をした。しかしその姿格好がまた公爵達の目には、とても色っぽく見えていた。
    「ところで公爵。あそこにいる奴隷商人の一団とは、どういう関係なんですか?。・・・ただの貴族と商人との関係とは見えないのですけども・・・」
    「ああ・・・、彼は『ミスター・商(しょう)』と言って、遠い東方にある『大中乃国』の出身の貿易商人だ。・・・」
     公爵は一団の前にいる、小さなキャップの帽子を被り、四角い顔に細い目で細長い口髭を左右に生やし、足下までの長いチャイナ服を着た、年齢50歳代の男を指差しながら、話しだした。
     公爵は、ミスター商の隊商のオーナーであるとも言った。
     この他にも公爵は、このような隊商を数隊所有しているとの事であった。
    「貿易商人?。奴隷商人とは違うの?・・・あの檻は?、町の市場に送られた別の馬車に載せられた檻の中には、数人の女の子達がいたわよ」
     ライラックはちょっと首を傾げて聞き返した。
    「私はあくまでも普通の貿易商人あるネ」。と答えたのはミスター商であった。
    「普通の品物を取り引きして、いろんな市場で売るのが私の仕事あるネ。その中に女奴隷が含まれているだけあるネ。あくまでも奴隷は貿易商品の一部分あるネ。・・・言うなる需要と供給との関係と言う事あるネ。お客様が求めている物を集めてきて販売するのが、私達商人の崇高なる仕事あるネ。お客さんはそれに対して、対価として金銭を払って求めていた商品を手に入れるあるネ。分かったあるカ?。何かおかしな所があるカ?」
     ミスター商の口から、矢のように飛び出してくる言葉を聞いていたライラックは、隣りに立っているチャームに話し掛けた。
    「・・・だってさ。・・・チャームわかった?」
     そう聞かれて、チャームはニコニコしながら言葉を言い始めた。
    「女奴隷は、貿易商品の一部分・・・、需要と供給との関係・・・、集めてきて販売するのが、商人の崇高なる仕事・・・、対価として金銭を払って求めていた商品を手に入れる・・・。どうです、ちゃんと商さんが言った言葉を覚えていますよ。・・・ライラックさんは覚えていないんですか?」
     今度は、チャームから聞かれたライラックが、どきまきしながら答えた。
    「うっ。・・・そ、そんな事はないわよ。ちゃ、ちゃんと覚えているわよ・・・。お、女奴隷が・・・需要と・・・供給で・・・対価で・・・崇高を販売するんでしょう・・・。どう、間違いないでしょう?」
     ライラックはどうだと言わんばかりに、布で覆った自分の胸を張った。
    「さすがはライラックさんですね。チャームと同じ才能ですね」
     チャームはニコニコしながらライラックを誉めた。
     しかし、ライラックとチャームの頭の中では、それがどういう意味なのかは、全然分からなかったのであった。
     そんな知ったかぶりを、お互いに自慢し合っている2人を、公爵の横から見ていた秘書役のメイドは、「絶対に分かっていないと思うわ・・・」と、苦笑いをしながら呟くのであった。
    「では、ライラック達も納得をしたようなので、・・・ライラックとチャームは、下がって闘いと旅の疲れを癒やすがいい」
     フォレックス公爵はそう言うと、秘書役のメイドが部屋の隅にいる、1人のメイドの少女に指示を出した。
     ライラックとチャームはメイドに連れられて、この館にある浴室へと足を運んだ。
     そこは大浴場と言ってもいい程の大きさの浴室で、壁や天井や浴槽、それにお湯を排出している女性の彫像の置物は、どれもこれも大理石で出来ていた。
     しかもこのお湯は・・・温泉だ。
     ザバァァー。ライラックとチャームは身に付けている物を取ると、・・・と言っても胸と腰に巻き付けている布だけであるが、・・・並々と浴槽に溢れている温泉の中に飛び込んだ。
    「ふあぁぁぁー。久しぶりに気持ちがいいわ」。浴槽の中でライラックが背伸びをする。「ええ。生き返ったような気持ちですね」。チャームも浴槽の中で手足を伸ばした。
     このような温泉に入るのは、久しぶりな感じだ。
     もし檻に入れられたまま、本当にどこかの奴隷市場で売られたりしたら、2度とこのように浴槽の中で手足を伸ばす日は来なかっただろうと、ライラックは思ってしまうのであった。
     バシャァァッ!。突然ライラックの顔に、浴槽の湯が浴びせられた。
     見ると、チャームがライラック目掛けて、湯を掛けている最中であった。
    「きゃっ、きゃっ。ライラックさんどうですか?。気持ちいいでしょう?」
    「こらっ。チャーム、やったわねっ!。お返しよっ!」
     バシャァァァーン。ライラックが両手でお湯をすくうと、思いっ切りチャーム目掛けて、浴びせかけた。
     今までの緊張が解けた反動なのか、ライラックとチャームの2人は浴槽の中で、子供のように相手に向かって、浴槽の湯を掛け合った。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     2人の浴槽内での湯の掛け合いは、いつ果てる事なく続いた。ライラックとチャームは子供に戻った心境で「きゃーきゃー」叫びながら遊んでいた。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     ビシャビシャになりながら、湯を掛け合う2人の耳に、メイドの声がしてきた。
    「あのー・・・」。バシャァァァーン。「きゃっ」
     掛け合っていた湯がメイドの身体を直撃した。メイドは頭から湯を浴びせ掛けられてしまい、メイド服も身体中も、ずぶぬれになってしまった。
    「ご、ごめんなさい」
     ライラックはメイドの少女に謝ると、浴槽の中に身体を沈めた。
     ふと横を見ると、チャームがポツネンと立っていた。
     ライラックは急いでチャームの手を引っぱって、浴槽の中に沈めた。
    「な、何か用ですか?。私達別に呼んでいないですけども・・・」
     メイドの少女に、とんでもない所を見られちゃったと思い、顔を赤くしながらライラックは聞いた。
     濡れたメイド服を搾りながら、メイドの少女は、
    「公爵様のご命令で、ライラック様とチャーム様の新しい服を脱衣場にご用意しました。・・・それと公爵様から、お2人を公爵様のご夕食にお連れしろと言われました」と告げた。
     メイドに言われて脱衣場に戻ると、新しい衣服に靴、下着が用意されていた。
    「ライラック様の着けられる鎧と剣は、お部屋の方に置いてありますから」
     メイドの少女はそう告げると、新しい服に着替えたライラックとチャームをフォレックス公爵の部屋に案内していった。
     ガチャ。
    「ライラック様とチャーム様をお連れいたしました」
     公爵の部屋に入ったライラックは、夕食が沢山並んだ大きなテーブルに、公爵以外の人物がいる事に気が付いた。
     1人は・・・特徴ある顔の、貿易商人の「ミスター商」だ。
     それにもう1人は・・・。
    「いっ!。何であいつがここに居るの?」。一瞬ライラックは自分の目を疑った。
     ミスター商の横に座っていたのは、ライラックが檻に入れられていた時、散々屈辱を与え続けたあの男であった。
     この男は、ミスター商の代わりに隊商を町の市場まで連れて行って、女奴隷を含む商品を、売買してきたのであった。
     それで、さっきはこの館では姿を見なかったのであった。
     ライラックは男の顔を睨みながら、テーブルに近づいた。
     メイドが椅子を引いた。ライラックが座る。目の前にはミスター商と男が座っている。
     男は何かバツが悪そうに、視線を天井に向けていた。
     最初に公爵の話しが始まり、夕食が始まった。
     話の中で、男は、「ルド=ナボル」と言う名前で、ライラックと同じ傭兵の剣士との事だった。
     年齢は29歳。傭兵としては剣と槍を使うとの事だった。
     ライラックはルドの姿を観察するように眺めまくった。
     茶色の髪の毛に顎まであるもみあげの顔。
     キリリとした目は茶色だ。首が隠れるくらいのタートルネックの服に普通のズボンを身に着ている。
     元々は隊商護衛の傭兵だったが、今はミスター商の右腕的存在になっているのだ。
     それで、先程もミスター商の代わりに、隊商を率いて町の市場で商売を取り仕切ってきたのであった。
     ライラックは心の中で、『へー』と驚いていた。
     なぜなら、この男の印象は、檻の中のライラックに卑猥な言葉を浴びせ、ライラックを屈辱し続ける姿しか、浮かんでこなかったからだ。
     太陽が山に傾き、少し薄暗くなってきた。
     公爵は秘書役のメイドに何かを囁いた。
     秘書役のメイドが何かを合図をすると、脚に小さな車が付いたテーブル2つが、メイドの少女の手によって、押されてきた。
     テーブルには、何か大きな物が載っているようで、掛けてある白いテーブルクロスが、山のように盛り上がっている。
     2つのテーブルは、ライラック達とルド達の背後の壁際に置かれた。
    「何ですか?」と、ライラックは怪訝な顔をした。
    「暗くなって来たからな。燭台だよ」。公爵が答える。
     バザッとテーブルクロスが引き取られた。
    「え!」。とライラックは声を上げ掛けた。
     テーブルの上には、全裸姿の幼い少女がヴァギナとアナルを天井を向くように、身体を曲げて寝かされていて、動けないように身体をベルトで拘束されていた。
     口にも特別製の口枷が填められている。先端に長い1本の棘が付いている。
     身体を縮められて、苦しそうに息をしている2人の少女達は、ここに帰って来た時に見た、メイドの少女が犬のように四つん這いで散歩をさせていた、あの幼い2人と思われた。
     ライラックの背後に置かれているテーブルの上の少女は、ロングのヘアをしている・・・ナナーだ。
     当然ルドの背後のテーブルには、同じ姿にさせられている、ニニーがいた。
     メイドの少女達は蝋燭を取り出すと、ナナーとニニーの身体に蝋燭を置きだした。
     まず、口枷に付いている棘の部分に蝋燭を刺した。
     続いて、少女のヴァギナを指で左右に開くと、太い蝋燭を埋め込んだ。少女は痛さで一瞬顔を歪めた。開いている目には大粒の涙を溜めている。
     最後にアナルには、細い蝋燭がゆっくりと埋め込まれた。
     そして3本の蝋燭に火が点けられた。
     幼い少女の身体に装着された3本の蝋燭が、明かりを発して異様な輝きを見せている。
    「公爵・・・この子達は・・・」。ライラックはちょっと狼狽した気持ちになった。
    「ははは・・・。奴隷の姉妹を燭台として使っているだけだ。気にする事はない。・・・さあ。食事を続けよう」
     公爵は笑いながら、次の料理を持ってこさせた。
     ふと、いつもならにぎやかなチャームが、静かだなと思って隣の席を見ると、出て来る料理、出て来る料理を、片っ端から食べまくっていた。
    「チャーム、少しはレディーらしく食べなさいよ。恥ずかしいわよ。それにお腹を壊すわよ」
     ライラックがそっとチャームに注意をする。
    「ライラックさん、食べれる内に食べて置かなくては、またいつ野宿の生活になるか、わからないんですよ。それにレディーよりも生きる事です。格好なんか構っていられませんよ」
     チャームは答えて、なおもパクパクと料理を食べ続けた。
     確かに仕事柄、野宿生活をする事が多い事はわかっているが、しかしこの場所では、流石にマナー通りの食事をしなくては・・・。
     ライラックは奥の手を出すことにした。
    「チャーム、そんなに急いで食べると太るわよ。象やダルマのようにマルマルに太った姿のハーフエルフなんて、きっとみっともないわね」
    「うっ」と言ってチャームの手が止まった。
     そして「や、やっぱり・・・お食事はレディーらしく上品にマナー通りにしないといけませんわね。・・・おほほほ・・・」と言うと、さっきとはうって変わって、上品な姿で料理を口に運び出した。
     ライラックは、チャームの突然の変わり様に、思わず吹き出しそうになった。
     その間にも、燭台にされている少女達の白い素肌には、溶けた蝋燭がポタポタと落ちて来ていた。溶けた蝋が肌に落ちて、その熱さで身体を震わせれば、蝋燭の中に溜まっている蝋が、揺らされてまた素肌に落ちて来るのである。
     顔に胸にヴァギナにアナルに・・・。
     それどころか、ヴァギナとアナルに深く埋め込まれた蝋燭は、全て燃え尽きて消えるまで、新しい蝋燭と取り替えて貰えないのである。
     それは幼い彼女達が、ヴァギナとアナルを蝋燭で焼かれる恐怖と苦痛を、長時間味わい続けるという事でもあった。
     ナナーとニニーは声を上げる事も出来ずに、辛さを表現する事として、ひたすら涙を流し続ける事しか出来なかった。
    「さて、そろそろブラッド・オパールを渡してもらおうか」
     夕食が終わりになった頃、公爵はミスター商に向かって言った。
     ミスター商は頷くと、足下に置いてある小さな小物箱をテーブルの上に置いた。
    「この箱の中に、その宝石が3個入っているあるネ」
    「中のブラッド・オパールは、あたし達が命がけで戦って集めたんですからね」
     ライラックは、公爵にブラッド・オパール集めの功績をしっかりとアピールした。
    「そうそう、その『達』の中には、チャームも入っていますからね。公爵様」
     チャームは口の中の料理の粒を飛ばしながら、ライラックの言葉の後に急いで付け加えた。
     ライラックは「行儀が悪いわよ」と、チャームをギロリと睨んだ。
     睨まれたチャームは、あっと思って急いで口を両手で塞いだ。
     公爵は笑いながら小物箱を取り上げると蓋を開けた。中にはブラッド・オパールを入れている皮の袋が入っていた。
    「ふむふむ・・・。この袋の中に、ブラッド・オパールが入っているんだな」
     公爵は皮の袋を取り出すと、口を開いて袋を逆しにした。
     コロコロコロ・・・。中から2つのブラッド・オパールが転がり出てきた。
    「ん・・・?。2つしかないぞ」。そう言うと公爵は、一瞬キョトンとした顔になった。
     テーブルの上の2つのブラッド・オパールを見ていたライラック達も、唖然とした表情をしていた。
    「1つ足りないぞ。どう言う事だ?。ライラック・・・」
     公爵はライラックの顔を見て、「何故だ?」と問いただしてきた。
     ライラックは「聞きたいのは私の方よ」と言うと、ミスター商の方に顔を向けた。
    「わ、私は猫ばばはしていないあるネ」。ミスター商が公爵に向かって言った。
    「それじゃ、どうして2つしかないんだ?」。公爵がライラックに聞いてくる。
    「ね。どうしてなのよ?」。ライラックがミスター商を問いただす。
    「私に聞かれても、困るあるネ」。ミスター商は不思議そうに答えた。
    「本当に3個集めたのか?。正直に言うのならば今の内だぞ」
     公爵はライラックに言った。
    「商さん、間違いなく3個を管理していたんでしょうね!」
     ライラックは、せっかくの苦労が水の泡になりそうなので、怒りだした。
    「ちゃんと、朝には3個あったあるネ」。ミスター商が困った顔で公爵に答える。
    「では、なぜないのだ?」。公爵はライラックに聞くと、「なぜなのよ?」と、今度はミスター商に質問の矛先が向かって行く、
     終わりそうもない、質問の堂々巡りのトライアングル状態を聞いていたルドは、笑いを堪えながら公爵に答えた。
    「朝まであって今ないと言う事は、その間に誰かが盗み出したと考えられますね。・・・たぶんそいつは、この町に来た時に隊商から居なくなったヤツでしょう。・・・さっそく確認してみましょう」
     ルドはそう言うと、イスから立ち上がった。
     ライラックは、相も変わらずに静かにしているチャームが気になって、チャームの席を見ると、チャームはメイドの少女に空になった皿を渡して、「これ美味しかったですね。もう1人前おかわりします」と言っていた。
     ライラックとメイドの少女は、同時に苦笑いをした。
    「親方わかりましたぜ」。そう言ってルドが戻って来た。
    「それは誰なの?」。ライラック達の視線がルドに集中する。
    「それは・・・」
     ルドの調べによると、この町に隊商が着いた後、『ゲテーク』と言う髭面の男が突然居なくなったのだ。ゲテークはミスター商の隊商が隣の国にいた時に、隊商に加わった謎の男であった。
     そのゲテークがオパールの1つを、盗んで逃げて行ったようだ。
     そしてその男は、ライラックとチャームをミスター商に売り飛ばした少年グリーンの身体に、執拗な執着を見せていた人物でもあった。
    「そう言えば・・・あの男が我々の隊商に加わった時、その地域では幼い少年達がレイプされて、殺されると言う事件が起きていたな。・・・まさかアイツが・・・」
     ルドはそこまで言いかけて絶句した。
    「よし!。直ぐにその男を捜し出すんだ。衛兵隊長に知らせろ!」
     公爵は傍らに立っている、秘書役のメイドに指示を出した。
     それから暫くして、館の廊下を秘書役のメイドが歩いて来る。
     コッコッコッ・・・。秘書役のメイドはブラッド・オパールを入れた皮の袋を持って、館の宝物庫の部屋に向かって歩いていた。
     その彼女を追うように、小さな影が音も無くついて来る。
     歩いていた秘書役のメイドは、突然足を止めた。
     それと同時に、ついて来ていた謎の影も、動きをピタリと止まった。
     秘書役のメイドは、謎の影がずっとついて来ているのを、それとなく気がついていた。
     しかし館の宝物庫まで、その影を連れて行く訳にはいかなかった。
    「誰なの?。隠れていないで出てきなさい。そこに隠れているんでしょ?」
     秘書役のメイドは、謎の影が息を殺して隠れている場所に向かって、声を掛けた。
     暫くの間、静寂が秘書と謎の影を包んでいた。
    「ちぇっ。・・・見つかっちゃった。・・・どうもまだ修行が足りないなぁー」
     そう言いながら物陰から、小さな人物が出てきた。
    「あ、あなたは・・・?」。秘書役のメイドは、驚きの声を上げた。
     出てきたのは、グリーンであった。
    「ど、どうして、ここに子供が?。・・・館の警備は厳重なはずなのに・・・」
     秘書役のメイドは不思議そうに小首を傾げた。
    「クスクスクス・・・。あの程度の警備なんか、僕の目から見たら穴だらけだよ」
     グリーンは自慢げに言う。
    「あなたはいったい何者?。・・・何をするつもりなの?」
     秘書役のメイドがそこまで言いかけた時、突然グリーンが体当たりをしてきた。
     ドシーン。「きゃっ!」。秘書役のメイドは、悲鳴を上げて倒れ込んだ。
     その拍子に、持っていた皮の袋を床に落としてしまった。
     グリーンはその袋を素早く拾い上げ、倒れている秘書役のメイドに向かって、「これは貰っていくよ」と言うと、館の外の方へと走り去って行った。
    「たいへーん!。直ぐに公爵様に伝えなければ!」
     秘書役のメイドは真っ青な顔になった。
     それから暫くして、公爵の館から衛兵の一団が町に向かって行った。
     秘書役のメイドから報告を受けた公爵が、館に忍び込んでブラッド・オパールを奪い取って行った盗賊の少年の探索を命令したのだ。
    「せっかくブラッド・オパールが3個、我が手に戻ってきたと思ったのに・・・何が何でも探し出さねばならんぞ!。・・・グズグズしていたら大変な事になる。」
     公爵は力説した後、横に控えている秘書に顔を近づけて囁いた。
    「この件が解決したら、奪われた責任を取らせる為に、お前を厳しく調教しなおすからな。覚悟していろ」
    『えーん。どうして私なんですか?。私は被害者なんですよー。・・・グスン』
     秘書役のメイドは、公爵から不条理な言いがかりを言われて、当惑の表情をしたが、どうした事か彼女のヴァギナの奥からタラリと汁が涌いて来て、ヴァギナを濡らしていくのがわかって、彼女はほんのり顔を赤らめるのであった。
    『いやだわ・・・私ったら・・・公爵様からお仕置きの調教を受けるというのに・・・クスクス・・・』
     一方、自らもブラッド・オパールの捜索をする為に部屋に戻ったライラックは、新しい鎧を身に着けていた。
     以前着けていた鎧よりも材質がよい鎧だ。しかもそれほど重くも無く、身体にピッタリだ。
     続いて脚にすね当ての防具を着ける。鎧とすね当ての色は銀色で統一されている。これはライラックのトレードマークだ。
     両手に皮の手袋をして、同じく革の靴を履き、腰に愛用の剣を下げる。
     この姿を鏡に映して見た。以前からの自分がそこにいた。
    「公爵は、あたしの注文通りの物を用意してくれたな」
     ライラックは「よしっ!」と一言いうと、部屋を飛び出して行った。
     館から馬で町に急ぐ。
     ライラックの馬にはチャームも乗り込んでいる。そしてライラックと一緒に、ルドも馬で同じように町に向かっていた。
    「どうしてあなたが付いて来るのよ?」
    「今度は町の人達に、俺の指であんたがよがってイク姿を、見せてやろうかと思ってよ」
    「何ですって?」。ライラックがルドの顔を睨み付ける。
    「あはははは・・・。冗談だよ。俺はお頭から、ブラッド・オパールの捜索を命令されたんだ」
     ルドはそんなに睨むな、と言うような顔でライラックに答えた。
    「それにしても話を聞くと、館に忍び込んだ賊は、グリーンとか言う小僧らしいな」
    「グリーン?。・・・私達をあなた達に売り飛ばした、あの少年ね。・・・」
     ルドの言葉を聞いて、ライラックはグリーンの事を思い出していた。
     ライラック達が町に着くと、衛兵達の探索が行われていた。
     他の町に行く道には、検問所も出来ていた。
     酒場や宿屋に捜索隊は調べに入る。
     普通のオパールの宝石だと思って、盗み出した髭面の男に盗賊の少年。早く取り返さないと、2人の人間はブラッド・オパールに取り付かれて、魔物の怪物に変身してしまうのである。
     衛兵達が探し回っている町の裏通りを、隠れるように移動している男がいる。髭面のあの男・・・ゲテークだ。
    「くそ。こんなに兵隊達がウロウロされたんじゃ、この町から逃げ出す事も出来ないや。それにしても、宝石一つ頂いただけで、こんなに大騒ぎになるなんて、思ってもみなかったぞ」
     兵隊達の足音が聞こえてくる。ゲテークは物陰に隠れて息を殺す。
    「どうだ、いたか?」
    「いえ。まだ見つかりません」
    「いいか。宝石を盗み出したのは、30歳代の痩せた髭面の顔の男と14,5歳の緑色の髪の少年だ。2人は必ず宝石を隠し持っているはずだ。探し出せ!」
     兵隊達は別の場所へと走って行った。
    「とにかく、この宝石を持っていたら、見つかった時にどうにも逃げられないな。・・・どうする?・・・」
     ゲテークはふと何を考えたのか、ポケットから隠し持っているブラッド・オパールを取り出すと、それを口の中にくわえ込んだ。そして顔を上に向けると、ブラッド・オパールをゴクンと無理矢理飲み込んでしまった。
    「はあ、はあ、ゲホゲホ、・・・こ、これで俺が宝石を持っていると言う証拠はなくなったぞ。後はこの町を上手く出て、どこかで宝石を高く売ってしまえばいいぜ。その前に、腹に入れた宝石を糞と一緒に出さなくちゃならないな」
     ゲテークはまた隠れるように移動をして行った。
     その頃グリーンは、町の中の裏道が繋がっている、ゴミゴミとした場所に逃げ込んでいた。
     グリーンが身を隠した場所から、公爵の衛兵達が血眼になって探し回っている光景が、よく見えていた。
    「くすくすくす・・・。ここまで来れば、もう僕を見つけ出す事は出来ないよ」
     グリーンはそう言いながら、手にしている皮の袋を眺めた。
    「この宝石を、ライラックとか言う剣士から奪い取ったのはこの僕なのに、あの商人のおかげで、宝石は取られて、身体は縛られて木に吊されたんだ。・・・宝石を取り返そうと隊商の隙を狙って、後を付けてここまで来ちゃったけども、・・・やっと隙だらけの領主の館の中で、宝石を手に入れる事が出来たんだ。また奪い取られてたまるものか!。
     もう少しここに隠れていて、兵隊達がいなくなったらこの町から出て行こう。・・・そして、他の町でこのオパールを高く売ってやろう。・・・どれ、袋の中のお宝をちょっと眺めて見ようとするかな」
     グリーンは皮の袋の口を開けて、中のブラッド・オパールを見ようとした時、ギュッと、誰かの手がグリーンの右腕を掴んだ。
    「ひっっっ!」。グリーンは思わず大声を出しかけた。
    「静かにしな!。こんな所で大声を出したら、自分の居場所を兵隊達に教える事になるぜ」そう言いながらグリーンの口に手を当てたのは、ゲテークであった。
    「お前は確か、グリーンとか言っていた小僧だな。・・・ははー。宝石を盗み出した小僧はお前のことか」
     ゲテークは、さっき衛兵達が言っていた盗賊少年の特長を、思い出して言った。
     グリーンは皮の袋を背後に隠す。
    「図星かい。・・・取り敢えずどこかに隠れて、夜まで待とう。夜になれば逃げ出せる魂胆が浮かぶだろう」
     夕暮れの裏町の隅を、ゲテークと彼に腕を取られたグリーンとが、暗闇へと消えて行く。
    「くそ、もうじき夜になってしまう。いったい何処に消えてしまったんだ?」
     町の広場にいるライラックは、歯軋りをしながら呟いた。
    「今夜は徹夜かな?」。一緒にいるルドが言った。
    「とにかくこの町の外には、まだ出ていないはずだ。もう一度、町の中を探してみよう」
     ライラック達は町の中にへと走って行った。
     夜の空に月が浮かぶ頃、グリーンとゲテークはある空き家を見つけて入り込んでいた。
     小屋の隅でグリーンは、疲れの為かウトウトと薄い睡魔に襲われていた。
     グリーンの背後から、ゲテークが忍び寄って来る。
    「へへへ・・・。何度見てもお前の身体は、抱き締めたいほどのいい身体だぜ」
     ゲテークは、グリーンのお尻を半ズボンの上からそっと撫で回した。
    「この肉付き、たまらねぇや」
     ゲテークは、横になっているグリーンのシャツを捲り上げ、半ズボンのベルトを外して、下ろしに掛かった。白い小さなパンツが姿を現す。
    「げへへへ・・・。どんな可愛い物を持っているのかな?」
     ゲテークの片手が、グリーンの穿いているパンツの中に潜り込まされた時、異変に気が付いたグリーンが目を覚ました。
    「うわっ!。な、何をするんだよっ!」
     グリーンは驚いて逃げようともがいた。
     しかしグリーンの身体はゲテークにしっかりと押さえ付けられていた。
     ビリリッ。ビッ!。ゲテークの手によって、グリーンのシャツとパンツが引き破られた。
    「わっ!。やだっ。恥ずかしいよ」
     グリーンはゲテークの手によって、一糸纏わぬ全裸の姿にされてしまった。
    「やめろっ。やだやだっ」
     ビシッ。ビシッ。・・・声を立てているグリーンの顔に、ゲテークの平手打ちが数発入った。
    「ギャーギャーうるせぇと、ぶっ殺すぞ!。もっと痛い目に遭いたいかっ?。俺はな、他の国で何人ものお前のような少年を、レイプをして殺してきているんだ。言うことを聞かないと、お前も同じ目に遭うんだぞ。わかったか?」
     脅えた表情を見せるグリーンを見て、ゲテークの手が、グリーンの股間の薄い陰毛の中に生えているペニスをまさぐりだした。
     グニュ、グニュ、グニュ・・・。
     脅えているグリーンの身体は、性的快感を覚える事がなかったので、若いグリーンのペニスが太く勃起する事はなかった。
     次にゲテークは、グリーンをうつ伏せにさせ、これまた可愛い2つのお尻の膨らみを、いやらしく撫で回しだした。
     ゲテークの口から、「はあ、はあ」と息使いが荒くなっていくのが聞こえていた。
     グリーンは唇を噛んで、屈辱的な行為に堪えていた。
    「いっ!」。ゲテークの舌がグリーンのお尻をペロリと舐め、グリーンは思わず息を飲み込んだ。
    「げへへへ・・・。さて、ここはどうかな?」
     ゲテークはそう言うと、2つのお尻の膨らみの間にある、アナルの周辺を撫で回し始めた。
    「あ、あ、あ、・・・う、ん・・・あうっ」
     グリーンは背筋に何とも言えない悪寒を感じながら、じっと堪え続けていた。
     ゲテークの指がアナルの所を行き来すると、アナルが反応をして、キュッと口を縮めてしまう。
    「それじゃ、いよいよやるとするか。・・・へへへ。痛いのは最初の時だけだからな。我慢をしろよ」
     ゲテークは自分のズボンから勃起した太い男根を出すと、フルフルと震えて口を窄めている、グリーンのアナルに擦り付けた。
     再び「ぞわっ」とした嫌悪感のある悪寒が、擦り付けられたアナルから身体全体へと駆け抜けていき、グリーンは全身をブルッと震わせた。
     涙を溜めた目を強く閉じ、唇をギュッと噛み、おぞましい物が無理矢理自分の身体の中に入って来るのを、ひたすら待ち構えていた。
     その時、背後のゲテークから苦しさで呻く声がしてきた。
    「おうっ。あううううううう・・・」
     グリーンはハッとして、背後にいるゲテークの方に目をやった。
     ゲテークは頭を抱えて苦しがっている。
    「な、なに?」。グリーンは急いでゲテークの側から離れて、部屋の隅に逃げ込んだ。
     ゲテークの姿が、グリーンの目の前で、段々と異形の姿になっていくのであった。
     髭面のゲテークの顔が、・・・口には牙が生えた大きなくちばしが生えてきた。頭には先の尖った耳が生え、長い2本の触角が生えてきていた。
     額には、赤いブラッド・オパールが浮かび上がっていた。
     それ以上に、ゲテークの身体は巨大になり両手両足は人間とは思えないほど長くなり、しかももう一対の同じ様な脚が腰の所から生え出してきた。
     胸から腹に掛けて皮膚が縦に割れ、その中に無数の牙が見えていた。それは口を縦にしたような感じであった。しかも肋骨が、皮膚から突き出し大きな牙のように動いていた。
     しかも長い尻尾が生えてきているのが見えた。
     6本の長い脚を持ったゲテークは、床に身体を前のめりに倒し、蜘蛛のように自分の身体を6本の脚で吊り支えていた。
    「うわぁぁぁぁ。たすけてぇー!」
     魔物の姿へと身体を変化させていくゲテークを見て、グリーンは悲鳴を上げた。

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年前

    〈 偶には寄り道もしてみるものだの巻 〉
     夜になると2つの月が浮かんでいるその空に、今は青空の中、昼間の太陽が明るい光を地上へと照らしている。
     この摩訶不思議な大陸の世界でも、空に浮かんでいる太陽はひとつである。
     ここは「マーランティス大陸」にある、国家のひとつの「ムーサリアス王国」である。
     そしてこの場所は、ムーサリアス王国のある大貴族の治める領地である。
     町には商人のかけ声と行き交う人々で生き生きとしている。
     村の畑では作物が多く実り、また家畜達が草を腹一杯に食べていた。
     町から少し離れた場所に、ここを治める領主にして大貴族の住まう大きな館が見える。
     館の回りの大きな庭には、青々とした芝生や草木が一面に生えている。
     その中で、館の主人と思われる1人の紳士が椅子に腰かけ、テーブルに置かれている紅茶を優雅に飲んでいた。
     その側ではお付きのメイド達が静かに立っている。
     そしてメイドの側には2匹の犬がいた。・・・いや、犬ではない。全裸姿で犬のように四つん這いになっているのは、2人の幼い少女達であった。
     その2人の首には犬の首輪が填められていて、そこから伸びている手綱は2人の側に立っている2人のメイドの少女達の手に握られていた。
     よく見ると犬の首輪の内側に、もう1つの本来の首輪がしっかりと填められていた。
     それは他のメイド達の首に填められているのと同じ「隷属の首輪」であった。
     犬のように四つん這いにさせられている2人の幼い少女達は、ナナーとニニーという名前の姉妹であった。
     姉は「ナナー」と言う名前の、10歳の少女である。白い肌の色に目の色は黒だ。腰まである黒髪が綺麗な女の子である。
     また、妹の名前は「ニニー」と言う、6歳の少女である。肩まで伸びた黒髪。肌と目の色は姉と同じであった。
     ナナーとニニーの姉妹は、遠くの異国から奴隷商人によって連れて来られ、奴隷市場で売られていたところを、ここにいるフォレックス公爵によって買い取られたのであった。
     そして2人には、さっそく奴隷としての調教が施され始めたのだった。
    「う・・・うう、あう・・・あ、ん」
    「ひっ、・・・いぅぅぅ、ん・・・ん」
     ナナーとニニーのまだ幼いヴァギナの回りや奥に、メイドの手によって不思議なゼリー状の液体が塗り込められたのだ。
     その液体は、ヴァギナの中から2人の幼い身体に強い刺激を与えだし、彼女たちの股間の間に溝のように走っている秘裂の口から、ジュクジュクとした液体を湧き出させた。
     彼女たちは膝をつけずに四つん這いなっているので、尻が頭より高くなった姿になっている。
     その為に、ヴァギナの奥から溢れ出した彼女達のトローとした淫液は、ヒクヒクとヒクついている秘裂の口から腹へと、ツツツーと伝って流れていった。
     ナナーとニニーの2人は、自分の身体から・・・それもいつもはオシッコをするところから、このようなキラキラ光りながら流れ出てくる液体を、初めて見て驚いていた。
     ヴァギナの中やその回りが焼けるように熱く感じる。熱いだけではない、我慢出来ないほどの痒みも感じる。手をそこに持って行き掻きむしりたい程であった。
     普通ならば、手をヴァギナに持って行ってオナニーをしたいと思うところだが、まだ幼い2人には、そんな考えは浮かびもしなかった。そもそもこのような感覚を味わうじたいが、生まれて初めての事だった。
     またゾクゾクとした感じが背筋を何度も駆け上がっていき、2人の息使いは段々と荒くなっていった。
    「うぐ、う・・・はぅ、・・・う、ん」
     腰や両脚が・・・ブルブルと震えてきて、力が抜けていきそうであった。
    「はぅ、ひっ・・・うふっ、・・・ひへっ・・・」
     2人は生まれて初めて経験するこの言い様のない刺激に、戸惑いながらも懸命に堪えていた。
     なぜならば2人は、どんな事があっても四つん這いのままでいるようにと、主人の公爵から命令をされていたからだ。
     だがそんな命令に関係なく、幼い2人の身体に着けられている枷が、彼女達の動きをしっかりと封じていた。
     2人の口に噛まされているボール形のギャグが、うめき声と喘ぎ声を2人の幼い姉妹から奪い取ってしまっていた。しかも四つん這いになっている両手の手首には、短い鎖の付いた手枷が填められていた。
     その為2人のヴァギナがどんなに刺激を受けて疼いていても、ナナーとニニーは手を自分の身体を疼かせている部分に持って行く事が出来なかった。
     裸の身体中から玉のような汗が噴き出してくる。
    「ふぎゅ・・・しゅてぇ・・・、ふぎゅ・・・しゅてぇ。(ゆる・・・してぇ・・・、ゆる・・・してぇ)」
    「ひょへぇしゃん・・・ひゃしゅひぇふぇ!(お姉ちゃん・・・助けてぇ!)」
     喘ぎ声を漏らしている口に噛まされたボールギャグからは、涎がダラダラと垂れ、それに涙と汗が加わり、幼く可愛らしい2人の顔はグチャグチャになっていた。
     2人のヴァギナからは今もドクドクと淫液が無限に溢れ出してきていて、腹まで流れて来ていた淫液は、まだ膨らみが始まっていない胸のところまで伝って流れていく。
    「ううう・・・ぐす、う、ぐすん・・・ううう・・・」
    『もう許して欲しい・・・早く終わらせて欲しい・・・』
     ナナーはそう思いながら地面に着けている掌をギュッと握って拳を作る。
     突然誰かが、涙と汗と涎とそれに流れて来ていた淫液で濡れている、ナナーの顎に手をやって顔を持ち上げた。
     ナナーの涙の溜めた目に、公爵の秘書役のメイドの顔が映った。
    「ナナー。あなた達はまだ子供だから、オマンコに塗ってある『ワサビで作ったゼリー状の液体』は、かなり薄めてあるのよ。だからまだまだ我慢をしないとダメよ。他のメイドの子たちは、もっとキツイ液体で調教を受けているのよ。・・・それどころかお仕置きを受けたあるメイドの子は、ワサビをオマンコの中やお尻の穴の中にまで塗られて一日中放置されたのよ。動けないようにされて・・・。だからこれ位は我慢をして堪えるのよ」
     秘書役のメイドはナナーにやさしく諭す。
     それでもやはり2人にとっては、このような責めをいつまでも堪える事は、とても苦しく難しい事だった。
     ナナーとニニーの2人は段々と気が遠くなっていくような気がして、思わず身体がフラっと崩れそうになった時、
    ピシーン!。「ふぎゃっ!」
    パシーン!。「ぎゃんっ!」
     高く突き出している尻に乗馬用の鞭が打ち下ろされ、2人の感覚は再び覚醒させられた。
     鞭を振り下ろしたのは、2人の首輪から伸びた手綱を持っているメイドの少女達であった。
     膝を地面に付けずに四つん這いになっている為、幼い姉妹の尻は鞭が打ちやすいような高さになっていた。
     パシーン。「うぐっ」。鞭が再び入れられる。
     2人が気を失い掛ける度に、そして強制的なオーガズムを迎えそうになる度に、メイドの持つ鞭が容赦なく振り下ろさせた。
     ビシーン!。ビシャーン!。パシーン!。バシーンッ!。ピシャーンッ!
     ビシーン!。ビシャーン!。パシーン!。バシーンッ!。ピシャーンッ!
     何度も何度も鞭の音が響き渡った。
     ビシーン!。ビシャーン!。パシーン!。バシーンッ!。ピシャーンッ!
     ナナーとニニーの幼い姉妹の尻には、痛々しい何条もの鞭の痕が赤く付けられ、しかも数カ所の傷口からは血が流れ出していた。
    「ナナー、ニニーいいこと。ここではご主人様の許しが無ければ、どんな事があっても勝手にイクことも気を失うことも許されないのよ。ようく覚えておくのよ」
     秘書役のメイドがナナーとニニーに告げた。
     秘書の声を聞いたナナーは大きく肩で息をしながら、涙と涎と汗でクシャクシャになった顔をゆっくりと上げた。
     涙を溜めたその瞳は許しを求めていた。
    「あ、ぐ、わ、ぐ・・・あ、う・・・ん」
     ナナーは懸命に何かを訴え掛けていたが、ギャグを噛まされていて、空しい呻きだけが声となって出ているだけであった。
     ナナーは、ワサビで出来たゼリー状の液体が塗り付けられた自分のヴァギナから、刺激を与え続けるこの状態に、もうどうする事も出来なくなっていた。
     刺激の波状攻撃が、ナナーの思考能力を毟り取るように奪っていく。
     ビシーン!。パシーン!。
     鞭が2人の尻を打ち据えたが、ナナーとニニーの瞳は虚ろになり反応は次第に緩慢になっていった。
    「公爵様、ナナーとニニーはもう限界のようですが・・・」
     姉妹の顔を覗き込んでいた秘書役のメイドが公爵に告げた
    「そうか。ではこの2人の奴隷のヴァギナに塗ってある液体を、洗い落としてやるんだ」
     紅茶を飲みながら、ナナーとニニーの幼い姉妹の調教を楽しんでいた公爵は、2人の首輪の手綱と鞭を持っている、2人のメイドの少女達に命令を下した。
     哀れな幼い姉妹の奴隷は、やっと腰を下ろして地面に座る事を許された。
     そして手綱を持つメイドに向かって、両脚を大きく開くことを命令された。
     精神的にも肉体的にも疲れ切っているナナーとニニーの姉妹は、ただ言われるままに自分の両脚を大きく開いて、陰毛がまだ生えていない綺麗な恥丘とヴァギナをメイドの少女の目にさらした。
     これで身体中を疼かせる刺激を出している、ゼリー状の液体を洗って拭き取ってくれると思うと、ナナーはホッとした気持ちになったのと同時に、同じようにヴァギナからの刺激の責めを受けていた妹のニニーの事が気になって彼女の方を見た。
     肩で大きく息をしているニニーも、命令通りに正面にいるメイドに向かって両脚を開いていた。
     でも、顔は疲れとショックの為にガックリとうなだれていた。
     ナナーはそんな妹に声を掛けたかったが、ボールギャグの口枷をしているので、声を発することさえ出来なかった。
     しかたなく、ナナーは心の中でニニーに向かって励ましの言葉を掛けたのだった。
    『ニニー・・・がんばって。これで今日の調教は終わるからね。もう少しの辛抱よ』
     奴隷として、この遠くの異国に売られてきた幼い姉妹にとっては、新しいご主人様に気に入ってもらうためにも、ひたすら堪え忍ぶことしか取るべき道はなかったのである。
    『もうあたし達は・・・お家に帰ることも・・・お父さん、お母さんに会えることも・・・もう2度と出来ないのよ・・・。それにニニーも見てきたでしょう。あたし達のような奴隷が・・・市場で母娘や兄弟姉妹達が無理やり引き離されて、バラバラにされて売られていったのを・・・。でもここではあたし達は姉妹で一緒に居る事が出来るのよ・・・』
     ナナーの心の言葉は、そのまま自分自身を納得させる言葉でもあった。
    「よし。始めろ」。
     ナナーの耳に公爵の命令の言葉が聞こえてきた。
     ナナーは疲れ切った身体の力を振り絞って、顔を上げて正面に立っているメイドの少女を見た。
     2人のメイドの少女は、自分の着ているメイド服のミニのスカートの前を持ち上げると、綺麗に剃毛されているヴァギナの部分を露わにした。
     この館のメイドの少女達は、着ているメイド服の下には、いっさいの下着を付けていないのである。
     ヴァギナを僅かに前の方に突き出す格好をして、立っているメイドを凝視していたナナーは、考えたくないある事が頭の中を光のように駆け抜けて行った。
    『ま、まさか・・・いや・・・そんなこと』と心の中で叫ぶと、急いで開いていた両脚を閉じようとした時、首に填められていた隷属の首輪が鈍く光、ナナーの身体を石のように固めてしまった。
     見上げているナナーの目に、無表情で見下ろしているメイドの少女の呟く口の動きが見えた。
    「あたし達も、これと同じ調教を受けてきたのよ。・・・これであなたも、あたし達の仲間になるのね・・・」
     シャァァァァー。バシャ、ビチャ、ビチャ、ビチャ・・・。
     立っているメイドの股間から、勢い良く小便が滝のような弧を描いて飛び出し、ナナーとニニーの液体が塗られているヴァギナに降り掛かり始めた。
     小便のムッとする臭いがナナーの鼻をついた。
     これがさっき公爵が言っていた、「洗い落としてやるんだ」の奴隷に対しての方法であった。
    『いやぁぁぁぁぁぁーっ!』
     脚を閉じる事も逃げる事も出来なく、ただ先輩メイドの暖かい小便を股間に浴び続ける自分が、段々と惨めになっていく気持ちがナナーの心の中を占領していくのであった。
     そしてショックの連続で、ナナーの頭の中は何も考える事が出来なくなっていくのであった。
     そんなナナーの表情を見ながら、小便を掛けているメイドの少女は、「何もかも今までの事は、頭の中から洗い流してしまいなさい。これからあなたは新しいナナーになるのよ。・・・そして、公爵様の好みの奴隷になっていくのよ」と呟いていた。
     小便を掛ける音を聞きながら紅茶を飲んでいた公爵に、秘書役のメイドがそっと尋ねた。
    「公爵様、ナナーとニニーの事ですが・・・」
    「ナナーとニニーはメイドにはしない。・・・ちょうど子供の牝犬を飼ってみたいと思っていたところだったのでね」
     フォレックス公爵の一言でナナーとニニーの幼い姉妹は、牝犬奴隷としてこの館で飼育される事となったのである。
     それは同時に一層厳しい調教が、2人を待っているという事でもあった。
    「この2人には、いろんな躾や芸が出来るように調教してやるとしよう。・・・もちろん私の精液や大小便を喜んで食べる事が出来るようにもな。それと人前でも躊躇無く、いろんな痴態な事が出来るように仕込んでやらないとな。・・・ふふふふ・・・今から考えるとワクワクするな」
     楽しそうな表情で話す公爵の足下には、いつの間にそこに来たのか、全裸姿の1人のメイドの少女がしゃがみ込んでいて、太く大きくなっている公爵の男根を口にくわえ入れ、フェラチオをしていた。
     秘書役のメイドは「あらら、いつの間に?」と言った表情で、メイドの少女を見下ろした。
     公爵は言葉を発する事なく、メイド達個人個人に対してテレパシーを使ってこのような命令を出すので、廻りの者が気が付かないと言う事がちょくちょくあった。
     その為、秘書を含めメイド達は、常にスタンバイの出来ている状態で、毎日を過ごしているのである。
    「うぐ、うぐ、うんぐ・・・むぐ、う、んぐ・・・」
     チュパ。チュパ。ニュパ。チュパ。ネチャ。
     フェラチオをしているメイドの口から、舌で男根の陰茎や亀頭部分を愛撫する湿った音が漏れてくる。
     ニュパ。チュパ。ネチャ。チュパ。チュパ。
    「むぐ、う、んぐ、うぐ、うんぐ・・・」
     口から溢れた涎が、メイドの顎を濡らし下へと滴り落ちていく。
     秘書役のメイドが『あぁ、いいなぁー』と言うような表情で見つめていると、メイドに語りかける公爵の声が聞こえてきた。
    「しっかりとシャブリ続けるんだぞ。後で褒美として、ワサビ入りの浣腸責めを一晩中してやるからな。そのかわり、もし手を抜いたりしたら罰として、ワサビをオマンコとケツの穴にたっぷりと入れて、一晩中責めてやるからな。分かったな?」
     秘書役のメイドは「どちらにしてもこの子は、地獄のような夜を過ごすのね」と思うと、ちょっと引いてしまうのであった。
     ふと公爵は何かを思いだしたようにポツリと言った。
    「そう言えば、山犬の魔物を倒してからもう3週間も経つけども、ブラッド・オパールを持ったライラックとチャームの2人は、いったい何処をほっつき歩いているんだ?。とっくにここに着いても良い頃だぞ」
     秘書役のメイドも不思議そうな顔で呟いた。
    「もしかすると・・・、ライラック殿の身に何か危険な事が起こっているのでは?。・・・まさか、どこかの森の中であのお二人はすでに・・・」
     秘書がそこまで言った時、公爵は手を振ってその考えを否定した。
    「そんな事は心配ないな。あの2人は殺しても死ぬような連中じゃないから。・・・不死鳥みたいな・・・いやそんないい物じゃないか・・・どちらかと言うと、ゴキブリみたいな生命力を持った連中だからな」
    「ゴ、ゴキブリ?・・・何もそこまで言わなくても、公爵様・・・」
     秘書役のメイドが苦笑いをする。
    「それよりも、実に単純な事に引っかかって、ここに戻れなくなっているのかもしれないな。・・・あの2人の事だから・・・ははははは・・・」
     公爵は笑いながら言った。
     その言葉を聞いていた秘書役のメイドは、「え?・・・。単純な事で戻れなくなっているのですか?」と呟くと、不思議そうに小首を傾けるのであった。
    ----------------------------------------
    「ハックショーン!」。チャームが大きな声でくしゃみをした。
    「あーん。風邪を引いてしまったわ。どうしよう・・・、やっぱりか弱いチャームには、野宿での夜風は身体に毒なのね。」
     チャームは、何も言わずに背を向けて立っているライラックに、聞こえるように声を出して独り言を言った。
     だがライラックは腕組みをして、向こう側に見える山や村を見つめているだけだった。
    「ライラックさーん、チャーム風邪を引いて、病気になって死んでしまうかも知れませーん。・・・佳人薄命って言うでしょう。・・・どうしましょう?」
     チャームはライラックの背中に寄り添うと、猫なで声で弱々しく呟いた。
    「はいはい・・・。天国でも地獄でも好きな方に行ったらいいわ」
     ライラックは怒りを抑えるように、チャームに答えた。
    「どうしてそんな事を言うんですか?。今まで何度もライラックさんの危機を救い、ライラックさんの勝利の手助けをしてきた、大事なパートナーが生きるか死ぬかと言う時に、そんな事を言う事はないでしょう」
     チャームが怒った声を立てる。
    『なーにが生きるか死ぬかよ。十分に元気じゃないの』。とライラックは思う。
    「怒りたいのはあたしの方よ!」
     ライラックの言葉に、チャームは「え?」と言う顔をする。
    「いったいどうしたんですか?。ライラックさん」
     チャームはライラックのご機嫌を取るように、笑顔を急いで作って尋ねた。
     ライラックは正面に見えている山や村を指さして言った。
    「向こうに見えているのはね、隣の国の山と村なのよ。変よね。そもそも公爵の館に帰る予定だったのに、どうして隣の国境まで来てしまうの?。帰る道がまるっきり逆じゃないの。大魔道士のチャームさんご説明して・・・」
     ライラックは嫌みっぽく言うと、冷たい視線をチャームに投げ掛けた。
    「ライラックさん、そんなの説明するも何も、道に迷って逆の場所に来てしまっただけじゃないですか。
     そんな事この状態を見れば、子供でも理解出来ますよ」
     今度は、チャームの批判的な視線がライラックに投げ返された。
    「何を白々しく言っているのよ!。チャームのおかげでこうなったんでしょうが!」
     それをライラックの怒りが打ち砕いた。
    「あーん。どうしてあたしのせいにするんですか?」
     チャームは目に涙を溜めて抗議をすると、
    「何を言っているのよ!。・・・公爵の館に帰る途中で、何カ所もの所で道が2つに分かれていたり、3本に別れていた所で、あたしが館への道はこちらだと指を指したら、あなたはその都度訳の分からない呪文を唱えて、帰る道はあっちだとまるっきり逆の道をその都度示していたわよね。・・・それで、あたしが文句を言うと『あたしは大魔道士のチャームですよ。信用しないんですか?』と答えたわよね。信用しない訳にもいかないから、それであなたの言う通りに歩いて来たのよ。・・・その結果がこれよ。どう、言い訳ができて?。ましてや忘れたなんて言わせないわよ」
     ライラックが一気に捲し立てた。
     チャームはプーッと膨れた顔になると、クルリと身体を向けると道から外れ、森の中にへと入って行った。
     ライラックは驚いてチャームの後を追った。
    『ちょっと強く言い過ぎたかな?。・・・ハーフエルフの魔道士と言えども、まだ15歳の女の子なんだものね』
     ライラックはそう思うと、背後からチャームの身体を両腕でそっと抱くと、顔をチャームの耳に近づけてそっと囁いた。
    「ごめんなさいね。あたし、ちょっときつく言い過ぎたかも知れないわね。・・・別にチャームが嫌いで言った訳ではないのよ。気分を害さないでね」
     歳上のライラックは、チャームの頬に軽くキスをした。
     膨れていたチャームの顔がみるみる笑顔に戻っていく。
    「ライラックさんが謝ってくれたんですから、チャーム許してあげますね。・・・じゃ、今夜の野宿用の焚き火の用意をしましょうね。チャームは心が広いんです」
     チャームはそう言うと、ルンルン気分で焚き火用の木を探しに、森の中に入って行った。それを目で追っていたライラックは、何か煙に巻かれたような気分になっていた。
    『あたし、チャームに許しを請う事なんか、何かしたかしら?・・・』
     やがて太陽が沈み、2つの月が山の陰から出てきた。
     夜の森は暗闇に支配されている。数メートル先が、まるで墨で塗りつぶしたように、真っ黒である。旅をして野宿をするのが慣れている者達でも、こう言う所では言い知れぬ寂しさと恐怖を感じてしまうものである。動物や鳥の鳴く声が聞こえない時には、特にそうであった。
     今、目の前にはパチパチと音を立てて燃えている火がある。
     小さな焚き火程度の炎であったとしても、暗闇の場所に身体と心を置いている者にとっては、心に安心感と暖かさと明るさを与える物である。
     ライラックとチャームは並んで座り焚き火に当たっていた。
     バサッ。ライラックが木の枝を燃えている火の中に放り込む。
     ゴワァァァー。燃えている火の勢いが強くなり、辺りを一瞬明るくする。
    「ふぁぁぁぁ。・・・眠くなってきちゃった。・・・むにゃむにゃ・・・早く柔らかいベッドの中で寝たいわ・・・」
     チャームはコテンとライラックの身体に寄り掛かると、クーと寝てしまった。
     ライラックは、そっとチャームの身体を地面に横たえて寝かせてやった。
    「あたしだってそうしたいわよ。・・・誰のせいでこんな野宿をしていると思っているのよ・・・って、そんな反省の気持ちはまるっきし無いわよね、チャームには・・・」
     ライラックは小言を呟くと、小さく溜め息をついた。
     ガサッ。その時、暗闇の中から音がした。
    「!!」。
     ライラックは、とっさに横に置いてある自分の剣に手を伸ばした。
     ガサ、ガサ、ガサ。音が近づいて来る。何者かがこっちに来る。
     ライラックは剣の柄を握り、直ぐにでも剣を抜いて戦えるように身構えた。
     ガサ、ガサ、ガサ。
    「チャーム・・・起きて!」。
     ライラックは足下で寝ているチャームの身体を、靴の爪先でこづいた。
    「・・・何ですかぁ~・・・」。
     チャームが寝ぼけ顔で起き出す。
    「しっ!。気を付けて。何かが近づいて来ているわ」
     ライラックの言葉に、チャームは急いで音のする方に顔を向けた。
     ガサ、ガサ、・・・ガサ。
     ライラックとチャームは、焚き火の側から離れ、太い木の影に身を隠した。
     ガサ・・・ガサ・・・・・・ガサ・・・・・・・・・ガサ。
     近づいて来る足音の間隔がゆっくりとなってくる。
    『我々の事を、警戒しているのか?。・・・それとも、攻撃を掛けるタイミングを計っているのか?。・・・それとも・・・』。剣を握る手に汗が浮かんでくる。
     ・・・ガサ・・・。近づいて来ていた物が立ち止まった。
    「・・・・・・・・・」
     ライラック達と、暗闇の中の謎の訪問者との間で、息詰まる時間が流れた。
     ドサッッ!。暗闇の中で、何かが倒れる音がした。
     顔を見合わせたライラックとチャームは、用心しながら、倒れた音のした場所に近づいた。
     ライラックのかざす松明の明かりには、何も変わらない森の中の光景が、浮かび上がっていた。
    「何もいないって?・・・。そんなはずはない。私には、この近くに何かがいる気配が感じられる」
     ライラックとチャームは、物音ひとつしない森の中で、息を殺して聞き耳を立てている。
    「?。・・・!。・・・」。2人の耳に微かにうめき声が聞こえてきた。
    「ライラックさん・・・」
    「こっちね・・・」
     ライラックとチャームの2人は、うめき声が聞こえてくる場所に、近づいてみる。
     草の中に、腕から血を流して倒れている少年がいた。
     先程の、ここに近づいて来ていた足音は、この少年が立てていたものだった。
    「ライラックさん、この子こんなにも血を流していたら、死んでしまいますよ」
     チャームは怖々とライラックに告げた。
    「どうしてこうなったかは知らないけども、とにかく急いで手当をしましょう」
     ライラックは少年の身体を抱き上げると、焚き火が燃えている場所に連れて来て、地面に敷いている毛布の上に寝かせた。
    「あん。・・・あたしが寝る毛布の上に・・・」
    「何を言っているのよ。この子を地面の上に、直に寝かせる訳にいかないでしょう」
     チャームの文句の言葉を軽くいなし、ライラックは腰の小さな入れ物から薬を取り出した。
     少年の右腕には、刃物で切られた傷口が口を開けていた。
    「ライラックさん・・・よくそれだけの流血を目にしていて、お医者でもないのに平然と治療が出来ますね?」
     ライラックの背後から、チャームが声を掛ける。
    「あたしは剣士よ。戦いでの流血は付き物だし見慣れているわ。それに自分の命にも関わる事だから、傷の手当や初歩的な治療ぐらいは心得ているわ。・・・さあ。これで手当は終わったわ」
     ライラックの手により、少年の腕の傷口はしっかりと止血処理をされ、包帯を綺麗に巻き付けた。
    「うわー。さすがは手際がいいですね。・・・やっぱり傭兵ギルドの中で流れていた噂は、本当だったのかな?」
     感心した様子で見ていたチャームは気になる事をポツリと呟いた。
    「チャーム・・・何よ、その噂って?」
     ライラックはチャームの言葉に、何か言い知れぬ不安を感じて聞き返した。
    「ライラックさんが治療の手当が上手なのは、倒した敵がイイ男だった時に、死なない程度に手当をしてやって、その上その男性のチンチンに勃起をする薬を付けて、男性の精力と命を下の口で吸い尽くす為だからって言う噂が・・・。知りませんでした?」
    「知るかぁぁぁぁ!。・・・そんな噂が流されたんじゃ、冗談じゃないわ。・・・どうしてあたしがそんな事をしなくちゃならないのよっ!。」
     ライラックは、始めて聞くとんでもない自分の噂に、憤然とした。
    「そもそも、誰がそんな噂を流しているのよ?」
     ライラックは心当たりを懸命に考えるが、どうも思いつかない。
    「あたしは人から恨みを買う事はしていないけども・・・。それとも誰かがあたしを陥れる為に流しているのか?・・・あたしが美人で容姿端麗で頭脳明晰の上に、剣術の力もトップだと知っている者で・・・あたしの事を妬んでいる人物ね、犯人は・・・。そうだ流している者は、きっとあたしよりも美人で容姿端麗で、頭脳が明晰の上に、持っている能力もあたしよりトップだと思っている人物じゃないかしら・・・だとしたら・・・」
     ライラックはそう言ってチャームの顔をそぉーと横目で見ると、チャームは両方の指で自分の顔を指さして、ニコニコしていた。
    「やっぱりチャームかい!。噂を流していた張本人は!」
     ライラックは顔を真っ赤にして、怒鳴りだした。
    「いやですよぉー。そんな言い方は・・・。ライラックさんの名声を高めるためですよ。遠くの国の王様や貴族にまで、記憶に残るようにね。・・・それに興味ある噂があると、ライラックさんがあちらこちらの王様や貴族から、引っ張りだこになるでしょう。よく言う恐い物見たさと言うやつで。そうするとパートナーであるあたしにも、一緒のお仕事が来る・・・と言う訳なの。もしかすると、チャームはライラックさんのマネージャーかも知れませんね」
     ボコォォォォッ!。「わぎゃぁぁぁぁぁー」。チャームの頭に大きなタンコブが膨れ上がった。
    「あたしは見せ物かい!。何がマネージャーじゃっ!。そないな事を考え出すチャームのドタマ(奴頭)を一寸(約3.3㎝)刻みに切り刻んだろうかっ?」
     ライラックは頭から角を出して、関西弁で捲し立てた。
    「あーん。ライラックさん冗談ですってばー・・・」
     言い訳の言葉を言うチャームを見ながら、ライラックは『絶対チャームとは、コンビを解消してやる』と強く思うのであった。
    「・・・ま、そんな事はどうでもいいわ。それよりもこの子に傷が早く治る魔法の呪文でも掛けてよ。・・・出来るでしょう?」
     気分を切り替えたライラックは、チャームに問い掛けた。
     チャームは魔法書を呼び出すと、該当する項目のページをめくりだした。
    「う~ん。・・・これでいいかな?」。チャームはそう呟くと、呪文を唱えだした。
     少年の身体が、ボワーと光に包まれる。
     光はしばらくの間、少年を包んでいたが、次第に薄くなっていき霧のように消えていった。
    「これで、この少年の腕の傷は、朝には元道理に治っていますよ」
    「そう。・・・やはり魔道士の魔法は役に立つわね」
     ライラックは感心したようにチャームに言ったとき、「う~ん・・・」と、声を漏らして少年が目を開けた。
    「あら?。気が付いたわね」。ライラックが少年を見下ろして、声を掛けた。
    「わっ!!」。ライラックとチャームの顔を見た少年は、驚いた声を立てると跳ね起き、逃げるように数歩後ずさりをした。
     ズキン!。傷口の痛みが少年の身体を走り抜けた。
    「あうっ」。少年は腕を押さえて蹲った。
    「ダメよ、動いちゃ。せっかく治療をしたんだから」
     ライラックが少年に注意をした。
     少年は「え?」と驚いた顔で、自分の腕に巻かれている包帯を見た。
    「この包帯・・・お姉さん達が、僕の傷の手当をしてくれたんですか?」
    「そうよ。今動くと傷口がまた開いてしまうわ」。とライラックが言う。
    「魔法も掛けましたから、朝には完治しますからね」。とチャームが話す。
    「・・・・・」。少年はどうして助けられたのか、いぶかしげにライラック達を見ていた。
     ライラックとチャームは顔を見合わせた。
     少年が脅えているのではないかと、思ったライラックは、
    「あたしの名前はライラックと言うの。彼女はチャーム。・・・あたし達は旅の途中で、今夜ここで野宿をしていたら、あなたがこの近くで倒れていたのよ。いったいどうしたの、その傷は?」
    「ぼ・・・僕はグリーンと言うんだ。お姉さん達と同じに旅の途中なんだよ。それがこの村に立ち寄った時に、突然、僕を魔物の生け贄にすると言われて、やっとここまで逃げて来たんだよ。傷はその時に付けられたんだ」
     懸命に話をする、グリーンと名のる少年を、ライラックは観察するようにまじまじと見つめた。
     女の子のように可愛い顔立ち・・・言うなる美少年だ。ショートヘアの緑色の髪の毛の中央を前面から後部に髪を金色に染めている。目の色は茶色だ。年齢は14歳だと言った。
     着ている服装は、半袖のTシャツ形の服にベルト付きの半ズボン。ズック製の靴を履いている。
     肩からは、日用品が入っているのか、大きなカバンを掛けている。
     ライラックは、こんな可愛い少年を魔物の生け贄にしようとする村人達が、許せなくなっていた。
    『こんな可愛い子を、生け贄にするなんて・・・』
     ふと、瞳を周りへと移動させた時、ライラックの表情に緊張が走った。
    「なに?」。
     ライラックは闇の中で多くの松明が燃えているのを目にした。
     同じようにチャームも、ライラックの背後から多くの松明がこの場所を囲むように近づいて来るのが分かった。
    「囲まれたわね」。
     ライラックが呟いた。
     剣の柄を握りしめ、いつでも剣が抜けるように身構える。
    「僕を捕まえに来たんだ」。
     グリーンが、ライラックの身体にしがみつく。
     取り囲んでいる村人達が魔物の一味なら、容赦はしないでこちらから攻撃をするのだが、もし普通の人間達ならそれも出来ない。
     いくら傭兵の剣士と言えども、理由もなく多くの人を傷つけたり殺したりする事は、許されない。
     それに暗闇の中にいる村人達の数が把握できていない。
     しばらくの間、ライラック達と取り囲む村人達との間に、静寂が流れていた。
     焚き火のパチパチと木の枝が燃える音だけが、暗闇の森の中に響いていた。
    やがて、1人の老人が明かりの中に現れた。
    「儂は近くの村の長をしている者じゃ。突然の事で驚かれたと思うが、そこにいる少年を私達に渡してもらいたいのじゃ。旅のお方」
     村長は物静かにライラックに告げた。
    「あなた達は、この無実の少年を魔物の生け贄にするのでしょう?・・・」
     ライラックは村長に向かって質問をした。
     村長は静かに顔を左右に振ると、「その少年が、あなたに何と言って誤魔化したかは知らないが、その少年は大きな罪を犯している、よそ者の盗賊なのじゃ」と答えた。
    「盗賊?」。
     ライラックはチラッとグリーンの顔を見た。
     グリーンの顔が一瞬青くなった。
    「さようじゃ。その少年は村の宝である『宝神』を盗み出したのじゃ。・・・どこかの町で高く売るつもりなのじゃろうが、それは許されぬ事じゃ」
     ライラックの耳に、グリーンが「ちぇっ!」と口を鳴らしたのが聞こえた。
    「それで儂らは、宝神を持って逃げたその少年を追って、山狩りをしていたのじゃ。」
     村長の言葉を聞きながら、ライラックはグリーンがしっかりと抱えているカバンが怪しいと睨んだ。
     ガバッ。ライラックがグリーンのカバンを突然取り上げた。
    「何をするんだ!。返してよ!」。
     グリーンが驚いて叫んだ。
    「グリーン、この中に盗まれた物が無ければ、あなたは生け贄にされなくてすむのよ」
     ライラックはそう言うと、カバンの蓋を開けて、カバンの口を下に向けた。
    「あっ!!」。
     ドサササァァァァー。
     グリーンの叫ぶ声と、カバンから中身が落ちる音が、同時に上がった。
     それに続いて、村人達の声が上がった。
     カバンの中からは、ロープ、合い鍵、その他泥棒の必需品に混じって、盗まれた宝神が転がり出てきた。
    「あ~あ・・・。見つかっちゃった・・・」。と呟くグリーンに、みんなの怒りの視線が集中していた。
     次の日、魔物が隠れ住んでいる沼の岸辺の岩に、鎖で後ろ手に縛られ、足にも同じ様な鎖の枷が填められ岩肌につながれているグリーンがいた。
    「・・・よって、盗賊のグリーンを村の宝神を盗んだ罪で、生け贄の刑に処する」
     村長が判決文を読み上げる。
     グリーンの廻りにいた村長と男達は、岩場を逃げるように離れた。
     岩場に1人ポツンと取り残されたグリーンは、目に涙を浮かべてワナワナと震えている。
     やはりまだ子供であった。
     遠くの場所から、村人達と一緒に眺めていたライラックの心の中では、2つの物が葛藤をしていた。
     昨夜は、グリーンに騙されたことで腹を立て、村人と一緒にグリーンを捕まえる方に協力をしたが、今グリーンが魔物の生け贄にされるところを目にしていると、やっぱり後悔の念が出て来ていたのだ。
     やはり・・・生け贄なんて・・・。
     ライラックは決意を固めると、村長達のいる前に飛び出して行った。
     もちろんライラックは、土壇場でチャームが逃げ出さないように、チャームの手をしっかりと握りしめていた。
    「生け贄なんてとんでもないわ!。その魔物は、あたし達が退治をします!」
    「あ、あんたはいったい?・・・」。
     村長がいぶかしげに聞いた。
    「あたしは、剣士のライラックです」。
     ライラックは告げた。
    「おおぉぉぉぉー」。と村人達の間から、どよめきの声が上がった。そしてあちらこちらでヒソヒソ話が起こる。
    「ラ、ライラックって・・・どこかで聞いたような?」
    「そう言えば・・・、ほら、この前ここに来た傭兵達が言っていた、噂の女剣士だ」
    「あ!。・・・あの赤ん坊から老人まで見境無く、男の精気と命を吸い取ると言う・・・」
    「そうそう、それに彼女のアソコからは、ヘビのような舌がニュウウウと、1メートルも伸びて出てくると言う噂だぞ」
     廻りに一瞬の沈黙が流れたあと、突然「ひぇー。逃げろっ!」。「うわぁー。助けてくれぇ!」。「殺さないでくれぇぇぇー」。
     ライラックの廻りにいた村人達が、大声を上げて、蜘蛛の子を散らすように逃げ出して行ってしまった。
     残されたライラックは、「赤ん坊から年寄りまで見境無く精気と命を吸い取る?・・・。あたしのアソコからヘビのような舌が1メートルも出てくる?・・・。チャーム・・・」
     ライラックは低い声でそう呟きながら、チャームの顔をジロリと睨んだ。
     確かに、あまりと言えばあまりの噂である。
    「うわっ。殺気を感じるんですけども・・・。ラ、ライラックさん・・・、あたしはそこまでは酷い噂を流して
    はいませんよ!。噂には良く尾ひれが付くでしょう・・・あれですよ。あれっ!。あは、あははははは・・・」
     チャームはひきつった笑い顔を無理やり作った。
    『尾ひれどころじゃないわ。腹ビレや背ビレまで付いているじゃないの!』
     チャームが流した小さな噂は、知らない内に化け物みたいな噂に、育ってしまったようであった。
    「ライラックさん、そんな事よりも早くグリーンさんを助けに行きましょう」
     チャームは、まるでその話題から目を逸らすようにライラックに言うと、元気良くグリーンがつながれている岩場に駆けて行った。
    「な、なによ他人事(ひとごと)みたいに・・・」
     ライラックは腹が立ってしょうがなかったが、チャームにとっては完全に他人事であった。
    「ライラックさーん。早く来て下さいよぉ」。チャームが手招きをしている。
    「はいはい、分かったわよ・・・」
     ライラックは重い足取りで岩場へと歩き始めた時、
     ザバァァァァァーッ!。と音を立てて、沼の水面が盛り上がった。
    「なにっ?」。
     ライラック達の目の前に、沼の底から巨大な怪物が姿を現した。
    「ブシュゥゥゥゥー」
     怪物は巨大なミミズの姿をしている。全身には真っ黒な体毛が覆っていた。
     身体の先端には、口と思われる穴がヒクヒクと閉じたり開いたりしていた。
     巨大ミミズは沼の水面から出ているだけでも、言うに10メートルはあろうか?
     だとしたら、水面の下に沈んでいる部分はいったいどの位の長さと大きさになるのか、見当がつかない。
    「こいつが、村人達から恐れられている魔物か?」
     ライラックは怪物を見上げながら呟いた、その時、怪物の先端でキラリと光る物があった。
    「あれは?。・・・こいつもブラッド・オパールを体内に入れているのか?」
     ライラックは言うのが早いか、サァーッと剣を鞘から抜きさった。
    「ブシュゥゥゥゥー」
     怪物は獲物となる生け贄のグリーンを見つけると、近づいて行った。
    「はっ!。チャーム!。グリーン!」。ライラックは叫ぶと駆け出した。
    「うわぁー!。怪物がこっちに来るぅ!。まだ死にたくないよぉ!」
     岩場につながれているグリーンが、逃げる事も出来ずに、足をバタつかせて叫んでいる。
    「あーん!。グリーンさんのつないでいる鎖が解けないよぉ!」
     グリーンの側にいるチャームも、同じように一緒になって叫び声を上げている。
     ドンドンと近づいて来る巨大ミミズの魔物を目にしていたチャームは、もうこれまでと言う気持ちになると、呪文を唱えだし魔法書を光の中から取り出した。
     魔法書を開くと、グリーンに向かって、
    「グリーンさん。実に切迫した状態になっていますけども、あたしはそろそろここから脱出しますからね。なにも無理をして、2人もあの怪物に食べられる事はないんですから。そもそもグリーンさんが、今日の生け贄だったんですから。・・・と言うわけで、グリーンさんの今後のご無事を祈っていますからね」と告げると、テレポートをする為の呪文を唱えだした。
     それを見たグリーンは、「わぁぁぁ!。そんなぁぁぁ。助けてよぉぉぉ。まだ死にたくないよう。僕なんか食べても美味しくないよう!。チャームの人で無しぃぃぃ!」と、あらん限りの叫び声を上げた。
     チャームはグリーンの顔を覗き込むと、残念でしたねと言った表情で告げた。
    「あいにくでしたが、あたしはハーフエルフなの。人間じゃないのよ」
     唖然とするグリーンの顔を横目に、チャームは呪文の残りを唱え始めた時、2人の居る岩場にライラックが飛び込んできた。
    「チャーム何をしているの?。早くグリーンを連れて逃げなさい!」
     ライラックがチャームに早口で命令をした。
    「グリーンさんのつないでいる鎖が取れないのですよ。そこで、ライラックさんが来るまで、魔法を使ってグリーンさんを守ろうとしたんです!」
    「ええ?」。
     まるっきり逆のチャームの言葉を聞いて、グリーンが一瞬目を丸くする。
     ライラックは、つないでいる鎖を見て、剣で切り離す事にした。
     ピンと鎖を伸ばさせ、振り上げた剣を気合いと共に振り下ろした。
    「やぁぁぁぁぁっ!」。
     ガシャァァァーン。
     鎖のリングが砕けて飛び散った。
    「チャーム!。あたし達をここから別の場所へテレポートをしてっ!」
     近づいて来た巨大ミミズをチラッと見て、ライラックがチャームに大声で叫んだ。
     チャームは素早く呪文を唱えると、3人の身体を風が取り囲むように強く吹きだし、渦巻きのようになっていった。そして3人の身体はフッと岩場の場所から消えた。
     その瞬間、巨大ミミズの巨体が、3人の居た場所にのしかかってきた。
     ズシャァァァァーンッ!。
     細かく砕けた岩を跳ね飛ばして、衝撃で岩場が崩れた。
     その頃、岩場から数十メートル離れた場所の風が渦を巻くように舞ったかと思うと、3人が空間から浮かび上がるように姿を現した。
    「ふううう。危機一髪と言う所だったわね」。とライラックが呟く。
    「ライラックさん、スリルがありましたね」。楽しそうにチャームが喋る。
    『冗談じゃないよ。恐ろしくて・・・思わず・・・オシッコがちびっちゃったなんて、・・・ううう、このお姉さん達には知られたくないよぉ』
     その横でグリーンが青い表情になっている。
    「ウギャオォォォォォ」
     そんな3人の耳に、巨大ミミズの叫び声が響いてくる。
     3人はほぼ同時に声のしてきた、沼の方に目を向けた。
     ズシュー。ズシュー。ズシュー。
     巨大ミミズが長い巨体をくねらせて、陸地に上がって来るところだった。
    「あーん。毛むくじゃらのお化けミミズなんか、大嫌いですぅぅぅ」と、声を上げるチャームにライラックが、「只のお化けミミズの怪物じゃないわ。・・・ヤツの先端を見て。赤く光っているのは、ブラッド・オパールよ」と告げた。
     チャームの目はライラックの指の指す方向を見た。
    「あらら・・・。こんな所にも居たんですか?。・・・それでどうします?」
     チャームが聞く。
    「何を決まり切った事を聞いているのよ。あのミミズの化け物を倒して、ブラッド・オパールを手に入れるのよ!」
     ライラックはそう言いながら、グリーンの身体を縛ってある鎖を外してやった。
    「これでいいわ。グリーン安全な場所に逃げて!。チャーム魔法の援護を頼むわよ!」
     ライラックは剣を手に巨大ミミズの方に振り向く。
    「大きなミミズさんって・・・気持ち悪いなぁ・・・」と呟きながら、ライラックの背中越しに魔法書を開く
     チャーム。
    「あたし達の戦う相手に、可愛い物なんかいないわよ。・・・それとも可愛く見えるか、あのミミズの頭にリボンのひとつでも付けてみる?」
    「あんまり想像したくないから・・・いいです」
     ライラックの提案に、チャームは顔を左右に振って拒否をした。
    「それじゃ会議は終わりね。行くわよ!」と、ライラックは言った。
     チラッと回りを見渡す。グリーンの姿は見えない。どこかに無事隠れたようだ。
    「ブシュュュュュュー」。巨大ミミズがいよいよ迫って来る。
    「あいつは、ミミズと言っても巨大な身体だから、それほど敏感には動けないと思うわ。身体の側に付いてしまえば、死角だらけだと思うから、あたし達の方に勝機があるわ。・・・チャーム、あたしがヤツに取り付けるように、注意を引きつけておいてよ。いいわね!」
     ライラックとチャームは急いで左右に離れた。
     進んで来た巨大ミミズは動きを一瞬止めた。明らかに、どちらの獲物に目標を決めようかと、迷っているようだった。
     ライラックが目で合図をする。
     チャームは魔法書のページを破り取り、巨大ミミズの方に投げつける。
    「氷刃っ!」。チャームが叫ぶ。
     シュューッ。ズシャッ、ズシャッ、ズシャッ、ズシャッ、ズシャッ。
     十数個の氷の刃物が巨大ミミズの身体に突き刺さる。
    「ギュオォォォォー」
     巨大ミミズの頭部がチャームの方に向いた。
    「今だっ!」。
     ライラックは一気に巨大ミミズの身体の近くに走り込んだ。
     近くで見ると、巨大ミミズの身体は黒く長い毛で覆われていて、皮膚はぶよぶよと動いていた。
     剣でひと刺しすれば、アッという間に体内の物が出てしまい、この怪物ミミズは直ぐに死んでしまうとライラックには思えた。
     ライラックは剣の柄を両手で握りしめて、大きく振り上げた。
    「やぁぁぁぁっ!」。ズバァァァァ!。
     ライラックの剣が巨大ミミズの身体を突き刺した。
    「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!」
     ズババババババババババァァァァァー!。
     突き刺した剣を一気に移動させていき、巨大ミミズの身体を切り裂いていく。
     切り裂かれた傷口から、黄色みかかった液体がドロローと流れ出してくる。
     しかしそれだけだ。・・・それ以上の物は出てこない。
    「なに?」。ライラックは思わず声を上げた。
    「ブシュュュュュー」
     ズニュュュュー。巨大ミミズの頭部が持ち上がりライラックを見下ろす。
     口の部分が大きく開き、ヒクヒクと動いている。
     その口でライラックを飲み込もうとして、ライラック目掛けて迫ってくる。
    「はぁっ!」。ライラックはその場所をジャンプをして離れる。
     グワッシャーン。突然目標を失った巨大ミミズの先端が地面に激突して、地面の土を弾き飛ばした。
    「ギュュュュュー」。直ぐに頭部を満ち上げて、目標のライラックを探す。
     十数メートル先に立っている。
     ズギュウウウウウ。巨体をうねらせてライラックに迫って行く。
     巨大ミミズの先端には、赤く輝くブラッド・オパールが浮き出ている。
     ライラックは迫って来る巨大ミミズの動きから身をかわし、手にしている剣を巨大ミミズの身体に再び突き刺した。
    「これでどうだっ!」。グサッッッッッ!。
     巨大ミミズは、身体を急には止める事が出来なかったので、突き刺されただけの剣で身を大きく切り裂く事になった。
     ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ、ブシュー。
     数メートルにわたって一直線に切り裂かれた身体の部分から、決壊した洪水のように体液がドッと流れ出してきた。
    『これで、こいつの動きも少しは鈍くなるだろう』
     ライラックはそう思って、巨大ミミズの先端を見た。
     しかし巨大ミミズには、それだけではダメージを与える事にはならなかったのか、それとも痛みを感じる事がないのか、一向に動きが鈍くなる様子はなかった。
     その証拠に巨大ミミズは、身体をグッと縮めると、信じられない事に地面を縮めた身体の後部で、地面を蹴って百メートル先まで飛んでいった。
     ギュウウウーン。・・・ズガシャァァァァーン!。
     地響きを立てて、巨大ミミズが着地する。
    「う、う・・・うそ?」
     ライラックは、信じられない物を見たというような顔で、目を丸くしていた。
    「グニュウウウウウー」
     ズザザザザザザァァァァァー。
     巨大ミミズがライラックの方へ向かって、一直線に向かって進んで来る。
    「ば、ばかなっ!」。ライラックは自分の目を疑った。
     巨大ミミズの動きはヘビのような速さで迫って来た。
     予想もしない相手の動きを見て、ライラックの反射神経は一瞬、動くのが遅れた。
    「し、しまった!」
    「シュグワァァァァァァ」。ズザザザザザザザザー!。
     巨大ミミズの開いた口と巨体が、ライラックの正面に迫って来た。
    「う、うわぁぁっ!」
     巨大ミミズがライラックの身体に触れそうになった瞬間、すんでの所でライラックの両足が地面を強く蹴り、身体を横の方に飛ばす事が出来た。
     身体が地面の上を転がった。
     ライラックは完全に体勢を崩してしまっていた。しかも持っていた剣が手からこぼれ落ちてしまった。
    「くそっ!」
     倒れているライラックの身体を通り過ぎた巨大ミミズは、土煙を上げて俊敏に身体の動きを止めると、上半身を持ち上げるように上空に上げた。
    「グワァゥー!」。
     巨大ミミズは巨大な身体をくねらせて、ライラックの頭上から襲いかかって来た。
     俯せに倒れているライラックには、逃げ出せる時間的余裕がなかった。
    「うわぁっ!」。
     ライラックのひきつった顔が頭上を見上げる。
     ライラックの面前に、巨大ミミズの身体がすごい速さで近づいて来た。
    『だめだ!。もう逃げられないっ!』。ライラックは叫んだ。
    「ライラックさん、危なぁい!。雷破(らいは)!」
     チャームは魔法書のページを1枚取ると、空中に投げ上げ叫んだ。
     すると、投げ上げられたページは瞬時に空中でフッと消えて無くなり、その瞬間、目も眩む雷光が、一筋上空から巨大ミミズの身体に向かって、大音響と共に流れ落ちた。
     ピカッ!。ドワッシャーン!。
    「グギャァァァ!」。雷が巨大ミミズの身体を直撃をした。
     巨大ミミズは雷の雷撃に弾かれるように吹き飛ばされ、ライラックの居る場所を逸れて地面に叩き付けられた。
     ドドドォォォォーン!。
     巨大ミミズは全身を雷の電気で焼かれ、黒こげの身体のあちこちからは、煙や炎が見えていた。
    青い空の何処から雷が落ちて来たのか、ライラックには見当がつかなかった。
    「ウギャーオォォォーン!」
     巨大ミミズは尚もライラックを襲おうと身体を動かした時、再度チャームが叫んだ。
    「雷破っ!」。ピカッ!。ドシャァァァーン!。
     青空の一角から突然大音響と共に、稲妻が巨大ミミズめがけて落ちて来たのを、今度はライラックの目がはっきりと見ていた。
    「グギェェェェェェーッ!」
     高電圧の雷が巨大ミミズの身体を再度直撃した。
     バリバリバリ!・・・。
     雷の電気に打たれて、硬直したように身体を伸ばした巨大ミミズは、ドドドドドー・・・と、音を立てて倒れた。
     そして、ズシャァァァァーーーン!。
     再び雷に打たれた巨大ミミズは、全身黒こげになって地面に転がった。
     ピクピクと痙攣をしていた巨大ミミズは、次第に動きを止めていった。そして身体全体が砂へと変化していった。
     巨大ミミズの形をした砂の塊は、やがてザザザァァァーと崩れていった。
     コロコロコロ・・・。砂の中からブラッド・オパールが転がり出てきた。
    「これで、前回の山犬の夫婦のと合わせて・・・3つになったわね」
     ライラックはブラッド・オパールを掴むと、皮の袋に詰め込んだ。
    「ライラックさん、あたしが間違えた道を教えたから、ブラッド・オパールを手に入れる事が出来たんですからね」
     チャームがウインクをしながら、ライラックの耳元でそっと囁いた。
    「はいはい。・・・感謝しています」。ライラックは溜め息の混じった言葉で答えた。
    「すごいなぁ」。そんな2人を、グリーンが岩陰からじっと見つめていた。
     その夜ライラックとチャームは、いつもの通り野宿をする為に森の中にいた。
     ・・・あの後2人は村へ行き、村人達が恐れていた巨大ミミズの怪物を倒したからと言っても、誰も家の中から出て来てはくれなかったのだ。やはりライラックのあの噂が災いしていたようだ。
     2人の淡い期待は脆くも崩れてしまった。・・・今夜は村を救った勇者として、温かい食事や、ベッドの中での睡眠が・・・。
     普通ならば、文句の言葉のひとつも出てくるチャームであったが、噂の原因のもとが自分であるので、今回はチャームは何も言わなかった。
     ただ、「ライラックさん、人の噂も75日と言いますから、その内にそんな噂も消えてしまいますよ」と、慰めにもならない言葉を言っただけであった。
     ましてや2人は、一文無しにはかわりはないのであった。
     ライラックとチャームの2人は、焚き火をはさんで座っていた。
     そこにグリーンが近づいて来た。
    「グリーンじゃないの?。こんな夜更けにどうしたの?」
     ライラックの問い掛けに、グリーンは「僕は・・・何処にも行く当てがないんです。・・・もし良かったら、ライラックさん達と一緒に行ってもいいですか?」と寂しそうな声で答えた。
     グリーンの寂しそうな顔を見て、ライラックは「かまわないわよ。あたし達は、ある公爵の館に帰るところなのよ。行く当てが無いのなら、ついて来るといいわよ」と軽く承諾した。
    「ありがとうございます。・・・これ・・・僕を魔物の生け贄から助けてくれたお礼です。食べて下さい」
    グリーンは満面の笑みを浮かべて、カバンの中から取り出したパンと塩付け肉とワインの小瓶を、ライラックとチャームに渡した。
    「これどうしたの?。あなたまさか・・・」。ライラックが聞き返した。
    「違います!。違います!。これは僕のお金で買ってきた物ですから・・・。遠慮しないで食べて下さい」
     グリーンのその答えに嘘が見えなかったので、ライラックは、「それでは、ありがたくいただくわ」と嬉しそうに答えた。
     ライラックとチャームとグリーンは焚き火を囲んで、ささやかな夕食の宴を取った。
    「ふぁぁぁぁぁ。眠くなってきちゃった・・・」
     チャームが大きなあくびをすると、ウトウトとしだした。
    「昼間、あのミミズの怪物と戦ったから、その疲れが出てきたのかも知れませんね」
     グリーンはチャームに語りかけると、ライラックの方に目を向けた。
     ライラックも、すでに夢の中へと入り始めていた。
    「毛布を着ないと、風邪を引きますよ」。グリーンが声を掛ける。
     ドサッ。ライラックとチャームは倒れるように横になると、寝息を立てて寝込んでしまった。
     2人が寝込んだのを確認したグリーンは、「ワインに入れてあった、眠り薬が効果を現したな。・・・さてと、あの親方に早いところ知らせてくるか」と含み笑いをしながら立ち上がった。
    「・・・・・・・・・・・・」
     ぐっすりと寝込んでいるライラックの顔は、それは幸せそうであった。
     何も心配事が無いような表情である。
    「むにゃむにゃ・・・。う~ん、ドンドンともっと来てよ。・・・こんなもんじゃ・・・まだ足りないんだから。・・・むにゃむにゃ・・・。う~ん・・・、もっと精力の強い・・・男はいないの?。・・・むにゃむにゃ・・・」
    〔ライラックがどのような夢を見ているのかは、これを読んでいる読者の想像に任せる事としよう(笑)。〕
     しばらくして、『ライラック。聞こえるか?。ライラック・・・?』と呼び掛けてくる声がしてくる。
    『う~ん・・・。誰よ、あたしの楽しみの邪魔をするのは・・・?』
     夢の中でライラックは、謎の声に向かって抗議の声を上げた。
    『邪魔をして悪かったな。・・・私はフォレックス公爵という者でね』
     公爵は皮肉めいた挨拶を告げた。
    『フォレックス・・・公爵・・・?。・・・フォレッ・・・クス・・・。きゃっ!。フォレックス公爵なの?。』
     ライラックは夢の中で飛び起きてしまった。・・・だがこれはまだ夢の中だ。
     寝ているライラックの頭の中に、久しぶりにフォレックス公爵の声が、聞こえてきたのだ。
    『公爵?。・・・本当に公爵なの?』
    『ああ、私だ。お前達が填めている隷属の首輪によって、お前達に私の言葉を伝える事が出来るのだ』
     やっぱり公爵からのテレパシーだ。・・・ここまで届くようだ。
     それにしても、こういうところで聞くと、何かしら心が安心する気持ちになる。
    『・・・長いこと戻ってこないと思っていたら、随分と場違いな所に居るんだな。』
     公爵の声が笑いを堪えているのがよく分かる。
    『公爵。変な我慢をしていないで、笑いたかったら笑いなさいよ。・・・どうせ、どういう道筋をたどったら、館からまるっきし逆の国境まで行くんだ・・・と思っているんでしょう?。・・・あたしだって好き好んでここまで来た訳じゃないんだから!』
     ライラックは、今までの溜まった不満を一遍に吐き出すように、捲し立てた。
    『ははは・・・。その言葉からすると、かなり訳ありの状態を体験したんだな。ははは・・・』
    『もういいわよ。好きなだけ笑いなさいよ。公爵!』
     ライラックは半分自棄気味に、公爵の言葉に対応した。
    『ふふふ・・・。これは失礼・・・。それでこれからどうやって戻って来るんだ?』
     公爵が聞いてくる。
    『どうもこうもないわよ。来た道を戻るしかないでしょう。・・・チャームと一緒だから、問題なく戻れるかどうかは、分からないけども・・・』
    『ははは。・・・そうか不安か。・・・それでお前達は歩いて帰って来るのか?。それとも食事付きの馬車に乗って帰って来るか?。どっちにするライラック?』
    『え?。・・・食事付きの馬車?。・・・公爵!、それがあるのなら、もっと早く用意してよっ!。これ以上無一文の状態で、ダラダラと歩いて帰るわけには行かないわよ。』
     ライラックは公爵の提案に喜んで飛びついた。
     公爵の笑い声がライラックの頭の中から消えていくと、ライラックは「はっ!」として目をさました。
    「・・・ゆめ?・・・」
     ライラックの記憶の中には、夢とも真実とも付かない公爵の声が残っていた。
    「あれは・・・、公爵からのテレパシーだったんだろうか?。・・・確か、公爵は・・・帰りの馬車を用意してくれるような事を、言っていたような・・・。それとも、夢だったのかな?」
     ライラックは2度3度と顔を左右に振って、頭の中を整理しようとした。
     ライラックの目の前には、安らかな顔で寝ているチャームがいた。
    「心配のない顔で寝ているわね。・・・くすくすくす・・・」と微笑んだライラックは、一緒にいたグリーンの姿が見えなくなっているのに気が付いた。
    「グリーン?。・・・グリーン、何処に行ったの?」
     ライラックはそう言った後、急いで剣を取ろうとした時、自分の横に置いてあったはずの剣が、無くなっている事に気が付いた。
     大事な剣がないっ!!。
    「まさかグリーンが、あたしの剣を?・・・チャーム・・・はっ!」
     ライラックは寝ているチャームに声を掛けて起こそうとした時、ガシャッという音と共に、数本の剣先がライラックの首筋に突き付けられた。
    「ふぁぁぁー。・・・らいらっくさんどうしたんですか?・・・え?」
     異変を感じて目を覚ましたチャームの身体にも、数本の剣が突き付けられた。
    「ほぇぇぇぇー。ライラックさーん、この人達は何ですかー?」
     チャームは情け無い声で聞いた。
    「奴隷狩りをしている連中のようね。・・・どこかの奴隷商人の手下じゃないの?。・・・くそっ!」
     ライラックは吐き捨てるように呟いた。
     ガチャン。ガチャン。
     男達は、ライラックとチャームの両手を後ろで手枷でつないだ。
     両方の足首にも、短い鎖の付いた足枷が填められた。
     ライラックとチャームは、男達に引きずられるようにして、奴隷商人の所に連れて行かれた。
     奴隷商人の隊商は、森を出てしばらく歩いた原っぱの場所に、数台の馬車を止めて夜営をしていた。
     馬車の荷台には、あちこちの町々の市場で売る為の荷物や商品が、シートを掛けられて積み込まれていた。
     そして多分それは、ライラックのように息をしている、『奴隷』という名前の商品だろうと思われた。
     奴隷商人は、馬車の側に立ててある大きなテントの中にいた。
     ライラックとチャームを見つめている奴隷商人は、エラの張った四角い顔をしていた。太い眉毛に細い目、細長い口髭が左右に生えている。薄い髪の毛の生えた頭には、小さなキャップのような帽子を被っていた。着ているチャイナ服は足下まである長い服だ。
     奴隷商人は、ライラックとチャームの横にいる手下達に、2人の着ている服を剥げと指で合図を送った。
     ビリビリビリッ!。奴隷商人の目の前でライラックとチャームの着ている服が、男達の手で容赦なく引きちぎられていく。
    「や、やめろっ!」。ライラックが叫ぶと、首筋に剣先が突き付けられる。
    「静かにしなっ。奴隷は裸でいるのがお決まりなんだよ。へへへ・・・」
     ライラックとチャームの裸体は、奴隷商人に嫌と言うほど、身体中をジロジロと眺められた。
     ぐにゅう、ぐにゅう、ぐにゅ。
    「この女の胸は、揉み心地がいいですぜ」
     男の手がライラックの乳房を乱暴に揉んで、揉みごごちを商人に嫌らしく告げた。
     ずにゅ、ずにゅ、ぐにゅ。
    「見て下さい。こいつは処女ではないですが、まだそれほど使い込んでは、いないようですね」
     無理やりヴァギナに指を入れられ、左右に押し広げられて、中を見られてしまう。
     ぐっ、ぐっ、ぐにゅぅぅぅ。
    「ケツの穴の方も、まだ締まりがいいですぜ。へへへ」
     腰を屈めさせられ、細長い棒を無理やり入れられて、アナルの締まり具合も調べられてしまった。
    「へへへ・・・。親方、こいつらを色々と仕込んだら、いい商品になりますぜ。」
     男の指がライラックのヴァギナの中で、いやらしく動かされている。
     ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。
     ライラックの意志に関わらず、ヴァギナの奥からは淫液がトロローと溢れ出し、指に絡まって濡れた音を立てていた。
    「くっ!」。
     ライラックはこの屈辱的な検査を、顔を恥ずかしさで赤くしながらも横に向け、歯を食いしばって堪えていた。
    「ぐへへへへ・・・」。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
     男はそんなライラックの姿を楽しむように、しばらくの間、指を動かし続けていた。
    「ぐっ・・・。うっ、・・・はぁ、ん・・・あん、あう・・あう・・・あ、う・・・」
     指の動きは、ライラックの身体と感性を段々と高揚させ始めた。
     ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。
    「はぅ、はぅ、はは、ぁぁ。あん、あ、ん。・・・うん。い、いい、いいい・・・」
     ライラックの口の隅から涎が滴り落ち、ヴァギナの口から溢れ出た淫液が、陰毛と太股を濡らしてキラキラと光っていた。
     ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。
    「はが、はが、はう、はう、・・・はぐ、は、ぐ・・・」
     いやらしい音を立てて、淫液の中で指が動き続ける。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
     ライラックの歯が小刻みに振るえ、ガチガチと音を鳴らした。
     ヌチャ。ヌチャ。ヌチャ。ヌチャ。ヌチャァァァァァ!。
    「ひゃ、ひゃ、あう。ひゃ、ひゃぁぁ。・・・」
    「そろそろ、ゴールインさせてやるか。へへへ・・・」
     男はそう言うと、ライラックの大きくなっているクリトリスの頭を指で軽くつね回した。
     グニュッ!。グニュッ!。「ひゃぁぁぁぁぁ!」。背筋に電気が流れたような感じがした。
     男の舌が硬く立っている乳首を舐め回す。
     ネチャ!。ネチャ!。ネチャ!。ネチャ!。
    「だ、だ、だぁ、だっめぇぇぇぇぇっ!」
     ライラックは絶頂のオーガズムを迎えた叫び声を上げると、身体全体をガクガクと痙攣したように大きく振るわせ、ガックリと首をうなだれた。
     ライラックは男の指で、屈辱的にイカされてしまったのであった。
     ガシャーン!。
     馬車の荷台にある2つの檻の中に、裸のライラックとチャームは手枷と足枷を填められたまま、それぞれ入れられた。
     男の指で弄ばれイカされたライラックのヴァギナは、淫液でベトベトに濡れ頭の中はボーとしていた。
     身体も火照って熱くなっていた。
     檻の中でライラックの情け無くグッタリとした姿を、ニヤニヤした顔で見ていた奴隷商人は、馬車の影から現れた人影の方に顔を向けた。
    「どうだい、良い獲物だったろ?」。
     人影はそう言いながら、松明の近くに近づいた。
     明かりに照らし出されたその顔は、「グリーン」だった。
     グリーンは、檻の中のライラックとチャームを覗き見て、ニヤリと笑い、手を開いて奴隷商人に突き出した。
    「奴隷狩りに協力したんだ。さあ。約束の金をもらおうか。奴隷2人分だよ」
    「金を払う前に約束の確認をするあるネ。・・・たしか、捕らえた奴隷はその身体を含め、その持ち物も全て、私の所有物となるあるネ。奴隷狩りに協力したあなたには、奴隷の人数分の礼金を支払う。・・・そうだったあるネ?」
     奴隷商人がグリーンに確認の言葉を言った。
    「そうだよ。さあ。さっさと渡してよ」。
     グリーンが答える。
    「あなたが約束を忘れていないならば、この女から奪い取った、剣とオパールの宝石を入れている皮の袋を、私に渡すあるネ。猫ババはイケナイあるネ」
     奴隷商人はグリーンの背中に背負っている剣と、肩から下げているグリーンのカバンを指さして告げた。
    「な、何を言っているんだよ。こ、これは元々僕が隠し持っていた剣なんだ。それにカバンの中になんか、そ、そんな宝石は入っていないよ」
     グリーンはしどろもどろになりながら反論をした。
    「坊や。私の目は誤魔化せないあるネ」。
     奴隷商人がズバリと言った。
     グリーンはこれはマズイと思ったのか、急に夜の森の中へ逃げようとした時、背後に商人の手下の男が棒を持って立ったかと思うと、「ガァーン」と後頭部に強い衝撃が走って、グリーンは気を失ってどっと倒れた。
     奴隷商人は吐き捨てるように呟いた。
    「子供が嘘をつくイケナイあるネ。嘘は泥棒の始まりと言うあるネ」
    「親方、この小僧は元々盗賊ですぜ」。
    「確かにそうだったあるネ。わっははははは・・・」
     手下の言葉を聞いて、奴隷商人が大声で笑った。
    「それでこの小僧をどうします?。首を縄で縛ってテルテル坊主のように木に吊しますか?。それとも
     身体中を縄でグルグルに縛って、蓑虫のようにして木に吊しますか?」
     縄を持った手下が聞いてくる。
    「そうあるネ。・・・この世界(業界)でルールを守らないとどうなるか、その身体に教えてやらないといけないあるネ・・・」
     奴隷商人は2つの月を見上げながら、グリーンの処置を考えていた。
     一方、気を失って倒れているグリーンの少女のような可愛い顔に、女の子のような華奢な身体を見て、奴隷商人の手下の1人が髭面の顔をニヤつかせながら、『ぐへへへ・・・。可愛い尻だぜ。・・・まったく俺好みの尻でたまらないな・・・』と半ズボンの上からグリーンのお尻をいやらしく撫で回していた。
    ----------------------------------------
     その頃、同じ月の下、北方のある国の王宮の中では、強力な魔法を使う謎の魔女によって、せい惨な状態に陥っていた。
    「オーホホホホ・・・。もう何処にも逃げられないわよ」
     豪華な家具やシルクのカーテンで覆われた部屋の一角に、この国の若い王妃と幼い王子と王女が、追い詰められていた。
    「もうこの城の中には、私に手向かう者は誰ひとりいないわ。オーホホホホホ・・・」
     王子と王女を背中に隠した王妃が、魔女を睨み付けた。
    「王室占い師として入り込んだ、あなたの正体にもっと早く気が付いて、国王に伝えるべきでした!。・・・」
    「残念だけども、伝えるべき国王はこうなったわよ」
     魔女が呪文を唱えると、突然天井から頭や手足をバラバラにされ、身体中を引き裂かれた国王が、血だらけになって床に落ちてきた。
     グシャッ!。飛び跳ねた鮮血が、王妃の着ている白いドレスを赤く染めた。
    「見ちゃだめっ!」。
     国王の無惨な姿を幼い子供達に見せまいと、王妃は子供達の身体を強く抱きしめて蹲った。
    「もう、お前達には何も出来ないのさ。オーホホホホホ・・・」
     魔女の恐ろしく冷たい笑い声が、殺戮がおこなわれた王宮に、いつまでも響き渡っていた。
    《 あとがき 》
     こんにちは。九尾きつねです。
     ブレーク・パーティーの第3話目を、読者の皆様にお届けいたします。
     今回はサブタイトルにもある通り、公爵の館へ帰る道筋での、ちょっとした寄り道編です。(笑)
     ライラックに言わせれば、「好き好んでここに来た訳じゃない!」との事ではありますが・・・。(笑)
     ここで新たに出てきた人物達が、ライラック達と物語の中で、今後どのような関わりを持っていくのか?。・・・盗賊少年のグリーンは敵か味方か?。ライラックとチャームを買い取った奴隷商人は何者か?。小説の最後に出てきた謎の魔女とは?。・・・そして、奴隷商人に捕らえられたライラックとチャームの運命は?。・・・そうそう、フォレックス公爵の牝奴隷として飼われる事となった、ナナーとニニーの幼い姉妹に待ち受ける調教の責め苦とは?。そして最後に、グリーンのお尻に迫る危険は回避できるのか?。(笑)
     何やらこう書いていくと、今後の展開が気になって、作者本人が妙にワクワクしてしまう、気持ちになってしまいます。(笑)
     そのくせ、これからの展開は、何も考えていないんですから。(笑)
    (本当に大丈夫なのか?。作者よ。)
     それでもこれだけは言えます。ライラックとチャームの活躍を、次回以降もどうぞお楽しみ下さい。・・・と。
     ・・・と言う訳で、次回は今回よりも面白くなるような小説を書いていきたいと思いますので、どうか今後も応援をお願いいたします。
     それではまた、次回の作品でお会いいたしましょう。

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年前

    〈 森に住むお犬様は良く吠えるの巻 〉
    「冗談ではないわっ!」
     ライラックは叫ぶと、腰の剣を抜き、フォレックス公爵に剣先を向けた。
    「なぜあたしが、あなたから奴隷調教を受けなくてはならないのよ!」
     公爵を見るライラックの目が、怒りに震えている。
    「あたしは剣士よ!。奴隷ではないわ!」
     館の広い謁見の間に、ライラックとフォレックス公爵がいる。
     豪華なイスに座っている公爵は、ライラックの怒りの叫びを黙って聞いていた。
    「そうかな・・・。蝙蝠人が襲ってきた夜に、館のベランダで『ご主人様!』と叫んで、オナッていたのはどこの誰だったのかな?」
     公爵は、ライラックに向かって、ニヤ付きながら問いただした。
    『うっ・・・(見られていたんだ!)』
     ライラックの表情に一瞬動揺が走るが、それを隠すように大声で叫んだ。
    「あたしには剣士としてのプライドがあるのよ!」
     怒りのため剣を持つ手がブルブルと震えている。
     ライラックと公爵の間に緊張の時が流れた。
     しばらくして、氷のような視線をライラックに投げ掛けていた公爵の口が開いた。
    「お前が何と言おうと、お前は私の牝奴隷になるのだよ。その為にお前はここに居るのだから」
    「ちがうっ!。あたしは魔物と戦う為にここに来ているんだ!。ブラッド・オパールを探す為に公爵の所に居るんだ!」
     ライラックは懸命に反論する。
    「いや。お前は私の牝奴隷になる為に、ここに居るんだよ。・・・お前は四つん這いになって、私の靴にキスをして、そして靴を舐めながら濡れている自分のアソコを私にさらすんだよ」
     公爵の冷静な言葉が続く。
    「ちがう!、ちがうっ!」。
     ライラックは、叫びながら顔を激しく左右に振ると、再度剣を公爵に向けてかまえた。
     ガシャッ。
    「それ以上剣士であるあたしを侮辱すると、・・・たとえ公爵である、あなたであっても容赦はしないっ!」
     ライラックの怒りの言葉を聞いても、公爵はまるっきり意に介さず、意味ありげな含み笑いをしている。
    「ふふふ・・・。牙を剥くほどの牝犬を従順にするのは、さぞや調教のやりがいがあるだろうな。・・・私はお前の剣士としてのプライドをズダズダにして、私の前では只の牝犬の奴隷にしてやるからな」
     ライラックの顔が怒りのためワナワナと震え、歯がガチガチとなっている。
    「ゆるさない!。・・・死ねっ!!!」
     ライラックは叫び声と共に、公爵に向かって飛び掛かっていった。
     その瞬間、ライラックの首に填められている「隷属の首輪」が一瞬鈍く光った。
    「うがっ!」。
     ライラックは短い悲鳴とも叫びとも付かない声を上げると、彼女の身体は動きを突然止めてしまった。
     身体全体が、電気にでも打たれたような、強烈な痺れが、背骨を駆け上ってきて、脳細胞の中を激しく打ち据えた。
     カラララーン。手に持っていた剣が足元に落ちた。
     ライラックは身動き一つ出来ず、立ったままの状態になっていた。
    「あ・・・あう・・・あ、あう・・・」。
     声さえ出す事が出来ない。・・・いや、口さえ動かす事が出来ず、開いたままの口の端からは、涎が溢れてきて身体の方に滴り落ちていく。
     イスに座っている公爵は、人形のように身動きの出来ないライラックに向かって、話を始めた。
    「以前にも話したとおり、『隷属の首輪』を首に填めた者は、私によって力を制御される魔法が掛けられているのだよ。そして今は、お前の戦う力が封印されたんだよ」
     ライラックの身体は、人形のように動かなくなっているが、彼女の精神は普通のままである。だから公爵の話す言葉は耳に入ってきていた。それも耳を塞いでいたいような言葉が川の流れのように、滔々とライラックの耳の中へと流れ込んでいた。
    「お前の剣士としてのプライドを、1枚づつ剥ぎ取っていってやるよ。そうすれば、最後には自分から何の迷いもなく、牝犬の姿になる事が出来るだろうよ」
     公爵は人差し指を軽く動かすと、ライラックの身に着けている鎧や衣服や靴がまるでガラスが砕け散るように、一瞬の内にバラバラになって床に散らばってしまった。
     ライラックは生まれたままの姿で立っていた。
    『やっ!』。ライラックは心の中で叫び声を上げて、両手で胸や股間を隠したかったが、動かない身体は、公爵の目に全てをさらし続けていた。
     公爵の視線が、ライラックの乳房や陰毛が濃く生えている股間に集中しているのが、痛いほど分かる。
     顔をそむけたい・・・だがライラックの顔は公爵を睨んでいる姿で動かなくなっているので、イヤでも公爵と視線が合ってしまう。
    『いや・・・。お願いもう許してよぅ・・・』
     顔の表面が恥ずかしさでうっすらと赤くなってくる。
    「その首輪はお前の能力を制御するだけではない。お前が私を襲って害を加えようとしたり、自ら自分の命を縮めるような自殺をしようとした時には・・・」
     公爵はそこまで言うと、喋るのを止めてニヤリと不敵な笑いをするのであった。
     ライラックにはそれがまた不安をかき立てた。
    「・・・・・・・・・・・・・・・・」
    「・・・・・・!?。・・・・・ひっ!」
     突然ライラックの身体中が疼きだし、身体中がブルブルと震え出した。
    『な・・・なんだ?』
     身体の奥からは、押さえる事の出来ない感情の高ぶりが沸き起こってくる。
    「・・・・くっ、・・・うっ、・・・あ、うっ・・・」
     ライラックは懸命に身体の疼きに抵抗をしようとした。
     しかし疼きの高ぶりは、段々とライラックの心と精神を浸食していく。
    「は、あ・・・あ・・・は、ぁ・・・あう、あう・・・」
     身体中が小刻みに振るえ、汗が噴き出してくる。・・・いやそれどころか、ヴァギナの奥からは女としての汁が溢れ出してきていた。
    「は、あ、ぁぁぁ、あん、あん・・・」
     溢れ出した淫液がラビアを濡らしてキラキラと光っている。
     淫液の雫がポタ、ポタと床に滴り落ちていく。
     ライラックは直ぐにでも、指を使ってヴァギナの中を掻きむしりたいような衝動に駆られていた。
     ライラックの身体が、明らかに変化を現している事を認めた公爵は、先程の言葉の続きを話し始めた。
    「・・・その首輪に掛けられている魔力によって、お前の快感神経が激しく刺激をされて、危険な行為を止めさせる事になるんだよ。ふふふふ・・・しかもそれは、私の中止命令があるまで、お前の身体を疼かせ続ける事になるんだよ。しかもその刺激の快感は、決してお前を完全にイカせる事が出来ないようになっているんだよ。お前はイク事の出来ない快感の地獄を、何時間も何日も味わい続ける事になるんだよ」
    『そ、そんなのは・・・いやぁぁ』
     ライラックの叫びが心の中にこだまする。
     公爵の言葉を聞いた事で、ライラックのヴァギナから溢れ出してきている淫液は、より一層の勢いを持って床に滴り落ちていった。床には淫液のたまりが小さく出来ていた。
     ライラックの目から涙が溢れてくる。
     快感を全身に感じるんだけどもイク事は出来ない、指を使って自分自身でイク事も出来ない。
     ライラックの頭の中では、もう何も考えられなくなっていた。
    『ねぇ!。お願い!。イカせて!、イカせてぇぇ!』
     ライラックは快感の泥沼の中でのたうち回っている。
     人形のように立っている全裸のライラックの身体は小さく振るえ、ヴァギナからは止めどもなく淫液が床に滴り落ちている。
     公爵はそんな姿のライラックをしばらくは見て楽しんでいたが、左の手を軽く挙げて部屋の外から2人の衛兵を呼び入れた。
     衛兵達はライラックの両脇に来ると、ライラックの両手を背中に回して手枷で固定をした。
     ライラックの身体は、別に石のように硬く動かなくなった訳ではなく、あくまでもライラック自身の意志が身体に通じなくなっただけなのである。
    「さて、この続きは地下の調教室で続ける事にしよう。そこでお前は『剣士のプライド』を全て剥ぎ取られて、従順なただの『牝犬の奴隷』に生まれ変わるんだからな。どうだ楽しみだろう?」
     そう言うと公爵は大きな声で笑い、衛兵達にライラックを連れて行くように手で合図をした。
     剣士のプライドという言葉を聞いて、快感の中でのたうち回っていたライラックは、ハッとして我に帰ったが、両脇を抱えられ連れて行かれる今のライラックにとっては、どうすることもできない状況であった。
     ただ、声として出す事の出来ない叫びを、心の中で叫び続ける事しか出来なかった。
    『あたしは剣士だぁ!。牝犬の奴隷なんかにはなりたくないよぉ!』
     ライラックの身体は引きずられて、暗闇の中へと消えていった。
     悲痛な悲鳴を残して・・・。
    『牝犬なんか、いやあぁぁぁぁぁぁぁ!。』
    ----------------------------------------
    「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
     ライラックは大声で叫びながら飛び起きた。
    「えっ?」。チャームの顔がドーンと目の前にあった。
    「わっ!」。ライラックは慌てて1、2歩後ずさりすると、きょろきょろと辺りを見渡した。
     ライラックの目に、森の木々が映った。
    「はぁ、はぁ、はぁ・・・あ・・・こ、ここ、公爵の館じゃ・・・ないのね・・・」
     真っ青な顔で激しく息をするライラックとしては、やっとそれだけ言うのが精一杯であった。
     そしてホッとしたライラックは、大きく深呼吸をした。
    「ライラックさん・・・大丈夫ですかぁ?。・・・随分とうなされていたようですけども」
     チャームが心配そうな顔で尋ねてきた。
    「あたし達はブラッド・オパールを探しに、10日前に公爵様の館から旅に出て来たんじゃないですか?」
     チャームは今度は不思議そうな顔で聞いてきた。
    「・・・・・・・・・夢だったのね・・・・・」
     ライラックはチャームの質問には答えずに、ただ肩で息をしつつ、顔の汗を手の甲で拭うのであった。
    「・・・ほんとに心配をしたんですよ。・・・うわごとのように『牝犬、牝犬・・・』って言うもんですから、てっきりライラックさんは、犬のように何か毒のような悪い物でも拾い食いをしてしまって、それでこのまま死んじゃうんじゃないかって思ったんですよ」
     チャームは、良かった良かったと言うように、ニコニコして話をした。
    「え?、・・・そんなうわごとを・・・。で、何であたしが犬のように拾い食いをしなくちゃならないのよ。・・・チャーム、あなた本当にあたしの事を心配していたの?」
     ライラックは疑いの眼でチャームを見つめた。
    「当たり前じゃないですか!。・・・もしここでライラックさんに、もしもの事があったら・・・」
    「うんうん、もしもの事があったら・・・」
     チャームのきっぱりとした言葉に吊られて、ライラックはワクワクした気持ちで、同じ言葉を繰り返した。
    『きっと、「あたし困ります」とでも言うつもりなのね。やっぱりチャームは私を頼りにしているのね』
     そう思ったライラックは、チャームの口から出てくる続きの言葉を、ワクワクした気持ちで待ち構えた。
     チャームの口が開かれた。
    「こんな森の中で、いったい誰が死んだライラックさんを埋めるお墓の穴を掘るんですか?。あたしはそんな力仕事はいやですからね」
    ズゴーーン!!。
     チャームの思いもしない言葉を聞いて、ライラックは思いっ切り地面に顔をぶつけてしまった。
     ライラックはずっこけてしまったのだ。
    「あ、あんたねぇぇぇぇー」。ライラックは泣きそうな声を出しながら、地面の土が付いている顔を上げた。「勝手に、殺さないでよぉぉぉぉー」
     ライラックは期待した自分がバカだった・・・と言う気持ちになってしまった。
    「だってぇー・・・、まさか公爵様の館まで、ライラックさんの死体を担いで行く訳にはいかないでしょう・・・帰り着いた頃には、ライラックさんの遺体は腐って臭いがプンプンですよ・・・、それどころか目の玉は落ちるし髪の毛は抜けるし、ウジ虫がぞろぞろ・・・」とチャームの言葉に、「もうやめぇぇぇぇっ!。何が臭いがプンプンじゃぁぁぁー!。何がウジ虫がぞろぞろじゃぁぁぁぁー!」
     ライラックは怒りだしてしまった。
    「ライラックさん、最近随分と怒りっぽくなりましたね?」
     そんなライラックを見て、チャームは少し小首を傾けて考えた後、「あ。もしかすると『あの日』ですか?。毎月の『赤い定期便』がこんにちはって・・・」
     チャームは納得したように、にこやかな顔で言った言葉への、ライラックの答えは、森中に響いたんじゃないかと思われるほどのゲンコツの音であった。
     ゴォイィィィィ~~~ン。
    「いったぁぁぁぁ~い・・・。本気で叩かなくても・・・頭が割れたらどうするんですか?。・・・グスン」
     両手で頭を抱えたチャームが、膨れた顔をして、ライラックに向かって文句を言った。
    「そうね。一回チャームの頭を割ってみて、そんな事を考える脳味噌が、どうなっているのか見てみたいものね」
     ライラックはニヤリと口元をゆがめると、鞘から剣を抜いて見せた。
     剣の刃が、焚き火の炎の明かりを反射してキラリと光る。
    「え?。あ、あの・・・ライラックさん・・・・、そんな剣で頭を割られると、とっても痛いなと思うんですけども・・・」
     チャームの顔から血の気が引いていく。
    「なに、バカなことを言っているのよ!」
     ライラックは一言そう言うと、クルリと背を向けて、暗闇の森の方に剣を向けた。
     それに合わせるかのごとく、暗闇の中に無数の目が現れ、ライラックとチャームに殺気のある視線を投げ掛けてきた。
    「な、何ですか?」。チャームはライラックの背中に隠れた。
    「グルルルル・・・」。「ウゥゥゥゥゥ・・・」。
     謎の動物達は、唸り声を上げながら、森の中から現れて来た。
    「ライラックさん、オオカミですか?」。チャームが震えながら質問をした。
    「・・・いや・・・。イヌ・・・山犬の群だわ」
     ライラックは、謎の動物を山犬の群と看破した。
    「ガウゥゥゥゥゥゥゥ」。山犬の群は、ライラック達を取り囲むように迫ってきた。
    「いやぁ~ん。こわ~い!」。チャームがライラックの背中に、がっしりとしがみつく。
    「ちょっと!。離れなさいよっ。邪魔で動け無いじゃないの」
     チャームに背中にしがみついていられては戦えない。
     ジリジリと山犬達とライラックの距離が縮まっていく。
    「・・・・・・・」
    「ガウッッッ!」。チャームの背後から近づいて来た山犬が突然吠え立てた。
    「きゃぁぁぁぁっ!」。
     チャームは思いっ切り悲鳴を上げると、より一層ライラックの身体に強くしがみつき、悲鳴を上げ続けた。
    「きゃぁぁぁ!。犬さんが吠えたぁぁぁぁっ。こわい!、こわい!、こわいよぉ。あ~ん」
    「ちょっと!。離れなさいって言ってるでしょう!」
     思わずライラックは、背中にしがみついているチャームの方に顔を向けると、怒鳴りつけた。
     その瞬間、目線を外したライラックに向かって、山犬達が一斉に飛び掛かって来た。
     「しまった!」。スキを見せてしまったライラックは悲鳴のような叫びを上げた。
     ライラックの瞳に、牙を剥いて飛び掛かってくる山犬が映った。
     大きく開けた口に、ズラリと並んだ牙が見えた。
    『だめだ!。持っている剣が間に合わない!』
     山犬の牙が、真っ直ぐにライラックの首に向かって来ている。
     手に持っている剣を、構えるのに間に合わない。
    『噛み殺されるっ!』。ライラックの脳裏に、この言葉が鮮明に浮かび上がった。
    「うわっ!」。
     ズグァァッ!!。
    「ギャァィィィィィーン!」
     思わずグッと目をつぶったライラックは、山犬の噛みついてくる痛みの代わりに、山犬の叫びと共に自分の顔にピチャッとした液がふりかかったのを感じた。
    「なに?」。ライラックはとっさに目を開き状況を確認する。
     飛び掛かって来た山犬は、どこからか飛んで来た矢を首筋に受け、口から血を吐きながら地面に落ちていくところであった。
     ドサッ。地面に倒れ落ちた山犬は四足をピクピクと数度痙攣すると、そのまま死んでしまった。
    「今だっ!」。ガシャ。ライラックは体制を立て直し、剣を山犬達に向け直した。
     ビュッ。ビュッ。ビュッ。
     グサッ。グサッ。グサッ。
    「ギャーン」「キャッン」「ギャイーン」
     矢は暗い森の中から飛んで来ていた。そして、面白いように山犬達の身体に刺さっていく。
     キャン、キャン、キャン、キャン・・・。
     ライラックとチャームを取り囲んでいた山犬の群は、鳴き声を残して暗い森の中へと消えて行った。
     山犬達の声に支配されていた場所が、再び静寂に帰った。
     ライラックはホッとする間もなく、剣を構える姿勢を解かなかった。
     山犬の群に矢を射掛けた謎の人物が、ライラック達の味方とは確認がまだ出来ていなかったからだ。
     ライラックとチャームは息を殺して、矢が飛んで来ていた方向を凝視し続けた。
     ガサ。ガサ。ガサ。暗闇の中からその人物が近づいて来る。
    「ラ、ライラックさん・・・山犬達を追っ払ったんですから・・・味方の人ですよね・・・」
     チャームが恐る恐る声を出した。
    「・・・ならば・・・いいんだけどもね」
     ライラックは冷静に答えると、近づいて来る足音の方に注意を注いだ。
     ガサ。ガサ。ガサ。ガサ・・・。
     暗闇の森の中から姿を現したのは、弓を持った1人の男であった。
    「あんたら怪我はなかったかい?」
     男は矢が刺さって死んでいる山犬を確認しながら、ライラックに声を掛けた。
    「ええ・・・、あなたの弓のおかげで助かりました。礼を言います」
     ライラックが答える。
    「でもよく私達が、山犬達に襲われていたのが分かりましたね?」
     今度はライラックが逆に質問をした。
    「山犬達の鳴き声がおかしかったんでね。・・・この森に長いこと住んでいると、山犬や狼の鳴き声で色々と変化が分かるんだよ」
     男が答える言葉を聞きながら、ライラックはその男の姿、身なりを観察をした。
     歳の頃は50歳くらいか?。
     ごつい顔立ちに頑丈な体つきだ。黒い髪の毛。黒い口髭に顎髭が顔の下半分を埋めていた。
     服の上には皮のベストを着ている。弓の矢を入れたケースを肩から下げている。腰のベルトにはナイフが下げられていた。目を下に移すと、膝から少し長いだけのズボンを穿いている。そして足には木靴を履いている。
    「本当に助かりました。一時はどうなるかと思ったんですから」
     チャームがニコニコしながら、男に話し掛けた。
    「あたし達はライラックとチャームと言います。あなたは・・・?」
     ライラックが男に聞いた。
    「わしは・・・この森の中で猟師をしている者だ。・・・見たところ、あんた達は野宿をしていたようだな。また山犬や狼に襲われたら大変だ。この近くにわしの家があるが、泊まっていくといいぞ」
    「きゃっ。お家の中で寝られるのね!。嬉しい、嬉しい!」
     猟師の申し出を聞いて、チャームは跳び上がらんばかりに大喜びをした。
    「ちょっとチャーム・・・まるで子供みたいになに喜んでいるのよ」
     ライラックは困ったような表情をする。
    「だって、野宿しなくてすむんですよ。ベッドで寝られるんですよ。もしかすると、食事だって出してもらえるかもしれませんよ」
     チャームがワクワクしながらそこまで言ったとき、ライラックは慌ててチャームの口を両手で押さえ、猟師に向かって苦笑いをした。
    「チャーム、あなたには遠慮ってものがないの?。食事までって・・・」
    「だって、旅行携帯用の食べ物には、飽きちゃったんだもの・・・。やっぱり、あたしのように若くて可愛くて綺麗で気品のある女の子には、ちゃんとしたお食事とおやすみ出来るベッドが必要よね?。そう思うでしょ、ライラック姉や」
    「だ、誰がねえやじゃ!。あたしはチャームのお守り役かい?」
     声を荒えながら心の中では『いつか必ずチャームとはパーティーを解消してやる、・・・替わりのメンバーが見つかるまで我慢するのよ、ライラック!』と自分自身に言い聞かせるのであった。
    「あははは。おもしろいお嬢さん方だ。・・・さあ。ついて来るがいい」
     猟師はそう言うと、身体をクルリと回し、出て来た森の中へと歩き出した。
    「ん!・・・?」。
     その時、猟師が穿いているズボンの足首の隙間から、人間のモノとはどう見ても違う毛むくじゃらの足が、ライラックの視界に飛び込んできた。
     『まさか?』。ライラックの脳裏に一瞬不安が沸き上がってきて、歩く足が止まった。
     そして無意識に腰の剣に手を持って行った。
     猟師を見る目が鋭くなる。
    「ライラックさんどうしたんですか?。さあ、行きましょうよ。」
     ライラックの緊張した顔の前に、脳天気なチャームの顔が現れた。
     チャームの顔を見たライラックの表情から、急に緊張感が消えていってしまった。
    「あ、あの・・・チャーム・・・」
     ライラックは、自分が感じた不安な気持ちをチャームに言おうとした。
     だが、チャームはライラックの腕を掴むと引きずるように引っぱって行き、猟師の後を何の不審も感じずについて行くのであった。
     ライラックはチャームに半ば無理矢理引きずられながら、『ま・・・もう少し様子を見てみるか』と心の中で変に納得をさせて、猟師の後に従った。
     夜の帳に包まれた森の中を歩く事しばらくして、猟師の住む家に着いた。
     猟師は家のドアをノックすると、家の中から女性が姿を現した。
     30歳前後のこの女性は猟師の妻だと言った。
     ライラックとチャームは、さっそくテーブルのある部屋に通された。
     しばらくして、猟師の妻はテーブルの上に、肉やスープの料理を出してきた。
    「私の作った物が、若いお二人の口に合いますかどうか?」と言いながら。
     皿に載せられた焼いた肉の塊からは、プーンとした食欲を誘うかのような臭いを出していた。スープの中にも、たくさんの肉の切れ端が浮いていた。
    「うわぁ。おいしそう」。チャームははしたなくも、舌舐めづりをして悦びの声を出した。
    『なーにが、気品のある女の子よ』。ライラックは心の中で笑った。
     しかしライラックの目には、この肉が普通の動物の肉にはどうしても見えなかった。
     『これは何の肉かしら?』。
     ライラックはちょっと不思議に思ったが、焼いた肉から立ち上がる臭いの誘惑にはどうしても勝てなかった。
    「チャーム。気品のある女性は食事を取る前には、ワインを飲むのが礼儀なのよ」
     大きな口を開けて、フォークに刺した肉をまさに口に入れようとしていたチャームに、ライラックは声を掛けた。
     チャームはそう言われて、手にしていた肉付きのフォークを渋々皿の上に置くと、ワインの注がれているグラスを手に取って口に持っていった。
     誘惑には勝てなかったライラックではあったが、やはり長年やってきた剣士の経験から、
    『この肉には手を付けてはいけない』と直感的にピンときた。
     再び不安と不審という言葉が、ライラックの心の中で、ムクムクと頭を持ち上げてきた。
     とにかく、このようにして時間を稼いでいる間に、この猟師の正体を調べなくてはとライラックは思った。
     手に持ったワインのグラスを口に運ぶ。
     パチパチと暖炉の火が、沈黙が流れる部屋の中にこだまする。
     ライラックの正面の椅子に腰かけている猟師と、その後ろで立っている猟師の妻との四つの目が、ライラックとチャームを睨むような目つきで見ているのがヒシヒシと感じた。
     それでもライラックは、グラスの中のワインを優雅に飲み続ける。
     しかしその目は猟師の方をしっかりと見据えていた。
    『この2人が人間ではない証拠を探さなくては・・・』
     カラララーン。不意にグラスが床に落ちる音がした。
     チャームがテーブルに突っ伏して倒れていた。
    「チャーム!」。思わずライラックが声を上げた。
     猟師夫妻の方に目をやると、2人は顔を見合わせて笑っている。
     その時、猟師の額にキラリと光るあのブラッド・オパールが、浮き出ているのがチラリと見えた。
     思わず息を飲み込んだライラックは、腰の剣を握って立ち上がった。
    「お前達はっ?・・・」
     グラッ!。突然ライラックの目の前が大きく揺れて、グルグルと回り始めた。
    「くっ。ワインの中に・・・何か入れたな・・・?」
     ライラックは、テーブルに置いた手で身体を支えて何とか立っていたが、手足の震えは段々と大きくなっていく。
     猟師の姿が、部屋の中の物が、グルグルと大きく回転をしているのが目に映っている。
     ライラックの目に、猟師だけではなく、猟師の妻の額にもあのブラッド・オパールが浮き出ているのが見えた。
    「し、しまった・・・」
     ライラックの口から、無意識に後悔の言葉がもれると、急に目の前が真っ暗になっていった。
     ドサッ。ライラックはそのまま、床に倒れ込んでしまった。
    「・・・これでまた、しばらくは新鮮な人間の肉が食べられるな。・・・フフフ・・・」
    「ええ。この間捕まえた人間は、この料理した肉が最後でしたからね。」
     猟師夫妻はそう言いながら、皿の上の焼いた人肉を手掴みにすると、うまそうにガツガツと食べ始めた。
     そんな2人の額に浮き出ているブラッド・オパールが、血のような赤い光を輝かせると、猟師と妻は全身から獣のような体毛が生えだし、身体は人間とは違う姿に変わっていった。
    「そう言えば、食材になったこいつと一緒に捕まえた、人間の女がまだ檻の中にいたな?」
    「ええ。新しい人間が2人手に入った事だし、檻に入れている女をさっそく料理用に解体をしてしまいましょう。・・・それにしてもあたし達が山犬達を操り、この森に迷い込んだ旅人や村人達を襲わせて、そこにあなたが現れて助けてやると、人間って簡単に信じてしまってこの家に簡単に誘い込まれて来てしまうのよね。・・・あたし達の食事の材料になるとも知らずに。クスクスクス・・・」
    「よく見ると、この2人の人間は実にうまそうな肉付きをしているな。フフフ・・・」
     2匹の凶暴な山犬のつがいは、倒れているライラックとチャームを見下ろしながら、皿の中の人肉をむさぼるように食べ楽しそうに会話を続けた。
    ----------------------------------------
    『う、う、う~ん』
     目の前が真っ暗だ・・・。耳が・・・何も聞こえない。声が・・・声が出せない。く、くるしい・・・。
     目隠しをされている。耳を塞がれている。そして口枷を噛まされている。
     頭も、身体も、手足も自由に動かせない。・・・だけども立たされた状態でいることが分かる。
     両手は後ろに回されて、後ろ手に手枷で固定されているようだ。
     身体全体には何かゴム状のスーツを着せられているようで、しかも胸の所が穴が開いていて、乳房が絞り出されているみたいだ。・・・なぜなら、両の乳房の根元が締め付けられるように、痛く感じるからだ。
     頭全体もゴム状のフードで覆われていて、どうも頭上がフックで繋がれていて、頭を自由に動かす事が出来ないようだ。
     足首にも枷が填められているようで、足を動かす事が出来ない。
     そして何よりも、ヴァギナとアナルの中に何かを入れられているのが、感覚的に分かった。
    『・・・・・・。あうっ!』
     突然小刻みな振動が、両方の乳首に感じられ始めた。
    『うがっ!・・・いやっ!』
     振動は乳首の先から乳房に伝わり、神経を刺激した信号は頭脳へと直接伝わってくる。
    『は、は、は、・・・ひ、やぁ・・・!!』
     乳首の先の振動に続いて、今度はアソコが・・・ヴァギナの中に入れられている何かが、振動を与えだした。
    『ふゃっ!』
     この小刻みな振動の責めから逃れたくても、身体はピクリとも動かす事が出来ない。
    『は、は、は・・・あ、あ、あああ・・・』
     乳首とヴァギナに加えられる振動の動きを受けて、身体中から玉のような汗が噴き出てきて、段々と感情が高ぶってくる。
    『ふぎゃぁ。ふぎゃぁ。ふぎゃぁ。ふぎゃぁぁぁ。』
     いやだぁ。・・・今度はお尻のアナルの中に入れられている物が、同じような振動を身体の中に与え出していく。
     乳首と、ヴァギナと、アナルから与えられる刺激に抗うことが出来ない。
    『ひぃ、ひゃぁぁ・・・あう、あう・・・あ、うん・・・』
     口に填められている、ボールギャグの口枷の隙間から、叫び声の変わりに涎がボタボタと床に垂れていく。
    『あ、う、あ、う・・・あぐ、あぐ、あ、ぐ・・・。』
     身体がブルブルと小刻みに震えてくる。
     ヴァギナの奥から溢れてきた淫液が、ヴァギナに埋め込まれている棒形の性具を伝って、太股へと垂れていく。
     アナルの中の同じ様な性具も、容赦なく身体の中を責めてくる。
     両の乳首に貼り付けられた小さな形の性具からも、刺激が続けられ勃起した乳首の先がとても痛い。
     耳には聞こえてこないが、性具の刺激をうけて、きっとヴァギナのアソコからは、いやらしく濡れた音が、回りにこだましている事だろう。
     目には見えないが、気配で分かる。あたしをこのようにした、あの人が近くにいるのが分かる。あたしのこの姿を見ている。
    『はぐ、はぐ、は、ぐぅ・・・。い、い、い、いいいい、き、そうぉ・・・』
     頭の中で何も考えられなくなっていく。
     身体全体を「オーガズム」のウエーブがまさに包み込もうとした時、刺激という責めを与え続けていた性具の動きが、ピタリと止まった。
    『!。・・・。ひやっ!。・・・お願い止めないでぇ。・・・このまま、イカせてぇぇっ!』
     思わず叫んでしまう。口枷に邪魔をされて声にならないわめき声が、あの人の耳にきっと届いている事だろう。
     火照ったあの部分・・・淫液を湛えたヴァギナを、知らず知らずの内に突き出す格好を繰り返していた。
    『おかしくなっちゃうっ!。イカせて、イカせて、イカせてぇ・・・』
     頭の中に、この言葉だけが渦を巻いている。
    「イキたいか?。イカせて欲しいか?。・・・ライラック」
     あの人の声が、頭の中に飛び込んでくる。それも鮮明に・・・。
     どうして・・・?。耳を塞がれているのに・・・?。・・・そう・・・テレパシーなのね?。・・・あの人は・・・テレパシーも使えるのね。
    「イキたいのか?。ライラック」。再び聞いてくる。
    『お願い!。イカせてっ!。このままじゃ、おかしくなっちゃうよぉ!』
     ライラックはそう叫んだが、それがどのように口から発せられたかは、分からなかった。
    「それじゃライラック。お前は私の牝奴隷で、牝犬になる事を誓うんだな?。誓えばイカせてやるぞ」
    『そう・・・簡単な事じゃないの。・・・誓えばいいのね。フォレックス公爵様。・・・あたしは公爵様の・・・。・・・・・・。・・・・・・。』
    「どうした、ライラック?。誓えばいいだぞ」。公爵様の声が響く。
    『・・・・・・。だ、だめ・・・。だめぇぇぇっ!。』
    「・・・・・・・・・・・・・・」
    『あたしは剣士だぁ!。・・・公爵の奴隷じゃないっ!。・・・あたしは・・・剣士だぁぁぁぁ!』
     ライラックは目を開いて、ガバッと跳ねるように上半身を起こした。
     身体中に汗が出ている。肩で大きく息を切っている。
    「・・・・・・ゆめ?。・・・夢だったのか。・・・またあんな夢を見てしまった・・・」
     ホッとした心境が心を包んでいく。
     しかしその気持ちも、ブラッド・オパールを額に浮き出していた猟師の夫婦の事を思い出して、吹き飛んでしまった。
     急いで回りを見渡す。
     ライラックは、自分自身が動物を入れておくような檻に入れられているのに気が付いた。
     しかも全裸にされた上に、ロープで両手を後ろ手にされて身体を縛られている。
    「くそっ」。
     ライラックは何とかしてロープを解こうと身体を動かしてみたが、緩む気配はなかった。ガッチリと、ロープが身体に巻き付いて締め付けられているのだ。
    「ライラックさん・・・」。隣の檻から、半泣きのチャームの声がしてきた。
     見ると、ライラックと同じ様に裸にされて縛られているチャームがいた。
    「よかった。チャーム生きていたのね?」
     檻の鉄格子に身体を付けて、チャームに話し掛ける。
    「それが、あんまり良くないみたいなんですよ・・・」
     チャームは目線で別の場所を示しながら呟いた。
     ライラックはチャームが示した目線の先へと、自分の目線を移動させた。
     ここはどこかの、蔵の中のようだ。
    「ん!?。・・・・・・なにっ!」
     蔵の中ほどに、裸の少女が両手首をロープで縛られて、天井から吊されている。
     首にもロープが巻き付けられていて、同じように天井へとのびていた。
     両足首もロープで縛られ、大きく左右に開かされている。
     その為、無毛の恥丘と綺麗なヴァギナの割れ目が見えている。
     彼女はまだ処女なのかもしれない。
     少女の顔には、これから我が身に何が起きるかが分かっているようで、恐怖でひきつった表情を見せていた。
     少女の側には、あの猟師の夫婦が立っていた。猟師の手には手斧が握られている。
     猟師の妻の側には、焼きゴテが入れられた坩堝が置いてある。中はゴウゴウと炎が燃えている。
     猟師の妻は手に持っている壺の中の液体を、無理矢理少女の口の中に流し込んだ。
     少女は咳き込みながらも、液体を飲み干した。
    「な、何をするつもりなの?・・・」
     ライラックは口ではそう呟いたが、心の中では恐ろしい事が少女の身に確実に降り掛かるであろう
    と、直感はしていた。
     猟師の妻は包丁のような刃物を手にすると、少女の股間に手を伸ばした。
     ブシュッ!。「うぎゃぁぁぁ!」。
     鋭利な刃物の刃が、少女の小さなクリトリスを切り取っていった。
     彼女はクリトリスを切り取るとトレイに入れた。
    「はあ、はあ、はあ・・・。いやぁ、・・・助けてぇー」
     少女は泣きそうな声で助けを求めた。
     しかし彼女は少女の叫びを無視すると、今度は少女のまだ汚れていないヴァギナに、刃物の刃を突き付けた。
     ズシュウウウ。「きゃぁぁぁぁぁっ!」。
     少女のヴァギナが刃物によってえぐり取られていく。
    「うぎゃぁぁぁぁ!。やめてぇぇぇぇ!」
     少女は何とか逃れようとして身体を動かしたが、手足をロープで固定されているので、まったく動か
    す事が出来なかった。
     床に股間から流れ出した、血の溜まりが出来上がっていく。
    「おほほほ・・・、処女のアソコとクリは、どんな味がするかしらね?。焼いてみるかしら、それとも煮て
    みるかしら?」
     彼女はそれもトレイに入れると、真っ赤に焼けた焼きゴテを取り出し、出血をしている少女のえぐり取られたあの部分に近づけた。
     ジュウウウウウウウ。「うぎゃあああああああ」
     肉が焼ける臭いが部屋中に立ちこめ、少女は獣のような悲鳴を上げた。
    「ほほほ・・・。ここの出血口は焼いて塞いでやったわ。」
    「それでは、次はわしが切る番だな」
     そう言うと、猟師は持っている手斧を『ブンッ』と振り上げ、吊り下げている少女の左足の付け根に振り下ろした。
     少女の上げた悲鳴と肉を切り裂く『ズバァァッ』という音が蔵中に同時にこだました。
    「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ・・・」
     ズシャッ。根元から切り落とされた左脚が床に落ちる。
     ブシュウゥゥゥゥ。傷口から溢れ出した鮮血が、落ちた白い脚を真っ赤に染め上げていく。
     猟師の妻が真っ赤に焼けた焼きゴテを取り出すと、切り口に焼きゴテを当てていった。
     ジュウウウウウウウ。「うぎゃあああああああ」
     脚を切り落とされた痛みと、その後の焼きゴテで身を焼かれる熱さで、少女は再び獣のような悲鳴を上げた。
     焼きゴテが切れた血管の口を焼いて塞いだようで、勢いよく出ていた出血は止まった。
     肩で大きく息をしている少女は、まだ意識があるようだ。
    「あぁぁぁぁぁ、た、たすけて・・・」
     ライラックとチャームは、あまりの事で声も出せずにいた。
     焼きゴテを坩堝に戻した妻は、鮮血まみれの少女の脚を拾い上げた。
    「う~ん。美味しそうな脚だこと・・・」
     そう言うとペロリと脚を舐め、トレイの中に置いた。
     ズバァァァッ!。「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
     今度は少女の右脚が切り落とされた。
     ボタタタタタァァァァ・・・。
     床に落ちた脚の上に鮮血が降り掛かった。
     妻が焼きゴテで切り口を焼いていく。
     ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
     少女の悲鳴と、肉の焼ける嫌な臭いが、蔵の中じゅうに広がっていく。
     ブシュウウウゥゥゥゥゥ。思わず少女は小便を床に洩らしてしまう。
     猟師の夫婦の間で、両脚の無くなった少女がブラーンとぶら下がっている。
     呆然と眺めていたライラックは我に帰ると、猟師夫婦に向かって叫んだ。
    「何という残酷な事をするんだ!。やめろぉ!」
     すると、猟師の妻が長い棒を手に近づいて来ると、ドスッ。とライラックの身体を激しく突いた。
    「ぐあっ!」。ライラックが檻の中でうずくまる。
    「静かにおしっ!。その内にお前達もあの娘のように解体されて、あたし達の料理の食材になるんだ
    からね。ようく見ておくんだよ」
     猟師の妻は笑いながらライラックに告げた。
    「い、生きたまま身体を解体するなんて・・・」。とライラックは呻くように言う。
    「あの娘だって、少しの時間でも長く生きていたいだろう。だから最初にあの娘に飲ませた液体は、薬
    草から作った“強心剤”さ。ショックで直ぐに死なないようにね。それに、出血口を焼きゴテで焼いて塞いでいるから、出血死をも防ぐ事が出来るんだよ。
     どうだい、あたし達だって、色々とあの娘の事を考えてやっているんだよ。心が優しいだろ?。・・・
    もっともそのおかげで、自分の身体が解体されて行く状態を嫌でも見続けなくてはいけないけどもね。激痛を全身に受けながら・・・、おほほほほ・・・」
     猟師の妻は高笑いをしながら、少女の解体作業の持ち場に戻った。
     両手を後ろ手に縛られて檻に入れられているライラックには、ただ歯ぎしりをしながら見ている事しかできなかった。
    「く、くっそぉ!」
     再び少女の悲鳴が聞こえてきた。先程からしたら弱々しくなった悲鳴だ。
    「ぎえぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・」
     顔を上げて見ると、少女の腹が切り割かれて、内蔵の腸が引きずり出されていた。
     それも糸巻き器のような道具で、グルグルと巻き取られていっている。
    少女の悲鳴が聞こえなくなった分、猟師夫婦の会話がライラックの耳に聞こえてきた。
    「これだけの腸があれば、たくさんのソーセージが作れるわね」
    「取り立ての肉もたくさんあるしな」
     口から血の混ざった泡を吹いて、身体を痙攣させている少女の足元で、楽しそうに会話をしている。
     腸を巻き取っていた道具の動きが一瞬鈍くなったのを見た猟師の妻は、両手で少女の腹から引きずり出されている腸を握ると、グイッと引っぱった。
     ブチッ!。鈍い音がして体内に残っていた残りの腸の部分が体外に引きずり出された。
     どうも、腸と胃袋の接続部分で引き千切れたようだ。
    「あが、あが、あが・・・」。少女はただ口をパクパクと動かすだけになっていた。
    「見てごらん。これがお前の腸の全部だよ。結構長いものなのね」
     猟師の妻は、腸の最後の先端を少女の目の前に示した。
     しかし、少女はすでにその物には反応を示す事はなくなっていた。開いている目は焦点のない瞳となっていた。わずかに動いている口は、ただ機械的に筋肉が動いているだけであった。
     腸を全て抜き取った猟師は、刃物を手に少女の背後に回ると、お尻を撫で回しだした。
    「ぐふふふ・・・、可愛くて肉付きのいい尻だな」。猟師はポツリと呟いた。
    「い、やぁぁ・・・、もう、やめ、てぇぇ・・・」
     ブスッッッ!。「ぎゃはぁぁぁぁぁぁっ!」
     ズシュ、ズシュ、ズシュ。・・・。「ぎゃは、ぎゃは、ぎゃっはぁぁぁぁ」
     刃物が少女のお尻の肉を円を描くように、切り取っていった。
     少女のお尻に、2つの大きな肉を切り取った窪みが出来上がった。
     そこに焼けた焼きゴテが押し当てられ、悲鳴が轟く。
    「あう、あう、あう・・・も、もうやめて・・・たすけ・・・てぇ」
     少女は青白い表情で、哀願を繰り返していた。
     猟師は手に大きな鋸を持つと、少女の腰に歯を当て横に切り始めた。
     ズシュ、ズシュ、ズシュ、ズシュ、ズシュ、・・・。
     肉を切っていく音がしてくる。
    「う、うぎゃぁぁぁ・・・。あ、あぁぁぁぁぁ。う、うぎぇぇぇぇぇ・・・」
     少女の苦しさで血の吐くような悲鳴がこだまする。
     ズシャ。ベチャ!。血まみれの腰の部分がトレイの上に切り落とされた。
     もう少女の口からは、悲鳴は聞こえてこなかった。
     だがまだ少女は死んではいない。・・・残酷な事に少女はまだ生きている、しかもまだ意識があるのだ。
     その証拠に、出血をしている胴体の血管部分を猟師の妻が焼きゴテで焼き塞ぐと、微かに表情がひきつった顔をしたからだ。
    「次は、酒のつまみにこれも取るか」
     ブシュッ!。グググググ・・・。
     猟師はナイフを少女の乳房に刺すと、円を描くように根元から切り取った。
     そしてもうひとつ・・・。少女の胸に血まみれの大きな穴が2つ出来た。
     切り取った乳房を揉みながら、少女の耳元で猟師が囁いている。
    「切り取っても、まだ弾力があるな。きっとこれはうまいだろうな。へへへ・・・」
     今や頭と胸部と両手だけの姿になった少女が、天井からのロープで吊り下げられている。
    「さてと、そろそろ最後の解体にいくとするか」
     猟師は手にした鋸を少女の肩口に当てると、腕の根元を切り始めた。
     鋸の歯が皮膚と肉を切り裂いていき、骨をもギリギリと切っていく。
     ズシュッ。右腕が肩口から切り取られた。
     ビシュゥゥゥゥゥ。血管の切り口から鮮血が勢い良く飛び出てくる。
    「まだ、お前の血は元気良く出てくるのね」。
     ジュゥゥゥゥゥゥゥ。猟師の妻が押し当てる焼きゴテが傷口を焼いていく。
     少女の身体は残された左手と首に巻かれたロープで辛うじてぶら下がっていた。
    「へへへ・・・、これで最後だ」
     ギシュ、ギシュ、ギシュ、ギシュ、ギシュ。・・・ズシュゥゥゥー。
    「ぐあ゛ぁぁぁぁっ!」。最後の左の腕も切り取られた少女は、最後の命の炎を声にしたかのごとく、部屋中に響き渡る獣のような叫び声を上げた。
     少女の残った身体の全体重が、細い首に巻き付けられたロープに加わっていった。
    「うげぇぇぇぇぇぇ・・・」。
     少女の口から、血まみれの泡が溢れ出した。
     大きく見開いた両目からは、涙が溢れてきて頬を濡らしていた。
     首に掛けられたロープによって、手足と腹部を切り取られてダルマのような姿になってしまった少女の身体が寂しくぶら下がっている。
     ライラックは耳を塞ぎたい心境だった。(少女の苦しむ声を聞きたくない)。
     助けられなかった自分の姿が悲しかった。(あたしは剣士なのに・・・くそっ!)。
     涙を溢れさせた目で、猟師夫婦を睨み付ける。(彼女の仇は絶対取ってやる)。
     ライラックは檻の中から、少女の解体作業を進める猟師夫婦を、ギリギリと歯ぎしりをしながら見つめていた。
    「・・・・・・・・・・・・」
     やがて、ライラックの目の前で少女は全て解体されたようで、肉や臓物を入れたケースを持って猟師夫妻が蔵から出て行った。
    「く、そっ!・・・」。ライラックが吐き捨てるように呟いた。
    「・・・・・・・・・・・・」
     いつしかライラックは檻の隅で鉄の格子を背にして蹲っていた。
     自分の目の前で、少女が生きたまま解体された光景を見せられたライラックは、かなり精神的に
    ショックを受けていたのだった。
    『・・・あたしって・・・結局、何も出来ないのね・・・』
     ライラックは焦点の合わない瞳で、少女が吊り下げられていたロープを見つめていた。
    『あたしって・・・あたしって・・・あたしって・・・』
     ライラックは力なく呟き続けた。
     裸にされて後ろ手に縛られ檻に入れられている、何も出来ない惨めな自分の姿を思うと、
     ライラックの目からは情けない気持ちで涙がこぼれてきた。
    「・・・・・・・・・・・・・」
     突然ライラックの頭の中に、あのフォレックス公爵の声が飛び込んで来た。
    『ライラックにチャーム、何か情けない姿になってしまっているな』
     ライラックは驚いて顔を上げると、辺りを見渡した。見ると隣のチャームも同じように驚いている。フォレックス公爵の声がチャームにも聞こえたんだ。・・・でもどこから聞こえて来ているのだろう?。
     この近くに公爵が来ているのか?。まさか・・・。
    「フォレックス公爵、どこに居るんですか?。近くにいるのなら助け出して下さい。お願いします」
     ライラックは蔵の外にいるかも知れない公爵に、泣きそうな声で助けを求めた。
    『随分と弱気になっているな。いつもの強気のライラックはどこへ行った?』
    「あたしは、公爵やチャームのような魔法使いではないわ!。ただの・・・人間なのよ。・・・それも・・・
    おんな・・・なのよ」
    『ふ~ん。お前がそんなに弱い女ならば、牝奴隷へと堕として行く調教のしがいがなくなるな・・・』
    「いや・・・。そんなこと・・・言わないで。この近くに居るんでしょ?。・・・意地悪しないで助けてよぉー」
     チャームが2人の会話の中に入ってくる。
    「ライラックさん・・・フォレックス公爵様の声は、この近くからではなくて、これはテレパシーですよ」
    「え、テレパシー?。そしたら公爵はどこから・・・?」
    『私は自分の館から、お前達に話し掛けているんだぞ』
    「え!」。あんなに遠くから・・・テレパシーというものが届くのかと思ってチャームの顔を見た。
    「さあ~・・・」と、チャームは首を傾げた。
    『どんなに遠く離れていても、隷属の首輪を填めているお前達に、私の思っている事をテレパシーで伝える事も、そしてお前達の考えている事も、私は知る事が出来るんだよ』
     ライラックは半ばやけくそ気味に呟いた。
    「そこまで分かっているならば、これ以上あたしに何をしろって言うのよ?。何も出来なかったのよ。そ
    れにここから出られないのよ。それに・・・それに・・・」
     ライラックは公爵と話をしている内に、知らず知らずに涙がこぼれて頬を伝う。
    『何を泣いている。・・・ここでお前がやらなくてはならない事が何かは?、分かり切っている事じゃな
    いのか。・・・』
    「それは・・・」。ライラックが力なく呟く。
    『それは、お前達がヤツらを倒して、ブラッド・オパールを手にすることだ。さもなければ第2第3の少
    女の犠牲者が、また出て来ると思わないか?。』
     ライラックは「うっ」と言葉を飲み込む。
    『もう1度言う。お前達は少女のように生きたまま解体されて、ヤツらの食材になる為にそこに行った
    んじゃないんだ。ヤツらを倒して、ブラッド・オパールを取り戻す為なんだ。さぁ、いつものライラックに戻るんだ!』
     公爵の叱咤激励の言葉を聞いたライラックは、「そう・・・こんな所でメソメソと泣いている訳にはいかないのよね。あたしは剣士なんだからっ!」と心の奥で決意をかためた。
     そして隣の檻のチャームに言い放った。
    「チャーム。あなたの魔力でこの檻を破壊して!。以前に町を吹き飛ばした魔力があるでしょう!。そ
    してあいつらと戦うのよ!」
    「・・・で、でも・・・、あの魔力は、あたしまだ制御出来ないんですよ。・・・こんな近くで使ったら、ライラックさんが死んじゃいますよ」
     チャームはオロオロしながら答えた。
    「さあ、早くっ!。それじゃないと、ここから出られないでしょっ!。あいつらを倒さないと、また罪も無
    い人が生きたまま解体されて、殺されてしまうのよ」
     ライラックはチャームを睨み付けながら言った。
    「でもでも・・・、こんな狭い檻の中で、しかも後ろ手に縛られた状態で、あの魔力を使うパワーを集中なんかしたら・・・あたし絶対に制御する自身がありませんよ」
     チャームは顔を激しく左右に振って自信の無い事を告げた。
    「何を言っているのよ!。さっさと使ってっ!。あたしが死ぬかどうかは、やってみないと分からないでしょっ!」
     ライラックに詰め寄られたチャームは、それでも使う事に躊躇をした表情であった。
     そこに公爵の声が、再びライラックとチャームの頭の中に響いてくる。
    『心配するなチャーム。お前達2人の身体は、私の魔力で絶対に守るから、心配せずに魔力のパワーの集中を始めるんだ。よいな!』
    「はい。わかりました」
     公爵の声にチャームは軽く頷いたが、今度はライラックが狼狽した声を上げた。
    「ちょ、ちょっと待って、・・・そんなに遠くからの魔力で、あたし達の身体を守れるの?。どうやって?。
    大丈夫なの?。・・・公爵ぅぅぅ!」
    『私の魔力の力を信じろ、ライラック。・・・チャーム始めろ!』
     公爵からの命令を聞いてチャームは呪文を唱え始めた。
    「地の中にいる者よ。風の中にいる者よ。光の中にいる者よ。そして水の中にいる者よ。・・・」。チャームはパワーを集中し始める。
    「魔力の力を信じろって、・・・」
     ライラックの泡を食った質問の声の向こう側で、チャームの呪文が続けられる。
    「我に力を与えよ。・・・」。チャームの身体を光の輝きが包んでいく。
    「まってぇぇー!。公爵のその魔力は、ちゃんと効くんでしょうねぇぇぇー!」
     ライラックの慌てふためく叫び声が蔵の中に響き渡る。
    「我は魔道士・・・チャームなり」
     パワーを注ぎ込まれていく光の塊が、より一層輝きを強くした。
     さすがに、こんな近くでチャームの光のパワーが強くなっていくのを目にしたライラックは、うろたえた叫び声を上げた。
     最初の頃の「魔力を使え」と、チャームに求めていた時の威勢のいいライラックは、そこにはいなかった。
    「あ~ん!。まだぁ死にたくないよぉぉぉぉ」
    『ライラック、チャーム。私と心をひとつにしろ!。私の魔力をお前達2人の所に送るぞ!』
    「きゃぁぁぁ!。公爵早くぅぅぅ!」。ライラックが切羽詰まった叫び声を上げた。
     ズグワアァァァァァァァァァァァーーーーン!!。
     大音響と共に巨大な光が、ライラックとチャームが閉じこめられていた蔵を木っ端微塵に吹き飛ば
    し、蔵と隣り合わせに立っている猟師の家をも粉々に破壊して吹き飛ばした。
     パラパラ・・・と吹き上がった塵が地上に落ちてきた。
     辺りに立ちこめていた埃が少しずつ晴れてきて、2つの建物のあった場所には瓦礫と化した姿が現れてきた。
     しばらくして、蔵の建っていた所の瓦礫がモコモコと小さく上下に動くと、ガボッと瓦礫を跳ね飛ばしてライラックとチャームの埃まみれの顔が現れた。
     光のパワーはライラックとチャームを閉じこめていた檻を破壊し、2人を縛っていたロープをも塵のように吹き飛ばしていた。
    「けほ、けほ、けほ・・・。何とか生きているみたいね・・・」
    「ひえぇぇぇ。あたし達よく死ななかったですねぇぇ・・・」
     チャームは回りを見渡して、驚きの声を出した。
     チャームが光のパワーを放出させる瞬間に、公爵の魔力でライラックとチャームの身体がバリアーの結界に包まれ、巨大な破壊力から2人が守られたのであった。
    『どうだ。ちゃんと守っただろう』。2人の頭の中に公爵の笑う声がしてくる。
    「それに関しては、お礼を言うけれども・・・、これからどうするのよ。剣もないし、裸だし・・・」
     ライラックが昼間の空に向かって訴えた。
    『心配するな。ライラックの剣は猟師夫婦が住んでいた家の瓦礫の下を探すんだ。直ぐにでも使う事
    になるぞ!。服を探すのは後だ!。いいなっ!』
     公爵からのテレパシーが強く命令をしてきたのを聞いたライラックは、瞬時に隣の家のあった場所へと走り出した。
    「あ。待ってライラックさん」。チャームも後を追って走り出す。
     剣士を長年やってきたライラックは、公爵からの言葉でピンと何かを感じたようで、自分の剣をとにかくも真っ先に探さないといけないと思った。
     ガサゴソ。ガサゴソ。と全裸姿の2人の女性が、瓦礫の中を這い蹲って何かを探す光景は、もし誰かが側から見ていたら、さぞや奇異な光景に映っている事であったろう。
     だけども、ライラックの剣を探す2人には、そんな事はどうでも良い事であった。
    「あった?。チャーム・・・」
    「いいえ。こっちには無いみたいですよ」
     剣を探す2人の身体からは、うっすらと玉のような汗が噴き出していた。
    「そうだわ。チャーム、風を起こして!。強風でここの瓦礫を吹き飛ばすのよ。やって!」
     チャームは「はい」というと、呪文を唱えだした。
     左の掌に光が現れ、その中からチャームの魔法書が現れた。
     チャームは魔法書を開いてページを1枚破り取ると、空に投げ上げ「風波(ふうは)!」と叫んだ。
     途端に、家の上だけに暗黒の雲が出来上がって、ゴォォォォォー。と強風を瓦礫の上に吹き付けだした。
     少し離れて見ているライラックの所は、風ひとつ吹いていないのに目の前では嵐のような強風が、瓦礫に向かって吹き荒れているのだ。ライラックは見ていて何とも言えない不思議さを感じていた。
     バリバリバリバリー・・・。
     瓦礫の山が数メートル先に次々と吹き飛ばされていく。
    「・・・!。あった!」。
     ライラックが瓦礫の下から現れた自分の剣を目にして、大声で叫んだ。
     チャームは風波の魔法を打ち切ると、強風はピタリと止んだ。
     ライラックは直ぐに飛び込んで、自分の剣を手に握りしめた。
     ホッとした気持ちになったら、自分の姿が裸でいる事が気になってくるのであった。
     回りに他の人がいないのが救いだけども、真っ昼間に全裸の姿でたたずんでいるのは、やっぱり恥ずかしくなってしまう。
    「あたしの服と鎧は、無いかしら?」
     ライラックは慌てて辺りを見渡したが、風波の魔力で吹き飛ばされた瓦礫の中から探すのは、気の
    遠くなるような感じがした。
    「着る物が見つかるまでは、裸でいなくちゃならないの?」
     もし知らない人が、全裸の姿で隷属の首輪をしたあたし達を見たら、きっと『どこかの奴隷商人の所からか、あるいは奴隷市場からか逃げてきた女奴隷』だと思われてしまうだろうなと考えた。
     ライラックの口から「はぁぁぁぁ」と溜め息が出た。
     ガタ、ガタ・・・ガタン。
    「何の音?」。
     ライラックは音のした方に顔を向けた。
    「!?」。
     ライラックの顔の表情が一瞬凍りついた。
     ライラックの視線の先には、猟師の妻が瓦礫の中から這い出してきた光景が映っていた。
     どうも風波の魔力は、瓦礫を吹き飛ばして、ライラックの剣を見つけ出すのには役だったが、同時に瓦礫の中に押し潰されていた猟師夫婦さえも、自由の身にさせてしまうと言う結果になってしまった。
     顔中を血だらけにした、恐ろしい形相の猟師の妻と目があった。
    「お、ま、え、た、ち・・・、噛み殺してやる・・・」
     額に浮き出ているブラッド・オパールが、血のように赤い色を光らせた。
     すると、猟師の妻の顔と身体が人間の形から、段々と山犬の姿へと変化をしていく。
     口は顔から迫り出し牙が生え始める。耳も大きくとがった形になっていく。身体や手や脚からは濃い毛が生えだしてきた。
    「グオゥッッッ!」。変身した山犬が吠え声を上げたその瞬間、
     ズバァァァァァァァァッ!!!。ライラックはその一瞬を見逃さずに、手にしている剣を鞘から抜き去ると、目にも止まらない速さで光り輝く剣先を、変身した山犬の眉間に突き刺した。
    「があぁぁぁぁ、ぅぅぅぅぅぅ・・・」
     ライラックの剣は、眉間から後頭部へと突き抜けていた。
     ゲホォッ!。山犬の口から汚らしく血反吐が吹き出し、剣を握っているライラックの胸の乳房に、ビ
    チャ、ビチャとかかった。
     山犬の額のブラッド・オパールは輝きを止め、口からは血の混ざった涎がダラダラと垂れていた。目は開いていたが、瞳は生きている輝きを失っていた。
     ズシュゥッ!。
     剣が額から引き抜かれると、山犬はドサッと音を立てて瓦礫の上に倒れた。
    「あたしこそ、お前達を許さない。・・・何の罪もない彼女を、あの様な残忍なやり方で苦しませて殺し
    たお前達を、許さない!」
     ライラックは足元に倒れている山犬に向かって呟いた。
     しばらくは、怒りに燃えた瞳で見つめていたが、山犬の額に浮き出ているブラッド・オパールを目にした時、公爵の命令を思い出した。
    「そうだわ。ブラッド・オパールを額から取り出して、集めるんだったわ」
     ライラックはしゃがみ込んで、額から取り出そうとした時、背後からとてつもない殺気を感じた。
    「なにっ?」。
     そう思ったのと同時に、ライラックの身体は瞬間的に、その場所から飛び跳ねるように離れた。
     まさにそれと入れ替わるように、何か得体の知れない物がライラックの居た場所に飛び掛かって来
    た。チャームが悲鳴のような叫びを上げたのはその時だった。
     体をかわして逃げたライラックが見たのは、殺したメスの山犬よりも大きな姿のオスの山犬だった。
     この山犬も額のブラッド・オパールを赤く輝かせている。
     これが、あの猟師の本当の正体なのか?。
     手に持つ剣を改めて強く握りしめる。
    「ライラックさん。大丈夫ですか?」。チャームが急いで近づいて来る。
    「チャーム、ちゃんと知らせてくれないとダメじゃないの!」
     ライラックはまた、あなたまた手を抜いたでしょう?、と言いたげに不満を漏らした。
    「突然、瓦礫の中からあの姿で飛び出して来たんですよ。知らせるもなにも・・・あたしもビックリしたんですから・・・」
     チャームは、そんな事はありません、と言うような仕種で反論した。
     突然オスの山犬は、死んでいるメスの頭をバリバリと音を立てて食べ始めた。
     ライラックとチャームは呆気に取られてただ見ていた。
     骨をもかみ砕いて食べている。脳味噌をも・・・。そして・・・。
     そして額のブラッド・オパールも、オスの口の中へと消えていった。
    「なにっ!。・・・まさか?」
     ライラックは思わず身体を乗り出してしまった。
     そのまさかだった。・・・メスの分のブラッド・オパールをも身体に入れたオスの山犬は、見る見るうちに倍の大きさになっていった。
    「グワァァァァァー」。大きくなった山犬が立ち上がった。
    「ラ、ライラックさん・・・あの山犬さん、2メートルはありますよう・・・どうしますぅ?」
     チャームがライラックの背後から声を掛けてくる。
    「とにかく、こんな瓦礫の中で戦うのは不利だわ。あたし達は裸の上に裸足なのよ。これでは瓦礫の
    中を動くだけでも、怪我をしてしまって戦うどころではないわ」
     チャームはライラックの言葉を受けて、どこか良い場所は無いかなと、辺りをきょろきょろと見渡した。
     あった!。数10メートル先に草だけが生えた広い場所がある。
    「よーし。そこまでダッシュで走るわよ!」。とライラックはチャームに告げる。
    「え。でもあの山犬さんが、追い掛けて来なかったらどうします?」
     チャームは不思議そうに頭を傾げて聞いた。
    「何を言っているのよ。追いかけて来るように仕向けるのよ。あなたの魔法を使って!」
     予期しないライラックの言葉を聞いて、チャームは「え?」とビックリした顔を見せた。
    「とにかく魔法を使いなさいっ!」
     ライラックに怒られるように言われて、チャームは胸に抱えている魔法書を開くと、ページを山犬の方に投げた。
    「風波!」。チャームがそう叫ぶと、山犬の回りがにわかに暗くなり、強風と雨とが山犬の体を襲い始
    めた。
     ゴオォォォォォー。と言う音と共に強風を体に受けている山犬はビクともしないで立っている。
     ライラックは、チャームが前回使った「氷刃」の魔法を使うものだと期待していたのだが、まるっきり当てが外れてガックリときた。
     これではまるっきし、山犬にダメージを与える事が出来ないではないか。
    「チャーム。あなたいったい何を考えているのよ?。山犬に水浴びをさせてどう言うつもりなのよ」
     ライラックはチャームに詰め寄った。
    「これ・・・、まるっきりダメですか?」
     チャームが不思議そうに聞き返した。
    「当たり前じゃ・・・」
     ライラックがそこまで言い掛けた時、強風に巻き上げられた瓦礫の石材や築材が、音を立てて山犬
    の体にぶつかりだした。
     ガシャーン。バシャーン。ズシャーン。グシャーン。ビシャーン。
     そんな中で、巻き上げられた折れて先の尖った柱が、偶然的にも巨大になった山犬の右目に突き刺さった。
     グサァァァァァァッ!。「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁーっ!」
     右目をつぶされた山犬は痛さの余り転がり回った。
     チャームの「風波」の魔法は、山犬にしっかりとダメージを与えたようだ。
     あまりの展開に、ライラックは呆れたような顔で見つめていた。
     その横ではチャームが「きゃぁー、きゃぁー」言いながら、嬉しさで飛び跳ねていた。
    「チャームすごい魔道士。チャーム天才魔道士。チャームの魔法はとっても役に立つ!。・・・ライラックさんもそう思うでしょう?」
     そう聞かれて、ライラックは溜め息をつきながら「はいはい・・・」と力なく答えた。
     脱力感に支配されたライラックは、どうしたらいいの?・・・と自分に問い掛けていた。
    「はぁぁぁぁ」。ライラックがまた力なく溜め息をついた時、「きゃぁー、きゃぁー」と騒いでいたチャーム
    の声が、突然ピタリと止んだ。
    「?」。ライラックは不思議そうにチャームの顔を覗き込んだ。
    チャームはひきつった笑いのままの表情で、氷のように固まっていた。
    「う・・・う・・・う・・・」。チャームが呻くように呟く。
    「う・・・?」。ライラックは首を傾げる。
    「う・・・し・・・ろ・・・」
     人差し指でライラックの背後を指さしている。
    「うしろ?」。ライラックは何かあるの?・・・と思い背後に目を向けた。
     ライラックの目に、いつの間にか右目に刺さった柱を抜き取り、怒りで牙と爪を出して仁王立ちになって、ライラックの方向に迫って来る巨大な山犬の姿が映った。
    「ひっ!!・・・・・・。きゃぁぁぁぁぁー!」
     悲鳴を上げると、ライラックは走り出した。
    「あ~ん。ライラックさ~ん、まってぇぇぇぇ」
     チャームもその後を追って走り出す。
    「ガウゥゥゥ!。ガウゥゥゥ!」
     逃げる全裸姿の2人の女性のあとを、巨大な山犬が追いかけて来る。
    「ライラックさ~ん、あの山犬さんが追いかけて来るようにし向けたから、これでいいんですよね?。はあ、はあ、はあ・・・」
     チャームが走りながら聞いた。
    「はあ、はあ、はあ・・・。で、出来る事ならもう少し距離が離れている状態で、やってもらいたかったわよ!」
     全速力で走るライラックが答える。
     チャームが走りながら、チラッと後ろを見た。追いかけて来る山犬との距離が段々と縮まってくる。
    「あ~ん。ライラックさ~ん、向こうは4本足で追いかけて来るんだから、絶対追いつかれちゃいます
    よぉー」
    「追いつかれないように、もっと速く走るのよぉー!」
     ライラックはそう言いながら、最初の考えと違う展開になっている事に、泣きたい心境になってしまうのであった。
     いくら山犬に追い掛けられているからって言っても、全裸姿で走っている姿は男性はもちろんのこと、他の女性にも見せられない姿だなと思った。
    「ライラックさ~ん!。何のために剣を持っているんですかぁ?」
     チャームが声を張り上げる。・・・『さっさと山犬と戦え』と言う言葉は、喉の奥に飲み込んだが・・・。
    「チャームこそ、胸に大事そうに抱えている魔法書は何なの?」
     ライラックも同じように声を張り上げる。・・・『魔法を使って戦え』と言う言葉は、喉の奥に飲み込んではいるが・・・。
     2人とも走るのを止めたら、間違いなく追い掛けて来た山犬の牙に噛みつかれる事は、分かっていた。
     走る2人から放たれた目線は、お互いに火花を散らしていた。
    『どうして彼女の為に、我が身を危険にしなくちゃならないのよ!』
     この言葉が、お互いの心の奥の奥のそのまた奥の奥の底に蠢いていた。
    「・・・この2人って・・・」
     館の自室から、ライラック達の居る方向を見ていたフォレックス公爵は、溜め息を付きそして苦笑いをした。
     公爵の側に静かに立っている秘書役のメイドは、公爵の呟いた言葉と表情の意味が分からず、不思議そうに小首を傾げた。
     ライラックとチャームは草の生えた広場に飛び込んだ。
    「グワァオッ!」。山犬が背後から飛び掛かってくる。
    「うっ」。ライラックは地面に飛び込むように伏せた。
     山犬の爪が頭の上を飛び越して行き、数メートル先の地面の土を蹴散らして着地する。
    「今だ!」。ライラックは着地したばかりで、まだ後ろを向いたままの山犬に向かって、斬りかかった。
     ガキーン!。ライラックの振り下ろした剣と山犬の前足の爪とがぶつかり合って、火花が散った。
    「くっ!。一歩遅かったか!」。
     ライラックは再び剣を山犬に向かって振り下ろす。
    「ガウッ!」。山犬がヒラリと身をかわす。
     ブンッ!。今度は山犬の鋭い爪が、ライラックに向けて振られる。
     ガンッ!。「あうっ!」。山犬の爪を間一髪剣で防いだライラックであったが、その身体は数メートル先に弾き飛ばされた。
    「くっそー!」。ライラックは剣を支えにして立ち上がる。
     この草の生えた広場を戦いの場所にして良かったとライラックは思っていた。
     もしあの瓦礫の中で今のような山犬の一撃を受けて弾き飛ばされたら、身体中を瓦礫の角で傷を付けて、戦う事もおぼつかない状態になっていただろうと思った。
     それでも、ライラックの方がどう見ても不利な状態になっている事には、かわりはなかった。
     なぜなら、ライラックは身を守る物を身体に付けていないからだ。全裸の姿で戦っているのだ。手にしている剣・・・これが全てだ。
     巨大山犬の爪や牙の攻撃から防ぐのに、少しでも目測を見誤ったり剣さばきをミスったりしたら、裸
    体の肌に直ちに致命傷の傷を受ける事になるのである。
     同じ事は裸のチャームにも言えた。
     ライラックは剣士と言えども女の子だ。
     全裸でいるのは、やっぱし恥ずかしく感じるのだが、命がかかった戦いをしているので、それに気を
    回しているところではなかった。
     唯一の救いは、目の前にいるのが男性ではなく、山犬の怪物である事だった。
     巨大な山犬は体を低く屈めいつでも飛び掛かれるように、ライラックのスキを窺っていた。
     ライラックも剣を構えながら、スキを与えないように睨み返していた。
     ライラックと巨大な山犬との間の緊張感を破ったのは、隣にいるチャームであった。
    「山犬さんに裸の姿をジーと見られていると、何か奴隷の品定めをされているみたいな感じになりま
    せんか?」
     ライラックは、何を言い出すかと思えば・・・と言う心境で答える。
    「感じないわよ!」。目は山犬を睨んでいる。
    「・・・でも、こうジーと見られていると、何かヘンな感じになって来ちゃいませんか?」
     これには、さすがのライラックも顔をチャームの方に向けて怒鳴ってしまった。
    「チャーム、何を馬鹿なことを言っているのよ!。今の状況が分かっているの?」
    『しまった!』
     スキを見せてしまったライラックは、急いで視線を山犬の方に向けた。
    「グウォォォォォ!」
     ライラックの目に、山犬が飛び掛かって来るのが見えた。
    「逃げてっ!」。ライラックは反射的に、横にいるチャームを遠くへ突き飛ばした。
     ライラックの目には、近づいて来る山犬の開けた赤い口の中と鋭い牙が映っていた。
    『だめっ!。逃げられないっ!』
     ライラックは自分の体が引き裂かれて、真っ赤な鮮血の中に横たわる事を覚悟した。
    「わぁぁっ!」。
     ザクゥゥゥゥゥゥ!!。
     ズバァァァァァァ!!。
     頭を抱えて蹲っていたライラックは、一向に痛みが感じないのに気が付いた。
     目を開いてみる。ライラックの身体をバリアーが包んでいた。
    「この魔法は・・・公爵がかけたの?」
     巨大な山犬はバリアーに邪魔をされて、ライラックの身体に傷を付ける事が出来ないでいた。
     チャームが急いで「氷刃」の魔法を使う。
     山犬の体に氷の刃物が突き刺さる。
    「ギャァァン!」。巨大な山犬が悲鳴を上げて、チャームの方に視線を向けた。
    「今だっ!」
     斬り掛かるスキを手に入れたライラックは、握っている剣を真横に素早く動かした。
     ドバァァァーッ!。
     強い手応えを感じた。
    「ウガァァァァァーッ!」
     ズシャァァァッ。
     巨大山犬は右脚を切り取られ、バランスを失って頭から地面に崩れ落ちた。
     目の前に巨大山犬の首筋が見えた。
     ライラックは躊躇なく剣を振り上げると、一気に巨大山犬の首筋に振り下ろした。
    「やあああああーっ」
     ズバァァァァァァァーッ!。
     巨大山犬の首から赤い鮮血が、ドバァァァァァーっと噴水の水のように、数メートル上空に吹き上がった。
    「ウギャーッッッッ!」
     バシャ、バシャ、バシャー・・・。
     巨大山犬の断末魔の叫び声を耳にしたライラックの身体に、吹き上がった鮮血が雨のように降り掛かった。
    「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
     戦い終わり、裸体の身体を付いた血で赤く染めたライラックが、立ちつくしていた。
     しばらくすると、死んで倒れている巨大山犬の体が砂のように変わっていくと、サササササー・・・と形が崩れていき、砂の中から2つのブラッド・オパールが転げ落ちた。
    ----------------------------------------
    「・・・あう・・・。ご主人様は、あの様に遠くにいるライラック殿へ、テレパシーやバリアーの魔法を送ることが出来る魔力の力を、お持ちになっていたんですね。・・・あん・・・」
     秘書役のメイドは苦しそうな声で公爵に質問をした。
     公爵は声のした足元に目線を落とす。
     逆さに吊された秘書役のメイドの顔がそこにあった。
     秘書役のメイドは、天井に向けて両脚を開いたY字形の姿で、逆さに吊されていた。
     もちろん全裸の姿でだ。
    「ああ。・・・そうみたいだ。実際使った私自身が、魔法があそこまで届くとは思わなかったからな。そ
    れに今まで使う事もなかったから。・・・あのライラック達が使用第1号って訳だ。」
     公爵は苦笑いをしながら話した。
    「そ、そんなぁー。・・・それではライラック殿は、テスト用のモルモットだったんですかぁ?」
     驚きの声を出す秘書役のメイドに公爵は、
    「ふふふ・・・。人の事を考えるより、今は自分の事を考えるんだな」
     そう言うと、手にしている蝋燭を上に上げると僅かに傾けた。
     炎で溶けた蝋が、ポタポタポタと目の前の秘書役のメイドの無毛の恥丘とヴァギナ周辺に落ちてい
    き、白い肌に赤い色を付けていった。
    「あ、あああ・・・あ、あ、ああああ・・・ん。あん、・・・あうあう・・・ああああ、あ、う、あ、う・・・ひゃあああ
    ん・・・・あああー・・・あああー・・・ああ・・・」
     秘書役のメイドは熱さとそれとは別の快感とに身体をひきつかせながら、公爵の目の前で悶えた姿
    をさらしていた。
     その頃ライラックとチャームの2人は、公爵の館への帰路についていた。
    「ハックショーン!」。ライラックが大きなくしゃみをした。
    「ライラックさん、風邪を引いたんですか?。」
    「風邪だって引くわよ。長いこと丸裸でいたかと思えば、やっと見つけた服はこんなありさまなんだも
    の。・・・本当に泣きたくなるわよ・・・」
     ライラックとチャームの着ている服は、瓦礫の中で傷ついてあちらこちらに大きな破れが出来て、もののみごとにぼろ切れのようにボロボロの状態になってしまっていた。
     しかも下着さえも無く素肌に直接服を着ている今は、胸や股間を隠す肝心な部分の生地が破けてしまっているので、見られないように手で隠しながらいる状態であった。
    「こんな格好で公爵の館まで帰るの?・・・。途中で男の人にでも見られたら恥ずかしいわ。」
     ライラックは、恥ずかしさと情けなさの気持ちで、心が一杯になっていた。
    「仕方ありませんよ。公爵様から頂いた旅費のコイン袋もどこかに吹き飛んじゃったんですから」
     同じようにボロボロの服を着たチャームがそれに答える。
    「お金も無いから、途中の町で服も買えないのか・・・。それにあたしの鎧もとうとう見つからなかったし・・・ううう・・・泣きたくなってくるわ」
     ライラックの心はドーンと谷底に落ちて行く心境であった。
    「ライラックさん、落ち込んでいても仕方ありませんよ。帰ったら公爵様に新しい服と鎧を買ってもらえ
    ばいいんですよ」
     チャームはライラックとは正反対に明るく言うと「では、公爵様の館にブラッド・オパールを持って凱旋でーす」と宣言した。
    「凱旋って・・・、これからまだ10日間の道のりが・・・あるのよ・・・」
     ライラックはそう呟くと「はぁー」と溜め息をつき、トボトボとチャームの後をついて行くのであった。

    《 あとがき 》
     どうも、九尾きつねです。
     ブレーク・パーティ第2話をお届けいたしました。
     ライラックとチャームのハチャメチャな活躍を、楽しんでもらえたでしょうか?。
     2人によるブラッド・オパール探しが始まりましたが、最初からこんな鬼畜な展開の物語になってしまって、これからどうなるんだ?・・・と書いている作者自身が、この2人の身を心配になってきちゃいました(笑)。
     しかも「終わり」じゃなくて今回から「続く」になっちゃったし・・・。
     どうなるんだろうなぁー、この2人・・・。(作者のくせに何と無責任な事を・・・笑)
     ここまで書いていて、やっぱり新しい味方キャラも加えていかなくちゃダメかな?・・・と考えちゃいましたけど、はてさてどうなりますか・・・。
     でもそうやって増えたメンバーでパーティーを組んでいくとなると、何だか「RPGゲーム」みたいになっていくような・・・、その内ブラッド・オパールを探しにどこかの「ダンジョン」や「ラビリンス」に入り込む物語になっていくのだろうか?。(他人事みたいな言い方だな。笑)
     となると、敵キャラの総ボスも作らなくちゃならないのかな・・・ひえ~・・・、なんか長い作品になりそうだな?(笑)。大丈夫か?、作者よ(笑)。
     ・・・と言う事でどうか次回作もお付き合い下さいね。
     それではまた、次の作品でお会いいたしましょう。

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年前

    〈 登場! ライラックとチャームの巻 〉
     この大陸には、人と人以外の生き物が、背中合わせに生きている。 ここは、人と人外とが共に生息する、摩訶不思議な世界なのである。
     その証拠に、夜空には刃物のような形をした、二つの三日月が並んで浮かんでいる。
     しかも夜の帳は、山々を暗闇で覆い隠している。
     そして山の中に点在する村の家々をも、同じように包んでいた。
     夜は闇の静寂に支配されていた。
     微かに聞こえるのは、遠くの山で月に向かって吠えている、狼の遠吠えだけだ。
     夜は静寂の中に包まれている。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     いや・・・、何かが聞こえる・・・。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     段々とこちらに近づいてくる。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     なんだろう?・・・。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     目を月に向けてみる。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     何かが月の光を浴びて飛んでいる。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     月に照らし出されたそれは人の形をしている・・・しかしそれは人間ではない。
     左右に大きく開いた両腕からは、蝙蝠の翼が生えている。
     それは蝙蝠人と呼ばれる人型の怪物であった。
     蝙蝠人は1匹だけではない、夜空一面に数多くの蝙蝠人達が、音もなく飛び回っている。
     蝙蝠人の眼下には、小さな村がある。
     1匹の蝙蝠人が襲いかかる目標を見つけたようだ。
    「キィィッ!」。
     それは短く甲高い声で鳴くと、ある一軒の家の窓を突き破っていった。
    「きゃぁぁぁ!」。「うわぁぁぁ!」。
     程なくして家の中から、悲鳴がこだました。
     同じように他の蝙蝠人達も、「キィィッ」、「キィーッ」と鳴きながら、まわりにある家々の窓を突き破っていく。
    「わぁぁぁぁっ!」。「きゃぁぁぁぁっ!」。「助けてぇぇぇ」。
     寝込みを襲われた家々の中から、命からがら逃げ出した人々が夜空を見上げた時、彼らは絶句した。
     夜空一面を覆うかのごとく、数多くの蝙蝠人達が頭上を飛び回っていたのだ。
     それを目にした人々は、口々にその名を叫んだ。
    「わあああ・・・、コ、コウモリ人だ!」
    「蝙蝠人が襲って来たぁぁ。逃げろっ!」
     人々からそう呼ばれた蝙蝠人は、「キィー」と甲高く鳴くと、逃げようとする村人たちに襲いかかって行った。
     サァーと、音も無くすばやく舞い降りると、逃げる村人たちの頭や、首筋、身体に鋭い牙で噛みついた。
     ガブッ。「ぎゃぁぁぁ!」。バリッ。「うわぁぁぁっ!」。
     逃げる村人たちは身体から鮮血を吹き出しながら、地面に倒れ絶命していく。
     ズバァー。「ぐわぁぁぁ!」。ズバァァァ。「きゃぁぁぁっ!」。
     しかも蝙蝠人の武器は牙ばかりではない。
     以前に、殺した人間から奪った剣や槍を手にしているのだ。
    「キッ」。上空を旋回していた蝙蝠人が、逃げる親子3人の姿を見つける。
     母親と2人の娘だ。
     母親は娘たちの手を握って必死に逃げて行く。
     家族や村を守ろうとして蝙蝠人に殺された、彼女の夫の願いを無にしないためにも。
     だが逃げる彼女たちの背後からは、蝙蝠人達が音も無く滑空して近づいてくる。
     手にした剣を振りかざしながら。
     ズバァァァァーッ!。
     音と共に母親の頭が空中に飛んだ。
     母親は、首から鮮血を吹き出しながら数メートル跳ぶと、そのまま地面に倒れ込んだ。
    「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
     母親の最後を目にした娘たちは、恐怖の悲鳴を張り上げた。
    「おねえちゃん!」。
     8歳の妹は16歳の姉の身体にしがみついた。
    「キッ」。「キキーッ」。「キーッ」。
     残された2人の回りに、蝙蝠人達が囲むように降り立った。
     2人の姉妹は、蝙蝠人の姿を見て、より一層恐怖を感じた。
     蝙蝠人と言うだけあって、その顔は普通の蝙蝠と同じ顔であった。
     大きな耳もピンと2つ立っている。
     しかし首から下の身体はまるっきり、人間の大人の身体と同じであった。
     しかも全身が黒い毛に覆われていた。
     両腕には巨大な蝙蝠の翼が畳み込まれている。
    「ひっ!」。姉は近づく蝙蝠人たちの股間に目を留めたとき、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
     蝙蝠人達の太く長いオスの男根が、勃起をして上に反り返っていたのだ。
     どの男根もピクピクと小刻みにひくついていた。
    「い・・・いや・・・いや・・・」
     姉は蝙蝠人たちが何を欲しているのか、理解する事が出来た。
     それは姉妹たちに、より一層の恐怖を感じさせた。
     姉は脅える妹を守るように身体の後ろに隠す。
    「キィッ」。蝙蝠人のけむくじゃらの手が姉の二の腕を掴んだ。
    「いやぁぁぁぁぁぁっ!」。
     恐怖が堰を切ったように溢れだし、悲鳴を張り上げた。
     蝙蝠人たちは姉妹の腕を掴み、それぞれを引き離した。
    「おねえちゃん!」。妹が助けを求めるように叫ぶ。
    「ギーッ」。びりびりびり・・・。
     2人の着ている服が引き裂かれていき、地面に押し倒される。
    「きゃぁぁ。いやぁぁぁ。やめてぇぇっ」。
     2人は逃げようと身体をばたつかせたが、蝙蝠人達の怪力で抑えつけられ、身動きひとつ出来なくなっていた。
     服が引き破られ、まだ男性を知らない純白の身体が、蝙蝠人達の前に露わにされた。
     グッと、両脚を無理やり開かされる。
     そして、彼女たちのヴァギナに蝙蝠人の凶暴な男根があてがわれた。
    「いやっ、いやっ、いやっ」
     泣き叫ぶ彼女たちの声を無視して、男根が一気にヴァギナの中へと侵入していった。
    「うぎゃぁぁぁぁぁっ!」
     生まれて初めて体験する一生に一度のその時を、無惨にも人間以外の者の男根で引き裂かれ、強引に体内に入れられた彼女たちには、絶望的な悲鳴を声の限り張り上げることしか出来なかった。
     恐怖で大きく開いた目からは、涙がこぼれ落ちた。
     ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。
     蝙蝠人は力任せに、自分の腰を前後に振り始める。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
     ヴァギナの中を出し入れする、血に染まった男根の摩擦の音を聞きながら、姉は自分の股間が裂けてしまったみたいな痛さを、呆然とした感覚で感じていた。
    「ギイィ」。別の蝙蝠人が、姉の口を無理やりこじ開け、口の中へそそり立った男根をねじ込んだ。
    「うぐぐ・・・」。姉はくぐもった声を漏らす。
     グニュ。グニュ。グニュ。ジュニュ。ジュニュ。
     彼女は、ヴァギナと口の両方から貫かれて犯され続ける。
    「うぐ、うぐ、う・・・ぐ・・・ん」
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ジュニュ。ズニュ。
     ジュニャ。ジュニャ。ジュニャ。ジュニャ。ジュニャ。
     蝙蝠人達の腰の動きが速くなっていく。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ジュニュ。ズニュ。
     ジュニャ。ジュニャ。ジュニャ。ジュニャ。ジュニャ。
    「キイイイイーッ!」。「ギィィィィィィッ!」
     蝙蝠人は鳴き声を上げると、男根から勢いよく精液を彼女の口の中とヴァギナの中へと、流し込んだ。
     口の中から、何とも言えない気持ちの悪い味と臭いがしてきた。
     だがそれを吐き出す気力も体力も、彼女にはもう無かった。
     彼女の口とヴァギナに再び、別の蝙蝠人の男根が差し込まれた。
     それは何度も何度も続けられた。
     そして、彼女の薄れゆく瞳には、同じように蝙蝠人たちに犯されてヴァギナを血だらけにさせられ、顔や身体中を精液で汚されている妹の姿が映っていた。
     妹の身体や目には、すでに精気が無く、生きているようには見えなかった。
     ただ、身体を乱暴に前後に動かされるその姿は、まるで糸の切れた人形のようであった。
    「・・・・チ・・・・・チャー・・・・・・・ム・・・・・・・・・」
     それが彼女の最後の呟きであった。
     彼女の村は炎に包まれ夜空を明るく染めていた。
     そしてこの時、彼女の命の炎は消えていった。
    ----------------------------------------
    「・・・以上が、この領地内で蝙蝠人に襲われた村の被害だ」
     広い謁見室の中の2人の人物の前で、床から一段高い場所で豪華な椅子に座っている人物が、そのように説明をしていた。
     ここは、この辺りの領地を治める領主の館である。
     そして、豪華なイスに座り客の2人に説明をしていたのは、この館の主である『フォレックス公爵』である。
    「知っているとは思うが・・・、我々が蝙蝠人と呼んで恐れている、人間の姿をした怪物が突然現れたのは、今から7年ほど前だ。最初はここより遠くの西国に現れていたのだが、最近はとうとうこの辺りにまで、姿を現すようになってきてしまったのだ。・・・もちろん王国も我々貴族も、蝙蝠人の討伐隊を送り込んではいるが、残念な事に尽くに失敗をしているのである。そこで、傭兵ギルドに資金はいくら掛かってもよいから、確実に蝙蝠人を倒せる剣士の部隊を送ってくれるように要請をしたんだが・・・」
     フォレックス公爵はそこまで話をして、「はぁー」と溜め息をついた。
     公爵の前には、傭兵ギルドから派遣されて来たという2人の女性が立っていた。
     公爵は「困ったなぁー」と言いたげな表情で、2人の女性をまじまじと見つめていた。
     1人の女性は、身体に銀色の鎧と両方の足に銀色のすね当てを付け、腰に長い剣を下げているところから彼女は剣士であろう。革製の手袋と靴を履いている。
     ショートヘアの黒髪に黒色の瞳。耳には小さなピアスをしている。
     年は19歳で名前を「ライラック」と名乗った。
     彼女の瞳からは強い決意が伝わってくるのだが・・・。
     そしてもう1人の方は、「チャーム」という名前で15歳の女の子だ。
     腰まであるキラキラと輝く金髪のロングヘアを根元で束ね、ヘアバンドで止めている。
     人形のような整った顔立ちの中にある瞳は青いブルーだ。
     耳には細い金のクサリの付いたイヤリングをしている。
     両手首には、金のブレスレッドをしている。
     ミニのワンピースのような服から伸びた両脚はカモシカのように細い。
     彼女は魔法を使う魔道士だという。
     しかし彼女の表情からも瞳からも、これから戦うという決意が全然伝わってこない。
     ただニコニコと微笑んでいるばかりなのである。
     フォレックス公爵は、ずれかかった眼鏡を指で戻すと、鼻の下に蓄えているカイザー髭に指を移動させた。
     髭の先端を触りながら、「さて、どうしたものか?」と考え込む。
     だが本心は、銀色の髪の毛の頭を抱えたい心境なのであった。
    「19歳の女性剣士に、15歳の少女魔道士か・・・。傭兵ギルドめ、高い料金を前金で支払ってやったのに、こんなのを送ってきおって・・・」
     公爵はブツブツと文句を呟く。
     何か気まずい沈黙が、公爵とライラック達の間に流れる。
    「ね。チャーム。公爵が今何を考えているか分からない?」
     ライラックがチャームにそっと尋ねる。
     チャームは静かに目を閉じると、呪文を口の中で唱えた。
     だがすぐに目を開いたチャームは、驚いた表情でライラックに耳打ちをした。
    「だめです。公爵の掛けているあの眼鏡・・・マジックシールドグラスによって、公爵の心を見ることが出来ません。・・・でも不思議です。あの眼鏡は普通の人間が掛けただけでは効果が無いのです。極めて強力な魔力を使う者でないと、眼鏡の力を発揮させることは出来ないはずです」
    「フォレックス公爵って、魔法使いなのか?」。
     ライラックは改めて自分たちの前にいる公爵の顔をまじまじと見た。
     しかし眼鏡の分厚いレンズが邪魔をして、その奥の公爵の瞳を読み取ることは出来なかった。
    「いかがでしょう。何でしたら、このお2人にはお引き取り願いますか?、公爵様」
     今まで公爵の後ろで、人形のように立っていた女性が突然話し出した。
     女性は他のメイド達と同じ服を着てエプロンもしているが、この館では公爵の秘書の役目もしているようである。
    「待って下さい。私たちだって傭兵ギルドから派遣されて来たプライドがあります。私たちの実力を見てから判断してください!」
     話を聞いていたライラックが思わず口をはさんだ。
     公爵は「それほど言うならば・・・」と小さな声で言うと、ライラック達に話を始めた。
    「君たちにはもちろん蝙蝠人達を討伐してもらうが、特に重要なのはその蝙蝠人の親玉を倒してもらうことだ。雑魚ばかりを倒してもどうにもならないからな。」
     公爵の言葉はつづく。
    「ただ親玉を倒すだけではダメだ。親玉の額には、赤い色をしたブラッド・オパールと言う秘宝が埋め込まれている。それを剥ぎ取って、無傷で私に渡してもらいたいのだ。いいかね、無傷でだぞ。」
     念を押すように話をする公爵。
    「蝙蝠人の親玉ね・・・額に埋め込まれている秘宝のブラッド・オパールね・・・」
     話を聞いている内に、何だか「これは難しい仕事みたいね」と不安を抱いたライラックであったが、
    「蝙蝠人って言ったって、人間と同じ大きさなんでしょ、だったら親玉だって同じ同じ・・・ぱぱっと片づけて秘宝付きの親玉の頭を公爵に渡せば、お仕事は終わりですね。簡単簡単。」と言うチャームの言葉を聞いて、楽観的な気分になっていくライラックであった
     一通り話を終えると、公爵はメイドの少女にライラック達を館の客用の部屋に案内するように命じた。
     ライラックとチャームがメイドの少女の後に従い、謁見室を出て行くのを見つめていた公爵は『まかせて大丈夫かなぁ・・・』と言った思いで「はぁぁぁー」と溜め息をついた。
     やがて館の上空にあった太陽が山の陰に沈み、代わって2つの月が山から上り、館の上空に浮かんでいた。
     ライラックとチャームはベッドの中で、安らかな眠りについていた。
     館の客用のベッドだけあるようで、清潔でシーツは雪のようにシミひとつ無く真っ白だ。しかもフワフワとした作りになっている。
     いつもは野宿や安宿の薄汚れた硬いベッドばかりにお世話になっているので、このような高級なベッドの中で寝られるなんて、夢にも思っていなかったのである。
    「見て見て。このベッドこんなにフワフワですよ!。あたしこんなベッドで寝るのは初めてです」
     ベッドの上でチャームが「きゃー、きゃー」言いながら楽しそうに飛び跳ねる。
     メイドの少女はそれを見ていて「明日のベッドメイキングには、時間がかかりそうだな」と思った。
     ライラックは何とかチャームを寝かしつけると、自らもベッドの中に潜り込んだ。
     ほんとにフワフワだ。その柔らかさは彼女をすぐに夢の世界へと誘い込んでいった。
     それからどの位の時がたったのか、誰かがライラックの名前を呼び身体を揺すって、起こそうとしているのが分かった。
     ライラックは瞬時に目を開けると、剣を握りガバッと飛び起きた。
     目の前にはチャームがいた。外はまだ夜だ。・・・しかし敵が攻めて来たようには見えない・・・静かだ。
    「どうしたの?。チャーム」。
     ライラックは夜中に起こされた意味が理解できなかった。
    「この館の奥の方から、女性の苦しむ声が聞こえてくるんですが・・・」
     チャームは不安な顔で告げた。
     チャームの話を聞いたライラックは剣を手に持ち部屋のドアを開けて廊下に出た。
     暗闇が廊下の先を覆っている。耳を澄ましてみると確かに女性の苦しむ声が微かに聞こえてくる。
     ランプを手にライラックとチャームは、聞こえてくる声の方へと足を進めて行った。
     ランプの限られた光に照らし出される世界はどこか不気味である。
     大きな館全体が、暗闇に支配されているせいかもしれない。
     ある扉の前にたどり着いた。呻き声はこの部屋の中から聞こえていた。
    「メイドの少女が、あの公爵の手によって、拷問でも受けているんでしょうか?」
     チャームが不安そうに、ライラックに耳打ちをする。
    「さあ、どうかしらね・・・」。ライラックは扉のノブに手を掛けた。
     カチャ。
     扉には鍵が掛かっていないらしく簡単に開いた。扉を少し開け、隙間から中を覗き込む。部屋の中ほどで、1人の裸の女性が後ろ手に枷を填められ、天井からの鎖で身体を水平に吊り下げられていた。
     細い首には、首輪が填められている。
     女性の顔を見ると、公爵の側にいたあの秘書の女性だ。
     その彼女の側には、公爵がイスに座って見ている。
     公爵は、テーブルの上で燃えている蝋燭の燭台に目を移すと、何やら呪文を唱える。
     すると、燭台がフワッと空中に浮かび上がり、吊り下げられている女性の身体の上へと、滑るように移動して行く。
     ライラックとチャームが息を殺して見つめていると、公爵の人差し指がわずかに動き、それに操られる燭台はゆっくりとその姿を傾け、赤い蝋燭が女性の背中とお尻とに、溶けた蝋燭を垂らし始めた。
     ぽたっ。ぽたっ。ぽたっ。ぽたっ。ぽたっ・・・。
    「あうっ!。・・・あ、う・・・う、あぁぁぁ・・・」
     女性の口に噛まされているボール型の口枷のギャグからは、涎と共にくぐもった呻き声が途切れなく漏れてくる。
     ぽた。ぽた。ぽた。ぽた。
    「う、うう・・・は、は、ぁ・・・あああ、ん」
     女性の背中とお尻が段々と赤い色に染まっていく。
     ぽた。ぽた。ぽた。ぽたっ。
    「ひゃっ、あ・・・う、ん・・・ひぃ、ぃぃぃ・・・」
     公爵は、再び何かの呪文を唱えると、今度は乗馬用の長い鞭が空中に浮かび上がった。
    「秘書であるお前が、傭兵ギルドにもっと詳しく説明をしなかったから、私は高い金をドブに捨てることになりそうなんだぞ。・・・当然その責任は、お前の身体で支払ってもらうからな」
     公爵は怒ったような声で言うと、蝋燭で赤く染まった女性のお尻を、パシーン!、パシーン!、パシーン!、と浮かんでいる鞭が激しく叩いた。
    「うぐっ。・・・あうっ。・・・ああうっ」。
     女性は口枷で塞がれている口の奥から低い悲鳴を漏らすと、身体を痙攣したように反らせた。
     涎で口の回りを汚らしく濡らし、涙で顔をクシャクシャにした女性の頭がガクッと下に落ちた。
     公爵はイスから立ち上がり女性に近づくと、ヴァギナに指を這わせた。
     ヌルッとした淫液が指を濡らす。
     女性のヴァギナからは溢れ出た淫液が、ぽた、ぽた、と床に落ちている。
     公爵の手が女性の髪の毛を鷲掴みにすると、グイッと上を向かせた。
    「ん?。牝奴隷としての調教をしている最中に、私の許しも無くなに勝手にイッているんだ。お前にはもっと厳しい調教が必要だな!」
     公爵はそう言うと、浮かんでいる燭台を掴み、淫液を滴らせているヴァギナの下に持っていく。
     蝋燭の炎が剃毛されているヴァギナを、ジリジリとあぶっていく。
     ヴァギナから垂れる淫液が蝋燭の炎と混ざり合い、ジュッと音を立てた。
    「う、きゃはぁぁぁぁ!・・・。ほぉ、ひゅりゅひぃ・・・ひゅひゃしゃ・・・ひぃぃ・・・。ひゃちゅ、ひぃぃぃぃ!。・・・ひゅ、う、りゅうひぃ、ちぇぇぇ・・・きゅう、ひゃ・・・ぢゃぁぁ、ひぃいいい。ひょじゅうひぃん、しゃぁぁ、みゃぁぁぁぁ!」
     女性は口枷で塞がれている口から懸命に声を出して、ご主人様であるフォレックス公爵に、心の奥から許しを求める哀願を繰り返した。
     扉の隙間から見ていたライラックは、そっとドアを閉めて壁に背をもたれると、大きく息をはいた。謎の声の正体を探りに来て、見てはいけないものを目にしてしまった、何とも言えない恥ずかしさが心に涌いてきていた。
    「どうも、あの女性の人は、拷問に掛けられているんじゃないみたいですね」
     チャームはきょとんとした表情でライラックに囁いた。
    「そ、そうねぇ」。ライラックは気の抜けた返事をして、自分たちの部屋へと戻った。
     さっそくベッドに潜り込んで、夢の続きを見ようと目を閉じてみたが、頭に浮かぶのは、目にしたあの調教の光景ばかりだ。
     そっと指を股間に持っていく。
    「クチュ」。指先にヴァギナから溢れてきている淫液が絡み付いた。
     ライラックは顔がポッと熱くなるのがわかった。そしてそっとベッドから抜け出した。
     横のベッドでは、チャームが小さな寝息を立てて寝ている。
     部屋を出てベランダに出たライラックは、下着を脱いで裸になり指をヴァギナにあてがうと、刺激を与えだした。もう片方の手で乳房も揉みほぐしだした。
     指がヴァギナの秘裂にそって上下に何度も動き中のヒダを刺激する。続いて、包皮から出ているクリトリスの頭を、何度も何度も指の腹で撫でるように刺激を繰り返す。
     ヴァギナの奥からは刺激に答えて淫液がドクドクと溢れ出し、グチュ、グチュ、グチュ、グチャ、グチャ、と音を立てて動かしている指先に絡み付いてくる。
     乳房を揉んでいる指が乳首にさわると、興奮のため乳首が立っていて痛く感じる。
    「あ、あ、あ、・・・ううん・・・は、ぁ・・・う、ん・・・」
     グチュ。グチュ。グチュ。グチュ。グチュ。
    「ひゃ、ぁ、ああん・・・は、ぁぁぁ・・・ん、うん」
     グチュ。グチュ。グチュ。グチュ。グチュ。
    「あああああ、んん・・・ひゃ、ぁぁぁ・・・う、ん」
     ヴァギナとクリトリスを刺激する、指の動きが段々と速くなっていく。
     ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。
    「いや、ん、だ、だめっ・・・あああ、ん、あんあん・・・んんんん・・・」
     ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。
     ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。
    「・・・あん、あん、あん・・・ご、ご主人さまぁ、ど、どうかぁ、イカせて・・・く、くださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」
     ライラックは知らないうちに、御主人様にオナニーでイク許しを求める言葉を口にすると、激しく上り詰めていった。
     もちろん、ライラックにはそんな御主人様などいないのだが、先程の調教の光景を見ていた為に、無意識のうちに口から出てきた言葉なのかもしれない。
     ガクガクガクと身体が振るえ、シャァァァァァァァと、オシッコが跳び出した。
    「あうあうあうあうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
    「・・・・・・・・・・・・・・・」
     床に両手両膝をついたライラックは肩で大きく息をしていた。
     半開きの口からは涎が垂れ、舌は犬のように口からだらしなく出している。
     こんな快感を感じたのはライラックにとって初めてのことだった。
    「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、・・・」
     ライラックは快感の興奮と息を整える為に、壁に背中をつけ膝を抱えて座った。
     壁のひんやりとした冷たさが、火照った身体を冷やしていく。
     しばらくの間、2つの月をぼんやりと見上げる。だが頭の中は真っ白になっている。
     身体の火照りが冷めていくのと同じに、頭の中の頭脳も動きを始める。
     ライラックはタオルで股間の淫液とオシッコの液を拭き取ると、よろよろと立ち上がり、下着を身に着けた。
     改めて回りを見渡す・・・誰もいないようだ・・・ホッとした気持ちになる。
     ベランダから部屋に入ろうとした時、夜空に何かが飛んでいるのに気がついた。
     それも沢山の数だ。
    「・・・?」。目を凝らして見上げる。月の光を浴びてそれは姿を現した。
     人間の姿をしている・・・両腕からは大きな蝙蝠の翼をはやしている。
    「蝙蝠人だっ!」。ライラックは叫んだ。
     蝙蝠人達が町へと降りていくのが見えた。
     ライラックは急いで部屋の中に飛び込んだ。
    「ライラックさん、どうしたんですか?。こんな夜中に・・・、ふぁぁぁぁぁ」
     ライラックが鎧を身に着けているところを目にして、チャームがあくびをしながら尋ねた。
    「蝙蝠人達が襲ってきたのよ!。チャームもすぐに準備をしてっ!」
     鎧を身に着け、剣を装備したライラックは、早口で答える。
    「ふぁぁぁぁぁ~・・・、でもね・・・寝不足は、あたしのお肌に良くないのよね・・・。おやすみなさーい」
     チャームはまた布団をかぶってしまう。
    「寝るなぁぁぁ!。町では大変な事になっているのよ!。起きてっ!」
     ライラックはチャームの布団を勢いよく剥ぎ取る。
     そこへメイドの少女が飛び込んでくる。
    「ライラック様。チャーム様。蝙蝠人達が町を襲っています!。馬を用意いたしましたので、直ちに出動してください!。公爵様の衛兵隊も出動しました」
    「わかったわっ!」。ライラックはふくれっ面のチャームの手を引っぱって入り口に待機している馬の背中に飛び乗った。
     手綱を引くと、町へと馬を走らせる。
     ライラックはふと後ろに一緒に乗っているチャームの顔を見る。
     ほっぺたがプウーと膨らんでいる。
    「いい加減にそのふくれっ面を直しなさいよ。これから仕事なんだから」
     ブツブツと文句を言っているチャームに、ライラックが注意をする。
     すると、背後のチャームが猫なで声で聞いてくる。
    「ねね、ライラックさん。このお仕事の報酬が入ったら、あたし銀の指輪と足輪が欲しいの、買ってもいいでしょう?」
     ライラックは、ほーらきなすったな、といった気分で答える。
    「仕事を完全にやりとげたらね」。
    「うん。チャームがんばる!」。
     チャームの言葉を聞いて、ライラックは『どうしてこんなのと、パーティーを組んじゃったのかな・・・』と言う自己嫌悪感に陥ってしまいそうな気分になる。
    「きゃっ。ライラックさん、前っ!」。突然チャームが叫び声を上げた。
    「なにっ?」。顔を前方に向けると、蝙蝠人が槍をかざして突っ込んでくる。
     ドバァッッ!。槍が馬の首を前から後ろへと貫き、槍の先が鞍の所まで到達した。
     馬は悲鳴のようないななきをあげると、首から鮮血を噴きながら、もんどりうって倒れる。
     だが、槍が突き刺さる一瞬、ライラックはチャームを抱えて馬から飛び降り、事なきを得ていた。
     すかさず、腰の剣を素早く抜き蝙蝠人を一刀のもとに切り裂いた。
     ズバァァァーッ!。「グギャァァァーッ」。真っ二つになった蝙蝠人が地面に落ちてくる。
     すぐ目の前は町の入り口だ。
     町の中では数カ所から火の手が上がっている。町の人達が逃げまどっている。
    「チャーム。魔法の支援を頼むわよ!」。
     ライラックは振り向きもせずそう叫ぶと、町の中へと駆け込んでいった。
    「はーい、わかりましたー・・・」。
     チャームは目をつぶり口の中で呪文を唱えると、左の掌にポワーッと光が現れ、その中から分厚い魔法書が出現した。
     黒い表紙には、金色で描かれた丸のマークの中に、同じく金色の正三角形と逆三角形の重なった図柄が描かれている。
     チャームは魔法書を胸に抱きかかえて、ライラックの後を追って町の中へと駆けていった。
     町の男達が、公爵の衛兵達が、剣を手に蝙蝠人達と懸命に戦っているが、どうも旗色が悪い。
     ズバァァッ。ライラックは目の前に躍り出てきた蝙蝠人を、目にも止まらぬ剣さばきで切り倒す。
    「キィィィィッ」。別の蝙蝠人が、剣を片手に上空から襲ってくる。
     びゅっ。さっ。ライラックはとっさに身体を屈め蝙蝠人の剣を避けた。空中にライラックの切られた髪の毛が数本舞い散る。
     スパーーンッ!。ライラックの剣が蝙蝠人の頭を切り落とす。
     ライラックは次の敵を求めて走り出した。
     建物の陰から悲鳴がおこる。3匹の蝙蝠人が、赤ん坊を抱いた女性を取り囲んでいた。
     蝙蝠人の手が、女性のか細い身体に迫る。
    「いやっ」女性が力ない声を上げた時、「まてっ!」と、ライラックが叫び、ズバァァァッと蝙蝠人の身体を切り裂いた。
    「ギィィィィッ!」。蝙蝠人の胴体が腹部を境に上下2つになった。
     続いて、ライラックの剣が振り下ろされ、蝙蝠人の身体を左右に切り裂いた。
     ドバァァァァッ!。蝙蝠人は一鳴きも出来ずに、切り裂かれた身体を地面に倒した。
    「ギャッ」。残りの1匹が恐れをなして空へ逃げようとした時、ライラックの剣が蝙蝠人の片腕を切り落とした。
     ズバッ!。「ウギャァァー」。翼を失った蝙蝠人が地面に落ちて転げ回る。
     ライラックは蝙蝠人に近づくと、剣を蝙蝠人の額に突き立てとどめを刺す。
     ズドッ!。剣先が額から後頭部へと貫通する。蝙蝠人は手足をピクピクと数度痙攣させ息絶えた。
     ライラックは、恐ろしさで立ちつくしている女性に「速く逃げろっ!」と大声で言った。
     女性は震えながら頷くと、その場から懸命に駆けて行った。
     それを目で追っていたライラックはホッと一息を入れる。
     だがその時、その一瞬のスキをつかれ、背後から近づいた蝙蝠人によって、ライラックの首が絞められた。
    「あぐ・・・」。蝙蝠人の両手の力が段々と強くなり、ライラックの首を締め上げていく。
    「ううう・・・う、ぐ、ぐ・・・」。
     ライラックの額からは、苦しさの為に、玉のような汗が噴き出してくる。
     ぐい、ぐい、ぐい。息苦しさをライラックは歯を食いしばって堪える。
     ぼやけだした視界の前を、シュッという音と共に、何かキラリと輝く物が飛び抜けた。
     その瞬間、蝙蝠人の悲鳴が上がり、首を締めつけていた手が力なくはずれた。
     ライラックは咳き込みながらも、背後に倒れている蝙蝠人を見た。
     蝙蝠人の身体には、何か鋭い物が通り抜けた穴が無数に開いており、そこからは大量の血が流れていた。蝙蝠人はすでに死に絶えていた。
     そこから少し離れた所に、チャームが魔法書を抱えてニコニコした顔で立っていた。
    「ライラックさん、あたしの銀の指輪と足輪が掛かっているんですから、まだ死んじゃだめですよ。」
     チャームは、本音ともジョークともつかない言葉を笑いながら言った。
    「ギィィィ」。頭上から蝙蝠人の叫び声が響く。
     チャームめがけて、蝙蝠人が急降下してくる。
     蝙蝠人の口の牙がガチガチと鳴っている。
     チャームは手にしている魔法書を開くと、ページを1枚ビリッと破り取り、迫って来る蝙蝠人に向かってサッと投げ上げた。
    「氷刃(ひょうは)!」。チャームが叫ぶ。
     ぺらぺらの紙は瞬時に十数個の氷の刃物に姿を変えて、蝙蝠人の身体を情け容赦なく突き通した。
     ドサッ。氷刃によって開けられた傷口から、血を吹き出しながら、蝙蝠人は地面に落ちてきた。
     チャームはライラックに向かって細い腕を突き出すと、自慢げに「Vサイン」を作って見せた。
     一方、夜空を飛んでいた一匹の蝙蝠人が、館の自室から町の方を見ていた公爵の姿を見つけると、「キキィー」と鳴き、公爵めがけて窓を突き破って飛び込んできた。
     グワッシャァーン!。
     蝙蝠人が、フォレックス公爵の首筋に鋭い牙で噛みつこうとした時、ガシッ!、とその頭が鷲掴みにされた。
     その右手は普通の時の数倍の大きさとなっていて、公爵の身体全体から見たとき、まるっきしアンバランスの光景を見せていた。
     公爵は左の手で眼鏡を外す。公爵の真っ赤な色の目が現れる。
     すると、公爵の身体は少しずつ人間の形から、別の物へと変身を始めた。
     段々と変化をする身体は、着ている服を引き裂いていく。全身に濃い毛が覆っていく。
     しかし部屋の中にいるメイド達は、別段驚く様子は見せていなかった。
     いつものように静かに部屋の隅にたたずんでいるだけだ。
    「わしの領地を襲ってくるとは・・・許さん!。」
     犬のような形の口が動き、そう言葉を吐き捨てるように言うと、蝙蝠人の頭を鷲掴みにしていた巨大な右手に力を入れた。
     グシャッ!。嫌な音を立てて蝙蝠人の頭は握りつぶされ、肉片が四方に飛び散った。
    「雑魚がっ!」。ニヤッと笑った公爵の口からは鋭い牙が何本も覗いていた。
    「御主人様、お身体をお拭きいたします。」
     秘書のあの女性と数人のメイドの少女達は、いつの間にか全裸の姿になると、全身獣のような毛に覆われ仁王立ちになっている公爵の身体に近づき、自分たちの舌で飛び散って公爵の身体についている肉片の汚れをペロペロと舐め取り出した。
     月の光に照らされ壁に写し出された公爵の影は、耳をぴんと立て大きな尻尾を3本も持つ、巨大な狐の姿であった。
     公爵は赤い目をより一層光らせて、襲われている町を見つめていた。
    「・・・・・・・・・!?」。
     公爵はある物が近づいて来るのに気がついた。
    「ヤツが・・・来たか・・・」。
     公爵の鋭い瞳が夜空の一角に釘付けになった。
     同じ頃、町の中で戦うライラックとチャームにも、それが近づいて来るのがわかった。
    「何が来るの?」。ライラックがチャームに聞く。
     チャームはわからないと言うように、顔を小さく左右に振った。
     ライラックとチャームは夜空の一角を息を殺して注視する。
     ザザザァァァァーーーーッと、何か巨大な物が見上げている上空を横切った。
    「なにっ?」。ライラックは思わず声を上げる。
     それはライラック達の頭上を2、3回旋回すると、地上に降り立った。
    「ええ?、・・・な、なに・・・こいつが蝙蝠人の親玉なの?。」
     ライラックは思わず後ずさりをする。
     姿は他の蝙蝠人と同じ姿なのだが、大きさがでかすぎる。
     ざっと見たところ・・・7、8メートルはある。
     そいつの額には、公爵から聞いていた血のように赤い輝きを見せている、ブラッド・オパールが見えている。
     だが、想像もしなかった状況になって、ライラックとチャームはどうしたら良いか、わからなくなってしまった。
    「誰よっ!。蝙蝠人の親玉も、普通の大きさだなんて言ったのは?。」
     ライラックはチャームに向かって大声で叫んだ。
    「そんなこと言われても・・・」。チャームが反論する。
    「ギィィィィッ!」。
     口論する2人に向かって、巨大な蝙蝠人は拳を振り下ろしてきた。
     グワッシャーーン。
    「きゃぁぁぁ!」。すんでの所で2人は飛び退いた。
     地面に大きな穴が出来る。
     再び巨大蝙蝠人の拳が、2人を狙って振り下ろされる。
     ズシャーーーン!。地面の土を跳ね飛ばして、クレーターが出来る。
    「きゃーーん」。2人はジャンプをして、攻撃をすり抜ける。
    「こんな所に居てもだめだわ。取り敢えず退却よ」
     ライラックとチャームは、急いでその場から町の中へと逃げる事にした。
    「グワァァァッ!」。
     巨大蝙蝠人は、ドスドスと地響きを立てて、2人の後を追って来る。
     逃げる2人。追いかける巨大蝙蝠人。
    「はあ、はあ、はあ、・・・ライラックさーん、どうして戦わないんですかぁー?」
     走りながら、チャームは不満げに聞く。
    「あのねぇ、あんなでかいヤツ相手に、剣が効くと思っているのぉー」
     同じく走りながら、ライラックが答える。
    「それよりも、さっさと魔法を使ってよっ」
     今度はライラックが不満げにチャームに叫んだ。
    「だめでぇーす。・・・こんな状態じゃ・・・呪文が唱えられませーん。」
     チャームが、はあ、はあ、いいながら答える。
     走っているライラックの目が、狭い路地裏の通りを見つける。
    「しめたっ。チャームこっちよ!」。2人は家と家との隙間へと入って行く。
    「はあ、はあ、はあ、・・・狭い場所には、あの化け物も入って来ることは出来ないわ。・・・はあ、はあ、はあ・・・」
     ライラックはホッとしたように喋った。
    「取り敢えずは、一息つけますね」。チャームもホッとした気持ちを言った。
     そんな2人の耳に、バリバリバリ・・・と建物を壊す音がしてくる。
     ふたりは音のする方を見る。巨大蝙蝠人が家を破壊して、こちらへ来ようとしていた。
    「きゃぁぁぁ」。2人は悲鳴を上げると、また逃げ出した。
    「グオオオオオ!」。家を粉々に破壊した巨大蝙蝠人が、また2人を追いかける。
     ドスドスドス・・・と地響きを立てて。
    「あーん。ライラックさんが蝙蝠人をたくさん斬り殺したから、きっと怒って追いかけて来ているんですよぉ」
     チャームはライラックが悪いと言いたげな言葉を叫ぶ。
    「何で私だけの責任よっ。チャームだって魔法で結構やっつけたじゃないの?」
     ライラックが冗談じゃないと言いたげに、大声で反論する。
     2人はこんな事を言い合いながら、町の中をひたすら逃げ回る。
     その後を巨大蝙蝠人が追いかけて来る。家々を破壊しながら。
    「ライラックさーん。いったい何時まで逃げればいいんですかー?」
     チャームが泣きそうな声を出す。
    「知らないわよー。追いかけて来る蝙蝠人の親玉に聞いてよー」
     ライラックは、もういい加減にしてくれっ、と言う心境で答えた。
     その間にも、町の中の家々がどんどん壊されていく。
    「なにをやっているんだ?。あの2人は・・・」
     この光景を、公爵は呆れた気持ちで目にしていた。
     ある建物を目にした時、ライラックの頭脳にあることが閃く。
    「チャーム!。一か八か、ヤツの額のブラッド・オパールを剥ぎ取ってみるわよ!」
    「どうやってですか?」。チャームが聞き返す。
    「いいから。ヤツの足を止めてっ。頼んだわよっ!」
     そう言うと、ライラックは町で一番高い建物の中に駆け込んで行った。
     チャームは魔法書を開くと「氷刃」の攻撃を続けざまにおこなった。
     足に氷刃が当たる。・・・全然効き目がない。
     腹部に氷刃が当たる。・・・全然効き目がない。
     胸部に氷刃が当たる。・・・全然効き目がない。
    「えーん。どうしてー。全然効かないよぉー。」
     あせったチャームは苦し紛れに、巨大蝙蝠人の顔めがけて氷刃を投げつける。
     グサッ。グサッ。グサッ。・・・。
     巨大蝙蝠人の両目に氷刃が突き刺さった。
    「ウッギャアアアアァァァァァァ」
     巨大蝙蝠人は両目を押さえた。
    「きゃ。やったあ、やったあ」とチャームは大喜びをして、その場で飛び跳ねた。
     そのころ、やっと建物の屋根に上ったライラックは、屋根の上から巨大蝙蝠人を見下ろした。
     ちょうど真下に、巨大蝙蝠人の頭がある。
     赤い色のブラッド・オパールも見える。
     ライラックは剣を抜き、両手に持って狙いを付けると、「やぁぁっ」と巨大蝙蝠人の頭めがけて飛び降りた。
     ズバアアアァァァァーッ。ライラックの剣が巨大蝙蝠人の額に埋め込まれている、ブラッド・オパールの側に突き刺さる。
     赤い色のブラッド・オパールは近くから見ると、結構大きく、5、60㎝ぐらいはある大きさだ。
    「すごく大きな宝石・・・」。ライラックが一瞬そう思ったとき、ビシュウウウ、と突き刺した額から蝙蝠人の血が勢いよく噴き出した。
    「グギャァァァァァァァァァ」
     巨大蝙蝠人は、苦しさのため身体を激しく振って、頭上にいるライラックを振り落とそうとした。
     ライラックは突き刺した剣を懸命に握って振り落とされないようにしていた。
     ライラックは何とかして額のブラッド・オパールを剥ぎ取ろうとしたが、蝙蝠人が激しく動くのでとても難しかった。
     剣を握っている手が段々と痺れてくる。力が入らなくなってくる。
    『このままでは振り落とされる』
     ライラックの頭の中にその言葉が浮かんでくる。
    「グワオオオオオ」。巨大蝙蝠人は叫び、激しく身体を震わせる。
    「ああーん。このままじゃ、ライラックさんが死んじゃうー。どうしょう・・・」
     この光景を見ているチャームは、ただオロオロするばかりだ。
     だけど・・・何かをしなければ・・・、そう思ったチャームは、とにかく自分のありったけのパワーを集中し始めた。
    「地の中にいる者よ。風邪の中にいる者よ。光の中にいる者よ。そして水の中にいる者よ。我に力を与えよ。我は魔道士チャームなり。」
     チャームは呪文の言葉を呟く。
     一陣の風が吹き、チャームの身体を包んだ。
     続いて、チャームの身体が光に包まれていく。
     チャームの身体に、パワーが集中している事を示しているように、金髪の髪の毛がフワッと逆立ってくる。
     頭上に上げた両手の間に巨大な光の塊が出来上がる。
     その光の塊に、パワーが注ぎ込まれていく。
     閉じていたチャームの目が開かれ、ライラックを振り落とそうとしている巨大蝙蝠人を睨み付ける。
    「お前なんか、消えていなくなれぇぇぇぇ!」
     チャームの叫びと共に、巨大な光のパワーの塊が、蝙蝠人の親玉に向かって投げつけられた。
     その瞬間、目もくらやむ程の輝きがおこった。
    「なにっ!」。ライラックが、フォレックス公爵が、信じられないものを見たというような声をあげた。
     ドワァァァァァァーーーンンンン!。
     大音響と共に激しい爆風と衝撃波が、町を含めあたり一面を尽く吹き飛ばした。
    「いけないっ!」。
     公爵は手をかざし瞬時になにかの呪文を唱えた。すると館のまわりにバリアーの結界が作られ、それが衝撃波を尽く跳ね返した。しかしそれでも館全体が地震の時のようにガタガタと揺れた。
     巨大なキノコ雲の中から、四方の夜空に向かって、たくさんの小さな光る物が飛んでいくのを、公爵の目は見逃さなかった。
     蝙蝠人の親玉と蝙蝠人達は全て吹き飛ばされていた。そしてありとあらゆる物も吹き飛んでいた。
     巨大なクレーターの中で、力を使い果たしたチャームと巻き込まれたライラックが、並んで倒れていた。
    「あの小娘が・・・まさか・・・しかしこの力を使えると言う事は・・・間違いない・・・チャームはエルフの力を持っている・・・だが人間と同じ耳をしているところを見ると・・・人間とエルフとの間に生まれたハーフエルフだな・・・」
     公爵は独り言のように呟いた。
    ----------------------------------------
    「なんでぇーっ!。報酬が無いんですかぁぁ?。それに私達の首に付けられた、この首輪は何ですか?」。
     ライラックが声を荒げて公爵に詰め寄る。
     初めて会ったとき同様謁見室で、ライラックとチャームは、豪華なイスに座っているフォレックス公爵と相対していた。
    「町や周辺の村を跡形もなく吹き飛ばしておいて、なにが報酬かな?。」
     公爵の言葉を聞いて、ライラックは「うっ」と返す言葉を失い、チラッとチャームの顔をにらんだ。『チャームの責任よ・・・ううう・・・』。
    「それどころか被害甚大で、逆にこちらの方から損害金を請求したんだよ。君らの所属している傭兵ギルドにね・・・」。
     公爵は1枚の手紙を出して話を続ける。
    「そしたら、ギルドの方からこんな回答の手紙が届いたんだ。」
     手紙がライラックの足元に投げられる。ライラックはそれを拾い上げて見てみる。
     それにはこう書かれていた。
    『当傭兵ギルドから派遣した、ライラックとチャームの2人とはすでに契約が切れていますので、公爵が被った被害金はこの2人に請求して下さい。この2人を焼くなり煮るなりご自由にどうぞ』
    「な、なんだ、これはっ?」。あまりのことに、持っていた手紙を左右に引きちぎる。
    「何だと言われても困るが、そう言う訳だから、しっかりと支払ってもらうからね。」
     公爵の言葉を耳にして、「うー・・・、傭兵ギルドめが・・・見捨てられたぁー・・・」とライラックが唸る。
     秘書の女性が明細書をライラックに手渡した。
    「ええっ!。こんなに高額・・・」。
     天文学的な金額の明細書を見たライラックとチャームは、同時に絶望的な声を上げた。
     1つの町と周辺の村々を吹き飛ばしたのだから、何となく頷ける金額ではあるのだが・・・。
     暗い気持ちになっている2人に、公爵が尚も言葉を続ける。
    「ところで頼んでおいた、蝙蝠人の親玉の額から取った、ブラッド・オパールを渡してもらおうか。」
    「え?・・・」。ライラックとチャームが思わず顔を見合わせる。
    「あれですね・・・、蝙蝠人を吹き飛ばした時に、一緒にバラバラにして吹き飛ばっしゃったんですぅ・・・」
     チャームの言葉に、一瞬言葉を失った公爵の目が次第に鋭くなる。
    「ブラッド・オパールは、災いを呼ぶ秘宝なのだ。それを身に付けた者の回りには、必ず流血の惨劇が起こる。・・・それを防ぐ為に無傷で手に入れる事を求めたのに、それを四散させただとおぉ・・・。おまえらぁぁぁ。」
     公爵が怒りの声を上げる。
     ライラックの背後に隠れていたチャームが、突然ライラックの背中をドンと押した。
     公爵の方に投げ出されたライラックに、回りの注意が集まった時、チャームは素早く呪文を唱え魔法書を出現させると、魔法の呪文を唱えだした。
    「チャーム!。また1人で逃げて行くつもりなの?」。ライラックが大声で叫ぶ。
    「ライラックさん、今までお付き合いありがとうございました。あたしギルドに戻って新しいパートナーを見つけますので後はよろしくね」。
     チャームはペロリと可愛い舌を出した。
     呪文を唱え終えたチャームの身体の回りに、サァーッと一陣の風が吹き込んだ。
     しかし、チャームの魔法の効力はそこまでであった。
    「え?・・・・?」。チャームはもう1度同じ呪文を唱えた。
     結果は同じだった。チャームの身体はこの場所にあり続けている。
    「ど、どうして?」。チャームが泣きそうな声を上げる。
     それに答えたのは、公爵の低い声であった。
    「お前達の首に填めている、『隷属の首輪』の為だ。それを填めた者は、身も心も主人のものになり、従順になっていくんだよ。しかも剣の力や魔法の力も、主人が自由にコントロールが出来るんだよ。今のチャームの魔法が効かないのはその為さ。」
     秘書のあの女性や、メイドの少女達が填めている首輪も、これであった。
    「あーん・・・。あの・・・ライラックさん・・・」
     チャームはライラックに保護を求めるかのごとく、甘えた声で近づいた。
     チャームはライラックの顔を見る。ライラックの目が怒りに燃えている。
     チャームの首に填められた「隷属の首輪」が、チャームの魔道士としての力を封印してしまったことを知ったライラックは、今までの物わかりのよかったお姉さん的性格が、ガラリと変わり、まるっきり別人のような逆の性格を現し出した。
    「チャーム、もういい加減にしなさいよ。お前のわがままにはもうウンザリよ」
     ライラックが低く呟く。
     チャームは不思議そうにライラックの顔を覗き込んだ。
    「どうして、そんなこと言うの?。いつもライラックさんを助けてあげているじゃないの」
     チャームがそう言った時、パシーンと、ライラックの平手がチャームの頬にヒットした。
    「いい加減にしなさいっ!。何をいつも助けているよ!。もうお前のお守りはウンザリよっ!」
     そしてもう一発の平手打ちがチャームの頬に打ち入れられる。
     パァァァーン!。
    「ライラックさん、ごめんなさい!」。頬を手で押さえ、涙目のチャームが許しを請う。
     パシーン!。もう片方の頬に、ライラックの平手打ちが入る。
    「きゃっ!」。チャームがまた悲鳴を上げる。
    「ライラックさん・・・・・?、『さん』なんて言葉は対等の者が言う言葉なのよ。分かっているの?、魔法が使えない今のお前は、只の15の小娘なのよ。・・・ま、いいわ。これから、あたしへの言葉使いと、お前が今どういう立場になっているのか、時間を掛けて、お前の身体に教え込んであげるからね。・・・覚悟しなさい」
     ライラックの冷たい視線が、チャームの脅えた顔を貫く。
     ビリビリビリビリーッ!。
     チャームの着ている服の胸元に手を掛けると、ライラックはひと思いに引き裂いた。
    「きゃぁぁっ!」。
     裂けた服の中から、チャームの白い肌が姿を現した。
     まだそれほど膨らんでいない両方の乳房も顔を現す。
     バリ、ビリ、ビリリッ。
    「も、もうゆるして・・・」
     チャームは乳房を腕で隠して身体を丸めている。
     服を剥ぎ取られたチャームが身に着けているのは、今や股間を包む小さなパンティだけであった。
     ライラックは身に着けている、小形のナイフを取り出すと、鋭利な先端をパンティに近づける。
    「動くと怪我をするわよ」。ライラックが呟く。
     ビッ!。ナイフがチャームの身体に着けていた最後の布を切り取った。
     破かれ切り裂かれた服の中に、生まれたままの姿にされたチャームがいた。
     チャームは小声で泣いている。身体は脅えのため震えている。
     ライラックは、そんなチャームに命令調の言葉を伝える。
    「隠している乳房とオマンコをお見せなさい。お前の身体を見てあげるわ」
    「・・・・・・」。
     パシーーン。またライラックの平手がチャームの頬を打つ。
    「ごめんなさい・・・もうぶたないで・・・ううう・・・」
     チャームは、乳房を隠していた腕をどける。閉じていた両脚をそっと拡げる。
     ライラックは、目の前のチャームの裸体を、改めてまじまじと見下ろした。
     雪のように白い肌の色。乳房の上についている可愛らしいピンクの乳首。15歳の娘とは思えない引き締まったウエストと細い脚。人形のように整った顔立ち。そして金髪のロングヘアに、同じく金髪でまだ薄い陰毛。
     チャームは自分の全てをさらした恥ずかしさで、顔を赤くしてフルフルと震えていた。
    『チャームは本当に人間なの?。いくら魔道士が魔法を自分に掛けたとしても、ここまで整った身体になるものなの?』。
     チャームがハーフエルフだとはまだ知らないライラックは、チャームの身体を見て脳裏に一瞬そんな疑問が涌いたが、チャームの白い素肌に引き寄せられるように、手でチャームの乳房を軽く揉んだ。
     しかし、ライラックの口から出た言葉は、頭に浮かんだ疑問とは遙かに違うものだった。「白く綺麗な肌ね。傷ひとつ無い・・・、そうよね、お前はいつも危険の無い離れた場所から、効果が有るのか無いのかわからない魔法を使っていたんですものね。」
     揉んでいた乳房にギュッと力をこめる。
    「あうっ」。チャームの口から苦痛の声が漏れる。
    「あら?、痛かったの?。でもね、あたしは剣を使って直に怪物や化け物たちと戦っているんだからさ、痛いだけじゃすまないのよね。・・・とくに戦いの途中で職場放棄なんかされたんじゃ、あたしとしては困るのよね。命がけで戦っているんだからさ」
     チャームを見るライラックの目は、今までに溜まりに溜まった恨みを吐き出すかのような怒りの瞳を投げ掛けていた。
    「な、なんのことでしょうか・・・ライラックさまぁ・・・」
     涙顔のチャームが、おそるおそる聞く。
    「あらぁ、忘れちゃったの?。・・・巨大食肉植物と戦った時には、お前は途中で疲れたとか言って、戦いを止めてさっさと町に帰っちゃったでしょ?、あたし危なく食われるところだったのよ。」
    「そ、そんなこと・・・ありましたか?・・・きゃっ!」
     ブチッ!。チャームがそう言った時、ライラックの指がチャームの恥丘に生えている金髪の陰毛を引き抜いた。
    「あら、痛かった?。でもね、火を吐く虎と戦った時は、お前は精神が集中出来ないとか言って、魔法を使う事を止めちゃったわよね。あの時はあちこち身体を傷だらけにされたのよね」
     ライラックはそう言うと、チャームの陰毛を数本引き抜いた。
     ビチッ!。「ぎゃんっ」。チャームが小さな悲鳴を上げる。
    「そうそう。化け物ムカデと戦った時には、お前はあたしの背後にムカデがいるのに気が付いていたくせに、注意の声ひとつ掛けてくれなかったわね。あの時は危なく食い殺されるところだったのよ」
    「ご、ごめんなさい。・・・でもあれは、ライラック様が気が付いていると思ったんです・・・」。チャームが震えながら弁解する。
    「おだまり!」。ライラックの怒りの声と同時に、また陰毛が引き抜かれる。
     ブチッ!。「あぐっ!」。チャームは痛さで背中が反り返る。
    「こんな事もあったわね。・・・山賊たちと戦った時に、あたしがやつらに捕まった時、お前はさっさと逃げちゃったでしょう?。・・・そのおかげでね、あたしはやつらに好きなように輪姦されまくったのよ。それどころか、精液やオシッコを飲まされ、ウンチを食べさせられた人間便器にさせられていたのよ」
     ライラックの恨みの言葉を聞いていたチャームが、震えながら答えた。
    「でも・・・あの後、ちゃんとお助けしましたよぉ」
    「そうねぇ。一週間後にね・・・。でもチャーム、お前はその時、あたしに向かって何と言ったか覚えているかい?」
     チャームはひきつった顔を、激しく左右に振った。
    「あらあら。お前の頭は、都合の悪いことは何でも忘れてしまうのね。・・・、ならば聞かせてあげる、『ウンチやオシッコを、食べたり飲んだりして美味しかったですか?。でもなんか、ライラックさんには人間便器が似合っているかも知れませんね。』・・・そう言ってお前はあたしの前でケラケラと笑っていたのよ」
     怒りの為、殺気さえも現れているライラックの表情に対して、もう涙で顔をくしゃくしゃにして、どうしたらいいのぉ・・・、と言った弱り切った表情のチャームの顔であった。
    「その内に、お前にもあたしのウンチとオシッコをたっぷりと食べさせて、人間便器になってもらうからね。覚悟をしておくんだよ」
     ライラックはチャームに向かって、冷酷な言葉を伝えた。
     この2人のやりとりを眺めていたフォレックス公爵は、唇の端をゆがめてクスッと笑った。
    「ライラック殿は、あんなにも恨みが積もっているのに、よく今までチャームさんとパーティーを組んでこられましたね?。不思議です」
     フォレックス公爵の斜め横に立っている、秘書兼メイドの女性が呆れたように呟いた。
    「怪物や魔物と剣だけで戦う剣士には、どうしても魔法を使う魔道士の協力が必要なのさ。強い魔法の力で、戦いの支援をしてもらわなくちゃならないからね。ライラックとしては、チャームのご機嫌を取りながら、何とか今までパーティーを組んできたというわけさ。・・・それにしても、あんなわがままな魔道士とパーティーを組んでいて、よく今まで生き残ってこられたものだ」
     フォレックス公爵は、半分は感心し半分は呆れてクスクスと笑いながら呟いた。
    「きゃっっん」。フォレックスとメイドの会話は突然上がったチャームの悲鳴で中断された。ライラックの人差し指と中指の2本の指が、チャームのヴァギナの中へと深々と埋め込まれていた。
    「あら?、お前はまだ15歳だというのに、もうお前のアソコは指2本をくわえ込むことが出来るんだ。お前は魔道士としてどんな修行をしていたのかしら?」
     ライラックの2本の指がヴァギナの中で、グニュグニュッと、動かされる。
    「あ、あああーん。・・・だ、だめぇー。」
     チャームの悲鳴にも似た叫びが上がるが、ライラックは容赦なくヴァギナの中の指を動かし続ける。
     ニチャ。ニチャ。ニチャ。ニチャ。ニチャ。
    「あ・・・は、あ・・・ん。ああ、ん・・・」
     ニチュ。ニチュ。ニチュ。ニチュ。ニチュ。
     ニチュ。ニチュ。ニチュ。ニチュ。ニチュ。
    「ううう、ん・・・ひゃ、っん・・・あ、ん・・・や、ぁ、ん」
     ヌチャ。ヌチャ。ヌチャ。ヌチャ。ヌチャ。
     指で掻き回している、チャームのヴァギナの中から、いつしか液体を掻き混ぜているような音がしてきた。
     ライラックの指に、生暖かい液体が絡み付いてくる。
     ライラックはニヤリとすると指をヴァギナの中から引き抜いた。
     ズニュ。と音を立てて引き抜かれた指には、淫液が糸を引きキラキラと輝いていた。
    「あら。嫌がっているわりには、どうしてこんなイヤラシイ汁を漏らしているのかしらね?。淫乱魔道士さん?」
     ライラックは指を無理やりチャームの口の中へと押し込んだ。
    「どう?。美味しいでしょう。お前のオマンコから出た汁なんだから。・・・くすくすくす」
     ドサ。そこへ1人のメイドの少女が近づくと、ライラックとチャームの側に抱えてきたカゴを置いた。
    「フォレックス公爵様からです」
     そう言うとメイドの少女は一礼をして部屋の隅に下がっていく。
     カゴの中には、ロープ、手足に填める枷、鞭、蝋燭、洗濯ばさみ、男根をかたどった張り型・・・その他諸々の責め具が入っていた。
     ライラックはチラリと公爵の方に目を向ける。
     公爵は何も言わずに、ただ一度頷いただけであった。それを使えとの意味だ。
     ライラックは唇の端を歪めニヤリと笑うと、カゴの中から洗濯ばさみをひとつ取り出し、チャームの目の前に持っていく。
    「フォレックス様が、お前にこれらを使うことをお許しになったわ。さぁ、まだまだお前が忘れている事を思い出させて、しっかりと反省させてあげるからね。そして2度とわがままの言えない身体にしてあげるわ」
     ライラックはチャームのひきつった顔を楽しみながら見つめた後、チャームの乳首のところに手にした洗濯ばさみを持っていった。
     いっぱいに口を開いている洗濯ばさみがチャームの乳首に軽く触れたとき、ライラックは押さえていた指を放した。
     勢いよく洗濯ばさみが乳首に噛みつく。
     パチィィィーン!。「きゃぁぁぁぁぁっ!」。
     チャームの愛くるしい悲鳴が、館の中から二つの月が浮かんでいる夜空へと響き渡った。
     フォレックス公爵の牝奴隷となったライラックとチャームの淫乱の狂演は、この時から数日間続き、フォレックス公爵を楽しませることとなるのであった。
     しかし、公爵の心の中には気がかりな事が1つあった。それは・・・
    「さて・・・四散したブラッド・オパールをどうやって集めるかだなぁ・・・」であった。

    《 あとがき 》
     あとがきです。
     こんにちは。九尾きつねです。
     今回は、ファンタジー(官能)小説を書いてみました。
     いかがでしたでしょうか?。
     共和国の小説作品の中にあっては、もしかするとちょっと異色かも知れませんね。
    「一応官能シーンも入っていますから、大丈夫ですよね?。1枚のG編集長さん」(笑)
     内容は読んでもらったとおり、ライラックとチャームに思いっ切り暴れて(?)もらいました。
     でも暴れすぎて余計に騒ぎと被害を大きくしてしまったような・・・(笑)。
     さて、ラストに「おわり」としましたが、公爵の言葉からすると、まだまだ続きがあるのかも。・・・ってシリーズ化?、どうなりますか(まだ何も考えていませんので、笑)。
     この作品の感想などいただけたら、ありがたく思います。
     それではまた、次の作品でお会いいたしましょう。

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    『淫乱性奴隷母 幸子』  俺の母、幸子は足のきれいな女だ。  以前からパンストフェチだった俺は、毎日母さんのパンスト姿を見て欲情していた。  高校の時は、母さんの使用済みのパンツやパンストをこっそり洗濯籠から持ち出して、オナニーをしていたが、満たされない日々が続いた。  満たされない思いは日に日に強くなって、高校卒業時に […]

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年前

    『変態牝犬物語』…「初めに」  この物語は、女性国民の佐知子さんをチャット調教した時の内容に、ロアさんがインスパイアされて執筆したものです。 blogparts={“base”:”https://www.dlsite.com/”,”type”:”keyword”,”site”:”maniax”,”query”:{“keyword” […]

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年, 1か月前

    佐恥子>うぅ。。。こんな真昼間からゴメンナサイ。。(汗)[9月4日13時33分]一枚の銀貨>こんな昼間から発情している牝豚は、どんな格好をしてるんだ?[9月4日13時34分]佐恥子>あうぅ。。。起きてから着替えていないってのもあって。。白いTシャツに黒いズボン。。あと、黄色のパンツを履いてます。。[9月4日13時35分]一枚の銀貨>やっぱり牝豚には服はいらないな。[9月4日13時37分]一枚の銀貨>シャツとズボンを脱げ。[9月[…]

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    佐恥子>うぅ。。。こんな真昼間からゴメンナサイ。。(汗)[9月4日13時33分]一枚の銀貨>こんな昼間から発情している牝豚は、どんな格好をしてるんだ?[9月4日13時34分]佐恥子>あうぅ。。。起きてから着替えていないってのもあって。。白いTシャツに黒いズボン。。あと、黄色のパンツを履いてます。。[9月4日13時35分]一枚の銀貨>やっぱり牝豚には服はいらないな。[9月4日13時37分]一枚の銀貨>シャツとズボンを脱げ。[9月[…]

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    「佐恥子」さんが第1公民館【オープンチャット】から移動!で入室。[9月2日23時50分]「九尾きつね」さんが入室![9月2日23時50分]九尾きつね>さてと……。[9月2日23時50分]佐恥子>こんばんわです……。[9月2日23時50分]「いどう星雲」さんが入室![9月2日23時52分]いどう星雲>コンバンワ、星雲でヤス![9月2日23時52分]「一枚の銀貨」さんが入室![9月2日23時53分]佐恥子>なんだか緊張……[9月2[…]

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年, 1か月前

    「佐恥子」さんが第1公民館【オープンチャット】から移動!で入室。[9月2日23時50分]

    「九尾きつね」さんが入室![9月2日23時50分]

    九尾きつね>さてと……。[9月2日23時50分]

    佐恥子>こんばんわです……。[9月2日23時50分]

    「いどう星雲」さんが入室![9月2日23時52分]

    いどう星雲>コンバンワ、星雲でヤス![9月2日23時52分]

    「一枚の銀貨」さんが入室![9月2[…]

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年, 4か月前

     チャット調教を受けた佐知子の羞恥写真です。
     この変態女を、どうぞ侮蔑してやって下さい。

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年, 5か月前

    犬山しんのすけ乳出せ、乳出せΨ(`∀´)Ψ[4月29日1時22分]
    一枚の銀貨ほら、早く寝るために(o ̄∇ ̄)o[4月29日1時22分]
    いどう星雲脱ぎカタはしっかり監修しませんと(w[4月29日1時22分]
    九尾きつね佐知子さんがどんな下着(ブラ)を着けているか見てみたいね。>佐知子さん[4月29日1時23分]
    佐知子あぅぅ……[4月29日1時24分]
    佐知子だって……ブラ今つけてないです……(汗)<font size="1"[…]

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年, 6か月前

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 21年, 7か月前

    […]

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