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  • ハードSM小説『奴隷姉妹』 第11章(終章) – 崩壊

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    I:はじまり

     

    1週間後の8月10日、七海の奴隷1周年記念日前日の夜。少人数調教の22時からの回で、陽葵は単独で佐渡の指名を受けた。激しい折檻が続く中で、陽葵は苦悶の末に絶頂し、調教は終わった。その帰り際、佐渡は陽葵に小声で話し掛けた。

    「なかなか良かったわよ? 仁科さん」

    「ぜぇ…… ぜぇ…… あ、ありがとう、ございます…… 佐渡先生……」

    「ところで、ペロに会いたくない?」

    「…………は?」

    「ペロよ。木下光希。あなたの恋人のお姉さん」

    「な、何言って…… 光希お姉さんは亡くなって……」

    「死体、見たの?」

    「!!!?」

    陽葵は驚愕した。あまりに大きな衝撃に、1日の疲れも眠気も、鞭痕の疼痛も全て吹き飛んだ。何? 何言ってんの、この人!? 光希お姉さんは死んじゃったんだよ! 火葬されちゃったんだよ!? ち、違うの!? まさか…… まさか……!!?

    「光希お姉さん、生きてるんですか……?」

    「ふふっ…… 知りたければシャワーを浴びた後、今夜11時20分に客用トイレまで1人で来なさい。時間になったら鍵を開けるわ。ただし木下さんや他の奴隷たちには決して言わないこと。 ……いいわね?」

    それだけ言うと佐渡は退室していった。

    陽葵は呆然としていた。わけがわからなかった。確かに遺体を見たわけじゃない。火葬されてるトコも見てない。生きてる……の? 光希お姉さん、生きてるのっ!!?

    死の1ヶ月くらい前から、光希は骨と皮だけの状態で、いつ死んでもおかしくない様子だった。だが、それからも点滴だけで1ヶ月生き続けたのだ。今も生きていたとしてもおかしくはない。でも…… じゃあなんで飯森様は死んだって言ったんだろ? なんでウソついたの!? わけわかんない…… 七海に相談したいけど…… 相談しちゃダメって先生言ってたし…… ああ、どうしよう!!

    陽葵はシャワーを浴びている間も考え続け、結局七海に書き置きをしてから指定の時刻に客用トイレの前に立った。すぐに鍵が開く音がし、ドアが開いて全身黒ずくめの佐渡が現れた。先程まで着ていた真っ赤なボンデージスーツではなく、黒の全身タイツに着替えたようだ。しかも何だか見慣れないマスクをしている。

    「行くわよ」

    「待ってください。色々聞きたいことが……」

    「後でね。まずは従いてきなさい」

    「…………」

    陽葵は、わけがわからないまま佐渡の後を従いていった。客用トイレから宿泊区画の廊下に出たが、佐渡は何故か明るい方には向かわず、廊下の端にあるSTAFF ONLYと書かれた金属製のドアを開けた。中は高さ2mくらいのコンクリート製のトンネルになっていて、電気やガス、上下水道に光回線など、様々な配管が縦横無尽に走っていた。佐渡は懐中電灯を点けてその中を進んでいく。途中幾つも分かれ道があり、なんだか毛細血管のようだと陽葵は思った。

    にしても、なんでこんな変なトコ歩いてるんだろ。ここ、どこ? こんなトコにお姉さん、いるの? ホントに…… ホントに生きてるの……!? 陽葵は佐渡の後ろを歩きながら、ひたすら考えた。エアコンのかかっていないトンネルの中は、裸でいるには寒く、陽葵は何度かくしゃみをしそうになったが、大きな音を出したらマズそうな雰囲気だったので、なんとか飲み込んだ。

    階段を幾つか降りて角を幾つか曲がった所に、先程と同じ金属製のドアがあった。STAFF ONLYとも書かれておらず、あまり使っていない感じのドアだった。

    ……いったいこの向こうに何があるんだろう。ここまで虹彩認証のセンサーを1箇所も通ってきていない。それが逆に怖い。佐渡と一緒だから脱走ということにはならないだろうが、深夜にこんなところにいて大丈夫なんだろうか……?

    寒気が止まらない。JSPFの施設内は、常時裸で過ごせるように室温が年中一定に保たれている。陽葵もこの施設に来てから寒いと感じたことは一度もない(氷水を浴びせられるなどの調教プレイは除く)。なのにこの寒さ。鳥肌が止まらない。 ……違う。寒いから鳥肌が立つんじゃない。エアコンの効いていない異常な場所にいることが、陽葵をたまらなく不安にさせるのだ。この恐ろしい施設で、こんな異常なことをして、罰せられないのだろうか。でも、気になる。光希お姉さん、ホントに生きてるのっ!!?

    「いくわよ」

    低い、抑揚のない声で言うと、佐渡は鍵を開けてノブに手を掛ける。そしてノブをゆっくりと回してそっとドアを開けた。

     

    ……凄まじい糞便臭が2人を直撃した。

    「ぅううげろぁええええええええええええええええっ!!!!」

    陽葵は反射的に嘔吐した。ドアを開けただけで、臭いを嗅いだだけで、反射的にリバースしてしまった。ありえない。ありえない! 何この臭い! なにこれ!! 臭いなんてもんじゃないっ!! うげええええええええっ!!!

    「あーあ、床汚しちゃって…… 後で掃除しなさいよ?」

    どうやら佐渡の着けているマスクは、防臭効果の高い特殊なもののようだ。佐渡は、嘔吐はおろか咳ひとつせずに部屋の中へと入っていく。陽葵は口で息をしながら、躊躇いつつ後に続いた。

    8畳ほどの広さの薄暗いその部屋は、凄まじく濃厚な糞便臭で満たされていた。陽葵は、5日前の午前中の調教の際に、10人分の糞便を身体に塗りたくられたて、あまりの悪臭に発狂しかけたのだが、そんなのまるで比較にならない。床は一面糞尿まみれで足の踏み場もない有様、部屋のあちこちに糞便を集めてできた高さ50cmくらいの山のようなものが築かれていて、ありえないほど激烈な悪臭を放っていた。

    避けようという気すら起きないほどに汚物で埋め尽くされた床の上を、全身タイツに身を包んだ佐渡は平然と歩いていく。素足の陽葵は、足の裏から伝わる汚物の柔らかい感触に悪寒を覚え、半ばパニックになりながらも、どうにか佐渡の後に従いていった。

    佐渡は、とある糞山の前で止まった。信じられないことに、そこには全裸の中年男がいて、糞山の中にペニスを突っ込んでいた。何こいつ…… 何やってんの……? あまりに薄気味悪い光景に、罵声の言葉すら浮かんでこない。辺りを見回せば、他にも糞山にペニスを突っ込んでいる男が数人いるようだ。気分が悪い。猛烈に悪い。異常なんて生易しいもんじゃない。狂ってる。完全に狂ってる。この部屋はエアコンが効いているのに、寒くて堪らない。悪寒が止まらない。今すぐ帰りたい。なんなの、ここ? なんなのよぉっ!!

    「よく見て?」

    佐渡はそう言うと、糞山の一角を指差した。そこだけ少し色が違う。ウンチじゃない。ウンチ色なんだけど、ウンチそのものじゃない。所々に築かれた糞山は、全て糞便の塊というわけではないらしい。厚く積もった糞の下に「何か」ある。 ……いる。長さ80cmくらい、幅30cmくらい、高さ20cmくらいの「何か」。男のピストンに合わせて「何か」がゆっくり動いている。

    「ぅ…… ぁ……」

    その時、「何か」が声を発した。陽葵は心臓が止まりかけるほどの衝撃を受けた。この声っ!!!!

    「うそ…… そんな…… 光希……さん……?」

    「かひゅ…… ぃあ……」

    色の違う部分は、どうやら人間の顔のようだった。糞で埋まっていないとは言え、顔にも汚物が付着して、肌の色は全く見えていない。声を発しなかったら陽葵は人間の顔だと気づかなかっただろう。でもよく見れば見覚えがある。目の窪み、歯が無くなって痩けた頬、口からだらしなく伸びた長い舌、それにこれは…… 糞色に染まった…… 眼帯!!

    「光希お姉さん!!」

    陽葵は大声を上げると、汚物まみれの床に膝を付いて、光希の身体の上に積もった汚物を手でどけていく。手が、腕が、茶色に染まっていく。あまりにおぞましい感触だったが、そんなことどうでもいい! 光希お姉さんが生きてた! 生きてた!! ……でも、なんでこんなことになってんのっ!!?

    その時、陽葵の手が止まった。思考も止まった。瞬きすら止まった。限界まで目を見開いて、手をガクガクと震わせて、全身から脂汗を噴き出して。陽葵の視線の先、光希の肩。そこに腕はなかった。股関節の先に、脚もなかった。光希は既に逃亡罪によって手足を失っていたが、完全に失ったわけではなく、二の腕と腿の中程で切断されていた。だから15〜20cmくらいの短い手足が残っていたのだ。それがない。ないっ!!

    「ひ……まり……」

    自分を呼ぶ光希のか細い声を聞いて、陽葵は我に返った。そして光希の顔を見、顔や頭を覆う汚物を手でどけていく。四肢切断からまだ1週間しか経っていないからか、切断箇所には包帯が巻かれていたが、それも茶色一色に染まっていた。

    「あぁぁ……」

    汚物を払いながら涙が溢れてくる。髪が…… 髪がない。1本も。うそ…… うそでしょっ!?

    メス犬ペロ(光希)の髪は、ここ最近は抜け毛や白髪が目立ち、髪質も急速に劣化していたが、雑用係がきちんと毎朝洗って手入れをしていた。調教中に汚物を被ってドロドロのバキバキになっても、翌朝にはキレイなポニーテールに戻っていた。なのに。抜け毛が進んで、全部抜け落ちてしまったのだろうか。それとも、手足を奪った連中が髪の毛まで奪っていったのだろうか。どうせ…… どうせそっちに決まってる。 ……なんてことすんのよ。こんなウンチまみれのトコで、手足切って髪も切って。ありえない…… ありえないっ!!!!

    陽葵は座り込んだまま、首だけ佐渡の方を向いて睨みつけた。佐渡の方も、(マスクをしているので口元は見えないが)残忍な笑みを浮かべながら陽葵を見下ろし、そして語り出す。

    「ここ、8畳くらいあるんだけど、等間隔に糞山が並んでいるでしょ? この配置、この間隔、なんだか見覚えない?」

    「…………」

    「実はここ、あなたが773号室に移る前に毎朝使っていた奴隷用のボットン便所の真下なの」

    「なっ!?」

    「あなたは毎朝、仕切りも何もない床に穴が開いているだけの場所で、恥ずかしい思いをしながら糞尿を垂れ流していたわけだけど、穴の下はこんなことになってたってわけ。」

    「じょ…… 冗談でしょ? そんなの……」

    「ここは便槽。奴隷たちの終着点よ」

    「はぁっ!!?」

    「役立たずになったJSPFの奴隷やメス犬はね? 手足を完全に絶たれてここで余生を過ごすの。奴隷たちの糞尿を毎朝浴びながら、たまにやってくるスカトロマニアの客に犯されながら、毎日点滴を受けて無理やり寿命を引き伸ばされて、完全に息の根が止まるまでここで過ごすのよ。そしてその有様を全て撮影されて、世界中のキチガイどものオナネタになるの」

    「!!!!」

    「仁科さん…… いや、陽葵。お前もね!!」

    「!!!!!!!!」

    「JSPFの奴隷のうち、オークションに出品されてここから出られるのは半分もいない。私みたいに身請けされる奴隷はさらに少ない。残りは全員ここ。ここが終点。陽葵…… お前も今は10代でお肌ピチピチだけど、10年も20年もここにいてごらん? 出産を繰り返してまんこはボロボロ、ケツの穴もぶっ壊れて、胸は醜く垂れて、若白髪で糞まみれのシワクチャババァだから。そんなの価値ないでしょ? そうなったらオシマイ。お前の未来はここ。ここで糞にまみれて、糞マニアの糞野郎に犯され続けて、死んでいくの。ペロみたいに!」

    「!!!!」

    「ここ、昔炭鉱だったっていうの聞いてる? この部屋のすぐ横にものすごく深い縦坑があってね? 墓穴にピッタリでしょ? 死んだらそこにポイ。死肉は糞まみれだからあっという間に分解されて骨だけになるらしいわよ? ……それがJSPFの奴隷の末路。あなたと、あなたのお母さんと、玲香と…… この施設にいる大半の奴隷の最期よ!」

    「!!!!!!!!」

    「ああ、それから…… さっきオークションとか身請けとか言ったけどね? 私が全力で潰すから。お仕置きの頻度が高い奴隷は優秀とは見做されない。そんなヤツ、お荷物だからオークションには出されないし、身請けもされない。私がね? 毎週お前を指名してボコボコにするの。そしたら集中力が切れて次の回でミスして毎回お仕置き。それが毎週続けばJSPFの評価はガタ落ち。歯もどんどん抜かれて、お腹の子は流産して…… それを何年も何年も続けるから。お前がここに落ちるまで続けるから」

    「な…… なんで…………」

    「……この前、ペロがお前たちの前から消えた日、お前、1日じゅう奴隷たちと乳繰り合ってただろ」

    はらわたが煮えくり返った。なんでコイツだけこんないい想いをしてるんだ! なんでコイツだけ!! なんで!!! 私は!!!! 私は!!!!!

    「七海と幸せそうに抱き合うお前を見てね…… 殺してやりたいくらい腹が立った。でも、殺したらそれっきりでしょ? だから、お前に絶望の未来を教えた上で、10年でも20年でも、役立たずのカスになるまで徹底的にいたぶってやることにしたってわけ。 ……楽しそうでしょ? 覚悟しておけよ!!? 仁科陽葵っ!!!!」

    「!!!!!!!!!!!!」

    怖い! 怖い!! 怖いっ!!! 陽葵は途中から完全にパニックになっていた。心臓がありえない速度で高鳴り、血圧が150を超え200を突破する。失禁し、全身が震え、悪寒が走り、脂汗が滝のように流れる。

    怖い! 怖い!! 怖いっ!!! 地獄よりも恐ろしい部屋で、地獄の鬼ですら逃げていきそうなほど恐ろしい顔で睨まれ、あまりにおぞましい未来を宣告されて、マトモな思考力は全て消え去った。

    怖い! 怖い!! 怖いっ!!! 足元にいる光希のことも、最愛の恋人のことも、母のことも玲香のことも堀田のことも、全部頭から吹き飛んだ。

    怖い! 怖い!! 怖いっ!!! 七海とママと玲香さんが一緒なら、ここでもやっていけると思ってた。でもやっぱりここは地獄だったんだ。アタシもいつかこうなる。いつか必ず! こうなる!!

    怖い! 怖い!! 怖いっ!!! もうイヤ! この人から、鬼から逃げたい。この地獄から逃げたい! 逃げなきゃ!! 逃げなきゃっ!!! 殺されるっ!!!!

    陽葵は猛然と立ち上がると、脱兎のごとく逃げ出した。床一面の糞便に足を滑らせながらも、往きに入ってきたドアまで全速力で走った。ドアには鍵が掛かっておらず、陽葵はドアを勢いよく開けると、配管トンネルを猛然と駆け出した。寒さなんてまるで感じない。怖い! 怖い!! 怖いっ!!!

    毛細血管のように入り組んだトンネルはまるで迷路であり、陽葵はすぐに往きに通ってきた道とは違う道に入ってしまった。直後、薄暗いトンネルのあちこちで赤色灯が点き、方々でけたたましいアラート音が鳴った。すぐに警備員や調教師たちが駆け付け、陽葵はあっという間に捕縛された。

     

    8月10日23時48分、陽葵は脱走した。

     

    ……佐渡は便槽の通用口のドアの前で呆然と立ち尽くしていた。

    奴隷の体内には各種センサーが内蔵されたマイクロチップが埋め込まれており、その位置は監視システムが常時把握している。システムは、奴隷の生活動線や指名状況などを基に奴隷の可動範囲を自動で切り替えつつ、奴隷がその範囲から逸脱した場合には即座にアラートを鳴らすようにプログラミングされている。

    佐渡は、虹彩認証付きのドアを通らずに客用トイレから便槽まで行けるよう、事前に配管トンネルの経路を調べ上げ、この日の23時から明朝までの間、その経路を陽葵の可動範囲に加えるよう、予め警備員に伝えておいた。警備員には堀田の命令であると虚偽の説明をした。

    全ては陽葵に極限の絶望を与えるため。絶望の中で苦悶するJSPFの奴隷たちを差し置いて、この私を差し置いて、ひとり恋人といちゃつくこのクソガキを徹底的に潰すため。

    うまくいっていた。便槽の中にいたスカトロマニアの男たちにも、自分と陽葵が深夜に便槽を訪れたことと、会話の内容は秘密にしてくれるよう事前に大金を渡しておいた。あとは陽葵に、今夜ここで起こったことを七海たちに話したら、七海たちの手足を切ってここに捨てると脅してから、773号室に帰らせて、それで終わるはずだった。

    だが、興奮の極みにあった佐渡は、陽葵が逃げ出す可能性を完全に見落としていた。それ故に便槽の通用口の鍵を掛け忘れた。 ……遅かった。気づいた時には陽葵は既に走り出していた。「あっ!」と声を上げて佐渡は急いで追いかけたが、通用口のドアに達した時には既にアラートが鳴っていた。佐渡は真っ青な顔でそれを聞いていた。

     

    II:罪

     

    翌8月11日。1周年の日の朝6時。七海たちが起きると陽葵はいなかった。3人とも昨日の最後の調教は別々に受けており、調教が終わってシャワーを浴びた直後、3人は例によってベッドに倒れ込み、失神するように眠りに就いた。深夜3時頃に美海がぐずり出したため、今日子が起きてオムツを交換し、その際に陽葵がいないことに気づいたものの、ここ最近、陽葵は七海のベッドで一緒に寝ることが多かったため、今日子は特に気に留めることもなく、オムツ交換が終わったらすぐにベッドに戻って寝てしまった。773号室は高性能の防音シートで覆われているため、けたたましく鳴り続けるアラートも、警備員や調教師たちの足音も、3人は全く気づかなかった。

    そして朝、陽葵は忽然と消えてしまった。調教部屋やシャワー室でそのまま寝てしまったのではないかと、全ての部屋を念入りに探したが見つからなかった。そして、玲香がリビングの机の上に置いてある書き置きを見つけた。

    『光希お姉ちゃん、生きてるみたい! 調べてくるね。必ず会わせてあげるから、待ってて! 陽葵』

    3人は、光希が生きているかもしれないという情報に驚愕し、だが喜ぶどころか一気に不安になった。調べるって…… 部屋の外に出たってこと? 玄関のドアを開けるには虹彩認証をパスしないといけないし、客用トイレは鍵が掛かっているのに…… どうやって出たの? ……なんで戻ってきてないの? これって脱走したってことに……ならないよね!?

    3人の不安は、8時になっても飯森と堀田が来なかったことでさらに跳ね上がった。

    どうなってるの? こんなことこれまでに一度もなかったのに…… 昨日の夜はいつもより疲れてて、すぐに寝ちゃったから隣に陽葵がいたかわかんないよ…… 陽葵、どこにいるの? いついなくなったの? いつ帰ってくるの? 無事なんだよね? 脱走なんてしてないよね? お願い…… 早く帰ってきて…… お願い…… お願いっ!!

    陽葵…… どこにいるの? いつからいなくなったの? ああ、美海ちゃんのオムツを換えた時に七海ちゃんの部屋を見に行けば良かった…… あの時には一緒に寝てたのかしら…… それとももういなかったのかしら…… ああ、陽葵…… お願い、無事でいて……!!

    陽葵ちゃん、どこにいるの? 調べるって、外に出たの? 外はマズいよ…… 普通の奴隷ならカプセルベッドと調教室の間とかは監視システムがオフになっていて自由に行き来できるけど、私たちは七海の部屋に移ってから一度も外に出てないから、多分オフエリアはない。多分玄関の外に1歩でも出たら即アウト…… お願い、無事でいて…… お願い!!

    だが、昼を過ぎて集団調教の時間になっても、夜の少人数調教の時間になっても、誰1人来なかった。もちろん陽葵も。時間を追うごとにどんどん強まる不安。光希が生きているという情報も気になるが、陽葵が心配でそれどころではない。

    陽葵は堀田の命令で、外で何かしているのだろうか? もしかして堀田の命令で光希の生死を調べているとか? まさか。飯森は「光希は死んだ」と言ったのだ。もし生きているなら飯森は嘘をついていたことになる。堀田も。そんな人間が、光希の生死を陽葵に調べさせるとも思えない。そして、もし堀田の命令とは関係なく調べているのだとしたら、あまりに危険だ。嘘をついていた堀田が、飯森が、JSPFの人間が、真実を知った陽葵を放っておくだろうか? ……放っておくわけがない。外は敵だらけ。見つかったら終わりなのでは? 怖い。考えるのが怖い。考えれば考えるほど陽葵が恐ろしい目に遭っていそうで、怖くて怖くて堪らない。

    結局誰も来ないまま深夜0時を回ってしまった。3人はベッドにも行かず、書き置きの置いてあったリビングのソファーに座って、ひたすら陽葵の無事を祈り、帰還を待ち続けた。

     

    ……時間を巻き戻して、朝の8時、飯森と堀田は七海の許には向かわず、メス犬区画1号室にいた。

    飯森と堀田は怒り狂っていた。佐渡を天井から吊るし、普段は使わない拷問用の鞭でメッタ打ちにした。全身の皮膚がボロボロに裂け、血と肉片が飛び散り、全身真っ赤に腫れ上がっても尚、鞭を振るい続けた。気絶するたびにスタンガンで起こし、ショック死しないように気付け薬を皮下に注射し、泣き叫ぶ佐渡の口を正面から拳で殴り付けて残り少ない前歯を全てへし折る。手足の爪は20枚全て剥がされ、右手の親指と薬指は前歯とともに床に転がっていた。右目には釘が打たれ、左の乳房は裂けて中の脂肪が飛び出してしまっている。凄惨な拷問の中で佐渡は洗いざらい自白したが、自白が終わっても拷問が終わることはなかった。

    陽葵への嫉妬! たったそれだけ! そんなくだらない理由で!! 姉の死という不可避のハードルを乗り越えさせ、あとはもう好きなだけ七海を可愛がっていこうと思っていた。1年、5年、10年、30年。自分が老衰で死ぬまで、毎日七海と愛娘たちを愛(虐待)していこうと思っていたのに! 七海の処女を奪って1周年となる今日。七海が理想の奴隷となるようひたすら調教してきたこれまでと、理想の奴隷となった七海をさらに調教し続けていくこれから。その結節点である記念の日。よりによってこの日に。なんてことをしてくれたんだ、このゴミクズは! 全部…… 全部パアじゃないか!!

    堀田もまた激怒していた。堀田の名前を勝手に使って陽葵を外に連れ出し、会員客を買収してまでこのような愚挙に出るとは! 七海は堀田にとってもお気に入りの奴隷だったし、仁科母娘も七海の影響を受けてか、当初の期待以上に良質な奴隷になりつつある。七海の人気はJSPFの中でもダントツのトップで、773号室は連日の大盛況。新たな調教部屋も続々と作っている最中だ。姉の死という特大の不安要素をクリアして前途洋々。堀田も七海と仁科母娘の今後に大いに期待していたし、記念日たる今日は、JSPFを挙げての大イベントを行う予定だったのだ。それを…… 嫉妬に狂った飼い犬に台無しにされるとは!!

    脱走した奴隷は四肢切断。これはJSPFの鉄則だ。陽葵たちJSPF専属の奴隷はもちろんのこと、七海のように会員個人が持ち寄った奴隷にすら適用される。そこに酌量の余地は一切ない。

    例えば、ポチは施設から故意に逃げようとしたわけではない。連日の過酷な調教でフラフラになり、ベッドルームに帰る途中で道を間違えた。すぐにアラームが鳴った。そこで立ち止まって、駆け付けた警備員に事情を話せば、抜歯1本程度で済んだのだが、当時14歳だったポチは、パニックに陥ってそのまま逃げ出してしまった。これは紛うことなき脱走であり、酌量はなされなかった。

    当然、陽葵も脱走罪となった。四肢切断刑(麻酔なし)の執行は既に決定済みである。佐渡の自白は一切斟酌されず、幹部の堀田への忖度なども行われなかった。 ……脱走罪とは、それほどまでに絶対的な存在なのだ。

    JSPFにとってはそれで良いのだが、飯森にとっては最悪だった。なにせ陽葵は七海と相思相愛なのだ。最愛の恋人が四肢を断たれてメス犬になるなどと知ったら、七海が受ける精神的ショックは計り知れない。しかも、姉の死の際には事前に入念な準備を行ってきたが、今度は一切それがないのだ。

    しかもより悪いことに、陽葵は書き置きを残していき、七海はそれを読んでしまった。

    深夜、陽葵の脱走が発覚した直後から、飯森は堀田に頼んで七海たち3人の監視を強化させたのだが、強化したのは七海の寝室と世話係の部屋、それに陽葵が便槽に向かった経路である客用トイレなどに限られ、書き置きの置いてあったリビングは対象外だった。朝になって玲香が書き置きを発見する前に、その存在に気づくことができていれば、警備員を向かわせて密かに回収することもできたのに。

    朝の6時に七海たちが起き、リビング含め各部屋を回って陽葵を捜索している間、数十台のカメラは3人を映し続け、飯森と堀田もそれを見ていたが、小さく折り畳まれた書き置きには気づけなかった。そうこうしている間に玲香が発見し、すぐに読んだ。そして七海に渡す。七海がそれを読んでいる間、七海の後方に設置されているカメラが書き置きにズームし、飯森と堀田は七海と同時にそれを読んだ。

    『光希お姉ちゃん、生きてるみたい! 調べてくるね。必ず会わせてあげるから、待ってて! 陽葵』

    最悪の内容だった。

    光希はJSPFの奴隷であるから、その処分はJSPFの規則に則って行われる。死期が近づき、役立たずと判断された奴隷(メス犬含む)は、四肢を完全に断たれて全身の体毛を永久脱毛され、便槽に放置される。そして死の瞬間までスカトロマニアの慰み者となり、死んだら縦坑に落とされる。これもまた不可避の鉄則であるが、こちらについては七海のような個人所有の奴隷には適用されない。

    ……最愛の姉がこのような悲惨な末路を辿ると知ったら、七海は激しく動揺するだろう。発狂してしまうかもしれない。だからこそ、光希が四肢を断たれる日の朝、光希が死んだと飯森は七海に告げたのだ。光希は既にいつ死んでもおかしくないくらい衰弱していたので、4人は光希の死体を見ることなくその死を受け入れた。絶叫する七海を最も強く支えたのは陽葵だった。姉に代わる精神的支柱。それは娘の美海でも、玲香でも今日子でもなく、陽葵なのだ。恋人の陽葵がいたからこそ、七海は姉の死を乗り越えられたのだ。

    その陽葵が書き置きを残して消えた。死んだはずの人間が生きているなど、にわかには信じ難いが、陽葵が消えてしまったことで真実味が出てくる。恐らく七海は、姉は生きていると信じ込んでしまったに違いない。と同時に姉は死んだと言った飯森に強い不審を抱いているはずだ。それは現在の絶対服従の関係に大きなヒビを入れてしまうだろう。

    七海は姉に会わせろと必ず言ってくる。その時、どうするか。会わせたらまず間違いなく発狂する。会わせなかったら陽葵の件と合わせて飯森への不審がさらに膨れ上がり、服従心は霧散してかもしれない。どちらにしても、理想の七海がいなくなってしまう。1年かけて作り上げてきた理想の七海が! このゴミクズのせいで!! 愛しの七海が!!!

    飯森と堀田は、さらに暴行を続けた。死なない程度に、死ぬよりも辛い苦しみを与え続けた。しばらくして、さすがに血の臭いに飽きてきた2人は、佐渡の耳元で処分方法を伝えた。佐渡は元JSPFの奴隷だが、堀田が身請けしているため生殺与奪は堀田の一存で決められる。そのあまりに恐ろしい処分方法に、佐渡は恐怖のあまり失神した。スタンガンを食らわせてももはや起きることはなかった。

    堀田と飯森は裏沢を呼んでゴミを片付けさせると、シャワー室で血しぶきを洗い流してから、服を着て拘束中の陽葵の許へと向かった。

     

    ……再び時間を巻き戻して、8月11日深夜0時過ぎ。捕縛された陽葵はJSPF内の牢獄に入れられていた。猿轡を噛まされ後ろ手に縛られたまま、粗末な簡易ベッドに腰を下ろし、ただ呆然とコンクリートの壁を見つめていた。

    やっちゃった。逃げちゃった。逃げたら光希お姉さんやポチのようになるから絶対逃げないって、七海と一緒にここで生きてくって決めてたのに。ここは辛いことしかない地獄のような場所だけど、それでも七海と一緒なら大丈夫って思ってたのに。

    佐渡先生のあの顔が心の底から怖かった。爪先から頭のてっぺんまで全身くまなく震え上がった。先生から逃げたくて、あの恐ろしい目から逃れたくて。 ……でもそれだけじゃない。

    まさか光希お姉さんがあんな恐ろしいことになってただなんて! ……手足、いつ切られたんだろう。飯森様がお姉さんは死んだって言った時? アタシたちみんなで泣いてた時? みんなで七海を励ましてた時? セックスしまくってた時? それとももっと前? 前の日? 前の日に光希お姉さんがみんなにお別れを言って、その後体調が優れなくって医務室に行って、それっきりだったけど、医務室じゃないとこに連れてかれたの……? 怖い! 怖い!! 怖いっ!!!

    光希お姉さん…… メス犬の身体でもなんとか動けてたけど、あんなふうになっちゃったら全然動けないよね…… 上からウンチが落ちてきても避けれない…… アタシ…… 今の部屋に移る前は真上のトイレ毎朝使ってた…… 何も知らずに…… 信じらんない…… なんなの? なんなのっ!? 毎朝大量のウンチやオシッコを浴びて、避けれないし片付けらんないし、身体の上にどんどん積もって、どんどん臭くなって、なのにキショいオッサンに犯されて、抵抗も何もできなくて…… 点滴で無理やり生かされて…… そんなの……ありえないでしょ!!

    でも。アタシもいつかああなるんだ。たぶん近いうちに手足ちょん切られてメス犬にされて、光希お姉さんやポチみたいにメス犬区画のくっさい部屋に閉じ込められて…… そのうち用済みって言われて、手足全部失ってハゲにされて、トイレの下に閉じ込められて、ウンチまみれになって、死んだら穴に捨てられるんだ。もし奇跡が起きて今回はメス犬にならずに済んだとしても、先生が言ってたみたいに、10年、20年経って、アタシもオバサンになったら、お前は用済みだって言われて、やっぱりあそこなんだ、きっと。それじゃおんなじじゃん! どうなってもあそこで死ぬしかないっていうの!?

    アタシだけじゃない。七海……は飯森様の奴隷だから違うかもしんないけど、ママも玲香さんもポチも、この施設にいる大勢の奴隷も、たぶんアタシとママのお腹の中にいる子も、みんな最後はあそこなんだ……!!

    あ、そうか。先生が言ってたオークションとかミウケとか、そういうのでこの施設から出られれば、あそこで死ななくてもいいんだ……。でも無理。先生が邪魔するって言ってたし。逃げちゃったし! もう手遅れ!!

    怖い…… 怖い…… なんなのここ…… なんなのここ!! 恐ろしい場所だって…… 狂ってるって思ってたけど、まさかここまでヒドかったなんて!!!

    七海…… 会いたいよ…… 七海…… ママ…… 玲香さん…… またあの部屋で、みんなで暮らしたいよ…… でもメス犬になっちゃったらもう無理…… それに…… 会ったとしても、光希お姉さんのこと、どうやって七海に言えばいいの!? お姉さんは死んだってウソをつきながら、あんなヒドいことしてた飯森様や堀田様にも、どんな顔して会えっていうの!!?

    陽葵はベッドに腰掛けたまま、一睡もできずに朝を迎えた。途中何度かベッドに横になってみたが、ノルアドレナリンが過剰に分泌されているためか、疲労の極みにあるのに睡魔は一切襲ってこなかった。

    朝8時過ぎ、佐渡を血祭りに挙げた堀田と飯森が牢の前に現れた。陽葵は恐ろしくて堀田の顔を見ることができず、震えながら牢の床の上に土下座した。猿轡があるのでうまく喋れないが、必死に謝罪の言葉を連呼した。

    「おえんあはい(ごめんなさい)! おえんあはい! おえんあはいっ!!」

    「……愚か者め」

    「おえんあはい! おえんあはい! おえんあはいっ!!」

    「これから猿轡を外す。何があったのか正直に話せ。嘘をついたり余計なことをしたら、母親共々直ちに便槽に突き落とす」

    「ひぃっ!!」

    「いいな?」

    「…………(こくん)」

    ……そっちだってウソついてたくせに。陽葵は一瞬そう思ったが、口にする勇気はなかった。

    堀田は南京錠を開けて牢内に入り、陽葵の猿轡を外してベッドに腰掛けた。飯森も牢内に入って南京錠を再施錠した後、鉄格子にもたれ掛かって陽葵の方に目をやった。陽葵は床の上に正座し、堀田の足の辺りを見つめながら、ぽつりぽつりと深夜に起きたことを話し始めた。

    「「…………」」

    話を聞き終えた堀田は飯森の方を振り返り、目を合わせた。陽葵の話は佐渡の自白内容と合致しており、どうやら嘘はついていないようだ。いきなりあの便槽と光希の成れの果てを見せられて、お前を必ずここに落とすと言われれば、反射的に逃げてしまうのは致し方ないことにも思われる。となると、やはり非は完全に佐渡の方にある。あのゴミクズめ!!

    だいたい詰めが甘すぎる。便槽の存在、光希の惨状、自分や母親の未来、縦坑での最期、それらの秘密を全てぶち撒け、特大のトラウマを陽葵に植え付けておいて、それで毎週陽葵を指名して徐々に追い込むなど、そんなことできるわけがないではないか。1人で抱え込むにはあまり大きすぎる秘密。隠し通せば陽葵の心は壊れてしまうし、話してしまえば、七海は光希の件でパニックになり、今日子や玲香もJSPF専属奴隷の末路を聞けば絶望する。4人全員が発狂すればあの部屋での生活は崩壊し、指名どころではなくなるではないか。何故それがわからぬのだ、あのゴミクズは!!

    ……だが起きてしまったものはどうしようもない。覆水盆に帰らず。今後のことを考えねばならない。堀田はそれ以上何も言わずに再び陽葵に猿轡を噛ませると、飯森と共に牢の外に出た。取り敢えず今後の計画を練り直さねばならない。

    「おえんあはい、おえんあはい、おえんあはい……」

    次第に牢から離れていく2人の足音を聞きながら、陽葵は土下座したまま謝罪の言葉をひたすら繰り返した……。

     

    ……飯森と堀田は会員用の小会議室に入り、今後について話し合った。

    まず決まっていることとして、今夜20時に陽葵の四肢切断刑(麻酔なし)が執行される。これはJSPFの決定事項であり何人も覆すことはできない。その後2週間の療養を経て、陽葵はメス犬区画9号室、これまで光希が入っていた場所に移る。これも決定事項だ。

    よって、これまでのように七海の部屋で起居を共にすることはできない。光希のようにキャリーバッグに入れて七海の部屋に毎日通わせることはできるが、衰弱著しく指名が少なかった光希と違い、メス犬になりたての陽葵はかなりの人気が出るであろうから、七海の部屋に運べるのは午前中の合同調教だけとなるだろう。

    陽葵には身体の手入れと食事・排泄のサポートを行う雑用係がつくことになる。光希とポチを担当していた雑用係は、現在ポチのみの世話をしている状況なので、その者に陽葵の世話も行わせるか。或いは、母親を、今日子を陽葵とポチの雑用係にするという手もある。その場合、今日子は773号室の外に出ることになるから、やはりあそこで起居することはできなくなる。元のカプセルベッドに戻ることになるだろう。しかし、陽葵と今日子が2人きりとなれば、陽葵は自分たちの末路を話すだろうし、そうなれば今日子も発狂して、母娘で心中を図るかもしれない。 ……どうすべきだろうか。

    正直なところ、飯森自身は仁科母娘にはまるで興味がない。メス犬になろうが便槽で朽ち果てようがどうでもいい。だが七海にとっては違う。特に陽葵は七海にとって極めて大切な存在で、そうなるように画策したのは他ならぬ飯森なのだからタチが悪い。こんなことなら七海と陽葵を恋仲になどしなければ良かった。当初の計画どおり人質は美海1人に留めておくべきだった。とは言え、七海が光希の死を乗り越えられたのは美海以外の3人、特に陽葵のおかげであることも事実である。

    ……そう、問題はその光希だ。あの書き置きがさらに事態を厄介なものにしている。あれさえなければ、陽葵が勝手に逃げたとシラを切ることもできるし、七海だけでなく玲香と今日子も773号室に監禁して陽葵との接触を断ってしまえば、光希の惨状や奴隷の末路を3人が知ることはなくなる。いっそあの書き置きも陽葵の勘違いということにするか。光希がまだ生きていると陽葵が勝手に思い込み、勝手に外に出て勝手に捕まった。そう伝えるか…… だが、賢い七海がそれを素直に信じるとは思えない。

    ……では逆に、こちらから真実を明かしてみるのはどうだろう。まず陽葵が佐渡に唆された経緯を話し、次いで奴隷の末路についても話す。ただし後者については回避方法も教える。即ち、七海は飯森の個人所有だから便槽には送られないし、陽葵含め他の3人もオークションで落札されたり、会員に身請けされれば、ここから出られる。その上で七海を光希に会わせる。七海1人だと発狂するかもしれないから、玲香を同行させるか。これで七海はどういう反応をするだろう。やはり精神が壊れてしまうだろうか。それとも……

    話し合いは7時間経っても結論が得られず、堀田は17時少し前に会議室を出、飯森は尚も1人で考え続けていたが、20時になると会議室に設置されているモニターの電源を付けた。映像はメス犬区画特別室。陽葵の四肢切断刑の中継である。

     

    III:罰

     

    陽葵は特別室の中央、処置台の上で仰向けになり、十字に拘束されていた。陽葵の真上には大きな鏡が下向きに設置されていて、陽葵は自分の姿を鏡越しに見ながら、顔を真っ青にして泣きながら震えていた。ホントにやるんだ。ホントにちょん切っちゃうんだ……!

    やだ…… やだ……! ちゃんと奴隷やってたじゃん! ご主人様にもお客様にも精いっぱいご奉仕してきたじゃん! 痛いことも苦しいことも全部耐えて、ウンチもいっぱい食べて、逆らわずに言うこと聞いてきたじゃんっ! なんで? 逃げたっていっても、この施設から脱走しようとしたわけじゃない。先生から逃げただけ。そしたら道にちょっと迷っちゃっただけ。何度もそう言ってるのに誰も聞いてくれない……!

    助けて。誰か助けて。ママ、玲香さん…… 七海。七海に会いたい。助けて。お願い。こんなのイヤ! いやあああああああっ!! ……あ。

    「ご主人様! 堀田様! 助けて! 助けてくださいっ!!」

    物音がしたので横を向いたら、ちょうど堀田が入室してきたところだった。もう堀田しかいない。ウソをついてたことなんてどうでもいいから! お願いします! 助けてください! 何でもしますから! お願いっ!!

    だが、堀田は陽葵を完全に無視して、処置台から離れた隅の方の席に座ると、陽葵の方は向かずに隣の男と何やら話し始めた。

    「なんでよぉっ!! 無視しないでっ!! 助けてっ!! 誰か助けてっ!! 七海っ!!! ななみいいいいいいいいいっ!!!!」

    陽葵は愛する者の名を必死に叫んだが、もちろん本人に届くはずもない。

    数分後、白ヒゲの目立つ黒ずくめの初老の男が処置台の横に立った。先程まで堀田と話していた男だ。直後、背後の壁に掛かっている時計の長針と秒針が12の位置で重なった。午後8時。男は低い、だがよく通る声で言った。

    「これより仁科陽葵の四肢切断刑を執行する」

    「いやああああああああああああああああっ!!!!」

    「仁科陽葵。朝にも言ったが、どんな事情があろうとお前が逃げたことに変わりはない」

    「そんなっ! 逃げるつもりなんてなかったんです! 先生が…… 佐渡先生がヒドいことばっか言うから、怖くなっちゃっただけなんです!」

    「先刻承知だ。尚、佐渡彩音は……」

    ……パチン。男が指を鳴らすと奥のドアが開いて、裏沢ともう1人の調教師がそれぞれ台車を押して入ってきた。台車に乗っているのは……

    「佐渡先生!!!!!!!!」

    心臓が止まりそうになった。否、一瞬止まった。身体じゅうをズタズタに引き裂かれて血まみれになり、目も口も胸も股間もメチャクチャになっていた。そして腕と脚が根本から切断され、切断面は茶色く焼け焦げていた。

    2台目の台車には大きな盥(タライ)が乗っていて、何かの肉が山盛りになっていた。堀田は17時にメス犬区画1号室に戻ると、失神している佐渡を蹴りつけて起こし、無麻酔のままチェーンソーで四肢を切断していったのだが、その際、根本からバッサリ斬らずに、手首に近い方から5cm間隔でスライスしていったのである。盥の中で山盛りになっているのは、その骨付き輪切り肉だった。

    「ウソ…… ウソでしょ…… なんてことを……」

    「安心しろ、陽葵」

    いつの間にか台車の横に堀田が立っていた。

    「こいつに色々と脅迫されたらしいが、見ての通りこいつはもう何もできん」

    「…………」

    「こいつはこのまま例の便槽に落とす」

    「……!!」

    「お前たちが毎日服用している大便を無毒化する薬は、傷口から侵入する雑菌の繁殖を抑える効果もあるのだが、こいつには与えん。大量に糞を食えば食中毒になって口も胃も腸も悲惨なことになる。さらには全ての傷口から大量の大腸菌が侵入して全身が炎症を起こし、発熱して化膿して壊死する。身体の中も外も、想像を絶する激痛に苦しみ抜いた末に真っ黒に腐って死ぬだろう」

    「ひぃっ!!」

    「お前をこんな目に遭わせたゴミクズは我々の方で処分するから、お前は安心してメス犬になれ」

    「!!!!」

    「いかなる事情があろうと逃げた者は四肢を失う。これを変えることは誰にもできぬ」

    「…………」

    「安心しろ。お前の場合は傷口の焼灼は行われない。切断痕は丁寧に治療してもらえる。良かったな」

    「そんなっ! 全然よくないっ! ショーシャクとかわけわかんないしっ!!」

    「ああ、焼灼というのは止血法の一種でな。切断面に焼き鏝を当てて血を止めるのだ。こいつの肩、焦げているだろう? ……凄まじい絶叫だったぞ」

    「…………」

    「切断はレーザーによって行う。故意の脱走ではないからな……」

    「…………」

    「ペロの場合は鋸(ノコギリ)だった。故意の脱走はそれだけ罪も罰も重くなるというわけだ。時間をかけてギコギコと肉や骨を砕いて引き千切るのに比べれば、レーザーは一瞬だぞ? それも4本同時。痛いのは最小限で済む。 ……良かったな」

    「…………」

    もはや陽葵には何も言えなかった。言葉が見つからなかった。怖い。堀田が怖い。佐渡先生も怖かったけど、堀田はもっと怖い。なんでこんな残虐なことを平気でやれるんだろう。佐渡先生に対してザマァミロなんてとても思えない。堀田を怒らせたら自分もミンチにされるかもしれない。怖い。心の底から怖い。 ……でも。それでも!

    痛いのが最小限で済んで良かったなって…… 良くない! そんなん全然良くないよ!! どんな方法だろうと手足を切られたらメチャメチャ痛いだろうし、手足が失くなってしまう事実は変わらない。もう二度と七海と一緒に歩けない。手を握れない。顔を触ることも髪をなでることも。悲しみの涙を流す彼女の目にそっと手をやって、優しく拭うことも。胸や股間や身体じゅうを愛撫し、クリペニスを扱き、熱く抱き締めることも。 ……なんにもできない!!

    なんでこんなことになっちゃったの!? 誰か助けて!! 七海!! いつかみたいに!! お願いっ!!! 七海ぃっ!!!!

    陽葵の周りに調教師たちがやってきて、腕と脚の切断箇所にマジックで印をつけると、その数cm手前を紐で強く縛った。身体を拘束されているので抵抗は一切できない。縛られた場所がものすごく痛い。その先の感覚が痺れてくる。調教師たちは、さらに切断箇所の周囲にレーザー装置を設置すると、一斉に陽葵から離れた。そして黒ずくめの男が静かに言った。

    「執行」

    直後、レーザー装置が稼働し、陽葵は一瞬で四肢を失った。その瞬間、痛みはなかった。手前で縛られている箇所の方が余程痛かった。が、1秒も経たないうちに激烈な痛みが陽葵を襲う。と同時に痺れていた手足の感覚がパッと消えた。そして視界に映る赤、赤、赤。

    「あぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」

    陽葵の絶叫が特別室に響き渡った。想像を絶する痛み。だがこの痛みは、肉体的な苦痛だけに依るのではない。四肢を失った恐怖と絶望。今後への不安。七海との生活を失う悲嘆。それら全てが精神的な痛みとなって陽葵を襲う。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいいっ!!!!!!!!

    「ななみいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!!!」

    痛みが肉体と精神の限界を超えた瞬間、陽葵はさらに高い声で愛する者の名を叫び、直後に気を失った。気を失う寸前、視界を覆う赤一色が黒一色へと変じる刹那、陽葵は恋人の顔を、幸せそうな七海の笑顔を見た。 ……見た気がした。

    横に控えていた女医と看護師が速やかに処置を施していく。彼女らは驚くほど短期間に止血し、切断面を消毒し、整形し、縫合していく。20分後、陽葵はメス犬になった。

     

    ……同刻。未だ会議室にいた飯森の顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。陽葵が手足を失う一部始終をモニターで見ながら、ある邪悪なアイディアを思いついたのだ。否、思い出したと言うべきか。

    ここまでこじれてしまった以上、飯森が1年かけて作り上げた理想の七海を維持することはもはや不可能だ。ならば、新たな理想の七海を今一度作り直せば良い。元々いつかは、最終的にはそうするつもりでいた。やれることが極端に減るので、もう少し後にしようかと思っていたのだが、今こそそれを行う時だ!

    今日は1周年の記念日。ゴミクズのせいで散々な記念日となってしまったと落胆していたが、そうじゃない。これまでの七海の集大成の日ではなく、これから新たな七海を作り出す、その始まりの日にすれば良いのだ。1年前の今日と同じように……!

     

    IV:姉妹

     

    翌8月12日、朝8時。飯森が単独で玄関に現れた。昨夜から殆ど一睡もせずに陽葵の無事を祈り続けてきた七海・玲香・今日子の3人。彼女たちの目の下にはハッキリと隈(クマ)ができており、疲労の色が濃い。が、3人ともそれを感じさせない動きで飯森の許に駆け寄り、質問攻めにした。

    飯森は、質問には答えずにただ一言、低い声で言った。

    「陽葵が逃げた。よって、規則により昨晩手足を失い、奴はメス犬になった」

    うそ…… メス犬って…… 陽葵が…… うそ、でしょ? ……呆然と立ち尽くす七海の横で、今日子が床に崩れ落ちた。

    「いやあああああああっ!! 陽葵っ!! 陽葵ぃっ!! あああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

    床の上でうずくまって号泣し、娘の名を連呼する母親。

    予想を遥かに超える最悪の事態に動揺する2人に対し、玲香は比較的冷静だった。やはりと思った。あの書き置きを読んだ瞬間から危ないと思っていた。ポチがメス犬になった経緯を本人から聞いている玲香は、脱走罪が、奴隷が逃げるに至った経緯を全て無視する、極めて無慈悲で教条的な存在であることを知っていた。そして脱走を検知するための監視システムが施設内のあらゆる所に網の目のように張り巡らされていることも。そんな中で、光希の生死を調べることなど陽葵にできるわけがない。玲香はそう思いつつも、それを七海や、まして今日子に話すことなどとてもできなかった。それに、堀田の命令で調べている可能性もゼロではない。玲香も夜を徹して陽葵の無事を祈り続けてきたのだが、やはりこうなってしまった……。

    玲香は、怒りと悲しみに声を震わせながら、低い声で飯森に詰問した。

    「どうしてそんなことになったんですか。陽葵ちゃんは今どこにいるんですか。 ……光希は、生きてるんですか」

    「……!!」

    呆然としていた七海が、姉の名に反応する。そう。おねえちゃんは生きてるの? あの書き置きはどういう意味? なんで陽葵はあんな書き置きを残したの? どうやって外に出たの? なんで捕まっちゃったの? なんでメス犬なんかに……! なんで? なんでっ!!?

    「ああ」

    「!!!!」

    飯森は短く肯定した。肯定した! おねえちゃんが生きてる! やっぱり生きてる!!

    七海に衝撃は殆どなかった。やっぱり、という想いしかなかった。陽葵が失踪したという事実が、あの書き置きが真実であることの証だと七海は確信していた。おねえちゃんはやっぱり生きている。だが嬉しさは微塵もなかった。だって陽葵が。陽葵が!

    姉の身体で見慣れているとは言え、人間の健康な手足を斬り落としてしまうなんてとんでもないし、手足が失くなるといかに不自由を強いられるのかも、姉の苦労を側で見続けてきた七海は充分すぎるほど知っていた。そのメス犬に、愛する陽葵がなってしまった。しかももうなった後だと言う。これからなるのであれば、止めることができたかもしれないのに。もう遅い。もう手遅れ! なんで!? なんでこんなことになっちゃったの!!?

    やっぱりあの書き置きが原因なの? おねえちゃんが生きてるって知って調べてくれたの? だったらなんで私に相談してくれなかったの? 今日子さんや玲香さんにも話して、4人でご主人様を問い詰めていれば…… 少なくとも陽葵1人が犠牲になることはなかったのに……!

    そうだ、ご主人様。やっぱりウソついてたんだ。「ペロが死んだ」って、あの時言ったじゃない! ウソつき! ウソつき!! ウソつき!!!

    七海の中に主人に対する強烈な不審感が芽生えた。七海は飯森に絶対服従を誓ったが、別に飯森を愛しているわけではないし、洗脳されているわけでも、信仰しているわけでもない。嫌々従っているわけでもない。全てを諦めて淡々と主人に付き従っているだけ。飯森がどんなに酷いことをしても無批判で受け入れようと努力しているだけ。だが、この嘘だけは看過することはできない!!

    姉が死んだと言われてどれほど動揺したか。どれほど辛かったか。絶望の底に突き落とされた七海を救ってくれたのは、玲香であり今日子であり美海であり、陽葵だった。一番最初に抱きついてくれて、ずっと一緒に泣いてくれた。慰めてくれて、励ましてくれて、冗談を言ってくれて、思わず笑っちゃって…… あれでどれほど心が落ち着いただろう。悲しみを忘れるようにみんなで快楽に溺れて、どれほど慰められただろう。ずっと愛し合おう、支え合おうって言ってくれて、どれだけ嬉しかっただろう……!

    姉の死が虚偽だったということは、陽葵のあの励ましの言葉も全て無意味になってしまったということ。あの時の陽葵の努力を、優しさを、この男が無駄にした。汚した! 踏みにじった!! それだけに留まらず、陽葵に極限の苦しみを与え、陽葵の手足を奪い、自由を奪い、未来を奪った!!! ……陽葵の失踪やメス犬化にこの男が関わっているかどうかはわからないが…… 違う!こいつのせいに決まってる! 全てはこいつのせいだ!! こいつが全部悪いんだ!!!

    七海は無言のまま主人を睨みつけた。できるなら大声で詰問したい。主人の胸ぐらを掴んで、思いっきりぶん殴ってやりたい! 首を締めて殺してやりたい!! ……それをしない自分が腹立たしい! 恋人が酷い目に遭って、なんで黙ってるんだ! なんでじっとしてるんだ! じっとしれれば酷いことはされないって…… じっとしてても陽葵が酷い目に遭ったじゃないか! 反抗したってしなくたって結局酷いことされるんなら、なんで反抗しないんだ、私!! 最低っ!!!

    七海の中に怒りが渦巻いている。誕生日プレゼントに抜歯してやった時以来の深刻な怒りが。 ……飯森はそれに気づきつつ、七海の次の行動に注視していた。どうするだろう。殴りかかってだろうか。罵声を浴びせてくるだろうか。それとも…… どう出る? 七海?

    「……陽葵に会わせて。おねえちゃんに会わせて」

    ……七海は十数秒の沈黙の後、主人を睨みつけたまま低い声で言った。敬語は敢えて用いなかった。

    飯森は薄気味悪い笑顔を浮かべながら「いいだろう」と言い、3人は飯森とともに玄関から外に出た。美海が心配だったが、少し前に母乳を飲ませてオムツの交換も終え、今は眠っているから大丈夫だろう。

    飯森は、他の奴隷との接触を避けるために中央ホールや少人数調教用の調教室を迂回しながら、陽葵のいる療養室へと向かった。その間に少しずつ真相を話していく。だが便槽や縦坑の存在については言及を避けた。

    佐渡の暴走。陽葵への嫉妬。光希が生きていることを告げ、言葉巧みに陽葵を誘い出し、光希の目の前で陽葵を散々に脅迫した佐渡。恐怖のあまり逃げ出して捕縛された陽葵。逃亡罪が適用されて四肢切断刑となったものの、余罪はないので歯は無事、違法薬物も未投与。佐渡は処分済み。

    だが、光希がいる場所の詳細、佐渡が行った脅迫の内容などについては一切触れなかった。その上で、「ペロが死んだ」と嘘をついた件に関しては、光希はこの先さらに衰弱が進んで見るに堪えない姿となるため、4人への影響を考えて死んだことにしたと説明した。 ……七海は、後半は嘘だと確信した。こんなマトモな理由のはずがない。が、それを追求する前に療養室に着いた。

     

    陽葵は療養室のベッドで眠っていた。二の腕と腿の中程で四肢は切断されており、厚く包帯が巻かれていた。

    「「陽葵ぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!」」

    今日子が真っ先に駆け出し、僅かに遅れて七海が駆け出した。2人ともベッドの脇に立ち尽くし、小さくなってしまった陽葵の姿に絶句し、嗚咽を漏らし、そして泣き崩れた。大声で絶叫する2人。だが、麻酔が効いているのか、陽葵が目を覚ますことはなかった。

    玲香もまた療養室の入り口で立ち尽くし、大粒の涙を流していたが、すぐに異変に気づいた。七海じゃない。今日子。今日子の顔が真っ赤に歪んでいる。娘の身体をメチャクチャにされた憤怒、憎悪! この感じは…… 爆発する!! ダメっ!!!

    同時だった。激昂した今日子が飯森に向かって突進し、それを押さえようと玲香が今日子に向かって突進した。今日子の両手が飯森の首を掴む直前、すんでの所で玲香は今日子の腕を掴み、そのまま羽交い締めにした。

    「放して! 放しなさい! 殺してやる! 殺してやるっ!!」

    「冷静になって! 陽葵ちゃんをこんなふうにしたのは飯森様じゃありませんっ!」

    「うるさいっ! 同罪よ! ここにいる男全員! 全員同罪! 全員殺してやる!!」

    「そんなこと言って…… あなたまで酷い目に遭ったら、誰が陽葵ちゃんの面倒を見るんですか!!」

    「!!!!」

    今日子は雷に打たれたかのように棒立ちになった。

    「私はずっと光希の…… メス犬のペロとポチのお世話をしてきました。メス犬は自分では殆ど動けません。食事もトイレもお風呂も…… 誰かがお世話しないと自分ではもうできないんです!」

    「あぁぁ……」

    「今あなたが飯森様の首を絞めたところですぐには殺せません。そしてすぐに男の人が入ってきて取り押さえられます。監視されてるんですから。 ……きっと酷い罰を受けて、最悪あなたまでメス犬にされちゃったら、もう陽葵ちゃんのお世話もできないんですよ!?」

    「ああぁぁぁぁ……!!」

    「そんなことになったら、誰より陽葵ちゃんが悲しみます。だからどうか…… 怒りを鎮めてください。お願い。もうこれ以上、誰も、傷ついてほしくない…… お願いよ…… 今日子さんっ!!」

    「うああああああああああああああああああああああっ!!!!」

    後半、玲香は泣いていた。今日子も泣いていた。今日子はその場にへたり込むと、床に突っ伏して号泣した。朝から何度目だろう。どれだけ泣いても涙も鼻水も一向に止まらない。無限に湧いてくる。今日子は箍(タガ)が外れたのか、子供のようにひたすら泣き続け、玲香も涙を流しながらそっと今日子を抱きとめた。

    七海はその光景を見ながら絶望していた。 ……まただ。怒りに狂った陽葵を七海が押さえ、今日子を玲香が押さえた。同じだ。あの日の叛逆の失敗を教訓に、佐渡に対する怒りが暴走していた陽葵を七海は止めた。だが、それによって今度は佐渡の方が陽葵に対する嫉妬を暴走させてしまい、結局陽葵は手足を失ってしまった。あの行動は間違っていたんだろうか。正しい選択をしていれば陽葵は手足を失わずに済んだのだろうか。今の玲香の行動は正しいんだろうか。

    七海にはわからなくなっていた。叛逆したら手酷いしっぺ返しがやって来る。でも黙って従っていたって酷いことはやっぱり起こるんだ。じゃあもう、いったいどうしたらいいの? 反抗しても服従しても一緒なら、私はいったいどうしたらいいの……?

    ……今日子が泣き止む気配はない。陽葵が目を覚ます気配もない。七海はもう自分がどうして良いかわからなかった。どうしたら…… そうだ。おねえちゃん。おねえちゃんに会いたい……

    「……おねえちゃんに会わせて」

    先程と同じ言葉。だが明らかに覇気がない。怒気もない。

    「……いいだろう。ただし七海、お前だけだ」

    「…………」

    「……行ってきなよ。ひっく…… ここは任せて?」

    玲香は泣きながらそう言った。玲香も光希が気になるが、今の今日子を、陽葵と2人だけにしておくのは危険なような気がした。 ……七海は、飯森の後を静かに従いていき、療養室を出た。直後、飯森が語り出した。

    「お前にだけは真実を教える」

    「…………」

    「ペロは死んだと嘘をついた理由、納得していないんだろう?」

    「……はい」

    「ふふっ…… 素直だな」

    「…………」

    「ペロはJSPFの専属奴隷だからな。奴隷にせよメス犬にせよ、専属奴隷があそこまで衰弱してしまった場合、あとはもう決まっているんだ」

    「…………」

    「玲香も今日子も陽葵もペロと同じ専属奴隷。陽葵は眠っているが、奴らの前でその運命を教えるわけにはいかない」

    「……なんで」

    「自殺防止だ」

    「は?」

    「ここ、覚えてるか?」

    いつの間にか奴隷用トイレの前にいた。

    「……はい」

    奴隷用のボットン便所。仕切りも何もなく、床に開いた穴に向かって放尿・脱糞するだけの最低の便所。七海も773号室に移る前は毎日使っていた。 ……なんでいまさらこんなトコに?

    飯森は、便所の横にある黒色のドアの前に立ち、虹彩認証を行ってドアを開けた。黒は、奴隷は立入禁止であることを示す色だ。七海も当然入ったことはない。中は薄暗い階段になっていて、降りると小さなスペースがあり、重そうな鉄の扉があった。 ……七海は唐突に、この施設に連れて来られた初日のことを思い出した。虹彩認証を繰り返しながら暗い階段を降りていくと、そこには変わり果てた姉の姿が…… なんだろう。胸騒ぎがする。この中にとてつもない光景が広がっているような気がする。でも、行かなきゃ。きっとこの中にいる。おねえちゃんがいる!

    飯森が再度の虹彩認証を終えてドアを開けた。

     

    「うっ!!!!?」

    激烈な悪臭が七海の脳天を直撃した。反射的に胃液が逆流を開始するが、七海はなんとか口を閉じて嘔吐を阻止し、口の中に溢れた胃液と未消化物を全て飲み込んだ。喉が焼け付くように痛い。

    「なんなの…… ここ……!」

    まさにこの世の地獄だった。8畳程度の薄暗い部屋の床も壁も一面糞便で覆い尽くされ、その中に糞山が幾つも聳えている。いったい何人のうんちを集めたらこんなことになるの…… そう思って七海は絶句した。奴隷用のボットン便所から階段を降りてきた自分には構造がわかる。ここ、ボットン便所の真下だ! 広さも一緒だし! これ、奴隷が出したうんちなんだ!!

    「……察したようだな。そう。ここはボットン便所で奴隷たちが排泄した糞尿を受け止める場所、「便槽」だ」

    「…………」

    七海はただただ恐ろしかった。こんな場所があったなんて。そう思いつつ、七海は以前姉がしていた、用済みの奴隷は便器になって便所に繋がれるらしい、という話を思い出していた。ここが「便所」? ありえない…… ありえない!

    それに、隣にいる飯森がこの悪臭の中でも平気で鼻呼吸しているのが信じられなかった。糞便臭に慣れた七海でさえ、口で息をしないと吐いてしまいそうだというのに。飯森の変態っぷりに驚き呆れるなんてレベルじゃない。もはや恐怖しか感じなかった。

    「中に入るぞ」

    「…………」

    飯森は長靴を履いてからズカズカと便槽の中に入っていく。床は一面糞便の海。足の踏み場もないどころか、床の色がわからないほど茶色一色だ。さすがの七海も、素足で歩くことを躊躇った。だが、飯森はどんどん中へ入っていく。ということは、この中に……。七海は意を決して糞便の海の中に足を沈めた。

    猛烈な吐き気と寒気に襲われながら、七海は周囲を見渡した。部屋の中には男たちが数人いた。そして所々に積もった糞便の山。よく見たら等間隔に並んでいる。ボットン便所に空いた穴と同じ位置。上から落ちてきて降り積もったのだろう。そして、恐ろしいことに、男たちは糞山の中にペニスを突っ込んで前後に動いていた。あまりのおぞましさに、七海の胃液は再び逆流した。なんとかそれも飲み下す七海。

    そのうち、糞山のうちの1つが、他と形状が違うことに気づいた。大きな球状の糞塊が2つ。山の上に突き出ている。糞塊の上にはさらに糞棒が直立している。周囲に男はいないけど…… 僅かに…… 動いた!!? え? これってうんちの山じゃないの!? 人!!? ……まさか!!!!

    七海はその糞山の前で膝を付き、糞塊の表面に付いている分厚い糞を手で取り除いていく。これ、おっぱいだ! おねえちゃんだ!! 怪しい薬で大きくなっちゃったおねえちゃんのおっぱいと乳首!!!

    「おねえちゃん!!!!」

    七海は、姉の身体の上に積もった糞便を全て払っていく。胸に続いて腹に積もった糞便を取り除くと、下腹部に「姉犬」の文字を発見した。やっぱり! おねえちゃんだ!! こんなのあんまりだよ! 早く! 早くキレイに……  えっ?

    その時、手が止まった。思考も止まった。心臓も止まりかけた。腕がない!! 脚もない!! 髪の毛もないっ!!! ……その時、背後にいた飯森がゆっくりと口を開いた。

    「これがJSPFの奴隷の末路だ。死期が近づいた奴隷やメス犬は、麻酔なしで四肢を完全に断たれ、全身永久脱毛処理を受けてここに放置される。点滴で無理やり寿命を延ばされながら、後輩奴隷たちの糞尿を浴び、スカトロマニアの男たちにレイプされ続ける。心臓が止まる瞬間まで、な。」

    「なんてことを……!!」

    「そして死体は縦坑に落とされる。ここは昔鉱山だったと前に教えただろ? この便槽の横には恐ろしく深い縦坑があってな。そこに投げ捨てるんだ。墓穴を掘らなくていいから楽だろう?」

    「…………」

    「死体は糞まみれだから、大量の雑菌で死体はあっという間に骨だけになる。縦坑の底は、そうやって死んでいった奴隷たちの骨で埋まっているらしい。誰も見たことはないがな……」

    「……狂ってる」

    「そうだな」

    「もう、わけわかんない……」

    もう完全に理解不能だった。弱々しく呟くと、七海は考えることを放棄した。考えたくなかった。 ……奴隷の未来は陽葵の未来。いやだ。考えたくない! 考えるな!!

    糞便をあらかた取り除いたとは言え、まだまだ糞便まみれの光希に七海は抱きつき、そしてか細い声で泣き出した。

    「ふえぇぇぇん! おねえちゃん…… おねえちゃん…… もうやだよ…… こんなんもうやだ…………」

    その時、糞山が動いた。

    「な、なみ……?」

    「おねえちゃんっ!?」

    「ななみ…… どうして、ここ、に……」

    「おねえちゃん! おねえちゃんっ!!」

    「ななみ…… ないているの……? だいじょうぶ……?」

    「うわあああああああん!! おねえちゃあああああああああん!!!!」

    七海は姉を抱き締めながら大声で泣いた。強くて賢くて優しい七海はもういなかった。陽葵があんなことになって、おねえちゃんがこんなことになって。姉の姿に陽葵が重なる。陽葵も、玲香も今日子も、いつかはここで……。もうどうしたらいいかわからない。ただ姉に縋り付いて泣き喚くことしかできなかった。

    しばらく泣いて、気が済んだのか疲れたのか、七海は泣き止むと、飯森の方を振り返った。昨年に戻ったかのような弱々しい顔だった。

    「ご主人様。おねえちゃんをここから出してあげてください」

    「無理だ」

    「お願いしますっ!」

    「規則だ」

    「そんなぁっ! お願いします! お願いしますっ!!」

    飯森は七海を興味深く観察していた。本当に昨年、木下家で調教していた頃に戻ってしまったようだ。賢さなど微塵も感じられない。ただ姉に取り縋って泣き、「お願いします」を繰り返すだけ。

    結局、あの強くて賢くて優しい理想の七海は、本当の七海ではなかったということだろうか。最も傷つかない方法はあれしかないと思って、無理をして、努力して、全神経を常に研ぎ澄ませて、理想の奴隷を演じ続けてきたのだろうか。だが、それでも傷ついた。それも自分ではなく、最愛の姉と最愛の恋人が。 ……かくして砂上の楼閣は虚しく崩れ去り、元の七海に、弱々しく人見知りで優しいだけの七海に戻ってしまった。そういうことだろうか。

    昨日、陽葵が手足を失うシーンを会議室のモニターで見る前の飯森だったら、この状況を深く嘆いただろう。理想の七海が消えてしまったと。この1年が無駄になってしまったと。だが、飯森は内心ほくそ笑んでいた。そうだ。これはリセットだ。これからまた、理想の七海を新たに作っていけばいいのだ!

    ……さっそく飯森は話し始めた。

    「ならば条件がある」

    「……え?」

    「ここで最期を迎えるというJSPFのルールは、脱走罪ほど厳格なものではない。外に連れ出すことは可能なのだ」

    「!!」

    「ペロはもはや死を免れないが、それまでの間、清潔な部屋と清潔なベッド、糞尿とは無縁の環境を用意することは可能だ。男たちも近寄らせない。点滴も充分投与してやろう」

    「!!!!」

    「ここまですれば、ペロの寿命はもう少しだけ延びるだろうな」

    「ありがとうございます! ありがとうございます、ご主人様っ!」

    「まぁ待て。条件があると言っただろう?」

    「……はい」

    飯森は、ただでさえ醜悪な顔をこれまでにないほど醜く歪ませると、これまでにないほど残忍な笑みを浮かべた。

    「ダルマになれ」

    「……だる、ま?」

    「ペロと同じ、手足の全くない身体になるのだ」

    「!!!!!!!!」

    「そして773号室でオナホールとして生きていく。自分では動けず、3つの穴を俺や客たちに使われるだけのオナニーの道具になるんだ」

    「!!!!!!!!」

    「それを受け入れるなら、姉をここから出してやる。手足を斬る際は麻酔を使うこと、全身の永久脱毛は行わないことも約束しよう」

    「…………………」

    七海は呆然とした。頭も身体も完全に凍り付いた。何も考えられない。あまりに予想外で、あまりに意味不明で、あまりに残酷な話だった。オナニーの道具って…… オナホールって…… そんなのメス犬よりも酷い…… ありえないよ…………!

    「だめ……! ななみ……! そんなの、ぜったい、だめっ……!!」

    同じくダルマ状態の光希は、七海の目を見て必死に訴えた。もう大きな声が出ない。それでもなんとか声を振り絞る。そんなの絶対だめっ!!

    「わたしは、どうせ、しぬの…… だったら、どこにいても、おなじ…… ななみのてあし、むだになっちゃう……! そんなの、だめ! ぜったいに、だめっ!!」

    七海は、光希の必死の説得を、涙を流しながら聞いていた。そう。おねえちゃんならこう言ってくれる。絶対言ってくれる。 ……私はどうしたらいいんだろう。考えなきゃ。考えなきゃ。 ……だめ、考えられない。集中できない。なんで? なんで??

    その時、飯森が七海の耳元で囁いた。

    「ふふふ…… もうマトモに考えることもできないか? どれ、お前に代わって考えてやろう……」

    そう言って、飯森は「理想の七海」ならどのように考えるかをシミュレートし始めた。

    「ご主人様がこんな話をしだしたということは、ご主人様は私の手足を奪う決断をしたということなんじゃないだろうか。だとしたら、今回拒絶したところで、今後もことあるごとに選択肢を提示してくるに違いない。しかも次回の選択肢からは、麻酔ありという項目が抜けてしまうかもしれない……」

    「…………」

    「私はご主人様の個人奴隷だから、死にそうになってもここへ落とされることはないだろうが、ご主人様は私より30以上も年上だ。順番から言えばご主人様が先に死ぬ。そうなったら私は自動的にJSPFの専属奴隷だ。そしてその時点で多分オバサン。需要なんてない。酷使された挙げ句にここに落とされる。結局はダルマになる。しかも麻酔は打ってもらえない」

    「……!!」

    「やめて! ななみは、そんなこと、かんがえないっ!!」

    「ふふふ…… どうかな?」

    「…………」

    「ご主人様に逆らったからお姉ちゃんの片目は潰された。だからご主人様に絶対服従を誓った。それなのに陽葵はメス犬になり、お姉ちゃんはダルマになった。逆らっても従っても結局は同じこと。お姉ちゃんがさっき言ったとおりだ。どこにいても、おなじ。どうあっても最後はダルマ。だったら…… 痛くないほうがいいんじゃないかな?」

    「!!!!」

    「やめろぉっ!!」

    七海は呆然としながら悪魔の囁きを聞いていた。自分はこんなこと、考えるだろうか。わからない。わからないけど、確かに、今ダルマになっておけば麻酔は打ってもらえる。手足を切断される痛みなんて想像できないし、したくもないが、きっとものすごく痛いに違いない。出産よりも遥かに。そんなのイヤだ。絶対イヤだ!

    囁きはまだ終わらない。

    「唯一の懸念は美海だ」

    「美海っ!」

    「30年後ならともかく、美海は未だ生後3ヶ月だ。育児は不可欠だが、ダルマになってしまえば育児はできない」

    「!!!!」

    「でも、現状でも美海の世話は玲香さんに任せっ放しだ。他の3人よりも調教が激しいせいで、育児をする時間や体力はいつも残らない。玲香さんが忙しい時は今日子さんが代わりを務めるし、たまには陽葵が代わる。私はごくたまに哺乳瓶で授乳するくらい。そんなの子育てとは言えない。どうせ子育てできないのならダルマになっても同じことかも?」

    「……!!」

    「いいかげんに、しろ!!」

    「だったらいっそのこと自分もダルマになって、母娘で玲香さんのお世話になるというのはどうだろう? 玲香さんの負担が増えないよう、玲香さんが受けていた分の調教も全部私が引き受ければ、なんとかなるんじゃないかな……?」

    「!!!!」

    「そんなこと、ななみが、かんがえるわけ…… ないでしょ!!」

    「…………それに、ご主人様はダルマが欲しいんだ。私が拒否したら、ご主人様は美海の手足を切り落とすかも……」

    「「!!!!!!!!」」

    トドメの一撃だった。七海だけでなく光希も言葉を失った。七海は絶望し、光希は激怒した。なんてことを。七海の立場で考えるなんて言っておきながら、七海の心を揺さぶって巧みに誘導し、最後は娘を人質にして他の選択肢を潰すだなんて。なんて、なんて……

    「なんて、ひれつなの? どこまで、ひきょうなの!? あなた、アクマよ……!!」

    光希は涙を流しながら飯森を罵った。さっきまでよりもさらに覇気が落ちている。最後の一言、あれを言われてしまったら七海に選択肢はない。ただでさえ絶望に次ぐ絶望で思考力が落ちているというのに。次に七海が言うであろう言葉を、光希はもう否定できない。自分の手足と娘の手足を天秤に掛けられて、自分の手足を失う決断する母親を、責めることなんてできない。できるわけがない。

    「……………………わかりました。私、ダルマになります」

    「ああぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ…………!!」

    長い沈黙の後、七海は小さな声で言った。光希は慟哭した。絶望に塗り潰された真っ黒な声が、便槽の中を弱々しく満たしていった。

    「でも、あの、ひとつだけ確認させてください」

    「なんだ?」

    「ウソ…… ついてませんよね? おねえちゃんをこのままにしたり、しませんよね?」

    「ああ、約束しよう。手足の切断手術をするより先に、光希を他の部屋に移してやる。お前にも見届けさせてやろう」

    「わかりました」

    「じゃあ出るぞ。そこにシャワー室がある。お前と光希の汚れを落とせ」

    「……はい」

    七海は飯森の言葉を信用できなかったが、もう他に何も考えられなかった。七海は、悲しいほどに軽い姉の身体をそっと抱きかかえて、便槽の入口横に設けられたシャワー室に入った。奴隷の成れの果てを陵辱した後、男が汚れを落とすための場所で、七海は自らと姉の身体に付いた糞便をシャワーで落としていった。

    顕(アラワ)になる骨と皮だけの身体。それに対して不釣り合いなほどに膨らんだ巨乳。普通、これだけ痩せてしまえば、いかな巨乳と言えども萎んで垂れ下がってしまうものなのに、違法薬物の過剰摂取によって膨らんだそれは、未だパンパンに膨らんだまま、まるでメロンのようだった。姉の身体から栄養を、体重を、ありとあらゆるものを吸い取って膨らみ続ける呪われた肉塊…… 七海はそんなことを思いながら乳房の汚れを落としていく。

    ここまでは見慣れている七海も、永久脱毛されて髪の毛も眉毛も睫毛も、何もかも失くなってしまった姉の顔は、あまりに無残で、見るに耐えなかった。 ……それでも見ないわけにはいかない。恐らく今生の別れになるのだから。七海が四肢を失って切断箇所の傷が治って麻酔が切れて目覚めるまでに1ヶ月以上かかると飯森は言っていた。さすがにそれまでは保たないだろう。だから最後の最後。今度こそ、本当のお別れ。

    ……飯森が見守る中、七海は糞色の包帯を慎重に外し、抜糸も済んでいない縫合部にもぬるめのシャワーをそっと当てて汚れを落とした。続けて柔らかなスポンジにたっぷり洗剤を付けて、光希の全身をくまなく洗っていく。顔、頭、首、肩、胸、腹、背中、腰。それだけしかない。縫合部は、スポンジではなく素手でそっと洗っていく。ズタボロになった膣や肛門に手を挿れて、こびり付いた汚れを掻き出していく。もう苦痛も快楽も何も感じていないようだった。眼帯も外して目の周辺を優しく洗い、口の中の汚れも手で掻き出して歯茎や長舌を手で磨いていく。最後に全身にシャワーを浴びせて泡を落とし、ようやく全身の洗浄が終わった。

    こんなにも大変だったんだ。これを玲香さんは毎日やってくれてたんだ。そして、ダルマになった私のお世話は……。飯森の言う通り、母娘ともに玲香に世話してもらうことになるのだろう。そこまで玲香に押し付けるのか。彼女だって奴隷なのに。辛い思いをしているのに。だが、美海の手足を人質に取られてしまってはもうどうしようもない。

    光希は、七海が身体を洗ってくれている間、なんとか七海も美海もダルマにならずに済む方法を考えた。脳細胞も死に始めている中、必死に必死に考えた。唯一考えついたのは、人質役を七海でも美海でもない第三者に移すこと。でも、自分はもう既にダルマ状態で、しかも瀕死だ。人質としての価値はない。じゃあ陽葵ちゃん? 玲香さん? 今日子さん? ……そんなことできるわけないじゃない! 一瞬でも考えた自分に腹が立つ! やっぱりいない。人質を代われる人なんていない。七海がダルマになる以外の選択肢がない。1個もない……

    七海は、飯森が呼んだ裏沢からキャリーケースを受け取ると、自ら光希を中に入れてケースを閉じ、大事に大事に抱きかかえた。ケースを引きずって運ぶなど考えられなかった。七海は飯森の後に従いてシャワー室を出、階段を登ってボットン便所の前を通り、しばらく歩いて、小さな部屋に入った。真ん中にベッドが置かれただけの簡素な部屋だった。

     

    七海はケースから光希を出した。これまでならケースを開けた瞬間に辺りに糞便臭が広がったのに、それがない。それが悲しい。 ……七海は、清潔そうな真っ白なシーツが引かれたベッドの真ん中に光希を寝かせた。そして唇にそっと唇を重ねた。

    「じゃあね、おねえちゃん」

    「ななみ……」

    「これまで、ありがとう…… ひっく」

    「こっちこそ、ありがとう…… ぐすっ」

    姉妹は互いに礼を言ったが、それ以上言葉が続かなかった。そしてしばし互いを見つめ合う。痩せ衰え、歯も左目も髪も眉毛も睫毛もない姉の顔。頬が痩け、歯もなく、額に入れ墨を入れられた妹の顔。だが、脳裏にはあの頃の顔が重なっていた。

    昨年の8月4日の朝。光希が両親とスポーツ用品店に出掛ける前。一家4人で食卓を囲んで食べた朝食。姉妹はテニスの話題で盛り上がっていた。姉は太陽のように眩しい笑顔、妹も月のように穏やかな笑顔。互いに笑いながら幸せの時を過ごしていた。

    あれから1年と8日。まさか、こんなことになるなんて。見るも無残に変わり果てた互いの顔を見ながら、無言のまましばしの時間が流れた。 ……先に口を開いたのは姉だった。

    「わらお?」

    「え?」

    「さいごに、ななみの、えがお、みたい」

    「……うん。私も。おねえちゃんの笑顔、最後に見たい」

    姉妹は同時に笑った。目に大粒の涙を溜めながら、口の両端を上げて、歯茎を見せないよう口は閉じたまま、互いを見つめ合って。薄く、優しく、静かに笑った。

    そして同時に言った。

    「「……さよなら」」

    七海はベッドから降りると飯森に睡眠薬を渡され、その場で飲んだ。急速に眠気に襲われ、七海は崩れ落ちながら意識を失った。その寸前、声が聞こえた、気がした。

    「七海っ!」

    声のした方を振り向くと、真っ黒に日焼けして、真っ白な歯を見せて、ポニーテールの髪を風にたなびかせながら、太陽のように眩しい笑顔で妹を呼ぶ姉が、そこにいた、気がした。

    飯森は、床の上で眠りこけている七海を自らストレッチャーに乗せると、部屋から出て行く。その際、光希に一言だけ声を掛けた。

    「じゃあな、ペロ」

    「…………」

    裏沢は、飯森がいなくなると、光希を再びキャリーケースに押し込んだ。戸惑う光希を完全に無視してケースの蓋を閉める裏沢。次にケースの蓋が開いた時、光希は猛烈な糞便臭に襲われた。

    裏沢は光希をもといた場所に乱雑に置くと、何も言わずに出て行った。便槽のドアを閉める直前に光希が弱々しく叫んだが、すぐに分厚いドアに阻まれて聞こえなくなった。

    「うそつきいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

    JSPF専属奴隷の最期の場所はあくまで便槽。死ぬ前に「一時的に」外に連れ出すことはできるが、その鉄則は誰にも変えられないのである。

    尚、この時、光希の4つ隣の糞山の下に佐渡がいた。ダルマにされて身体は動かず、声帯を潰されて声を上げることもできなかった。大量の糞を詰め込まれて口も食道も胃も腸も炎症を起こし、酷い食中毒症状が出ていた。身体中の傷口から雑菌が侵入して全身が化膿し、一部では壊死し始めていた。男たちも気持ち悪がって近づかなかった。身体の中も外も灼熱の激痛に絶えず襲われているのに、身体を動かすことすらできない。姉妹や飯森の声を聞きながら、佐渡はひたすら後悔していた。心の中でごめんなさいを繰り返し唱え続けた。だが3人が佐渡に気づくことはついになかった。

    ……数時間後、飯森はJSPF内の手術室において、自ら七海の手足を切断した。切断された手足は血を抜いて防腐処理が施され、773号室のリビングに飾られた。

     

    V:新たな地獄(1)

     

    それから2週間の間、玲香と今日子は奴隷奉仕免除となり、療養室にベビーベッドその他を持ち込んで、美海の世話をしつつ、付きっきりで陽葵の側にいた。たまにやって来る女医の話では、陽葵の術後経過は良好とのことだった。

    だが、問題はもう1つあった。七海まで行方不明になってしまったのだ。女医に聞いても知らないの一点張り。飯森も堀田も療養室には一切顔を見せない。2人は療養室に監禁状態で、773号室に戻ることもできず、七海と陽葵のことが気になって夜もあまり眠れなかった。特に今日子は不眠の度合いが激しく、ストレスから急速に白髪が増えていった。

    2週間後の朝、キャリーケースを持った裏沢が療養室に入ってきた。陽葵をケースに入れると、今日子に同行を命じ、玲香には美海とベビーベッドを持って773号室へ行くよう命じた。

    調教区画を過ぎて階段を降り、メス犬区画へ。今日子は、娘の入ったケースがゴロゴロと引きずられる様が我慢できず、自分がケースを抱きかかえて運ぶからと裏沢に頼み込んだが、「慣れろ」と短くあしらわれた。

    光希がかつて使っていた9号室の前で裏沢は止まり、虹彩認証をパスしてドアを開けた。脱臭剤のおかげで、部屋中に染み付いていた糞便臭は消え去っていたが、淀んだ空気と薄暗い照明は以前のままだった。

    部屋の真ん中で裏沢がケースを開けると、陽葵は既に目を覚ましていた。

    麻酔が切れていた陽葵は、運搬時の振動で目を覚ました。そして真っ暗なケースの中で、ひとり絶望していた。手足がない。見えないけどわかる。ケースの中で身体を激しく揺すられながら、手足で踏ん張ることができない。ホントにメス犬になったんだ! 手足なくなっちゃったんだ!! 夢じゃ、なかったんだ!!! 陽葵はケースの中で泣き喚こうとし、もう1つの異変に気づいた。そしてさらなる絶望の中に叩き込まれた。

    「うああああっ!! あぅ!! んあああっ!!」

    ケースから出た陽葵は、短くなった四肢をばたつかせながら辺りを見回し、母親の姿を見つけると声を張り上げた。

    「あういあ! んあっ! おあぁあん!!」

    ああ、やっぱりだ。言葉が…… 言葉がしゃべれない! なんで!? 声は出るのに、あいうえおしか言えない! なんで!? 光希お姉さんもポチも普通にしゃべれてたのに!! なんでっ!!?

    「あぅああ!! いあぁ!! おいあうああうあっ!!」

    今日子も異変に気づいた。短い四肢をばたつかせる姿があまりに悲しくて、見ていられなくて、今日子は思わず目を逸らしたのだが、声を上げ始めた陽葵がいつまで経っても母音しか発しないことに気づいた。始めは、麻酔が残っているからだと思った。だが様子がおかしい。今日子は娘の口元を凝視した。普通だ。歯も舌もある。口にも喉にもどこにも外傷はない。なのに、なぜ喋れないの? なぜ!? なぜっ!!?

    ……陽葵は、この施設の秘密を、便槽と竪穴の秘密を知ってしまった。だが、ここには隔離状態だった773号室と違って、ポチを始め多くのメス犬たちがいる。それに今日子も玲香も未だその秘密を知らない。故に、陽葵をそのままにしてはおけないのだ。陽葵はレーザー装置によって四肢を断たれた後、声を失うことなく言葉のみ発することができなくなるよう、追加手術を受けさせられていたのである。

    何らの説明もないまま、絶望の底で陽葵と今日子は抱き合い号泣した。と、その時、9号室に大勢の男たちと、メス犬のポチが入ってきた。さらに堀田が入ってきて、母娘に向かって言った。

    「さあ、今日の調教を始めるぞ。これからは午前の調教はここで行う。用意はいいか? ヒナ、今日子!」

     

    ……その頃、玲香は773号室に移動していた。そして虹彩認証をパスして中に入り、寝室兼育児室に入った途端、絶句した。身体も思考も呼吸も脈も心臓も、何もかも一瞬停止した。

    七海が、いた。手足が、なかった。この2週間ずっと一緒にいた陽葵とも、半年以上世話してきた光希とも違う。手も足も、付け根から全部失くなっていた。丸っこい胴体と、その上に首。たったそれだけ!

    「やあ、玲香」

    後ろで声がした。ようやく玲香の時が動き出した。飯森だった。

    「七海はご覧の通り「ダルマ」になった。玲香には引き続き七海の専属世話係になってもらう。七海と美海の世話。それがお前の仕事だ。いいな?」

    「ダルマ……」

    時は動き出しても、思考が追いつかない。何を言ってるの? この男は……

    「七海が起きるのは約2週間後だ。それまでは美海の世話を中心に、1日1回七海の身体を拭いてやってくれ」

    「…………」

    「それから、仁科母娘は基本的にはもうここには来ない。陽葵、じゃなかった、ヒナはメス犬区画9号室で生活し、今日子は雑用係となってカプセルベッドで寝起きしながらヒナとポチの世話をする。以前のお前のようにな」

    「…………」

    「七海が起きたら、午前中の調教だけは堀田氏と合同でこの773号室で行う。その時だけは仁科母娘もここへ通うことになる」

    「…………」

    「因みに、773号室は、この七海の寝室と隣のリビング、奴隷用のシャワーとトイレ、あとお前の部屋…… それ以外は全面リニューアル中だ。今は入れないからな?」

    「…………」

    「七海が起きるまでは、ここにやってくる客の相手は全てお前がしろ。場所はリビングとトイレのみ。大変だろうが、美海と七海の世話を忘れるなよ?」

    「…………」

    「以上だ」

    玲香は何も言えなかった。無視とかではなく、本当に言葉が出てこなかったのだ。この男は、七海のことを愛しているんじゃないの? なんでこんな酷いこと、平気でやれるの? 信じられない…… 信じられない……!

    言いたいことだけ言ったら、すぐ部屋から出ていこうとする飯森に対し、玲香はようやく一言だけ絞り出すことができた。

    「…………狂ってる」

    「結構。最高の賛辞だ」

    「…………」

    玲香はそれ以上何も言えなかった。飯森と入れ替わるようにして、男たちが入ってきた。奴隷たちの休息は終わったのだ。

     

    ……同じ頃、光希はついに息絶えた。男がペニスを光希の膣に挿入したら、中が冷たくなっていたのだ。男はスマホで光希の死亡を報告すると、死姦を開始した。しばらくして、光希の死を知った男たちが続々と便槽に入ってきて、光希の冷たい穴にペニスを突っ込み、射精していく。記念と称して右目をくり抜いていく者もいる。やがて糞まみれの死体の表面が白濁液で覆われると、男たちは、重さ10kgにも満たない光希の死体を皆で担ぎ上げ、隣の縦坑まで運んで穴の中に勢いよく投げ捨てた。あまりに深く、底の見えないその穴。落下音は聞こえなかった。

    光希は数百人分の人骨の上に落下した。重い頭部が下になって落ちていったため、光希は骨の海に真っ逆さまに墜落し、鋭利な骨の破片が頭蓋骨に突き刺さって脳味噌が周囲に飛び散る。この状態のまま光希は朽ちていく。

    周囲には、真っ黒に腐った挙げ句、細菌に分解されてバラバラになった「何か」の成れの果てが散らばっていた。

     

    VI:新たな地獄(2)

     

    9月12日。七海が四肢を失ってちょうど1ヶ月後、七海は目覚めた。

    「ああい?(七海?)」

    目の前に陽葵がいた。よかった…… 陽葵がいる。なんだ、全部夢だったのか……

    だがすぐに異変に気づく。陽葵の手足がない。自分のもない。身体が動かない。全く動かない。首しか動かない!

    「あぁぁ…………」

    ああ、ホントになってしまったんだ。ダルマに。オナホールに!

    「ああい…… おあっあ…… いいええおあっあおぉ……(七海…… よかった…… 生きててよかったよぉ……)」

    目の前ではメス犬になった陽葵が泣いている。よかった。お互い酷い身体になっちゃったけど、取り敢えず生きててくれた。無事みたいでよかった……んだけど、なんか変。なんだろ。なんで陽葵、あーうーしか言わないの? 猿ぐつわとかされてないのに。 ……え? ちょっと! なんで!? なんで言葉、しゃべれないの!? なんで私の名前、呼んでくれないの!!? 陽葵っ!!!?

    違和感は急速に膨れ上がって不安となり、衝撃、動揺を経て絶望となった。陽葵が…… 陽葵がっ!!

    そしてようやく辺りを見回す。手と足がない。玲香さんもいない。おねえちゃんも、ご主人様も。 ……あれ? なんで今日子さん、あんなに髪の毛白いの? 染めた……わけじゃないよね? 白髪? まだ若いのに…… ちょっと前まで真っ黒だったのに!

    何がどうなっているんだろう。色々陽葵に聞きたいが、言葉にならない。だって陽葵、言葉が……!!

    半ばパニックになりかけているところに、飯森と玲香が入ってきた。玲香は大きな姿見を持っていた。

    「おはよう、七海。気分はどうだ?」

    「……ご、主人さま」

    「今日からお前は俺のオナホールだ。末永く使ってやるからな」

    「…………」

    飯森の横に置かれた鏡。首だけ動かして鏡を見ると、そこにはオナホールとなったダルマの自分が映っていた。よく見たら下腹部にいつの間にか「妹ダルマ」という焼印が捺してある。それだけではない。言葉を失ったメス犬のヒナ、若白髪が増えた今日子、涙を流して俯いている玲香、邪悪な顔で笑う飯森。4人の姿も映っている。 ……そして光希の姿はない。

    あの夏の日。自宅を警察官が訪ねてきたあの時から1年と39日目。新たな地獄が始まったのだ。七海は堪らず絶叫した。

    「もういやああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」

     

    VII:永遠

     

    ……あれから29年の月日が流れた。

     

    既に多くの者がこの世の地獄から解放されて天国へと旅立っていった。そして今、78歳になった飯森則夫が真の地獄に落ちようとしていた。末期の癌。癌細胞は既に全身に転移しており、余命1週間と宣告されてから9日目。抗癌剤の影響で白髪は全て抜け落ち、小太りだった身体は見る影もない。七海に絶望と快楽を与え続けた剛棒も、今は萎びた生ゴミのようだ。そんな枯れ枝のような身体で病室のベッドに横たわり、管まみれになって全身の疼痛にひたすら耐えていた。

    傍らに七海がいた。46歳になった七海は、一男四女を産んで骨などはかなり脆くなり、昔と同じ色に染められている髪も、染料の下は既に総白髪となっていたが、世話してくれる者たちの日々の手入れと、飯森が行わせた整形・美肌・老化防止など様々な手術のおかげもあって、表面的には信じられないくらいの若さと美貌を保っていた。手も足もないダルマ姿でベッド横の椅子に座り、飯森の方を静かに見つめていた。

    ……飯森が沈黙を破った。喋ったのは2日ぶりだ。

    「七海…… どうやらこれまでのようだ…… これまでありがとう…… すまなかったな……」

    「…………」(いまさら…………)

    「最期に…… 声を…… 聞かせてくれないか……」

    「ご主人様。最後に1つ、お願いがあります」

    「……なんだ? 癌に殺される前に自分で殺したいか? 儂を……」

    「……違います。逆です。死ぬ前に私を殺してください」

    「…………」

    「癌で死のうが私が殺そうが、ご主人様が死んだら私は自動的にJSPFの所有物になります。ご主人様以外の人に抱かれ続けて、使われ続けて、いつかは便槽に落ちる運命です」

    「…………」

    「こんな身体では自殺もできません。歯がないから舌も噛み切れません。ですから…… お願いです。私を殺してください。一緒に死んでください。 ……もう、これ以上、私に酷いこと、しないでください。お願い、します……」

    「七海……」

    「そこの花、花瓶、ガラスですよね。落として割って、ガラスの破片で私の首を切ってください」

    「ふふっ…… 最後に主人に命令するか…… だが手が届かん」

    「立って取りに行ったらいいじゃないですか」

    「そんな力、残っとらんわ…… それに立ったら管が外れる」

    「だから今まで言わなかったんです。もうすぐ死ぬんですよね? だったら立っても同じことじゃないですか」

    「ふ…… ふはは…… お前は本当に賢いな…… わかった。やってみよう」

    「ありがとうございます、ご主人様」

    飯森はベッドを起こすと最後の力を振り絞って立ち上がった。管が次々に抜けていく。なんとか花瓶の前までやって来ると、花瓶を掴み上げようとしたが、手はもうマトモには動かなかった。仕方がないので手全体を横に動かして花瓶を床の上に落とす。ガシャンと大きな音がして花瓶は砕け、ナイフのように鋭いガラス片が飯森の足元に転がってきた。飯森は、どうにかそれを拾い上げると、足を引きずるようにして七海の方へ歩いていった。管が抜けたからか、血圧が乱高下して激しい目眩に襲われる。だが、それでも歩みは止めず、どうにかこうにか七海の前に辿り着いた。震える両手でガラス片を握ると、七海の首元、頸動脈の辺りに持っていく。その時、七海が小さな声で言った。

    「ありがとうございました、ご主人様。さようなら……」

    そして小さく笑った。飯森を魅了したあの蠱惑的な笑みでも、陽葵に見せた満面の笑みでも、姉と別れた時に見せた優しい笑みでもない。透き通るような微かな笑み。30年、命を燃やしながら主人に奉仕してきた末の、灰のように白く温かく穏やかな表情。少女のような可憐さと年相応の深みが重なって…… ああ、なんて美しいんだ。愛しの七海。最期の最期にとっておきの笑顔を見せてくれてありがとう。最期の力を振り絞った甲斐があった。これでもう思い残すことはない。

    「ありがとう、七海…… ありが…………っ!」

    駄目だ。意識が保たない。手に力が入らない。最期に。あと1秒でいい。最期に、力を…………

    視界が暗転する刹那、飯森は赤い鮮血を見た。見た気がした。次の瞬間、飯森の魂は肉体から離れて地獄へと落ちていった。

    七海の視界も赤一色に染まっていた。燃えるように鋭い痛みがほんの一瞬だけチカッと走り、すぐに視界が黒ずんでいく。完全なる闇に閉ざされる直前、立ったまま絶命した飯森の身体が病室の床の上に崩折れていくのが見えた気がした。

    意識が遠のいていく。痛みはない。何もない。こんな安らかな最期が迎えられるなんて。私の大切な人たちは、みんなあの便槽で苦しみながら非業の死を遂げ、縦坑の底で骨になったというのに。七海は罪悪感を覚えつつも飯森に感謝した。生まれて初めてこの男に感謝した。

    だが、どうもスッキリしない。もうすぐ死んじゃうのに最期の最期でこの男に感謝することになるなんて。憎いままで終わればよかったのに。 ……最低。最期まで最低なやつ。でも、まぁいっか。もうすぐ終わるんだし。ああ…… 終わるんだ…… やっと、終わるんだ…………

    視界は既に真っ黒。何も見えないし何も聞こえない。何も臭わない。苦痛も快楽もない。ああ、いつかの夢の続きだろうか。でもいつかの悪夢はものすごい圧迫感があった。今はそれがない。自分の肉体の存在すら感じない。何もない空間に、ただ1人。

     

    ……ふと、何かが見えた気がした。飯森の死体じゃない。そんな汚物じゃない。あれは…………

    陽葵だ。陽葵がいる! 懐かしい。たった1人の私の恋人。あの頃の姿のまま、満面の笑みを浮かべて手を振ってくれている。手がある。足もちゃんとある。よかった、元気そうで。よかった、また会えて。会いたかったよ…… 何年、何十年経っても大好きだよ。ずっと愛してるよ、陽葵……!

    傍らには今日子さんがいて、さらにその隣に美海がいる。美佳美奈美久がいて、見覚えのない男の子もいる。もしかして、出産直後に別れた子だろうか。その横には玲香さんと見知らぬ子供たち。それに、ポチがいる。手足があって、満面の笑みで…… あんなに可愛らしい子だったんだ。本当の名前、知らないままでごめんね…… そしてその隣には……

    ああ、おねえちゃん。おねえちゃんだ! 会いたかった…… よかった、ちゃんと手足がある。健康そうに日焼けして、真っ白な歯を見せながら、眩しすぎる笑顔で…… 何か言ってる。腕を大きく振って何か言ってる。声は聞こえないけど、こっちにおいでって言ってる気がする……

    その横にいるのは…… あぁぁ…… お父さん…… お母さん…… 会いたかったよ…… ずっと…… ずっと…… おかあさん…… おかあさん…………

    いまいくね…… わたしもそっちいくね…… みんな…… みんな、いっしょ…………――――――――――

     

    +++++++++++++++++++++++

     

    佐渡 彩音(享年33):16歳、清隷女学園高等部1年の時に堀田荘司に調教され、17歳でJSPF専属奴隷。18歳の時にS役専門となり22歳で堀田に身請けされる。25歳の時に私立清隷女学園教師に就任。国語担当。33歳の時に仁科陽葵を唆した罪により全身に重傷を負い、さらに四肢切断。便槽にて細菌性胃腸炎(食中毒)・破傷風に罹り、全身が壊死して敗血症により死亡。

    木下 光希(享年18):木下七海の姉。17歳、清隷女学園高等部3年の時にJSPFの専属奴隷となるが49日後に逃亡。それまでに反抗・奉仕拒否ほか微罪多数。これにより四肢切断・全抜歯・T-ZL3投与の刑となり、メス犬「ペロ」に改名。妹の七海がJSPFのゲスト奴隷となった82日後、姉妹揃って飯森に叛逆するが失敗して左目失明。その後はT-ZL3の過剰摂取により急速に衰弱。18歳にて多臓器不全のため処分。

    北條 千秋(享年19):木下七海・仁科陽葵と同齢。12歳、清隷女学園中等部1年の時に堀田荘司に調教され、13歳でJSPF専属奴隷。14歳の時に逃亡し、メス犬「ポチ」となる。15歳の時ペロと、後に陽葵とペアで調教されるようになる。19歳にて衰弱のため処分。

    仁科 今日子(享年44):仁科陽葵の母。商社勤務。39歳の時に娘の陽葵とともに堀田荘司に調教されて、JSPF専属奴隷となる。陽葵らとともに通称「773号室」にて過ごし、優秀な奴隷に育っていた最中、陽葵がメス犬、木下七海がダルマとなる。この頃から老化が進み、出産ショーでは女児を死産。一時精神を病むものの、この頃鬱状態だった七海を懸命に励まし続ける娘を見て立ち直る。しかし43歳頃からさらに老化が加速。44歳にて衰弱のため処分。

    仁科 陽葵(享年26):仁科今日子の一人娘。木下七海・北條千秋と同齢。七海とは清隷女学園高等部1年A組の同級生。16歳の時に母の今日子とともに堀田荘司に調教され、JSPF専属奴隷となる。直後に七海と再会して友人に、後に恋仲となって773号室で過ごす。しかし佐渡彩音に脅迫されて逃亡。メス犬「ヒナ」になると同時に言葉も失う。ほぼ同時期に七海もダルマとなったが、当初鬱状態だった七海をヒナが筆談とセックスで励まし続け、2ヶ月後に七海は回復した。その後、身体が徐々に壊れていく中においても七海と恋人関係を続け、長女を出産。21歳の時に今日子が処分され、直後に自身も男児を死産すると徐々に衰弱。七海の懸命の励ましもあって、その後さらに5年間メス犬として活躍し、さらに一男一女を設けるものの、26歳にて衰弱のため処分。

    澤田 玲香(享年37):19歳の時に友人のトラブルに巻き込まれて破滅し、20歳の時にJSPF専属奴隷となる。22歳で雑用係となり、23歳の時にペロの担当となる。木下七海が773号室に移ってからは彼女の専属世話係となり、特に七海がダルマとなって以降、七海の世話と七海の子供たちの育児を一手に引き受ける。三男三女を出産。37歳にて衰弱のため処分。七海の世話係は七海の長女の木下美海が引き継いだ。

    堀田 荘司(享年85):JSPF理事、清隷学園理事長。24歳の時にJSPFに入会し、49歳の時にJSPF副理事並びに清隷学園理事長に就任。以降、学園の生徒を調教して定期的にJSPFに提供。54歳にてJSPF理事就任。62歳の時に773号室を新設。70歳で引退。85歳にて老衰のため死亡。

    木下 美海(享年27):木下七海の長女で飯森則夫の個人奴隷。奴隷養育施設ではなく773号室にて育つ。父の遺伝子をほぼ受け継がず、母以上の絶世の美少女となる。13歳の時に長女の美樹を出産し(父は飯森)、以降三男四女を設ける。14歳の時、澤田玲香の処分に伴い母の世話係に就任。27歳にて衰弱のため処分。ほか、次女の美佳は調教中に事故死(享年16)、三女の美奈は長女を設けるも21歳にて衰弱のため処分、四女の美久は出産直後に死亡、長男のは少年奴隷として別施設で人気を博するも、22歳にて衰弱のため処分。七海死亡時の世話係は孫の美樹(16)。美樹には長女の美緒(2)がいる(七海の曾孫)。七海の死後、存命の者は全員JSPFの専属奴隷となり、幼年の者は奴隷養育施設へと送られた。

    飯森 則夫(享年78):投資家。36歳の時にJSPFに入会。47歳の時に木下七海を調教し個人奴隷とする。48歳の時、JSPF内に居を移し、以降七海はJSPFのゲスト奴隷となる。七海の長女出産に伴い773号室を設計。3ヶ月後に七海はダルマとなる。その後も七海や七海の娘・孫たちとの間に多くの子供を設ける。78歳にて七海と心中。

    木下 七海(享年46):木下光希の妹。仁科陽葵・北條千秋と同齢。陽葵とは清隷女学園高等部1年A組の同級生。15歳の時に飯森則夫に調教されて個人奴隷となり、その後JSPFのゲスト奴隷となる。姉妹揃って飯森に叛逆するが失敗し、絶対服従を誓う。その後陽葵と再会。長女出産後は773号室に移り、「理想の奴隷」として人気を博す。陽葵とは恋仲となる。陽葵がメス犬「ヒナ」になった直後にダルマとなり、しばらくは鬱状態になるが、ヒナの懸命な励ましによって徐々に回復し、2ヶ月後には「理想の七海」に戻った。その後も「理想のオナホール」として高い人気を維持し続け、一男四女を設けたが、いずれも母より早世。46歳の時、JSPF内の病室にて飯森と心中。

     

    (死亡順)

     

    ……JSPFは木下七海の死後も変わらず存続し続けている。たとえ日本国が滅びようと、この施設が滅びることはないだろう。今日も施設内の至るところで奴隷たちの嬌声が、七海の子孫たちの悲鳴が上がり、縦坑の底で人知れず骨が増えていく。死んだ奴隷たちの骨の海の上で、生きている奴隷たちの生き血を吸いながら、JSPFは生き続ける。

     

    ……永遠に。

     

  • ハードSM小説『奴隷姉妹』 第3章 – 奴隷9・14日目

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    I:奴隷9日目 – 午前

     

    奴隷用寝室、12月27日、朝6時。耳をつんざくブザーの爆音によって、150名近い奴隷たちが一斉に飛び起きる。と同時に各ベッドの室内灯も点く。JSPFに連れてこられて12日目、89番ベッドの七海も、前夜の激しい調教の後、気絶するように眠りこけていたのだが、心臓が飛び出るほどの爆音で飛び起きた。直後、扉の真ん中に設けられた直径30cmくらいの丸い窓が自動で開く。奴隷たちが一斉に窓から頭を出す。朝食の時間だ。

    既に各窓の下には、1食分の流動食と小便が盛られた犬用のエサ入れが置かれており、奴隷たちは手を使わずにそれを飲み食いしていく。流動食は、男たちが食べ残した残飯に、動物の精液や栄養素サプリ、糞尿を無毒化する薬等を混ぜて撹拌したものだ。それが小便と混ざって味も臭いも最悪なのだが、奴隷たちは慣れているのか黙々と食べていく。

    中には、流動食に糞便や吐瀉物が混ざったものを泣きながら食べている奴隷もいるが、これは前日夜の調教で失敗した者たちへの罰である(なお、罰の内容は失敗のレベルに応じて変化する)。

    89番の七海も、排泄物がグチャグチャに混ざった流動食を泣きながら食べていた。

    生首だけが150近く並んでモグモグやっている光景は、まるで集団ギロチン場のようだ。朝食の時間は20分。時間が経つと再び爆音ブザーが鳴る。いつまでも食べていると給仕係の男の蹴りが顔面に飛んでくるので、奴隷たちは食べかけであっても急いで首を引っ込める(食べ残した奴隷は後で罰が待っている)。

    次は排泄の時間だが、奴隷はスカトロプレイが必須であるため、朝のこの時間に排泄する者は少ない。七海もこの後スカトロ調教の予約が入っている。この時間に排泄するのは、小便が溜まって我慢できない者や、朝イチでスカトロNGの客に指名されている者に限られる。その者たちは、8畳程度の部屋の床に等間隔で穴が開いているだけの、仕切りも何もない奴隷用ボットン便所で用を済ます。トイレットペーパーは無いので指で拭くしかない。

    ……排泄物はそのまま最下層の「便槽」へと落ちていく。そこには、四肢を断たれた用済みの奴隷たちが蠢いており、落ちてくる排泄物を飲み食いしながら余生を過ごしていた。……奴隷用のトイレと、奴隷の成れの果ての食事スペースが一体となったこの空間は、奴隷の一生を象徴する場所である。が、上層の奴隷たちは、下層に自分たちの未来が広がっていることを知らない。

    朝食後・排泄後はシャワールームで前日の汚れを落とす。奴隷は毎日ありとあらゆる体液・汚物にまみれるため、洗身洗髪が欠かせない。汚れが残っているとこれまた罰が待っているので、膣内も含め各人念入りに身体をこする。排泄を済ませた奴隷が汚れた指を念入りに洗っている。排泄物混じりの朝食を食べた奴隷は、七海を含めシャワーの湯をがぶ飲みしている。七海は、ボディソープもがぶ飲みして食道や胃の中まで洗いたい気分だった。

    シャワーが終わったら髪を乾かし、爪を切り、ムダ毛を処理し、歯を磨く。奴隷と言えど女として最低限の身だしなみは整える必要がある。ただし、髪や歯のない奴隷・拷問で爪を剥がされた奴隷などもいるが。さらには健康チェック。鞭痕や火傷痕に皮膚薬を塗ったり、体温や体重を測ったり。怪我・妊娠している奴隷のケアも行う。妊娠4ヶ月目の七海も女医に腹部を触診してもらった。

    こうしてあっという間に2時間が経過し、朝8時から午前の調教が始まる。

     

    JSPFでは1回4時間の調教が、午前・午後・夜の計3回行われる。内容は、中央ホールでの集団調教・個室での少人数調教・奴隷ごとに定められたメニューによる個別の特殊調教の3つで、奴隷は1日の中でこれらを1回ずつ行わねばならない。奴隷は全部で150名弱いるので、50名弱ずつ3つのグループに分かれる。七海の場合は、午前が特殊調教(姉妹同時調教)、午後が集団調教、夜が少人数調教である。

    姉妹同時調教はペロのいるメス犬区画9号室で行われる。奴隷は普段メス犬区画に入ることはできないが、調教の時のみ特別に出入りが許されており、虹彩認証によってその出入りが厳しく管理されている。奴隷がおかしな行動を取れば、体内マイクロチップと施設各所のセンサーが異常を検知して即座に警報が鳴るという仕組みだ。七海は、移動時に怪しい行動を取るな、脱走のことは絶対考えるな、と光希に何度も念を押されているため、脇目も振らずに9号室へと向かった。

    8時20分前に9号室に入ると、姉の他に雑用係の玲香がいた。12日前、七海がここに連れて来られた日に、七海をキャリーケースから出して全身を洗ってくれた奴隷だ。

    雑用係は計30名いるが、4時間×3の調教を全て免除されているわけではない。特殊調教と集団調教の8時間の間に雑務を行い、少人数調教は他の奴隷と同様に受けるのである。よって雑用係も3つのグループに分かれている。玲香は七海と同じグループに所属しているため、午前と午後が雑務、夜が少人数調教だ。

    雑用係の仕事は様々であるが、メス犬の世話もその1つである。メス犬は基本的に部屋から出ることはないので、雑用係が各部屋を回ってメス犬の給餌・洗身・洗髪を行わねばならない。メス犬の世話は朝8時の調教開始より前に終わらせる必要があるので、朝の時間を1時間削って朝7時からメス犬の世話をせねばならないのだ(そのぶん昼休みが長い)。玲香の担当は8号室と9号室。ポチとペロであった。

    「おねえちゃん、おはよう。おはようございます、玲香さん」

    「おはよう、七海」

    「おはよう、七海ちゃん」

    朝の清々しい空気などとは無縁の、糞尿臭の染み付いた薄暗い地下室ではあったが、3人は努めて明るい声で朝の挨拶を交わした。初めて会った時は、七海は混乱の極みにあったため、玲香とギクシャクした会話しかできなかったが、翌朝から毎日ここで会うようになったため、人見知り気味の七海もすっかり慣れて親しく会話するようになった。

    玲香は23歳。背中まで伸びたやや黄みがかった暗めの銀髪が印象的で、身長は170cmを超え、スラッと引き締まった体つきをしている。大学2年の時に女友達のトラブルに巻き込まれて、気づいたら男たちにレイプされて処女を失い、弱みを握られて売春やAV出演を強要され、ついには男たちの奴隷になり、最終的にはJSPFに連れて来られて専属奴隷となった。以降、なんとか会員客にも気に入られ、半年前からは雑用係を務めている。

    玲香は部屋付属のシャワールームで光希の身体を洗った後、部屋に戻ってドライヤーで髪を乾かしているところだった。しばし3人での会話が続く。玲香も、七海がここに来る前は光希のことをペロと呼んでいたが、七海が来て、ペロの本名を知ってからは、男たちがいない時だけ光希と呼んでくれるようになった。光希はそれがとても嬉しかった。何しろ七海と玲香以外、本名で呼んでくれる者など誰一人いないのだから。秘密の名を共有する仲間、家族。光希は、自分にも姉ができたような気さえしていた。

    七海もまた、もう1人姉ができたような気がしていた。体育会系の光希と異なり文化系の雰囲気が漂う、理知的で優しいもう1人の姉。光希は一人では身体も髪も洗えない。食事も満足に摂れない。玲香は、仕事とはいえ、そんな光希の世話を嫌な顔一つせずにやってくれるのだ。特にこの部屋は、光希の壊れた肛門から絶えず垂れ落ちる糞便の臭いが染み付いてしまっている。女性にとってそういう状況がどれだけ恥ずかしいことか。七海も教室での体験があるからよくわかる。教室中から浴びせられた侮蔑と嫌悪の冷たい眼差し。だが玲香はそんな表情は一切見せない。今朝は、昨夜の最後の客が極太肛門栓を挿していったからか、床の上に糞便は溜まっていなかったが、昨日の朝は酷い有様だった。だが、玲香は何も言わずに平然と床の上の糞便を片付け、肌にこびりついた汚物を優しく丁寧に洗い流してくれたのだった。

    玲「さ、これで終わりよ、光希」

    光「いつもありがとうございます、玲香さん」

    玲「いえいえ、仕事だからね」

    七「ほんと、毎日感謝してます。おねえちゃんをキレイにしてくれて」

    玲「は~い。それじゃあ2人とも…… 今日も頑張ってね」

    姉妹「「はい」」

    昨日とほぼ同じ会話。けれど、この狂った施設の中では数少ない人間的な会話。玲香に頑張ってと言われると、不思議と力が湧く。頑張らなきゃと思う。さあ、今日も過酷な12時間の調教の始まりだ……!

     

    「やあ、七海。おはよう」

    朝8時少し前に飯森が部屋に入ってきた。気持ち悪い声。気持ち悪い響き。数分前に交わした玲香との挨拶とは雲泥の差だ。早速七海のテンションが下がる。

    飯森はペロに肛門栓を外すように言い、シックスナインの体勢になって互いの肛門に口を付け、糞便を食べ合えと命じた。当然ペロが上、七海が下である。姉妹は無言のまま命令に従う。

    七海がペロの下に潜り込むと、無残に脱肛し括約筋もズタズタの肛門から、軟便がボタボタと落ちてくる。肛門に口を付けるまでもない。七海は口を開けて糞便を次々に飲み込んでいった。既に朝、前日の罰として糞尿入りの流動食を食べてきた七海だったが、できたてホヤホヤの糞便の臭いと味は流動食より遥かに強烈だ。食糞という行為にはだいぶ慣れてきたが、糞便の臭いや味に慣れたわけではないし、好きになったわけでも無論ない。七海はむせ返りながら最愛の姉の糞便を頬張り、涙を流しながら少しずつ飲み下すのだった。

    ペロは七海以上に食糞に慣れていた。短い腕で七海の尻を抱き寄せ、首を思いっきり曲げて肛門の前に口を持ってきたら、長い舌を肛門に挿入して糞便を掻き出し、ひょっとこのように唇を尖らせて下品な音を立てながら吸い取る。ペロはメス犬になってから、毎日こうやって他のメス犬たちと糞便を食べ合ってきた。慣れたものだ。糞便の味など美女も醜男も同じだということをペロは身を以て知っていたが、とは言え愛する妹の糞便だ。なんとなく甘い香りがするのは錯覚だろうか。

    互いの糞便を貪った後、褒美としてキスが許される。

    姉妹は糞便まみれの口をつけ、茶色い舌を絡ませながら、激しくキスし合った。

    元々仲の良い姉妹ではあったものの、共にレズビアンの気は無かったのだが、再会してからは絡むことが多くなった。最初は命令されてのことだったが、互いへの愛情(依存)は日を追って深まっており、最近では飯森が休憩している間に、命令されずともレズプレイを始めることすらあった。

    次はアームアナルファックを命令された。これまで、ペロの肥大化したクリペニスや乳首を七海の中に挿入したことは何度もあったが、腕を挿れるというのは初めてだ。七海は両穴ともにフィストファック経験済みだし、自分の腕は飯森の拳よりは細いから多分入るだろうが……。ペロは恐る恐る七海の肛門に自らの短い腕を挿入する。予想通り七海が痛みを訴えることはなかった。ホッとしたペロは、肢(アシ)だけで立つと、上半身全体をヤジロベエのように器用に揺すりながら腕をゆっくり出し入れする。残っていた糞便が腕を黄土色に染めていく。七海の気持ちよさそうな声が聞こえてきた。

    突如飯森が七海の口を犯し始めた。フェラチオとか口淫とかそんな生易しいものではない。頭を手で掴み、ちぎれんばかりに髪を引っ張り、喉の奥を激しく突き上げる。オナホールだってこんな使い方をしたら壊れてしまうだろう。七海はあまりの苦しさに「やめて」と言おうとしたが、口も喉も塞がれていて言葉にならない。なんとか抵抗しようと必死に手を動かして暴虐から逃れようと試みる七海。

    小さく舌打ちした飯森は一旦ペニスを引き抜くと、無言のまま七海の両手を素早く後ろ手に縛り、再び口に巨根を突き入れた。七海にできることは、苦痛に耐えることしか残されていなかった。

    しばらくすると、もっと激しく腕を動かせと飯森がペロに命じてきた。そんなこと言われても、短い肢で不安定に座りながら上半身のバネだけで腕を出し入れするだけでも大変なのだ。これ以上スピードを上げるのは不可能だ。そう言おうとして、ペロは言葉を飲み込んだ。飯森が冷たい目でこちらを見ている。命令に背いたら七海に何をするかわからない、そんな目だった。

    仕方なく5cmほど七海の方に近づくと(その分腕が奥にめりこむ)、ペロは肩をバイブのように震わせながら抽送を開始した。途端にペニスの隙間から漏れる七海の声が大きくなる。苦しいのだろうか。気持ちいいのだろうか。わからない。相変わらず飯森は七海の喉を激しく犯している。七海は白目をむきながら暴行に耐えている。あんなの気持ちいいわけない。苦しいに決まってる。もうやめて。七海が窒息しちゃう。早く終わって……!

    数分後、飯森は七海の喉の最奥で射精した。一部は食道から胃へ、一部は気管支へ、一部は逆流して口や鼻へ。ペニスが抜かれると、七海は激しく咳き込み、次の瞬間嘔吐した。朝に食べた排泄物入りの流動食も、先程食べたペロの糞便も、たった今出された飯森の精液も、全てを。

    虫の息の七海に対して飯森が、リバースしたものを全て食えと命令する。

    「いい加減にしてください!」

    さすがにペロが激昂する。

    「私が全部食べますから! 七海を休ませてあげて! お願いします!」

    「その吐瀉物の中には、七海が生きていく上で必要な栄養素が含まれている。残すことは許さん」

    「はあ!? あなたが無茶したから吐いちゃったんでしょっ!?」

    「知らんな。俺は吐けと命令してないし、吐いていいと許可も出してない。勝手に吐いたんだから自分で胃に戻すのが道理だろう」

    「む、無茶苦茶よ!!」

    「ほう…… お前、いつからそんなに偉くなったんだ?」

    「いや…… その……」

    「ふん。いいだろう。ならお前が口移しでこいつに全部飲ませろ」

    「なっ!?」

    「あれだけ仲良くキスしてたんだ。本望だろう?」

    「くっ!!」

    「次逆らったら七海の歯を麻酔無しで全部抜く。イラマチオのためには歯は邪魔だし、流動食と糞尿だけなら飲み食いにも不要だからな。そう思うだろう?……なぁ、ペロ」

    「……はい。わかりました。口移しします。」

    ダメだ。この外道に逆らっちゃダメ。歯を抜かれる痛み…… 七海に味わって欲しくない。絶対に!!

    ペロは短い手足で吐瀉物に這い寄ると、悪臭に耐えながらズルズルと音を立てて吸い上げ、口の中いっぱいに溜め込んだ。ペロには手がないので吐瀉物を掬うことができない。面倒だが、口に含んでは七海の所に移動して口移しで飲ませてまた移動、という動作を何度も繰り返さねばならない。なんだか、昔テレビ番組で見た何かの動物の親子みたいだとペロは思った。私、もう人間じゃないんだ……

    「ケホッ! ケホッ! おねえちゃん…… ごめんね……?」

    「いいお…… おえおいおあ、ういあええ……?(いいの…… それよりほら、口開けて……?)」

    「あぁぁ…… じゅるるるるるる……」

    姉妹の惨めなキスを見ているうちに飯森が回復した。

    この後、飯森は七海の膣に2発、肛門に3発、口に1発出し、オマケでペロの歯のない口にも1発出した。そうして午前の調教の時間が終わって退室する間際、飯森は思い出したように言った。

    「勝手に吐いた罰として昼メシは俺の糞尿とゲロ入りだ。せいぜい味わって食うんだな」

    昼食は各調教室に置いてある流動食を奴隷が各自摂ることになっており、この部屋にも幾つか置いてある。飯森は、床の上に流動食1食分をぶち撒け、その上にしゃがみ込んで小便をかけ、大量の大便を放出した。さらに指を自らの口奥に突っ込んで嘔吐する。

    「朝食はベーコンエッグトーストだったからな。人間の食い物が食えて良かったな。じゃあまた明日な、七海」

    そう言うと飯森はドアを開け、退室していった。七海は過酷な調教によって息も絶え絶えの状態だったが、あまりの仕打ちに泣き出してしまった。子供のように泣きじゃくる妹を見つめながら、姉もまた何もできない自分が悔しくて悔しくて、震えながら泣いていた。

    だが、次の調教までは1時間しかない。ペロは七海を説得した。できれば七海の代わりに自分が糞尿を食べてやりたかったが、部屋は常時監視されているから余計なことをしたら七海が罰せられてしまう。汚物を食べるよう必死に説得しながら、なんて情けない姉なんだと光希は自分自身に絶望していた。しばらくして泣き止んだ七海は、疲労の極みにある身体をなんとか立ち上がらせると、汚物の前で再びしゃがみ込み、四つん這いになって泣きながら昼食を摂るのだった……。

    13時からは中央ホールでの集団調教である。大量の汚物に手こずった七海は、大急ぎで部屋の片隅にあるシャワールームに駆け込み、湯をがぶ飲みしつつ全身の汚れを落とすと、姉に別れを告げて虹彩認証を行い、部屋の扉を開けて廊下を勢いよく走り出した。

     

    II:奴隷9日目 – 午後

     

    調教開始3分前。七海が中央ホールの扉を開けると、既に殆どの奴隷が集まっていた。奴隷は所定の位置に立ってまんぐり返しのポーズで待機することになっており、七海は急いで自分の場所へと向かった。すぐに時間となり、男たちが続々と入ってくる。万一遅刻したら男たち全員に折檻されるため、遅刻する奴隷は滅多にいない。七海も未だ遅刻したことはないが、他の奴隷が遅刻し折檻を受けているところは見たことがある。あんなの見せられたら…… そりゃ必死になるよ……!!

    男たちが奴隷を見定めていく。集団調教中の累積待機時間が規定時間より長かった奴隷には、罰として糞尿入りの夕食が与えられるため、奴隷たちはマンぐり返しの身体をくねらせて必死に自分をアピールしている。

    七海も、羞恥で顔を真っ赤にしながら手で膣穴を拡げ、ぎこちなく腰を振った。恥ずかしいけど糞尿はもうコリゴリだ。

    白髪混じりの初老の男が七海を選んだ。

    男は堀田ほったと名乗った。まだ一度も相手をしたことのない人だったが、七海は男の顔に見覚えがあるような気がした。取り敢えずは無事選ばれたことにホッとしつつも、何をされるんだろうとビクビクしながら七海は堀田に従いていった。酷いことしない人だといいな……。

    10分後、七海は絶叫していた。縄で縛られ天井から逆さに吊るされて、鞭でメッタ打ちにされていた。七海は木下家でも毎日のように鞭を受けてきた。だが使われるのはいつもSM用の鞭で、痛みは相当なものだったが、打たれた場所から血が出るようなことはなかった。

    それは乗馬用の本物の鞭だった。全力で打ったら皮膚が裂け、肉が飛び散るほどの威力があり、痛みもSM用の比ではない。七海の所有者である飯森の要望で、一生残るような傷を負わせることはNGとなっているため、堀田は軽く打つ程度にとどめているものの、それでも皮膚から血が滲み出て3~4日はミミズ腫れが残るし、SM用の数倍は痛かった。

    七海はJSPFに連れてこられて以来、数日に1回は乗馬鞭を打たれてそのたびに悶絶していたが、逆さ吊りで打たれるのは今回が初めてだった。いや、逆さ吊り自体初めてだ。頭に血が上る。きつく縛られた手足の末端が紫色に変色し、頭がボーッとしてくる。そこに激痛の嵐だ。七海は堪らず泣き叫ぶ。

    「いぎゃあああああああっ! やめっ! やめてえええええええっ!!」

    だが、鞭は一向に止まらない。それどころか、痛みがさらに増えていく。近くにいた男たちが面白がって鞭打ちに参加しだしたのだ。2人、3人、4人。様々な鞭を手にして七海をメッタ打ちにしていく。まるでサンドバッグか何かのようだ。さすがに妊娠中の腹だけは避けているが、それ以外の箇所が全身ピンク色に腫れ上がっていく。

    頭に血が上って意識が朦朧とする中、七海は思い出していた。ここに連れて来られた日、初めてこの部屋に入った時。20代くらいの奴隷を逆さ吊りにして鞭で叩いている男を見た。そうだあの男だ。あの男の顔と一緒だ。そういえば…… あの時は…… 逆さまで鞭だけじゃくて…… 口で…… フェラ……

    「ぐむうううううううううううっ!!!!」

    その瞬間、堀田がいきなり七海の口にペニスをぶちこんだ。午前中に続いてまたしてもイラマチオが始まったのだ。七海の記憶通りの展開だったが、その苦しさ・辛さは想像を遥かに超えていた。血が上る。息ができない。酸素が足りない。顔を真っ赤にしながら七海は必死にペニスに食らいつく。周りの男たちは5人に増え、相変わらず鞭の雨を降らせている。身体の中も外も凄まじい苦痛の連続なのに、喉を塞がれて悲鳴すら上げられずに悶絶するしかない七海。

    「うぶぇぐぷむううううううううっ!!!!」

    何分経ったのか、ようやく堀田が喉奥で果てた。七海は酸素不足でほとんど窒息寸前だったが、猛烈な吐き気をどうにか堪える。と、間髪を入れずに次のペニスが口の中に侵入してきた。……結局、堀田+5人全員の精液を飲み干すまでイラマチオと鞭打ちは続いた。全てが終わった時、七海は殆ど失神寸前、腹以外は全身くまなく鞭痕で埋め尽くされ、濃いピンク色に腫れ上がっていた。膨らんだ妊婦腹だけが白く残った状態は、ピンク色の動物の着ぐるみを想像させ、痛々しいと同時に滑稽だった。

    ……堀田は、私立清隷女学園の理事長であった。七海は8ヶ月前の入学式の際に壇上で挨拶する彼を見ており、見覚えがあったのは或いはそのせいかもしれない。だが、一度しか見ていないので記憶は曖昧であり、堀田が自分の通っていた高校の理事長であることに七海は気づかなかった。

    堀田はJSPFの幹部の1人であり、校内に設けた秘密の調教室で自ら女子生徒を調教して、何人もの奴隷をJSPFに提供してきた。今回の件でも、授業中に糞便を漏らして赤面している七海を隠し撮りした動画データを飯森に渡していた他、災害事故後の学園側の対応や七海の退学手続きなどにも関与していたのである。

    因みにメス犬のポチは、現在七海と同じ15歳であるが、同学園中等部の入学式の際に堀田に目を付けられて調教され、JSPFの奴隷となり、その後メス犬に改造された。もし堀田に目を付けられなかったら、七海の同級生になっていたかもしれない……

    堀田は七海を下ろして縄を解くと、七海に部屋の中央まで来るよう命じた。部屋の中央は一段高くなっており、照明に明るく照らされてステージのようになっている。周りは360°観客が囲っていて死角はない。

    ステージの上には、腹も含めて全身鞭打たれてピンク色に染まった奴隷が2人いた。

    1人は七海より若く10歳前後、もう1人は30歳くらいに見える。顔がそっくりだしもしかしたら母娘だろうか。2人の額に彫られた豚の顔の刺青が痛々しい。豚の顔のすぐ下には「母豚」「子豚」と掘られている。彼女たちの鼻にはフックが掛けられ、肛門には豚のしっぽが付いた栓が刺さっていた。

    その母娘らしき奴隷2人、否2匹は、ステージの上で四つん這いになって豚になりきっている。「ぶーぶー」なんて可愛げのある鳴き声ではない。鼻をフガフガと鳴らし、鼻水を垂れ、涎を飛ばしながら半狂乱でステージを無様に駆け回っていた。ステージの周りには男たちと奴隷たちが集まっており、男たちの喝采と嘲笑、奴隷たちの悲痛な溜息が混じって異様な雰囲気だ。七海はあまりに酷い有様に呆然とし、立っていられなくなってステージの前でへたり込んだ。

    「お前もステージに上がれ。奴らみたいに豚になれ」

    堀田は、七海の隣に胡座をかいて座ると、冷たく低い声で七海に命じた。全身を真っ赤に腫らした七海は、顔をさらに赤く染めて震え上がった。いや…… いやっ! 豚って…… あんなの絶対やりたくない! みんな見てるのに!! 恥ずかしすぎて死んじゃうよ!!!

    拒絶の意志を示そうと首を横に振ろうとした時、堀田の手に握られているものを七海は見た。バラ鞭。だが、ただのバラ鞭じゃない。金属のトゲが沢山付いている。トゲは単純な三角ではなくネジのようにギザギザした形状をしていた。あんなんで叩かれたら全身血まみれになって死んじゃうっ! ……真っ赤だった七海の顔が真っ青に凍りつく。やらなきゃ…… 恥ずかしいけどやらなきゃ!!

    逡巡の末に七海は立ち上がった。堀田の反対側に座っている男から鼻フックと豚のしっぽの付いた肛門栓を受け取ると、胸と股間を隠しながらおずおずとステージに上がった。方々から忍び笑いが漏れる。着ぐるみのような七海の姿を見て嘲笑っているのだ。ただでさえ上がり症気味の七海は、顔を身体以上に真っ赤にしてその場に蹲った。すぐに「立て」「隠すな」「とっとと歩け」「豚女」とヤジが飛んでくる。七海は羞恥に身を焦がしながらなんとか立ち上がると、恥部を隠すことなくステージ中央に向かった。

    ……木下家でも散々恥ずかしいことをさせられてきた。だが、同じ男たちと4ヶ月も裸で一緒にいれば羞恥心は薄れる。七海にとっては家での調教よりも、学校での羞恥調教(糞便漏れ)の方が遥かに恥ずかしかった。だが、ここは木下家とも学校とも違う。中央ホールには奴隷が約40人、男がその倍、計120人近くの人間がいる。殆どが知らない人たちだ。彼らを前に、ステージで無様なショーをしろというのだ。ここへ来て9日目だが、こんなのは初めてだった。恥ずかしい。顔の赤みがさらに強まる。みんなこっちを見ている。男たちは調教の手を止めてギラついた顔で凝視している。奴隷たちの多くもチラチラとこちらを見ている。ダメ! 恥ずかしすぎる! 豚の真似だなんてそんな恥ずかしいこと絶対にできない!!

    猛烈な羞恥に襲われた七海は、それでも肛門栓を装着しようとしゃがんだが、そこで止まってしまった。「何してる」「早くしろ」……すかさずヤジが飛んでくる。でも動けない。全身震えているので手に力が入らない。恥ずかしすぎて、鞭打たれた体の表面だけでなく身体の奥が燃えるように熱くて、もうどうにかなっちゃいそう!! ……その時、後ろから静かな声が聞こえた。ヤジが飛び交う中で、それは不思議なほどクリアに七海の耳に届いた。

    「……早くやれ、七海」

    堀田の声。七海は恐る恐る後ろを振り返った。サングラスをしているので顔の表情はわからないが、手にはあの鞭を持っている。 ……やらなきゃ ……恥ずかしいけど、やらなきゃ!!!!

    七海は震える手で鼻フックと肛門栓を装着すると、小声で「ぶーぶー」と鳴き始めた。だがすぐに周囲から罵声を浴びせられ、意を決して鼻を鳴らし始める。

    「フガフガ! ブヒブヒ! プギーッ!」

    恥ずかしい。こんなの恥ずかしすぎる。私、人間なのに。15歳の女の子なのに! 七海は大粒の涙を流しながら鼻を鳴らし、さらに他の2匹の真似をしながらステージ上を駆け回って惨めな豚芸を披露し続けた。

    「もっと豚らしく鳴けよ!」

    客からさらに野次が飛ぶ。すると堀田が空の浣腸器を3本持ってやってきた。自分で空気浣腸して、客に尻を向けて放屁しろというのだ。顔から火が出る。浣腸器を持つ手が震える。涙が止まらない。なんでこんなことしなくちゃならないの? 人前でオナラなんて…… 恥ずかしい! 恥ずかしすぎる! 3匹の豚はステージ中央で野次った客の方に尻を向けて大中小1列に並び、豚のしっぽの付いた栓を外すと、一斉に空気浣腸して同時に放屁した。

    「もっとやれ!」

    客のテンションが上がってくる。3匹は空気浣腸と放屁を何度も繰り返した。6回目の時、七海はオナラだけでなく糞便のカスを飛ばしてしまう。あまりの恥ずかしさにその場にうずくまってしまう七海。だが客は容赦がない。

    「食え! 自分で掃除しろ、豚便所ども!!」

    飛び散らかった糞便を3匹で手を使わずに食べ、また浣腸、放屁。母娘豚が散らかした糞便も3匹で処理…… そんなことが何度も何度も続いた。

    興奮した客の一部がステージに上がってきて3匹をレイプし始めた。七海も膣と肛門を同時に犯される。七海の開発されきった身体が即座に反応していく。

    ステージの中央、衆人環視の下で2穴セックスをする。それだって十分すぎるほど恥ずかしい行為だ。でも乗馬鞭や豚真似よりはマシだ。よく見れば、ステージ下の客たちはショーに飽きたのか自分が選んだ奴隷の調教に戻っていて誰もこっちを見ていない。七海はようやくホッと一息をつき、身体の力を抜いた。とたんに2本の巨根が身体の奥まで侵入してくる。

    「あひゃああっ♥」

    七海は身体がゾクッと震えて思わず声を上げた。信じられないくらい気持ちがよかった。身体の外側は腹以外全身腫れ上がって痛いままだし、口の中は糞便が残って最悪の後味だ。だが、そんなことどうでもよくなるくらい身体の中が熱くて気持ちいい。もっと! もっと強く! もっと激しくして! もっと気持ちよくして!!

    「ああっ♥ んあっ♥ ひゃあっ♥ んあああああっ♥」

    七海は羞恥心を忘れて喘ぎまくった。ほんとに気持ちいい。ずっとセックスしていたい。酷いことされずにこうやってセックスするだけなら、奴隷も悪くない、かも……? 4ヶ月前には2穴セックスが嫌で嫌で堪らなかった七海だが、調教は確実に進んでいるようであった。結局その後はステージの上で14人の男に輪姦されて17時を迎えた。

    夕食は再びカプセルベッドで一斉に食べるのであるが、朝とは逆に、ベッドの外に全員立ちバックの体勢になって首だけ丸穴に入れ、ベッドの中に用意された流動食を食べることになる。外側に並んだ100人以上、200以上の穴は、客や調教師が自由に使うことが可能で、奴隷たちは壁の向こうで膣や肛門を好き勝手犯されながら、1時間以上かけて流動食を啜るのである。

    七海とっては久々の排泄物なしの流動食であった。と言っても残飯と動物の精液とサプリの混合物。味は最低である。

    夕食の最中、壁の向こうでは男たちがやりたい放題だった。七海は膣と肛門に2回ずつ出された他、肛門をフィストファックされながらクリトリスに電マを当てられて何度も潮吹きさせられた。落ち着いて食べる暇もないのだが、流動食の味が最低なので、壁の向こうで色々された方が、気が紛れていいな、と七海は犯されながら思った。

    時間をかけてゆっくり完食し、食後に再度シャワーを浴びると、七海は少人数調教用の個室へと向かった。

     

    III:奴隷9日目 – 夜

     

    19時からは個室での少人数調教である。完全予約制で、調教50分+休憩10分の1時間サイクルを計4回。相手は1人のこともあれば複数のこともあり、奴隷が複数ということもあった。

    相手は千差万別だ。単にセックスして終わりという者もいれば、ひたすら口奉仕ばかり要求する者、虐められることを望む者、中にはディルドーで肛門を突いてくれと言ってくる者もいる。サディスティン(女)が相手のこともある。だが多くの場合、相手はサディスト(男)であり、奴隷はひたすら虐待されることとなる。七海は、今日はもうセックスだけして終わりたいなあと思いながら、個室の扉を開けた。

    1人目の男は蝋燭プレイを望んだ。七海は再び縛られて仰向けに吊るされた。直上には格子状の木組みがあり、そこに赤い蝋燭が括り付けられていた。その数10×10で100本。七海は恐怖で震えが止まらなかった。やがて安全のために目隠しが付けられ、蝋燭に火が付けられる。熱い! 身体中に降り注ぐ蝋の雨! 熱い! ただでさえ集団調教時の鞭打ちで全身腫れ上がって痛いのに。七海は見をくねらせがら絶叫した。だが口を開けると口の中にも容赦なく熱蝋が落ちてくる。絶叫すら満足にできない。七海の身体が白く残ったボテ腹も含めて真っ赤に染まっていく。

    しばらくすると男は七海をうつ伏せにひっくり返し、腹側だけでなく背中側にも蝋を垂らし始めた。熱い。熱くて堪らない。股間や脇の下など、敏感な場所を蝋が直撃するたび、七海は絶叫を上げる。

    男は宙吊り状態の七海を回転させつつ全身蝋まみれにすると、今度は鞭を振るって身体にこびり付いた蝋を剥がしていった。

    もう鞭はやめて!痛い!痛いっ!!赤い蝋化粧の下からピンク色の肌が見えてくる。だが、そうこうしている間も新たな蝋が次々に落ちてくる。蝋・鞭・蝋・鞭…… 時々身体をひっくり返してまた蝋・鞭・蝋・鞭……

    苦痛の連鎖は延々と続き、最後に男が吊られたままの七海の膣に射精して調教は終了した。

     

    20時。2人目の男と一緒に玲香が入ってくる。奴隷2人をご指名のようだ。他の奴隷と一緒に調教を受けるのはこれまでも何度かあったが、玲香とは初めてだ。

    男はスカトロプレイを望んだ。七海と玲香をM字開脚の状態で互いに向かい合うように緊縛拘束し、強炭酸水を直腸内に注入すると肛門同士をチューブで繋いだ。七海の直腸は先程の集団調教で空になっているが、玲香は溜め込んでいたようで、程なくして糞便がチューブを通って七海の体内に侵入してきた。

    そのおぞましい感触。だが、いつも光希の糞便を処理してくれている、もう1人の姉のような存在である玲香の糞便なのだ。おぞましいなどと言ってはバチが当たる。我慢しなくちゃ……! 心はそう思うのだが身体はそうはいかない。七海はすぐに我慢ができなくなり、チューブの中に脱糞した。2人の奴隷の直腸内を汚物が行ったり来たりする。その間に糞便は炭酸と溶け合い、ドロドロの軟便となっていった。

    男はチューブの真ん中あたりをハサミで切り、それぞれを新しいチューブと接続して、反対側の末端を奴隷たちの口に突っ込んだ。七海の口と玲香の肛門が、七海の肛門と玲香の口がチューブで繋がる。七海は途中からこうなるんだろうなと諦めていた。もういいよ、うんちは……。

    やがて、軟便が2人の口に到達した。まずい。苦い。臭い。吐きそう。しかも炭酸が入っていてシュワシュワする。最悪だ。それでもなんとか飲み込もうと四苦八苦する七海。だが、強炭酸の刺激は思った以上に強く、半分ほど飲み込んだところでリバースしてしまった。軟便と、先程食べた流動食の夕食と。それらがチューブを通って玲香の肛門へと殺到する。と同時に、玲香が吐いた汚物が七海の口に流れ込んできた。気持ち悪い。なにこの感じ……! 胃液混じりの吐瀉物は炭酸以上に刺激が強く、直腸は吐瀉物を保持できない。すぐさま吐瀉物が口へと逆流してきた。せっかく久々に糞便なしの夕食だったのに、結局こうなるのか……。七海と玲香は汚物を食べ、吐き戻しのループをひたすら続けた。

    しばらくすると男は2人の口からチューブを外し、今度は七海の口と肛門、玲香の口と肛門を繋いだ。セルフ便器の完成である。汚物はひっきりなしに口と肛門を往復する。チューブの内側は茶色一色に染まり、汚物がどっちへ流れているかすらわからない。

    男は口と肛門が繋がった状態のまま、七海を抱きかかえて膣を犯し、次いで玲香の膣も犯して、2人の中に精液をたっぷりと中出しすると、満足して部屋から出ていった。七海は辛くて悲しくて臭くて不味くて涙が止まらなかった……。

     

    21時。3人目は30代くらいの、アイマスクを着けたボンデージ姿の女だった。JSPFには少数ではあるが女性の会員もいる。ほぼ全員がサディスティンであり、男以上に苛烈に奴隷をいたぶるのだった。

    七海は何だか腹立たしかった。ここでは奴隷は全員女であり、みな酷い扱いを受けている。なのにこの人は、同じ女なのに平気で奴隷に酷いことをするのだ。上級国民だかなんだか知らないが、奴隷の気持ちがわからないのだろうか。自分が奴隷にさせられたらどんな気持ちになるか、想像できないのだろうか。女の前で土下座し、ハイヒールを舐めながら、「奴隷の七海を調教してください、女王様」と言わねばならない屈辱。女から見えないよう顔を背けながら靴を舐めていた七海の両目には、悔し涙が溢れていた。

    だが、そんな思いもすぐに立ち消えた。鞭は…… 痛いのはもうイヤなんだってば!!

    女は七海を後ろ手に縛って三角木馬に乗せた。痛い。股間が裂けそうだ。七海は木下家にいた頃から度々三角木馬に乗せられてきたが、JSPFの木馬は角度がもっと急で、金属製の先端部も鋭く尖っている。猛烈に痛い。七海が震えながら痛みを堪えていると、女はさらに鉄球の付いた足枷を足首に付けてくる。股間がさらにめり込む。震えがさらに大きくなる。肥大化したクリトリスが潰れ、穿たれたピアスが木馬に当たって、震動に合わせて金属音を発する。女は無言のまま七海の腰を両手で掴むと、勢いよく前後に揺さぶり始めた。

    「痛いぃ…… やめてぇ…… いたいよぉっ……!」

    七海が絞り出すように小声でそう言った時、女が乗馬鞭を振るい始めた。しかも女の身体を知り尽くしているのか、脇腹や膝の裏側など、痛い場所、辛い箇所を狙い打ちしてくる。七海は激痛に泣き叫び、鞭から逃げようと身体をくねらせるが、すると今度は股間が木馬に食い込んでしまう。痛くて辛くて、もう発狂してしまいそうだった。

    「ごめんなさい! 許してください、女王様! ごめんなさいぃっ!!」

    なんとか止めてもらおうと、何も悪いことをしていないのに泣きながら謝罪する。だが女はますます興奮し、今度は肥大化して敏感になっている乳首とクリトリスに針を刺し始めた。

    七海は白目を剥き、涙と汗と鼻水と涎と尿と愛液を撒き散らしながら、悲鳴混じりの謝罪の言葉をひたすら叫び続けた。

     

    22時。最後は若い男が3人だった。男3人との4P。七海は安堵した。身体はクタクタなので、3人を相手するのは正直キツいが、痛いのや苦しいのよりはいい。七海は男3人に身を任せつつ、今日最後の快楽を味わおうと思っていた。

    全身をリラックスさせて膣と肛門を貫くペニスの感触を楽しみ、口に入ってきたペニスも激しくしゃぶることなく舌で転がした。フワフワと気持ちよくて、なんだかこのまま眠ってしまいそうだった。

    急に男たちが動きを止めた。

    「お前、ナめてるだろ」

    怒気を含んだ低い声だ。

    「奴隷の分際で奉仕を忘れて快楽に耽るとは良いご身分だな、ええ?」

    「風俗嬢でももっとちゃんと奉仕するぞ。人間以下の奴隷のくせに」

    「お仕置きが必要だな」

    七海の顔が青ざめる。しまった!と思った時には既に手遅れだった。

    手は後ろ手に縛られ、猛烈な勢いでまたもイラマチオが始まった。膣と肛門にはトゲ付きのペニスサックを付けたペニスが突っ込まれ、こちらも凄まじい勢いで暴れ出す。喉と膣壁と直腸壁がゴリゴリと削られる。膣と直腸の間の粘膜がメチャクチャに引っ張られる。これまでに鞭を打たれ蝋を垂らされ針を刺されて既に真っ赤に腫れ上がっている肥大化乳首がメチャクチャに握り潰される。痛い。ものすごく痛い。

    七海は苦痛に堪えながらも後悔していた。もっとちゃんと奉仕していれば…… ごめんなさい。3人目の女の時と違って、今度は本当に謝りたかった。だがしゃべることなど到底不可能だった。若い男は体力がある。ペニスも飯森より長く太く硬い。そんな剛棒で喉を激しく突かれたら、しゃべるどころか呼吸すらできない。七海は顔を紫色に染めながらひたすら暴虐に耐えた。それでもなんとか奉仕しようと、必死に舌を動かし腰を振ったが、激昂した男たちは気づいていないようだった。

    しばらくして、七海が男のペニスに歯を当ててしまった。意識が朦朧とする中で、舌を無理に動かしていたのが却って仇になったようだ。男は怒り狂い、さらに激しく喉を突き回す。反射的に胃の中の汚物が逆流してくるが、剛棒に遮られて嘔吐すらできない。極限の苦痛。もはや舌を動かすことも忘れ、白目を剥き、殆ど気絶状態の七海。男たちは、そんな瀕死の七海をこの後20分に亘って責め続けたのだった。

    やがて終了の時刻が来ると、男たちはボロ雑巾のように七海を床の上に投げ捨て、最後に捨て台詞を吐いて部屋から出ていった。

    「奉仕の手を抜いた罰とちんぽを噛んだ罰として、明日の朝メシと晩メシはウンコ入りだ!」

    七海は床の上に蹲りながら、呆然とその言葉を聞いていた。泣きたかったが涙はもう涸れていた。

     

    23時。全ての調教が終わった。七海は疲労の極みにあった。可能ならこのまま意識を手放して眠ってしまいたい。だが、このままここで寝たらさらなる罰が待っている。七海はなんとか立ち上がると、ふらつきながらヨロヨロと部屋を出た。

    途中、同じようにフラフラな状態の奴隷たちと合流しながら、どうにかベッドまで辿り着くと、横になった瞬間意識を失った。夢は……見なかった。

     

    IV:奴隷14日目 〜肉便器の日〜

     

    1月1日、元旦。新たな年を祝うめでたい日であるが、奴隷たちにとっては1年のうちで最も過酷な1日である。

    JSPFでは、毎月1日は「肉便器の日」となっている。通常の4時間×3回の調教は全て中止となり、JSPF内にいる全奴隷(メス犬を除く)が終日「肉便器」となるのだ。奴隷たちは施設のあちこちに「設置」され、朝8時から夜23時まで15時間ぶっ通しで会員客に使われ続けるのだ。特に1月1日は、世間では正月休みとなるためJSPFを訪れる会員客の数も他の月とは比べ物にならないほど多く、奴隷たちにとっては1年で最悪の日なのであった。

    七海にとっては、ここに来て最初の肉便器の日が元旦となってしまった。元旦だろうがいつもと変わらない糞便入りの流動食をカプセルベッドで食べながら、七海は不安で押し潰されそうだった。玲香から、この日はヤバい、死ぬほどヤバい、ヘトヘトで指1本動かせなくなるなどと散々言われてきたのだ。何をするんだろう。何をさせられるんだろう……

    その頃、玲香もメス犬区画9号室でペロの身体を洗いながら、いつになく深刻な顔をしていた。肉便器の日は雑用係の仕事も特殊だ。朝8時までに担当のメス犬の洗浄を終え、3回分の流動食を用意したら、すぐに上階に戻らねばならない。 ……やがてペロとポチの世話を終えると、玲香は深い溜息をつきながらメス犬区画を後にし、暗い顔で暗い階段を上っていった。

     

    8時になると、七海は肉便器になった。集団調教が行われる中央ホールから男性用トイレに向かう廊下の壁際に、洋式便器が2mおきに10基ほど設置され、右から3番目が七海の持ち場だった。

    七海以外の奴隷たちは、便器に腰掛けて大股開きで股間を見せつけたり、便器に手をついて尻を高く突き出したりしながら、必死にアピールし始めた。七海も便器に腰掛けて股を開き、顔を真っ赤にしながら両手で膣を開いて、通りがかった男たちに向かって腰をくねらせていく。恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。だが、使用回数が一定数に満たなかった者には厳しいお仕置きが待っており、使用回数が最も少なかった者には恐ろしい罰が与えられるのだ(その内容を奴隷たちは知らない)。恥ずかしいなどと言っていられなかった。

    七海の隣の幼女奴隷の肛門を男が突き始め、反対側の熟女奴隷の口を別の男が責め始めた。ダメ! このままじゃお仕置きになっちゃうっ! ……七海は右手で膣を掻き回しながら左手で肥大化乳首を刺激し、さらに激しく腰を振りつつ、通りがかった男たちに声をかけて誘惑し始めた。

    「どうか…… どうか私にもおちんぽをお恵みください…… ここに来てまだ半月ですが、精いっぱい肉便器奉仕させていただきます…… あぁぁ…… お願いします…… 誰か私のこと、使ってぇ……!」

    恥ずかしすぎて気絶してしまいそうだ。男たちにレイプされるのは慣れてしまったが、こちらからレイプしてくれ、使ってくれと懇願するだなんて。しかも周りには大勢の人がいるのに……!

    3分くらい必死にアピールをしていたら、ようやく男が寄ってきた。30代くらいの見知らぬ男だ。

    「あの…… お客様…… 私、七海っていいます。お願いです。私の穴、もうぐちょぐちょです。どの穴でもいいですから使ってください。ご奉仕させてください。お願いします……!」

    七海は顔を真っ赤にさせながら、人見知りの自分をかなぐり捨てて、男の目を見ながら猛アピールした。男の顔には侮蔑と嘲笑が浮かんでおり、七海はさらなる羞恥に身を焦がしたが、それでも泣きながら自分をレイプしてくれと懇願した。男は七海の無様すぎるアピールを堪能してから、無言のまま七海の膣にペニスを突き入れた。

    「んああああっ! ありがとうございます! あり……んがああああああっ!!?」

    選んでくれた礼を言おうとした七海に対し、男はいきなり高速でピストンを開始する。便器に言葉は不要とばかりに右手で七海の顔を乱暴に掴み、左手で七海の肥大化乳首を握りながら、猛烈な勢いでペニスを抽送し、数分後には膣の最奥に大量の精液を放った。

    「はぁ…… はぁ…… ありがとうございます、お客様…… おちんぽを掃除させて……んぼおおっ!!?」

    男は、中出し後に奴隷が言うことを義務付けられている挨拶を七海が言い終わる前に、七海の口内に乱暴にペニスを突っ込むと、数回ピストンして汚れを舌や上顎になすり付け、何も言わずに去っていった。

    「ううううううっ!!」

    七海は、あまりの屈辱に思わず嗚咽を漏らした。何も言われなかった。一言もなかった。完全にモノ扱い。便器扱い。これが肉便器。これを夜まで繰り返す。1日じゅう繰り返す! こんなの…… こんなのあんまりだよ……!!

    だが、悲嘆に暮れてばかりもいられない。こんなペースではノルマの半分にも届かない。隣の幼女も熟女も、3つの穴で3本のペニスに奉仕している。 ……このままじゃダメっ!!

    七海は小さな便器の上に仰向けに寝そべると、背を反らしてブリッジのような体勢になった。身体の硬い七海には辛い格好だが、七海は口を大きく開けて舌を出し、両手の人差し指と中指を精液まみれの膣に突っ込んで激しく掻き回しながら、ひたすら通りがかった男たちに媚を売っていった。

    すぐに中年男3人組が七海を使い始めた。七海は、背中の一部を便器に預けた状態で、腰を曲げて下半身を天に向かって突き出し、両手を床に付けて身体を支える。そんな無理な体勢の七海の膣と肛門と口を、男たちは激しく犯していく。体重を無理やり支えている背中や腕が激しく軋んで悲鳴を上げる。痛い。辛い。息苦しい。だが膣と肛門からはそれ以上の快感が押し寄せてくる。七海はもうわけがわからなくなって、数分後には3人と同時に絶頂した。

    2時間後、廊下に並んだ10体の肉便器は、いずれも白濁液にまみれていた。と、そこへ玲香ともう1人、雑用係がやって来た。

    ここは今から清掃するから男性用トイレに行ってくれと言う。七海は荒い息を吐きながら、他の9人とともに近くのトイレへと向かった。

    トイレの中は肉便器と男たちでごった返していた。10個ある小便器には10体の肉便器の尻が嵌まり込み、6個ある大便器にも6体の肉便器が嵌まっていた。これじゃ使ってもらえないよ。時間が無駄になっちゃう……

    トイレの入口から最も遠い大便器では、近頃増長が目に余るようになってきたとある奴隷が懲罰を受けていた。大便器に頭を埋め込まれて顔面で男たちの糞便を受けながら、腹部に刺青を入れられていた。

    その奴隷の顔面に思いっきり糞便を放出した飯森は、大便器から出たところで所在なげに辺りを見渡している七海を発見し、後ろから手を掴んで有無を言わさず押し倒した。

    「ご、ご主人様っ!」

    「よう肉便器。楽しんでるようだな」

    「…………」(楽しいわけ……ない)

    「1発、ヌいてくか」

    飯森は床に仰向けになった七海の足を開き、正常位の体位で、白濁まみれのペニスを白濁まみれの膣に挿入した。

    「んんっ…… んあっ ひぅっ! ああん!」

    「おっ! だいぶいい感じじゃないか、肉便器」

    「…………」(せめて名前で呼んでよ……)

    「にしても、お前とこの体位で繋がると、いつもあの日を思い出すなぁ!」

    「んっ! くっ!」

    「お前も覚えてるだろ? あの夏の日を」

    「……はい」(忘れられるわけない……)

    飯森が突然そんなことを言い出すものだから、処女を失ったあの日のことを、七海も思い出してしまった。痛くて苦しくて不快で、ただひたすらに怖かったあの時の記憶。記憶の中の体位と同じ。同じ位置に飯森がいて、同じように汗や唾液を撒き散らし、同じように七海を犯している。

    ……なのに。痛くない。苦しくない。怖くない。気持ちいい。もうすっかり慣れてしまった。肉便器としてトイレの中で犯されるのは流石に抵抗があるが、正常位で飯森に犯されることに全く抵抗がない。驚くほどなかった。気持ち良くて気持ち良くて、気を抜いたら大声で喘いでしまいそうだ。

    「あれから4ヶ月半か…… だいぶ奴隷が板に付いてきたじゃないか。なあ、肉便器」

    「……んぐっ!」

    「だが、まだまだだな。お前は俺に嫌々従っている…… そうだろ?」

    「……んひっ!」

    「ふん! いつか必ずお前の心を手に入れてやる! 心の底から服従させてやるからな!!」

    そう言いながら、飯森は七海を犯していく。トイレの床には様々な人間の様々な体液が飛び散っており、七海の背中にそれらがどんどん付着していく。泡立った汚液がネチャネチャと不快な音を発する。周りを見渡せば、小便器にも大便器にも奴隷が埋め込まれて男たちに陵辱されている。あまりにおぞましい光景。その中に自分もいて、伯父に陵辱されているという絶望的な状況。

    嫌悪、恐怖、絶望。だが七海の心の奥底には、それらとは異なるものが生まれていた。「それ」は、七海が木下家で調教されていた頃から無意識的に芽生え始めていたのだが、JSPFに連れて来られてからは日に日に膨張していった。それ…… マゾヒストの血。被虐願望。もっと犯して、もっと汚して、もっと辱めて痛めつけて苦しめて、もっと酷いことして。そう思う自分がいる。 ……確かにいる。

    今もそうだ。背中が汚液まみれになっていく状況に嫌悪する自分と、興奮する自分。トイレの中で大勢の奴隷たちと一緒に陵辱されることに絶望する自分と、興奮する自分。あの日と同じように飯森を憎む自分と、そうでない自分……!

    七海は、心の中にいるもう1人の自分が、かつてないほど大きく膨らんでいることに内心困惑していた。こんな状況、楽しくない。飯森は、楽しんでいるようだな、なんて勝手なこと言ってたけど…… 全然楽しくない。楽しいなんてことあるはずない! ……でも、熱い。身体の芯が熱い。身体の奥底から何か熱いものがこみ上げてくる。興奮し、発汗し、なんとも言いようのない高揚感に支配される。膣穴から来る肉体的快楽とは異なる何かが、七海の身体を満たし、精神を支配し、脳を痺れさせる。熱い! ダメ! 我慢できない! 気持ちいいっ!!

    「ああっ! んあああ♥ ひゃああっ♥ ふあああああっ♥」

    七海は、未だかつてない快楽と興奮に包まれ、恥も外聞もなく大声で喘ぎだした。

    「いいぞ七海! もっと乱れろ! もっと大きな声を出せ! もっとだ!」

    飯森はさらにピストンを速め、言葉で七海を煽っていく。どうやら七海の中で、膣穴快楽以外の何かが暴れているようだ。これは好機だ! もっともっと暴れさせねば……!!

    奴隷を服従させようとする場合、セックスによる肉体的快楽と同等、或いはそれ以上に重要となるのが被虐による精神的快楽だ。被虐的行為に快感を覚え、さらには依存していくことで、奴隷は自分を卑下し主人に服従することに、倒錯的な快感を覚えるようになっていく。これが絶対服従への第一歩だ。もっとも、絶対服従のためには他にも必要なものがあり、それなしにただ快楽に依存させても、出来上がるのは単なる淫乱女ということになりかねないのだが。

    「なんだ? 気持ち良いのか? 汚れたトイレの床の上で肉便器として犯されて、こんなのが良いのか? 最低だな、肉便器! 最低のマゾ女だ!!」

    「ちがううっ♥ わらひ、そんなんじゃ…… ひゃうっ♥」

    「違うもんか! お前はマゾだ! 汚されて、酷いことされて、それで感じる最低のマゾ肉便器だ!!」

    「いやあっ♥ ちがう♥ ちがうっ♥ そんなんちがううっ♥ あああああっ♥♥」

    「そら、イけ! 無様にイけ! 肉便器に相応しく便所の床の上で汚らしくイき晒せ!!」

    「やああっ♥ イくっ♥ イっちゃううううっ♥ いやああああああああっ♥♥」

    「俺も出すぞ! 七海ぃっ!!」

    「あああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

    2人は同時に達した。混雑するトイレの中、七海はかつてないほど大きな声で深く長い絶頂を迎えた。

    七海はこれまでに何度も何度もセックスの快楽を味わってきた。飯森やペロとのセックス、調教師や客たちとの乱交。七海は幾度も絶頂し、時に気絶するほど深い快感を味わってきた。だが今日、七海は初めて、セックスの肉体的快楽とともにマゾの精神的快楽によって絶頂した。七海の中にマゾの血が明確に宿ったのだ。

    飯森は七海にペニスの汚れを掃除させると、ニヤついた邪悪な顔でトイレから出ていった。ついに、ついに七海がマゾ快楽に目覚め始めたのだ。これを喜ばずにいられようか! ……飯森は早速明日からの調教スケジュールを練り始めた。

     

    狭いトイレの中で大きな声を出していた七海は男たちの注目の的で、七海はさっそく男たちに3つの穴をもみくちゃにされた。七海は輪姦の快感に翻弄されながらも、トイレの中でこんな目に遭っている肉便器の自分に対して別種の快感を覚え、身体がどんどん熱くなって何度も何度も絶頂に達した。

    しばらくして小便器が空くと、小便器に尻を嵌め込まされて、男たちの小便と精液を口で処理させられた。

    大便器が空くと、大便器の中に浮かぶ堀田理事長の糞便を食べながら、彼に後ろから肛門を犯された。

    飲尿も食糞もだんだん慣れてきたものの、それでも苦手な七海だったが、今日はそれだけではなかった。本物の「便器」になってしまった自分に興奮していた。そして、そんな自分を明確に認識し、しかしそんな自分に激しく幻滅し嫌悪しながら、それでも身体と精神が高揚して気が付くと絶頂に達してしまうのだった。

    最低…… 私、最低! うんち食べて気持ち良くなるなんて! 最っ低!! でもイく! 苦くてマズくて最低で…… なのに気持ちいい! ケツまんこもいい! 便器になっちゃった自分に興奮する! なんで? なんで!? 気持ちいい! 最低! ああイく! イくっ!! イっくううううううううっ!!!!

    ……その後七海は、トイレの中で4時間を過ごした。途中昼食の時間となり、七海は男に命令されるまま流動食を浣腸器に流し入れ、梢(隣のカプセルベッドの奴隷)の直腸に自ら流動食を流し込むと、肛門に直接口を付けて糞便ごと食べていった。

    続いて七海の糞便入り流動食を梢の口に放出。普段昼食休憩は1時間あるのだが、今日は食べ終わったら即座に2穴責めが始まり、梢と並んで犯されるのだった。

    ……一番奥の大便器では懲罰が未だ続いていた。身体のあちこちに刺青を掘られ、髪を刈られ、脳細胞の破壊を伴うほど激烈な媚薬を注射されたその奴隷は、身体と心をメチャクチャに破壊されながら、これまでとは比較にならないほど激しい絶頂をひたすら繰り返していた。

     

    午後からは、いつも集団調教が行われている中央ホールに移動させられた。大部屋の壁一面に洋式便器が等間隔に20基以上置かれていて、右端から6番目が七海の場所だった。

    男が便器に座って七海を使ったり、七海が便器に座って男に使われたり。果ては洋式便器の中に頭を突っ込んだ状態でバックから犯されたり。夜になるまで、ありとあらゆる体位でひたすらセックスし続けた。

    午後5時になると、50代の紳士風の男が便器の中に糞便を出し、その上に夕食の流動食をぶち撒けた。七海は後ろ手に縛られたまま便器の中に顔を突っ込んで、その男に膣穴を犯されながら夕食を摂った。

    七海は夕食中も夕食後も絶え間なく犯され続け、膣も肛門も開きっぱなし。身体はありとあらゆる体液で汚れ、異臭を放っていた。

    夜は奴隷用のボットン便所に設置された。もはや洋式便器もなく、8畳程度の部屋に20人の奴隷が押し込まれ、その倍以上の数の男たちにひたすら陵辱された。その中には雑用係の玲香もいた。七海は朝からの連続輪姦・連続絶頂でもうフラフラの状態だったが、それでも男たちは容赦なく3穴を犯し、締まりが悪いと言って尻を平手打ちしたり首を絞めたりするのだった。

    男も女も直腸の中は空の者が大半だったが、中には玲香のように午後まで清掃を続けて夜から肉便器になった雑用係が4名おり、男たちは彼女たちの肛門にペニスを挿入して温泉浣腸を施した。

    奴隷4名がボットン便所の穴の部分に後頭部を嵌め込みつつ仰向けに寝かせられ、雑用係たちは彼女たちの顔の真上で下痢便をぶち撒けていく。

    玲香の下痢便を受けたのは、七海だった。

    23時。ようやく肉便器の日が終わった。七海は349本のペニスを処理して、ノルマを達成した。だが、もう立ち上がる体力すら残っていなかった。肉便器の日だけは、奴隷たちはカプセルベッドに戻らずその場で眠っていいことになっている。七海はボットン便所の穴に後頭部が嵌まった状態で顔じゅう糞尿まみれのまま気を失い、そのまま朝まで一度も起きなかった。七海の顔や髪に付着した下痢便は、ぽたりぽたりと少しずつ穴の中へ落ちていった。

    ……初夢は見なかった。

     

    V:奴隷15日目 〜マゾの覚醒〜

     

    翌1月2日。午前の姉妹同時調教の時間が始まると、飯森は早速七海を鞭打ちにした。鉄は熱いうちに打て。七海がマゾに目覚めつつある今が、畳み掛ける好機なのだ。

    飯森は七海の両手を縄で縛って天井から垂れる鎖に引っ掛け、爪先立ちで辛うじて地面に足が付く程度に七海を吊るし上げた。昨日の疲労が抜けきっていない七海は、鞭打ちを始める前から鎖に体重を預けてダラリとしている。その尻に、飯森は鞭を一閃浴びせた。

    パァァァン!!

    「ひぐうううううううっ!!」

    9号室に乾いた鞭音が鳴り、直後に七海の苦悶の声が響き渡る。ダラリとしていた身体が急に跳ね上がる。10秒くらい余韻を味わわせたところで、2発目は撫でる程度。3発目も4発目も。そして5発目は全力で。緩急を付けながら、飯森はゆっくりと七海に鞭の味を覚えさせていく。

    七海はこれまでにも鞭を浴び続けてきた。木下家でもJSPFでも毎日、山のように。

    だが今日のように1発1発ゆっくりじっくり味わわせるような打ち方ではなく、全身の肌が腫れ上がるまでひたすら乱打・メッタ打ちにするというものが多かった。痛みのあまり絶頂しながら失禁・失神することは何度かあったが、それは鞭打ちに快感を覚えたわけでもなんでもなく、あまりに強い刺激に七海の脳がエラーを起こして、全身痙攣を起こしながら頭が真っ白になり、失神とともに尿道括約筋を始め全身の筋肉が弛緩してしまっただけである。

    だが、この方法を続けても痛みを快感に変える術を身に付けさせることは難しい。順序が逆だからだ。まずは奴隷が鞭の痛みに精神的快感を覚えるよう調教し、それを繰り返すことで脳は精神的快感を肉体的快感と誤認・錯覚するようになり、やがては痛みを快感に直接変換できるまでになる。さらに進めば、全身メッタ打ちにされて絶頂を繰り返すようになるだろう。

    その最初の段階、精神的快感、即ちマゾの被虐快楽を得るためには、通常のSMプレイであれば、主人役と奴隷役の間の信頼関係が不可欠となるのだが、飯森と七海の関係は断じて「役」などではない。プレイ=お遊びでもない。飯森は絶対的master、七海は絶対的slave。そこにあるのは絶対的主従関係であって、信頼関係など一切存在しないのだ。七海は未だ飯森に絶対服従を誓ってはいないし、信頼などカケラもしていない。

    中には、服従心も信頼関係も無くとも、虐待行為を続けるだけで勝手にマゾに目覚めていく自虐癖を持った女もいることを、飯森は長年の経験から知っているのだが、少なくとも七海はそういう女ではなかったし、木下家で調教してきた間も、セックスの快楽には比較的早く順応したものの、マゾの精神的快感の方はなかなか体得しなかった。

    そういう女に対して必要になるのが恐怖による支配だ。ここに来る前も、来た後も、飯森はひたすら暴力的に七海を支配してきた。そして鞭の乱打を毎日のように浴びせて強い恐怖を与え続けるとともに、鞭打ちという行為に慣れさせ、さらには奴隷にとって鞭打ちは基本という「常識」を七海の中に植え付けさせてきたのだ。

    だが恐怖だけでは上手くいかない。過度のストレスから精神崩壊に追い込まれるリスクも高い。そこで飯森は、七海に「アメ」をほぼ与えることなく、「ムチ」の加減をコントロールしながら、七海が鞭打ち以外でマゾに目覚める日を辛抱強く待っていたのである。

    そして昨日、トイレの汚い床の上で飯森に犯されながら、七海はついにマゾに目覚めた。

    ……打撃の瞬間、七海は鋭い痛みに全身を硬直させる。普段なら間髪を入れずに次が来るのだが、今日は来ない。いつ来るかと身構えているのだが、ペチペチと何度か軽く叩かれるだけ。その間に痛みがだんだんと引いてくる。身体も心も弛緩してくる。そこにようやく次の打撃がやってくるのだ。

    痛みの蓄積がないぶん、痛みは普段より格段に少なく、七海の中に色々なことを考える余裕が生じる。これまではただひたすら激痛に耐えるのみで何かを考える余裕などなかったのに。 ……昨日の疲労が抜けきらず頭もボーッとしてはいたが、七海はひとつひとつの痛みを味わいながら、色々と考え始めた。

    痛い。痛いけど、いつもほどじゃない。いつもは全身に力を入れて、ひたすら暴虐が過ぎ去るのを待つだけだけど、今日は全身クタクタでそもそも身体に力が入らない。

    弛緩した身体に鞭が当たると、その瞬間鋭い痛みが走って全身がパッと緊張し、徐々に弛緩して鈍い痛みに戻る。その繰り返し。そして、次の強打までの間にペチペチと軽く叩かれる。激痛が来るかと思ったら肩透かしを食らう。そして次の強打はいつだろうと身構えるように、待つように、待ち焦がれるようになる。次なる痛みへの不安と、……期待。

    なんかセックスに似てる気がすると、七海はぼんやり思った。ご主人様のおちんぽで子宮口をグイッと突かれるとゾクッてなって、抜かれるとふんわり余韻が残る、あの感じ。もうこれ以上凌辱されるのは嫌だという気持ちと、もっと突いて欲しい、気持ちよくしてほしいとつい期待してしまう気持ち、自分の中で相反する2つの感情がせめぎ合うあの感じ。 ……似てる、かも?

    いつも鞭打ちの時は、ひたすら力みまくってるだけだったから全然気づかなかった……

    唐突に、七海は子供の頃に家族と行った遊園地で、姉と乗ったジェットコースターを思い出した。七海はあれが大の苦手だった。姉に付き合って一緒に乗ったものの、終始目を瞑り、安全バーを全力で握り締めて、内臓がふわりと持ち上がる不快な感覚に耐えながら、ただただコースターが止まるのを待ち続けた。隣の姉は全身の力を抜き、バンザイしながらキャーキャー叫びまくってスリルを満喫していたようだが、七海には何が楽しいのかさっぱりわからなかった。

    ……同じことなのかもしれない。力んで縮こまって我慢ばっかりしているから、いつまで経っても怖いままなのかも。だってほら、怖くない。痛いけど怖くない。痛いけどなんか違う。力んでる時の痛みと、どこか違う。いつもの痛みなのにいつもと違う。熱い。打たれたところが痛くて熱くて…… でもなんか、身体の奥も熱い。すごく熱い。なんだろうこの感じ。熱くて、ゾクゾクして、気持ち…………

    そんなわけない! 痛いのが気持ちいいなんてそんなこと! でもなんか変。身体が変。鞭を打たれたところじゃなくて、身体の奥が変……! 昨日と一緒だ。汚いトイレで犯されて、うんちを山ほど食べさせられて…… あの時と同じ。身体が熱い。モヤモヤする。フワフワしてゾクゾクする。興奮……してるの? ホントに……気持ちいいの? イヤなのに! 鞭で打たれるの、大っ嫌いなのに! なんで? なんで気持ちいいの? 私、こんなことされて気持ちよくなっちゃうの? そんな最低な人間なの!? 身体が熱い!! 熱いっ!!! 気持ち、いいっ!!!!

    「ふあああああああああっ!!!!」

    声色が変わった。明らかに変わった。飯森はニヤリと笑った。ついに! ついに!! ……飯森は鞭打ちのペースを徐々に上げていきながら、昨日のトイレの時と同じように七海を煽っていく。

    「なんだ? 気持ち良さそうな声を上げて…… こんなのが良いのか? 七海っ!」

    「ちがっ! ちがうっ!! んああああっ!!」

    「そうだよなぁ。鞭打ちで感じるなんて最低の変態マゾくらいだ。お前はそんなんじゃないもんなぁ」

    「そうっ! わたしっ…… ヘンタイなんかじゃ…… ひゃあああっ!!」

    「だが、お前の大好きなお姉ちゃんは鞭打ちだけで無様に潮を噴くぞ?」

    「あううう…… ひゃんっ!!」

    「あいつは最低の変態マゾ犬だからな!」

    「ああああっ!! んぐあああっ!!」

    「なあ、ペロ。そうだろ?」

    「…………」

    ペロは床の上に座りながら七海が鞭打たれるところを見ていた。疲労の極みにある七海をペロは心配し、そんな七海を容赦なく鞭打つ飯森にペロは激しい怒りを感じていた。だが、何か言えば鞭打ちのペースが上がるかもしれないと思うと、ペロは何も言えなかった。ただ妹の悲鳴を聞くことしかできなかった。

    そして、七海の声色が変わった。表情も明らかに変わった。それが意味することを、ペロは正確に理解した。

    七海と再会して以降、午前中は毎日七海と一緒に飯森の調教を受けてきたが、七海は自分と違って鞭打ちに快感を覚えてはいないみたいだった。ペロは、鞭でイきまくる変態マゾなのは自分だけなのかと自己嫌悪に陥る一方、七海も感じるようになればラクになれるのにと内心ずっと思ってきた。

    そして今、七海がついにマゾに目覚めつつある。ペロには痛いほどわかった。

    ペロが未だ光希だった頃、自分もどれだけ鞭打ちされても痛いだけだったし、ひたすら我慢し続けていた。だがメス犬ペロとなり、全てを諦めて全身の力が抜けた瞬間、光希はマゾに目覚めたのだ。

    あの瞬間を愛する妹が今まさに経験している。人間木下七海から、マゾ奴隷七海に落ちようとしている。そう思うと悲しくて仕方がなかった。だが同時に、身体の奥が熱くなるのを感じていた。 ……最低だ、私。

    「あああ…… おねえちゃぁん…… ひあぁあああ……♥」

    七海もまた姉の方を見つめていた。姉は七海と違って鞭でイき、蝋燭でイき、果ては頬をビンタされただけでイっていた。なぜ痛みだけであんなにも激しくイきまくるのか、七海には理解できなかった。が、今ではわかる。こんなに…… こんなに気持ちよかったんだっ!

    「あああっ♥ ひああっ♥ あがああっ♥」

    「おいおい! それじゃあセックスの時と変わらんじゃないか! そんなに良いのか? この変態! 変態マゾ!!」

    「ちがうぅ♥ わたし…… ちがうよぉっ♥ ぅあああっ♥」

    「違わんさ! 昨日と同じだ! お前はトイレで便器扱いされて、クソ食わされて、全身真っ赤になるまで鞭打たれて、酷いことされて気持ち良くなる最低の変態だ! 変態マゾ奴隷だ!!」

    「いやあああっ!! そんなんじゃないのぉっ!! んああああああっ♥」

    「ふん! 説得力皆無だぞ! そら! もっと速めてやる! もっと狂え! 感じろ! マゾ豚っ!!」

    「ああああああっ!! 痛い! 痛い! 痛いいいいいっ♥」

    いつの間にか鞭打ちのスピードは普段と同じくらいになっていた。ペチペチ叩きを挟むこともなく、ひたすら強打の乱舞が続いた。だが七海は力むことなく弛緩したまま、爪先立ちの状態で鎖に全体重を預けながら、鞭の痛みを堪能していた。痛いのに。痛くて堪らないのに。身体の表面の鞭跡よりも、むしろ身体の奥底から熱と快楽がまるで間欠泉のように噴き出してくる。気持ちいい! 痛くて気持ちいい!! 最低!! もっとぶって!! 叩いて!! 最低の私の身体、もっとメチャクチャにしてぇっ!!!

    「うあぁああぁあああぁああああああぁああああああああああっ!!!!」

    嵐のような快感がついに爆発する。潮を撒き散らし、涙と涎と鼻水を飛ばしながら、七海は激烈な絶頂を味わった。膣や肛門、クリトリスや乳首がもたらす快感とは全く別種の快感が、七海の身体を嵐のように駆け抜けていく。痛くて辛くて苦しくて…… そして最高に気持ちいい!!!!

    「ひぁ…… うぅ…… はひゅ…………」

    七海は生まれて初めて鞭打ちのみで絶頂し、同時に体力の限界を迎えてストンと意識を失った。

    ついに、ついに七海がマゾに目覚めた! 目覚めさせた! 飯森は射精にも似た充足感を存分に味わった。 ……否、まだだ。まだ足りない。今すぐ七海の穴にぶち込みたい! 七海の悲鳴を聞いてギンギンに勃ち上がっている己の欲棒を、七海の穴という穴に……!!

    だが、さすがに体力の限界だろう。午後からは集団調教もあるし、これ以上の負担は七海にも腹の中の胎児にも悪影響を与えるに違いない。飯森は気絶している七海を犯し抜きたい欲望をどうにか抑え込むと、七海を放置したまま、その辺に転がっているメス犬の穴で性欲処理を始めるのだった。

     

  • ハードSM小説『奴隷姉妹』 第2章 – 再会

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    I:JSPF

     

    JSPF (Japan Sex-Slave Production Factory)。そこは、ワケありの女や純粋無垢の少女を拉致監禁して性奴隷に調教しては、毎月開催されるオークションで売り捌く、日本最大の会員制総合奴隷生産施設である。その他にも、全国の奴隷所有者が自分の奴隷を持ち寄って交流・品評したり、海外の姉妹施設やそれらを統括するWSPFと奴隷を交換したり、主人の求めに応じて奴隷に様々な肉体改造を施したり、使用済みの奴隷を引き取って処分したりと、様々な闇ビジネスを展開していた。会員名簿には政官業学の大物や暴力団のトップが名を連ね、弁護士や警察・検察といった司法関係者の名も多数載っていた。その存在が表に出ることは決して無い日本の闇、それがJSPFなのだ。

    飯森もこのJSPFの会員だった。会員になりたての頃は、JSPFで調教された奴隷に施設内で奉仕してもらうのみだったのだが、そこで調教のノウハウを身につけた飯森は、次第に施設の外で女を自ら調教するようになっていった。調教終了後は奴隷を施設に移して他の会員とシェアし、使えなくなった奴隷は処分してもらう。そのようにして、飯森はこれまでに8名の女を奴隷に堕としてきた。うち2名は、木下家で雑務を行っていたメイドたちである。

    飯森が次に狙いを定めたのが姪の光希・七海姉妹、特に幼少の頃から溺愛していた七海だった。いや、いつの日か七海を奴隷にしたい、その欲望ゆえに飯森はJSPFに入って調教のノウハウを学んだのだ。彼にとっては七海の調教こそが本命なのである。

    そしてJSPFの助けも借りて、災害事故に見せかけて七海の両親を抹殺し、光希を拉致することに成功した飯森は、サポートの見返りにJSPFに光希を献上した上で、JSPFの調教師たちとともに4ヶ月に亘って七海を調教してきた。……そう。これまで飯森とともに木下家で七海を陵辱してきたのは、全員JSPF専属の調教師たちだったのだ。因みに、彼らは調教中に奴隷を妊娠させないよう全員パイプカットされている(無論そのことを七海は知らない)。

    七海はこの4ヶ月、飯森と調教のプロ5名にひたすら調教され続けてきたわけだが、一般住宅でやれることには限度がある。そこで調教設備の整ったJSPFで彼女にさらなる調教を施すとともに、他の会員に彼女を披露して、大勢で嬲りものにする。それが飯森の考える「次のステップ」なのだった。そして最終的には…………

     

    地下駐車場に車を駐めると、すぐに黒いスーツに身を包んだ女性が1人現れた。

    彼女は飯森に深々と頭を下げて挨拶すると、トランクからキャリーケースを出し、ケースを引きずりながら飯森をエレベーターへと案内する。JSPFは地下100mの旧炭鉱跡地に建設されており、エレベーターでそこまで降りていくのだ

    エレベーターの中で突然女性が服を脱ぎだした。ジャケットとYシャツ、スラックスの下は下着を一切身につけておらず、あっという間に全裸になる。肌にうっすらと残る鞭痕が痛々しい。

    女性、いや女は、JSPF専属の奴隷であった。厳しい調教の末に施設の雑用係に選ばれたのだ。だが、どんなに些細なものであってもミスを犯せば過酷な懲罰が課せられ、大失敗などしようものなら即座に係を外されて便所行き…… そんな哀れな存在であった。雑用係であろうと奴隷の衣装は首輪だけ。駐車場は外の世界であるから外用の格好をする必要があるが、施設内では奴隷は奴隷の格好をせねばならない。ここではそれは当たり前のことであり、飯森も平然としている。奴隷女が自ら首輪を嵌め、脱いだ服を腕にかけ、靴を手に持ったところでエレベーターの扉が開いた。

    奴隷女は飯森を控室へ案内すると、飯森から鍵を受け取ってキャリーケースから七海を出し、部屋の中にあるガラス張りのバスルームへと彼女を連れて行って全身をくまなく洗い始めた。肛門栓も外して直腸内も綺麗に洗う。テーブルに用意されているワインを飲みながら、その様をニヤニヤと観察する飯森。

    七海は混乱していた。いきなりキャリーケースに詰め込まれて真っ暗闇の中で何時間かを過ごし(絶えず振動するのでどこかへ運ばれているのだろうと想像はしていた)、やっとケースが開いたと思ったら知らない場所で、見ず知らずの全裸の女性にガラス張りの風呂へ連れて行かれたのだ。何がどうなっているのか。

    「玲香です。はじめまして」

    女性はそう名乗ると、七海の全身を洗い始めた。

    「えっと…… き、木下七海です。あの、自分で洗いますので……」

    「命令ですから」

    命令……。玲香の首には、七海が着けている革製の首輪よりも遥かに頑丈そうな鋼鉄の首輪が嵌まっている。とすると、この人も自分と似たような境遇なのだろうか。

    玲香が肛門栓を外した瞬間、強い糞便臭が周囲に漂った。さらに浣腸を数度行って腸内の洗浄を行ったが、最初の1回には糞便が大量に混じっており、強烈な悪臭が辺りに立ち込めた。初めて会う女性の前でそのような醜態を晒すのは、七海にとって顔から火が出るほど恥ずかしかったが、玲香は臭いに慣れているのか気にしていない様子だった。

    やがて身体の内も外も綺麗になり、ドライヤーで髪を乾かしてもらった七海は、玲香に促されてバスルームを出た。すると飯森がこれからの七海の生活について話し始めた。

    もう家には帰れないこと。ここは七海のような奴隷のための施設であり、他にも奴隷が沢山いて、玲香もまた奴隷であること。七海はこれからここで飯森と、これまで以上に大勢の男たちに調教されること。……光希と一緒に。

    暗澹たる思いで自分の運命を聞いていた七海は、姉の名を聞いた瞬間、目の色を変えた。他のことなど一気にどうでもよくなった。光希? 光希って言った? おねえちゃん!? おねえちゃんに会えるの!!?

    両親とともに濁流に流されて行方不明になった姉。奇跡の生還を必死に祈りつつも、下流か、最悪海まで流されて溺れ死んでしまったのだろうと心のどこかで覚悟していた。それが生きていると知って、どんなに嬉しかったことだろう。

    誰にも相談することなく過酷な日々に耐えてきたのも、バラしたり反抗したりすれば姉を殺すと飯森に脅迫されていたからだ。唯一の肉親となってしまった姉の存在は、七海にとって伯父への憎悪や過酷な調教よりも遥かに大きなものとなっていた。その姉に会えるのだ。

    姉はこの施設で調教されてきたのだろうか。でも、リビングで見せられた調教動画の中の姉は、どんなに酷いことをされても心は以前のままだった。私だって耐えられたんだから、おねえちゃんだって大丈夫に違いない。おねえちゃんと一緒なら辛い調教にも耐えていけるだろうし、隙を見て逃げ出すことも可能かもしれない。

    やっと光希おねえちゃんに会える。あの日、警官が木下家を訪れてから4ヶ月、ずっと闇の檻に閉じ込められていた自分に、やっと希望の光が灯されたのだ…… 七海はそう思った。

    玲香を控室に残し、2人は入ってきたドアとは反対側のドアから外に出た。外は長い廊下で、床には絨毯が敷き詰めてあった。七海は全裸に首輪のみ、伯父もまた全裸。フカフカの絨毯の感触が素足に気持ちいい。

    廊下の両側には一定の間隔で同じような扉が並んでいる。どうやら控室が沢山あるらしい。扉にも壁にもガラスは一切なく、扉の向こうの様子を窺い知ることはできないが、たまに扉が開いて裸の男女のペアが出てくる。女の方はやはり首輪を付けており、七海のように立って歩いている者もいれば、犬のように四つん這いになっている者もいた。飯森と七海は彼らとともに廊下を歩いていく。その異常な光景に、七海は胸や股間を隠すことも忘れ、飯森の後ろをただ従いていくことしかできなかった。

    長い廊下の突き当り。正面の大きな扉が自動で開く。とたんに何人もの奴隷の嬌声や悲鳴が方々から聞こえてきた。様々な体液が混ざりあった淫臭も漂ってくる。

    ……男たちに3つの穴を犯されている10代の少女。逆さに吊るされて鞭でメッタ打ちにされながらイラマチオされている20代の女。

    その向こうでは、30代の妊婦(母)と10歳以下であろう幼女(娘)が69の体勢で精液まみれの互いの膣穴を舐めさせられ、2人の肛門を男たちが猛然と突きまくっていた。

    他にも、男に肛門を犯されながら他の男の肛門を必死に舐め回している女児や、犬のしっぽを付けて四つん這いで駆け回っている身重の少女、膣と肛門に巨漢の豪腕を突っ込まれて泣き叫んでいる熟女もいる。

    頭よりも大きな乳房に針を何十本も刺されて絶叫を上げている女や、頭髪のないスキンヘッドに小便を引っ掛けられている女、股間にペニスらしきものを生やした女までいた。

    殆どは日本人のようだが、中には白人や黒人も数名いた。

    女は3~40人くらい、男はその倍以上いるだろうか。女の首には全員同じ首輪が付けられていた。七海と同じ首輪が。

    そこは集団調教用の中央ホールであった。

    呆然と立ち尽くす七海。あまりの光景に声も出ない。

    この4ヶ月、七海は飯森と調教師たちに徹底的に調教されてきたし、姉の調教映像も嫌というほど見せられてきたが、他の奴隷が調教されるところを生で見るのは初めてだった。しかもこんな大勢! 自分より遥かに若い…… ていうか幼い女の子まで!!

    「今日はここには用はない。奥に行くぞ」

    絶句する七海に対し、飯森は至って冷静な顔でそう言うと、疲労困憊して床に転がっている奴隷たちをわざと踏みつけながら、入ってきた扉とは別の扉の方へと進んでいく。七海は奴隷たちを避けながら、「今日は」ってことはいずれ自分もここで酷いことをされるんだ…… と絶望的な気持ちで飯森の後に従いていった。

    扉の向こうは再び長い廊下が続いていた。左右の壁には先程と同様に一定間隔で扉が並んでいたが、先程と違ってガラスがふんだんに使われていて、中の様子が丸見えだった。調教用の個室。中では少数の男が少数の奴隷を責めたり奉仕させたりしていた。中央ホールほどのインパクトはなかったが、各部屋には何に使うのかわからない器具が大量に置いてあり、奴隷たちの嬌声や悲鳴も漏れ聞こえてきた。七海は震えながら飯森の後を追った。

    廊下の一番奥まで進むと、今度は鉄の扉があった。扉の脇に設置された端末で飯森が虹彩認証を行うと、重たい鉄扉がゆっくりと開いていく。中は下り階段が続いていた。七海は飯森に促されて暗く長い階段を降りていく。階段の終点には再び認証システムを備えた鉄扉があり、その向こうにはまた廊下と左右に並んだ扉。ガラスは一切なく、控室や調教室の廊下と比べて空気は重く淀み、コンクリートの床は冷たく、照明も暗く陰鬱としていた。しばらく廊下を進んだ飯森は、「9」と書かれた部屋の前で三度生体認証を行い、扉を開けた。

     

    II:再会

     

    部屋の中に光希がいた。

    七海は姉の名を叫ぼうとし、同時に駆け寄ろうとした。できなかった。全身がガクガクと震え、歯がガチガチと鳴る。立っていられなかった。声も出せなかった。七海は崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。

    ……「それ」はもはやヒトではなかった。手足は二の腕と腿の中程から先が無かった。乳首とクリトリスはまるでペニスのように醜く肥大化していて、しかも大きなピアスが刺さっていた。乳房も以前の2倍以上に膨らんでいる。小麦色に日焼けしていた肌は真っ白になり、その白い身体のあちこちに卑猥な刺青が施され、全身至るところミミズ腫れで真っ赤。あちこち内出血しているのか紫色や黒色も見える。そして尻には大きな焼印が左右に1つずつ、「ペ」「ロ」と。

    肛門はいびつな形状のまま開きっぱなしで、軟便がポタポタと垂れ落ちて異臭を放っている。そんな状態で、「それ」は犬のように四つん這いで立ち、犬用のエサ入れに入った粥状の茶色い物体をグチャグチャと食べ散らかしていた。よく見ると口の中には歯が1本も無く、舌が異様に長かった……

    顔面は蒼白、限界まで目を見開き、涙や声を出すことも、瞬きや呼吸すら忘れて。七海は最愛の姉を、光希を、ただ凝視することしかできなかった。そんな七海を間近で観察しながら、飯森のペニスは今にも射精しそうなほどギンギンに勃起していた。ああ、この顔、この表情! これが見たかったんだ、これが! 理不尽な暴虐を受け続けてきた七海に唯一残されていた希望の光。それが今、タールのように重く粘つく絶望に飲み込まれ、押し潰され、かき消されたのだ! なんて哀れで醜くて愛おしくて可愛らしい顔なんだ! さあ、どうする! 七海!! そして光希は!! どうする!!?

    エサを食べ終わり、飛び散ったエサも舌で綺麗に舐め取った「それ」は、気配を感じて2人の方を向いた。そして2人のうちの1人が、最愛の妹・七海であることに気づいた。

    光希はあの日、両親とスポーツ用品店に買い物に出掛けた。そして買い物が終わって駐車場に駐められた車に乗ろうとした瞬間、隣に駐まっていたバンの扉が開き、中から出てきた男たちにスタンガンを浴びせられて気絶、そのまま拉致されたのだった。

    気がつくと光希はJSPFの調教室にいて、全裸で拘束されていた。すぐさま全裸の男たちが寄ってきて、次の瞬間には膣と肛門の処女を失っていた。

    そしてJSPF専属の奴隷となるべく過酷な調教が始まった。

    だが、光希が屈することは決してなかった。膣や肛門での性交は、回数を重ねるごとに快感が増していったが、彼女はそれを不屈の精神でねじ伏せた。長時間の調教でどんなに疲れ果てていても、ペニスが口に入ってくるたびに噛みついた。顎に筋弛緩剤を投与されていたので、ペニスが千切れることはなかったものの、血が出たことは何度もある。そのたびに激しく折檻されたが、気絶と覚醒を繰り返しながらも彼女はひたすら耐え続けた。

    光希の心の支え、それは家族であった。両親はとても優しかったが、同時にとても高潔で曲がったことが嫌いで正義感に溢れた人たちだった。妹は前者を強く受け継いでいたが、姉は後者を強く受け継いでいた。そんな両親のことだ。必ずや自分を探し出してくれるに違いない。妹も、気弱なところはあるが芯はとても強い子だ。警察や学校に相談して、私立探偵とかも雇って、いつかここから救い出しれくれるはず。それまで耐えるんだ。もしくは逃げる。どっちかだ。奴隷になんか死んでもなるもんか!!

    光希は隙を見つけては施設内の構造を調べ上げ、綿密な計画を立てた。そして拉致から49日目、ついに逃亡を図った。だが、光希の身体にはマイクロチップが埋められており、施設内に張り巡らされた監視カメラとセンサーの網から逃れることは不可能だった。彼女は即座に捕まり、脱走未遂と奉仕拒否の罪で四肢切断・抜歯等(麻酔なし)の刑に処された。

    1ヶ月後、傷が癒えて目を醒ました光希は、驚愕の事実を知らされた。両親と妹が乗った車が増水した川に転落して流され、3人とも死亡したというのだ。両親の水死体の写真を見た彼女は、写真に妹が写っていないことには気づかず、3人とも死んだものと思い込んだ。手足と歯を失ったショックも重なり、号泣・絶叫・狂乱の末、彼女はついに陥落した。

    それから2ヶ月近く。奴隷以上に過酷な調教を経て、かつての勇猛果敢・不撓不屈の心は完全に消え失せ、「それ」はペニス狂いの変態犬になり果てていた。歯のない口で大便混じりの流動食を頬張り、ペニスにむしゃぶりつくと夢中で精液や小便を飲み干した。括約筋が切れた肛門からは軟便が常に垂れ落ちるようになったが、床が便で汚れるたびに喜んで舐め取った。手足を切られた他のメス犬と、肥大化した乳首やクリトリスを互いの穴に挿れ合ったり、膀胱や壊れた肛門に長くなった舌をねじ込んで、糞尿を直接啜り合ったりした。歯を失い舌が伸びたために不明瞭な発音しかできなくなったが、ペニスや鞭、精液や糞尿を求めて必死に男たちに媚びへつらった。

    男たちは「それ」を「ペロ」と呼んだ。男のペニスに巻き付き、奴隷の肛門を舐めねぶる下品で浅ましい舌を持つ家畜以下の淫乱メス犬・ペロ。光希という名で呼ぶ者はいなくなり、ペロはその名を忘れかけていた。

    ……ペロは、死んだと思っていた七海が目の前に現れて動揺していた。なんで? なんで七海がここにいるの? なんで裸? 首輪? 刺青? それに一緒にいるのは……則夫おじさん!? なんで!!? 次々に疑問が湧いてくる。その問いに答えるべく、ペロの止まっていた脳細胞が急速に動き出した。

    ペロは以前男たちに見せられた両親の水死体の写真を思い出していた。両親は変わり果てた姿ではあったが、生前の面影を残しており、写真は確かに本物であると思われた。しかしその写真に七海は写っていなかった。妹も溺死したと聞かされてはいたが、その時は両親の水死体の写真を見たショックと、手足や歯を失ったショックで頭が回らず、何の証拠もないまま妹の死をも受け入れてしまっていたのだ。

    自分はなんて馬鹿だったんだろう。犯罪者たちの言うことを真に受けるだなんて。七海が生きてた! 七海が! 私の大切な大切な妹が! ……ん? 待って? 七海が生きてたってことは、男たちが嘘をついてたってこと。じゃああの写真自体も嘘なのでは? パソコンで両親の写真を水死体のように加工した? 私の心を砕くために? ……だとしたら、お父さんもお母さんも生きているかもしれない……!

    妹が生きていた。両親も無事かもしれない。それは、ペロに……光希にとって手足を失って以来初めて灯された希望の光だった。家族を、手足を、全ての希望を失って、光希はペロとして惨めに生きていくことを受け入れた。だが、希望は消えてなどいなかったのだ! 七海が生きていたんだから! 死んだような光希の目にかつての輝きが戻りつつあった。

    だが、話は感動の再会だけでは終わらない。なぜここに七海と則夫おじさんがいるのか? ……そんなの決まってる。ここにいる女は多少の例外を除けば全員奴隷であり、男はJSPFの会員客かスタッフしかいないのだから。七海は則夫おじさんの奴隷になったのだろうか。姉と、恐らく両親もいなくなって、孤独と悲しみの中にいる七海を強姦し、陵辱し、調教してきたというのか。大好きな母の兄であり、幼い頃から見知っている則夫おじさんが、まさかそんな卑劣な悪党だったなんて。衝撃とともに激しい怒りがこみ上げてくる。

    だが、それよりも何よりもまずは七海だ。私のような目には絶対に遭わせたくない。絶対に! 七海は優しい子だが、芯は強いものを持っている。私を連れてここから脱走しようと試みるかもしれない。だがそれだけは絶対にダメだ。七海の手足だけは何が何でも守らねば……!

    あれだけ念入りに下調べしたのに、あっさり監視網に引っかかってしまったのだ。この施設からの脱走は不可能だと思った方がいい。だが、この施設で奴隷を続けたとしても、いつかは限界が来て処分されるのが奴隷の運命だ。手足をもがれて自分のようにメス犬になるか、便所に繋がれて便器になるか、拷問の上に惨殺されるか。いずれにせよ未来はない。以前客の1人がそんなことを言っていた。ならば選択肢は1つしかない。調教によってあらゆる奉仕技術を身につけて完璧な奴隷となり、JSPF主催の奴隷オークションで誰かに落札されるのだ。新たな飼い主は残忍な男かもしれないが、取り敢えずJSPFから離れることができれば、逃亡のチャンスが生まれるかもしれない。それに賭けるしかない!

    自分はこんな身体になってしまったし、外の世界でマトモな生活を送ることはもうできないだろう。それにメス犬生活にも慣れてしまった。ならばせめて七海だけでも外に出すのだ。外に出て、飼い主から逃げ出して、両親と再会して、警察と協力して、この施設を探し出してくれたら、もしかしたら私も…… いや、私のことなんてどうでもいい。七海をこの狂った施設から出すことだけを考えるんだ。そのためには七海が、少なくとも表面上は完璧な奴隷になってないといけないが、どうなのだろう。七海と則夫おじさんはどういう関係なのか。七海のお腹が若干膨らんでいるように見えるが、妊娠しているのだろうか? だとしたら則夫おじさんの子? それとも……??

    光希は、犬のように惨めな格好のまま、肛門から液便が滴り落ちるのも忘れて、ひたすら考えた。その目はもはや下劣なメス犬ペロのものではなくなっていた。

    飯森は興奮しながらも、姉妹を注意深く観察していた。妹の方は姉の変わり果てた姿に呆然としているだけのようだが、姉の方は、入室直後には曇った目でエサを食べ散らかしていたのが、妹の姿を見た途端、雰囲気がガラッと変わり、その瞳に光を取り戻しつつあるように見える。茫然自失の妹とは対照的に、猛烈な勢いで何かを考えているようだ……。

    もともと、飯森は姉の光希にはさほど興味がなかった。それ故、七海奴隷化計画にJSPFが協力する見返りに、あっさりと光希を献上した。その後は七海の調教にかかり切りだったので、光希に会いに行くこともなく、JSPFから毎日送られてくる光希の調教動画を七海の調教に利用してきた。飯森は、自分に従わなければ光希を殺すとの脅迫をベースにして七海を調教してきたため、光希が無事であるという証拠映像を、定期的に七海に見せる必要があったのだ。

    ところが、光希は献上の49日後(9月中旬)に脱走を図り、四肢切断・抜歯の刑になってしまった。そのため飯森は、1ヶ月強の分の動画を切り貼りして七海に見せることになった。幸いマルチアングルの映像素材は大量にあり、編集すれば半年くらいは誤魔化せそうであった。もともと飯森は、半年くらい七海を木下家で調教したらJSPFに移すつもりだったので特に問題は無かったのだが……。

    10月中旬、飯森はあのアイディアを思い付く。そう、七海が自室の鏡の前で泣いているところを盗み見ながらメイドに口奉仕させていた、あの時だ。七海をもっと泣かせたい。もっと悲しませたい。そのためには……そうか、メス犬化した光希に会わせれば良いのだ! 最愛の姉の変わり果てた姿を見たら、いったい七海はどんな顔をするだろう。どんな可愛い声で泣いてくれるだろう……! ああ、早く見たい、早く聴きたい! 半年も待てない! よし、七海の調教を速めよう!!

    飯森は当初、七海の肛門拡張が進んできたら、ストッパーの付いた玉葱型のプラグを用いてさらなる拡張を行い、オムツも履かせる予定でいた。それを円筒形に変更してオムツも禁止にした。これによって七海は徐々に学園内で居場所を無くしていき、逆に飯森に対する依存を深めていった。そして1ヶ月少し経った11月の終わりに七海の学園生活は崩壊し、今日、12月18日、木下家で行える調教を全て終えて、飯森は七海を連れて計画より2ヶ月早くこのJSPFにやってきたというわけだ。

    ……それにしても、ペロの目の輝きはどうだ。光希がペロになって以降の映像も飯森のもとに定期的に送られてきたため、飯森はペロの死んだような目を知っている。それなのに。……恐らく、死んだと思っていた妹が目の前に現れて歓喜しているに違いない。だが、ペロの顔を見ていると、どうもそれだけではないようだ。

    姉妹2人がともに助かるためには、自分1人では満足に動くこともままならなくなってしまったペロを、七海が抱きかかえて脱走するしかない。七海はそう考えるだろう。が、ペロはそれが不可能であることを、身を以て知っている。脱走に失敗して、愛する妹までもが自分と同じ状態になることをペロは最も恐れるだろう。それを回避するためには、七海も脱走を諦めて奴隷としてここで生きていくしかない。ペロは姉として妹をそう説得するのではないだろうか。

    JSPFの会則で、脱走を試みた者は例外なく四肢切断の刑と決まっている。一介の会員でしかない飯森にそれを覆す権限などない。だが飯森としては、四肢を断つのであれば自分の好きなタイミングで、しかも自分自身の手で行いたかった。そのためには七海が脱走するような事態だけは避けねばならない。そのための心理的抑止策、それがペロによる説得であり、2人を会わせたもう1つの理由であった。

    ただし、もしもペロの精神が完全に崩壊していて、七海に会っても無反応だった場合、説得どころか、七海の方も廃人化してしまう恐れもある。なぜなら、七海が今日まで調教に耐えてきたのは、全て姉のためだったからだ。その唯一の心の支えが死んだも等しい状態だと知ったら、七海も同じような状態になってしまうかもしれない。……七海が廃人化してしまったら元も子もない。これまでの調教が全て無駄になってしまう。

    JSPFから送られてくる映像や、調教師たちに聞いた情報をまとめた結果、ペロはメス犬として卑屈に振る舞っているものの、心の中には未だ正常な思考力や判断力が残っていると飯森は確信していた。が、確証はなかった。七海が壊れてしまうリスクがゼロではない以上、2人を会わせるのは飯森にとって大きな賭けでもあった。そして、ペロの目を見る限り……どうやら賭けに勝ったようだ。

    ホッと胸を撫で下ろしつつ、飯森はさらに思考を巡らせた。七海が厳しい調教の末にJSPF専属の奴隷になったとしても、奴隷の末路は悲惨なものだ。パイプカットしているのはJSPF専属の調教師だけなので、奴隷は会員客とのセックス(中出しが基本)によってあっという間に妊娠する。そうして日々の被虐調教や折檻に加えて無理な妊娠出産を繰り返すことで、奴隷の肉体や精神は徐々に磨り減っていく。身も心もボロボロになった奴隷を指名する者は減り、やがては使い道がなくなる。そうなったら処分だ。ペロのように手足を短く切断されてメス犬にされるか、根元から四肢を絶たれて便所に繋がれ糞尿を貪る便器となるか、酷虐な会員たちの手で全身を斬り裂かれて人肉料理の材料となり果てるか。つまり、逃げ出そうが留まろうが奴隷の未来は最終的には同じなのだ。

    そうならないためには、奴隷オークションで落札されて個人所有の奴隷となり、JSPFの外に出るしかない。恐らくペロはそこまで考えているだろう。JSPFから脱走するのは不可能だが、個人奴隷となってJSPFの外に出れば逃げ出すことも可能かもしれないと。……奴隷の身体に埋め込まれているマイクロチップにはGPSセンサーも搭載されているので世界中どこにも逃げ場はないが。

    だが、七海はJSPF所属の奴隷ではない。飯森所有の奴隷なのだ。木下家では出来ないような本格的な調教と肉体改造を行うために七海をJSPFに連れてきた。七海を手放す気など毛頭ないし、オークションにかける予定もない。七海は飯森の奴隷としてここでひたすら調教を受け、肉体を改造され、飯森の子を孕み、身も心もボロボロになるまでここで生きていくのだ。メス犬ペロとともに……

     

    III:姉妹調教

     

    七海はしゃがみこんだまま呆然とし、光希と飯森はそれぞれ頭の中で思考を巡らす。しばしの時が流れた。沈黙を破ったのは七海だった。

    「おねえちゃん…… ひっく…… 光希おねえちゃぁん……!」

    我に返った七海は、大粒の涙を流しながらか細い声で姉を呼び、短くなった4つ足で犬のように立っている姉のもとへとゆっくり近づいていった。

    「おねえちゃんっ!!」

    七海は小さくなってしまった姉をそっと抱き起こすと、力いっぱい抱きしめた。そして割れんばかりの大声で号泣し始めた。

    「おねえちゃ…… そんな…… こんなことに…… うわあああああああん!!」

    「七海…… 七海……!」

    感極まったのか、光希の目からも涙がポロポロとこぼれ落ちる。あの日、七海を1人家に残して両親とスポーツ用品店に出かけたあの時から4ヶ月。まさかこんなことになるなんて。

    抱きついてきた七海の身体は以前よりもかなり痩せ、肋骨があらわになっている。逆に乳首とクリトリスが(光希ほどではないが)異様に膨れ上がり、刺青の掘られた腹はほんの少しだけ膨らんでいた。

    「七海、なぜあなたがここに…… なぜ則夫おじさんが一緒なの? そのお腹……」

    わかりきっている。卑劣な伯父によって奴隷にさせられ孕まされ、ここに連れてこられたのだ。そうに決まっている。それでも光希は聞かずにはいられない。なぜこんなことになったのか。伯父はどう関わっているのか。私たちはこれからどうなるのか……! だが、七海は緊張の糸が解れたのか、赤子のようにただひたすら泣き続けるばかりだった。

    飯森は限界だった。身体の興奮を抑えるために色々と考えを巡らせてはみたが、最愛の七海のこんな可愛い泣き声を聞かされては堪らない。ペニスがはちきれんばかりに勃起して痛いくらいだ。もう我慢できない……!

    飯森はペロを抱きしめている七海の後ろに回り込むと、光希ごと七海を押し倒した。

    そして予告なく七海の肛門にペニスをねじ込むと、猛然と腰を振り始めた。

    「ああぁああああぁあああああああぁあああああああああ!!!!」

    突然のことで、大声を張り上げる七海。七海と一緒に押し倒された光希も、驚いて七海の背後を見る。そこには、これまで見たこともないような、醜く興奮しきった伯父の顔があった。

    「あああああああああああああああっ!!!」

    「ちょっと! 何やってるんですか!」

    何をやってるって、セックスに決まってる。七海の中におちんぽを挿れたんだ……!

    「おじさん! 七海から離れて! 離れなさいっ!!」

    ……飯森に聞く気はないようだ。飯森は本気の全力でピストンしているのか、肉と肉が激しくぶつかり合い、パンパンという音が薄暗い地下室に響き渡る。

    「ああっ! あんっ! やめっ! ご主人様っ! ケツ穴っ! おちんぽっ! ひあああっ!」

    いつの間にか、七海の声は悲鳴から嬌声へと変わっていた。ご主人様、ケツ穴、おちんぽ……。光希は察した。妹は既に伯父に隷属しているのだ。心の底から隷従しているわけではなさそうだが、少なくとも伯父をご主人様と呼ぶことに抵抗はないようだ。以前なら絶対使わなかったような下品な言葉を発し、前戯なしに肛門にペニスを挿れられてすぐさま喘ぎ声を上げる。それほどまでに七海は心と身体を開発させられてしまっているのだ。

    「あひゃあっ! もっと…… もっとゆっくりっ…… ご主じ……んああああっ!!」

    光希は目の前の七海の顔を見た。

    初めて見る顔だった。姉に再会できた喜び、姉の身体をメチャクチャに壊されたことへの怒りと悲しみ、今後への不安、そしてそれら全てを押し流してしまうほどの圧倒的な快感。汗と涙と鼻水と涎を垂らして喘ぐ七海。その歪みきった淫らなメスの顔。胸に目を移せば、痛々しいほどに腫れ上がった乳首が、控えめだが卑猥な刺青が施された乳房と一緒にブラブラと揺れている。あまりに悲しい妹の醜態。見ていられなくなった光希は、自らの顔を憎悪と憤怒に染めて、後方の飯森を睨みつけた。

    40を過ぎてもなお美人だった母とあまりにかけ離れた醜悪な顔。ブサイクだった祖父に似た飯森と、美人だった祖母に似た母。見た目は大きく異なるが、それでもよく見れば目鼻立ちがどことなく似ていて、母の面影が少しだけある。それが余計に腹立たしい。こいつが。母の旧姓と同じ名字を持つこの汚らしい男が、愛しい妹をこんなふうにしたんだ。自分がここで酷い目に遭っている4ヶ月の間、こいつが七海を……!

    「許せない……!」

    光希は低く呟いた。すると、これまで光希のことを無視していた飯森が、光希の方に顔を向けた。この世のものとは思えないほど醜く、そして残忍な笑みを浮かべていた。

    「おいペロ! こいつのまんこにお前のクリちんぽを突っ込んでやれ!」

    「はぁっ!?」

    「よっと…… これで挿れやすくなっただろ」

    「そ、そんなこと…… そんなことできるわけないでしょ!? 七海の…… 妹の中にだなんて!」

    「いいのか? そんなこと言って……」

    「…………?」

    「俺はお前がここに連れてこられたのと同じ日にこいつの処女を奪ったんだ。それ以来、お前らの家で毎日朝から晩まで調教して俺の奴隷に…… ペットにしてやった」

    「なっ……!」

    「だがお前らの家でやれることには限りがあるからな。こっちに引っ越してきたってわけだ。こいつにさらなる調教と、肉体改造を施すためにな!」

    「か 改造!? いったい何をする気!?」

    「さぁな…… いいからとっととこいつを犯せ。言うことが聞けないのならこいつの手足を斬ってお前と同じ姿に改造してやるぞ。もちろん麻酔なしでな!」

    「!!!! ダメ!! それだけはダメっ!!」

    「なら早くしろ。お前がいつも他のメス犬と交尾する時のように、実の妹を犯しまくるんだ!」

    「くぅ…………」

    私と同じめに遭う!? あの痛みを……麻酔なしで手足を斬られるあのおぞしい痛みを、七海が!!? ありえない!! 絶っ対にダメ!! やらなきゃ!! やらなきゃっ!!!

    「七海…… ごめんっ!!」

    「おねえちゃ……んあああああああっ!!?」

    飯森の巨根ほどではないが、包皮を剥ぎ取られ、長さ12cm・直径4cmにまで膨れ上がったピアスだらけのクリトリスを、光希は七海の膣に挿入した。

    敏感なクリペニスが締め付けられ、すぐさま快楽の波が押し寄せる。だが光希は悲しくて悔しくて仕方がなかった。自分のクリトリスがこんなふうになってしまったことが。伯父の言いなりになって最愛の妹の膣を犯していることが。妹の膣の中が気持ちよくて堪らないことが……!

    目の前に快楽に歪む七海の顔がある。光希は目を背け、自らはあまり動かずに伯父の動きにそっと合わせていた。それでも信じられないくらい七海の膣は気持ちよかった。

    「おいペロ! 他のメス犬と交尾する時のようにと言っただろ! 忘れたのか!!」

    「くっ! いやよ、そんなの……!」

    「そら、こうやるんだよ!」

    飯森はリモコンを手にして、近くの壁に埋め込まれている大型モニターの電源を付けた。幾つかボタン操作をした後に映し出されたのは……。

    「いやあああああっ! やめてっ! 消してええええええっ!!」

    2匹のメス犬が交尾していた。犯されている方は10代半ばくらい、犯している方は光希……ペロだった。正常位のスタイルで猛然と腰を振るペロ。その下で犯される少女。どちらも手足は短く、肛門には巨大な栓がしてあり、その先端には犬のしっぽが付いている。まさに犬の交尾だった。

    その光景自体も異様だが、何より目を引くのは2匹の顔だ。顔を醜く歪ませ、長い舌をダラダラと伸ばし、唾液やら何やら体液を撒き散らす……そこには人間らしさの欠片もなかった。

    『はっ! はっ! どう!? ポチ! んあっ! ペロのおちんぽっ! 気持ちいいっ!? ポチのおまんこいいよぉ! もっとっ! もっと犯したげるね? あひゃぁっ!!』

    『わんっ! おまんこいいっ! もっと! ペロ、もっとぉっ! わぁんっ!!』

    喋っている言葉も知性がまるで感じられない。野良犬が人間の言葉を喋れたら、交尾中或いはこんなことを喚いているのかもしれない。そんなことを思わせるような、下品で卑しく浅ましい会話だった。

    七海はショックを受けていた。姉の姿は変わり果ててしまったが、これまでのところ姉の言動は以前と少しも変わっていなかった。なのに何なんだろう、この無様な生き物は。見るに堪えない。おぞましい。こんなのが、おねえちゃん? 木下光希? みんなの憧れで、私の憧れで、文武両道、爽やかで凛々しくて潔癖で、だけど誰よりも優しい大好きなおねえちゃん……?

    「気持ち悪い……」

    七海はボソッと呟いた。肛門を激しく犯されて余裕がない中、ついこぼれてしまった本音だった。

    「いやぁっ!! 見ないで!! 七海!! 見ちゃだめええええっ!!!」

    七海の下で短い四肢をばたつかせながら必死に暴れる光希。その動きがクリペニスを通じて七海の膣へと伝わり、新たな快感を生み始める。

    「ちょ…っ! おねえちゃ… 動いちゃだめ…! あんっ!」

    「もっと激しく動け、ペロ。メス犬の交尾ってやつを妹に見せてやれ!」

    「いやああっ! そんなん絶対っ! だめえええええええええっ!!」

    「やれ!! 七海をポチと同じ身体にしてやろうか!!」

    「ひいっ!!」

    「!!!!」

    暴れていた光希は、急におとなしくなると、10秒くらいの間をおいて再び動き始めた。七海は、モニターの中で姉に犯されている少女と同じ姿にしてやるという飯森の言葉に怯えつつも、目の前の姉の顔をじっと見ていた。否、目が離せなかった。

    憧れの姉の顔がみるみる崩れていく。瞳の輝きが濁っていく。頬が弛緩し、鼻がひくつき、口からは長い舌が垂れ下がって涎が溢れ出始めた。

    「七海ぃ! はっ! ななみっ! はっ!」

    声からも理性が失われていく。人間木下光希からメス犬ペロへ。ペロは不自由な身体を器用に動かし、飯森の動きに合わせながら猛烈な勢いで妹の膣を犯し始めた。

    「はぁっ! おねえちゃん! やめ…あひゃあっ! やめて… らめえっ! あああああっ!!」

    大好きな姉のあまりの変わりように、七海は大きなショックを受けつつも、2穴同時責めに身体は敏感に反応し、あっという間に絶頂してしまう。

    「おおっ! もうイッたのか! いいぞ七海、イキまくれ! ペロ! もっと激しく突いてやれっ!」

    「はっ! はっ! …はいっ! んあっ! ひうっ!」

    「待ってっ! いまイッてるとこ… んひゃぁっ! 動かないで… だめっ! 休ませてぇっ!」

    「いいよっ! 七海のおまんこっ! 気持ちいいよ! はっ! 七海ぃ…!」

    絶頂している間も容赦なく責められる七海。容赦なく責め続けるペロと飯森。絶頂が治まる頃にはまた次のピークが押し寄せてきて、数秒の後に再び絶頂する。しまいには絶頂しっぱなしになる。終わりのない絶頂地獄。その中で七海の顔も次第に崩れていった。

    「あひゃあっ♥ おねえひゃ……ああんっ♥ あたひ…… ああああっ♥」

    妹の涎が姉の顔面に降り注ぐ。これまでに聞いたことのないような甘い喘ぎ声が耳に入ってくる。緩みきった七海の顔は、モニターの中の自分やポチの顔にそっくりで、ペロは悲しくて泣きそうだった。だが悲しみに浸る暇などありはしない。連続絶頂により七海の膣は常に痙攣しながらペロの敏感なクリペニスを強く締め付け、粘膜の向こうで暴れている飯森のペニスも間断なくクリを刺激してくる。ペロは自分も絶頂しそうになるのを懸命に堪えながら、腰をさらに激しく振った。

    「ああぁあああああぁあああああぁああああああああああああっ!!!!」

    七海は言葉を発することすらできずに絶頂の渦の中で奇声を上げるばかり。飯森もペロも限界が近いのか、さらに動きが加速する。

    「イくぞ、七海! ケツに出すぞ! ケツ穴で全部飲み干せっ!! 七海ぃっ!!!」

    「「あああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」」

    飯森が果てるとともに、姉妹も同時に絶頂した。

    ペロは全身が痙攣するほどの深く長い絶頂を味わった。七海は何度目かわからない絶頂だったが、潮と尿を激しく撒き散らしながら、目の前が真っ白になるほどの強烈なオーガズムに見舞われた。

    飯森は未だ震えている下半身に力を入れ、七海の肛門からペニスを引き抜いた。途端に大量の白濁液が溢れ出す。いつもの5倍以上は出ただろうか。10代の頃でもこんなに大量に射精したことなどない。目眩がするほどの凄まじい快感だった。飯森はゼェゼェと息を弾ませながら充実した余韻を楽しみ、七海の処女を奪って以来の達成感に浸っていた。

    ペロは全身の痙攣がなかなか治まらず、七海の膣にクリペニスを挿れたまま荒い息を吐いていた。やってしまった。命令とは言え妹を犯してしまった。自分の浅ましい姿を妹に見られてしまった。ペロは、いや光希は、興奮の波が急速に醒めると、ひたすら自己嫌悪に陥っていた。

    七海は最も激しく絶頂したため、意識が正常に戻るのに時間を要した。手足の短い姉の身体に覆い被さり、肩で息をしながら、膣の中になお残る姉のクリペニスの暖かさを感じていた。

    「ペロ、妹のケツ穴を綺麗にしてやれ」

    飯森の一言によって時が再び動き出した。命令に背いたら妹に何をされるかわからない。光希は返事をすることなくそっと溜息を吐くと、自分に倒れ込んでいる七海に身体を浮かせるよう言い、短い足を器用に動かして身体の向きを180°回転させ、シックスナインの体勢で長い舌を七海の肛門の中にねじ挿れ、勢いよく精液を掻き出し始めた。

    「んああっ! おねえちゃん、何して……ひぃっ!」

    「ずるるるるる! ザーメンいっぱい…… れろれろれろ……」

    「やだっ! 舐めちゃ…! 汚いっ…!」

    「そんなことないよ…… 七海ぃ…… 七海のケツまんこ、おいひぃ…… じゅるるるる!」

    「ひぁああああっ!!」

    括約筋はまだ無事なようだが、七海の肛門は無残に拡張されていて、これまでの調教がいかに過酷なものだったかを如実に物語っていた。これ以上拡張を重ねたら、いずれ自分のように壊れてしまうかもしれない。液便が常に垂れ落ちてくるのにショーツはおろかオムツすら履かせてもらえず、床に零すしかない生活がどれだけ惨めか……。七海もいずれそうなるかもしれないと思うと堪らなかった。光希は一通り精液を舐め取ると、ケアでもするかのように優しく肛門内を舐め回した。

    「ああっ…… そこ…… ああっ……」

    七海の身体が再び反応し始める。が、先程の嵐のような暴力的快楽はなく、ただただ優しく穏やかで暖かく、気持ちよかった。

    「七海、お前はこっちだ」

    「…………」

    「どうした? 奴隷の作法……忘れたのか?」

    「うぅ……」

    忘れるもんか。膣であれ肛門であれ、セックスの後は口で掃除する。言われなくても自主的にそうするよう、この4ヶ月みっちりと叩き込まれた。でも、おねえちゃんの前でやりたくない。絶対やりたくない……!

    七海の気持ちが光希には痛いほどわかった。光希だって妹の前で浅ましい自分を晒したくなどなかった。七海も同じに違いない。姉の前で醜態を晒すのが恥ずかしいんだ。でもやらなきゃダメ。七海は一人前の奴隷になってオークションで落札され、この地獄から抜け出さなければならないのだから。どんなに憎い相手でも男の命令には絶対服従。それが奴隷の基本。七海がやらねばならないこと。

    「……七海。私なら気にしないから。やって? ね?」

    光希は肛門からそっと舌を抜くと、七海を優しく説得した。七海はしばらく逡巡した後、涙を浮かべ、羞恥と屈辱に声を震わせながら、飯森のペニスに向かって口上を述べ始めた。

    「ご主人様、ケツまんこにザーメンを出していただきありがとうございました。汚れてしまったおちんぽを、口と舌で綺麗にさせてください。お願いします、ご主人様……」

    「いいだろう」

    「はい。ありがとうございます、ご主人様」

    七海は姉の視線を気にしながら、いつもの口上を述べ、ペニスの掃除を始めた。

    飯森の精液。もうすっかり慣れたいつもの味。玲香とかいう名の奴隷の人に直腸内を洗ってもらったおかげで、ペニスには自分の糞便が付いていない。だからいつもよりマシ。……なのになんでこんなに不味いんだろう。悲しいんだろう。悔しいんだろう。

    そう。悔しい。憎い。この男が。姉に酷いことをしないという条件で、七海は伯父の奴隷となり、調教を受け入れてきた。学園の友人や教師に打ち明けなかったのも、登下校時に交番に駆け込まなかったのも、バラしたら姉を殺すと脅されていたからだ。なのに……なのに! メス犬ペロって……ありえない! こんなのありえないよ!! おねえちゃんを返して! 手も足も歯も舌も……私の大好きなおねえちゃんを返してよっ!!

    飯森と光希は不穏な空気を感じていた。飯森のペニスを口に含んで数十秒後、七海の目つきが明らかに変わったのだ。恐らく長い絶頂が終わって冷静な頭に戻ったのだろう。そして、約束を破って姉を酷い目に遭わせた飯森に憤慨しているに違いない。これは噛まれるかもしれない。飯森が咄嗟にペニスを引き抜こうとした時、光希が口を開いた。

    「ダメ、七海。おちんぽ噛もうとしてるでしょ。ダメ。そんなことしたら取り返しがつかない。私なら大丈夫だから……ね?」

    「らっへ、おええひゃん……」

    「私だってこいつが憎いわ? よくわからないけど、私たちをこんな目に遭わせたのは全部こいつなんでしょ? 最悪よ…… 今すぐ殺してやりたいわ。ここに私たち3人しかいないなら、今すぐにでもそうする。そうね…… 噛んだら口の中が汚れるし、ちんぽ踏み潰してミンチにしてやるわよ。足、もうないけど」

    「おねえひゃん……」

    「……でもね? ここには、この施設には私たち以外にもたくさんの人間がいるの。調教師やお客様だけじゃない。拷問係とか処刑人とか恐ろしい人たちが何十人もいるの。あなたがおちんぽを噛んだら、そいつらが何をするかわからない。ううん、多分歯を全部抜かれる。私みたいに。そんなのヤでしょ? ……だからお願い。耐えて? ね? お願いよ……」

    「…………」

    七海は逡巡した末にペニスを離した。既に掃除は終わっており、飯森のペニスは七海の唾液でヌラヌラと黒光りしていた。

    事態が飯森の計画通りに進んでいた。狙い通りペロは七海の説得にかかっている。これならば、七海が脱走計画を持ち出しても、ペロは諌めようとするだろう。これでいい。これで心置きなく、思う存分七海を調教できる。ペロを調教に参加させることもできるだろう。これから面白くなるぞ!

    ……飯森は心の中で高笑いした。

     

    IV:闇の中で

     

    しばらくして扉が開くと、男が1人入ってきた。浅黒い肌にスキンヘッドにサングラス、七海も知っている男。これまで木下家で飯森と共に七海を調教してきた男たちのうちの1人だった。

    「もういいか?」

    「ああ。ちょうど全部終わったところだ」

    「知ってる。見てたからな」

    「んじゃ、説明よろしく」

    男は飯森と短くやり取りした後、七海の方を向いた。

    「木下七海。ようこそJSPFへ。俺は調教師の裏沢だ。改めてよろしくな」

    「調教師……」

    「ああ。俺はここの調教師だ。お前を調教してきた他の奴らも、則夫以外は全員な」

    「…………」

    「則夫とは腐れ縁でな。前から計画していたお前の調教をいよいよ始めるから、手伝って欲しいと言われたのさ。で、調教が一段落したんで、俺もお前んちから本来の仕事場に戻ったってわけだ。そういうわけで、改めてこれからもよろしくな、奴隷の七海」

    「…………」

    「お前は基礎的な調教は既に終えているからな。明日1日かけて、ここでのお前の生活について俺が説明してやる。しっかり聞いとけよ? 明後日から早速奴隷として働いてもらうからな」

    「あさって……」

    「今日はもう遅い。これからお前を奴隷用の寝床に案内する。俺に従いて来い。」

    「…………」

    「言っとくが……逃げたりするなよ? 恐ろしい拷問が待ってるぞ」

    「…………」

    「七海……」

    光希もまた、見知らぬ男の突然の登場に戸惑っていた(裏沢はずっと木下家にいたため光希とは面識がない)。光希は七海の4ヶ月間の状況を知らないので、会話から得られる断片的な情報を基に推測するしかない。

    七海は飯森だけでなく、裏沢たちJSPFの調教師の調教も受けてきたのか。しかも「お前んち」……私たちの家で。私たちの家が飯森と調教師たちに占拠され、七海はそこで地獄の4ヶ月を過ごしてきたというのか。両親が災害で亡くなり、姉もいなくなり、悲しみの底にいるだろう七海を、家族の思い出の詰まったあの家で寄ってたかって毎日毎日……! 酷い! 酷すぎる!!

    ……待って? 両親はどこへ行ったのだろう。家にはいないのだろうか。とすると、やはりあの水死体の写真は本物なのか……。

    七海は、光希が当初受けていたような基礎的調教は受けず、明後日から奴隷として働く……。JSPFに連れて来られた女の多くは、まず基礎的な調教を調教師から受け、一定の基準をクリアした者だけが正式に奴隷となって、会員客から本格的な調教を受けるという流れになっている。光希は基礎的調教を頑なに拒み続け、正式な奴隷になる前に逃亡を企ててその流れから逸脱したため、奴隷の生活というものをよく知らない。それにしても、光希が49日で逃げ出したあの地獄の日々を、七海は4ヶ月も……120日も耐えてきたというのか。

    光希も四肢を失うまでは寝起きしていた、あの場所を使うことになるのか。ベッドはいい。暗くて狭いながらも普通に寝られる。問題は……あの場所で摂ることになる朝食と夕食だ。あの味を、屈辱を、惨めな気持ちを、七海も味わうんだ……。

    逃げたら……拷問! 手足! ダメっ!!

    「いいっ? 絶対逃げちゃダメだからね!? イヤな思いをいっぱいするだろうけど、調教師様には絶対服従! 何があっても絶対逃げちゃダメ!!」

    「……おねえちゃん?」

    「くっくっく……」

    「ほら とっとと行くぞ、七海」

    「いい!? 絶対だからねっ!!?」

    「…………」(おねえちゃん……?)

    七海は立ち上がりながら、突然喋り出した姉に驚き、次いでその必死な形相に困惑した。なんでいきなり……? 七海は姉が急変した理由が気になったが、咄嗟のことで言葉が出てこず、後ろ髪を引かれる思いで裏沢に従いて部屋を出た。

    裏沢、七海の順に部屋を出て行き、ついで満足そうな笑みを浮かべた飯森が出て行くと、扉が自動で閉まって部屋の照明が消えた。地下100m、窓も何もない小部屋。真の闇である。

    光希は仰向けの状態のまま、しばらく扉の方に意識を集中していたが、やがて人の気配がなくなると身体を横向きに変えてうずくまり、「七海…… 七海……」と小声で泣き始めた。

    そんな時でも光希の壊れた肛門からは絶えず軟便が垂れ落ちてくる。

    すっかり慣れてしまった糞便の臭い。だが、久々にメス犬から人間に戻った光希にとって、それは堪らない悪臭だった。掃除しようにも自分には手も足もない。肛門を締めようとしても力が入らない。ペロなら床に積もった汚物をバカみたいに舌で舐め取るのだろうが、今はとてもそんな気になれない。

    換気の悪い真っ暗な地下室。軟便は床にどんどん溜まっていき、どんどん臭いがキツくなる。光希は嗚咽が止まらなくなり、ついには号泣し始めた。なんでこんなことになったんだろう。私と七海はこれからどうなるんだろう。もうこんなのイヤ。お父さん、お母さん、助けて。誰か私たちを助けて!!

    「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

    手足を失い、あの写真を見せられた時以来の絶叫が、暗く狭い檻の中に響き渡る。止めどなく溢れ出る涙・鼻水・涎、そして糞便。だがそれを拭うことすら今の自分にはできない。可愛い妹を守ることも、一緒に逃げることも、何もかも!

    それどころか…… 逃げるなとか、調教師の言うことを聞けとか、そんなの調教師が言ってることと何も変わらないじゃないか。挙げ句の果てに、バケモノみたいになったクリちんぽで妹をレイプするだなんて! 可哀想な妹が目の前で酷い目に遭っていて、お前は守るどころか陵辱する側に加担したんだぞ! なんて情けない最低の姉なんだ!!

    ……こんなことなら連中の言うことを素直に聞いて、さっさと奴隷になっておけば良かった。そうしたら、一緒に逃げるのは無理でも、せめて七海の代わりに調教を受けて、七海の負担を軽くすることくらいはできたかもしれないのに!

    絶望の叫びは次第に悔恨と自己嫌悪の色を帯び、その後数時間も続いたのだった……。

     

    一方、七海はベッドルームにいた。

    縦長の長大な部屋の真ん中を背骨のように通路が貫き、通路に対して直角に狭いベッドがずらっと並んでいる。各ベッドは通路側を除く五方が壁に囲まれており、まるでカプセルホテルのカプセルのようだ。ただし、カプセルの入口はホテルのような布幕ではなく、施錠可能な金属製の扉になっており、奴隷が勝手に開閉することはできない。そのような扉が、通路に沿って1列にずらっと並んでいる。片側80枚以上、両側で160枚以上はあるだろうか。今はどの扉も閉まっていて、中に人がいるかどうかはわからない。

    「今日からここがお前の寝床だ。こっちに来い」

    裏沢に従いて通路を歩いていく。と、89番の扉の前で止まった。

    「端末の前に立って顔をかざせ」

    「??」

    「ペロがいた部屋と同じ、虹彩認証システムだ。お前の虹彩は既に登録済みだからな。顔をかざせば扉が勝手に開く」

    「こうさい……?」

    「いいからとっととやれ。瞬きするなよ?」

    七海はよくわからないまま、端末の前に立つと、何やらゴチャゴチャと表示されている画面を覗き込んだ。その瞬間ピッと音がして、目の前の扉が開いた。

    「この89番がお前のベッドだ。今日からここを使え。いいな?」

    「…………」

    「さっきから返事がないな…… 返事をしろ、七海」

    「は、はい……」

    「お前は奴隷になったのだ。奴隷が返事をしないということは、命令を無視することと同じだ。罰を受けることになるぞ? わかったな?」

    「……わかりました」

    「よし。今は…… 9時半か。他の奴隷は全員夜の調教中だ。奴隷の調教は1日3回行われる。それぞれ4時間ずつ、計12時間だ。午前中は朝8時から12時まで、午後は13時から17時まで、夜は19時から23時まで。つまり、あと1時間半したら奴隷たちが帰ってくるわけだな」

    「……はい」

    「普段は23時以降でないとロックは開かないから、調教をサボってここで寝ることはできん。ま、サボった時点で……くくくっ」

    「……ど、どうなるんですか?」

    「大変なことになる。そう覚えておけ。奴隷は時間厳守。サボりなど論外。遅刻すら厳禁だ。定められた刻限に1秒でも遅れたら、厳しい懲罰が待っているぞ」

    「ひぃっ!」

    「起床は朝6時だ。でっかいブザーが鳴るから、まあ起きるだろ。取り敢えず今日は以上だ。ちと早いがもう寝とけ」

    「……はい。あ、あの、おやすみなさい」

    七海は、返事の後になんとなく就寝の挨拶を付け加えてみたが、返事はなかった。膝丈くらいの高さにあるカプセルベッドに潜り込む。

    七海の足の爪先がカプセルの中に入った直後、扉が閉まった。

    「え!? あ、あの……」

    「お前が中に入ったら自動で閉まる仕組みだ。朝6時まで開くことはない。読書灯もない。いいから寝ろ」

    扉の外から裏沢の声が聴こえてくる。

    「あの…… トイレは……」

    「さっきペロと交尾してた時にションベン出してたじゃねえか。朝まで我慢しろ」

    「うう…… はい……」

    そう言った直後にカプセル内の照明が消えた。真の闇だ。扉の隙間から通路の光が漏れることもない。七海は四つん這いのまましばらく待ってみたが、光源が一切ないからか夜目も効かないようだ。七海は仕方なく手探りでベッド内を調べてみたが、枕と毛布らしきものは発見したものの、読書灯はやはり無いようだった。七海は閉所恐怖症や暗所恐怖症ではないのでパニックにはならなかったが、試しに枕に頭を置いて横になってみても、強い圧迫感を覚えてなかなか寝付けなかった。自然、色々なことを考え始める。

    おねえちゃんに会えた。会えたけど……まさかあんなことになってるだなんて! ここに連れて来られてから、何人もの奴隷に会った。全員私と同じで裸に首輪だけだったけど、手も足も普通にあった。おねえちゃんもあの人たちみたいに、ここの奴隷になったんだと思ってた。なのに…… なのに!

    あの部屋、あの区画。9号室の他にも同じような扉が沢山あった。ということは、姉みたいな身体の女の人が他にも大勢いるんだろうか。映像の中で姉に犯されていた、あのポチとかいう女の子も、何号室かわからないけどあの区画にいて、姉みたいに酷い生活を送らされているんだろうか。なぜ? 彼女たちは普通の奴隷とは違うんだろうか?

    さっき9号室を出る時、姉はものすごく真剣な表情で「逃げるな」「逆らうな」と言っていた。しかし、これまで定期的に見せられてきた調教動画に出てくる姉は、常に反抗的だった。男たちに逆らってばかりだった。どれだけ陵辱されても決して屈しない姉の勇姿に、七海は何度励まされたことだろう。姉がこれだけ頑張って耐えているのだ、自分も頑張らねば! 七海は挫けそうになるたびに、そう自分を鼓舞してきたのだ。

    その姉が逆らうなと言う。なんで?と思う。そんな臆病なことを言って欲しくない。憧れの強い姉のままでいて欲しい。ポチと野良犬のような醜い交尾をし、実の妹を犯すメス犬ペロ…… あんなの姉じゃない。似た顔をした別人だと思いたい。

    でも、「だから」かとも思う。映像で見たような反抗的な態度を取り続けた結果、姉はあんな身体にさせられたのかもしれない。だから「逆らうな」と言ったのでは。「逃げるな」と言ったということは、姉は一度ここから逃げようとしたのかも。もしかしたらポチや、あの区画にいるだろう他の人たちも。そして失敗した。姉はものすごく頭がいい。逃げるなら用意周到、綿密な計画を立ててから逃げるだろう。それで失敗したとなると、この施設からの脱走は絶対に不可能なのかもしれない。それを知っているからこその「逃げるな」ではないのか。自分と同じ轍を踏むなと忠告してくれたのでは……?

    そう。あの真摯な忠告は、臆病故のものではなく、優しさ故のものだったのだ。姿はあんなふうになってしまっても、姉の心は少しも変わっていない。普段はメス犬ペロとして卑屈に振る舞っていたとしても、心の底には昔のままの、妹思いで優しい光希おねえちゃんがいるのだ。

    そう思うと、嬉しいのと悲しいのとで涙が溢れてくる。心は昔のままなのに姿はあんなふうだなんて。やっと会えたのに……!

    それに「逃げるな」「逆らうな」ってことは、ずっとここにいて、ずっと奴隷でいろってことだよね……。昼に見た奴隷たちみたいに、広間や個室で酷いことされ続けるんだよね。これまでもご主人様や裏沢さんたちに酷いこといっぱいされてきたけど、もっともっと酷くなるんだろうな。耐えられるかな、私……。これまではおねえちゃんの映像があったからなんとかなったけど、それがなくなって、調教もどんどん酷くなってったら……。私、どうなっちゃうんだろう……。

    様々な想いが去来してはその都度涙を流し、眠れぬまま1時間半が過ぎた頃、周りが急にざわつき始めた。奴隷たちが戻ってきたのだ。虹彩認証のピッという音があちこちで聴こえ、その直後にドサッと倒れ込むような音が上がると、すぐに寝息が聴こえてきた。七海のように啜り泣く者はいないようだ。皆、泣く気力も体力も残っていないのだろう。七海もこの4ヶ月、特に夏休み中と高校退学後は朝から晩まで激しく調教されて、夜は半分気絶しながら眠る毎日だった。今日は例外的に体力が残っている。だから色々と考えてしまうのだ。

    私も他の奴隷と同じように、体力の限界まで調教され続けるんだろう。明日からずっと。多分死ぬまで、ずっと。不安で不安で堪らないまま、七海は尚も考え込んでいたが、周りの寝息を聞いているうちにいつの間にか眠ってしまった。

    その夜、彼女は久々にあの夢を見た。無音無臭の闇の牢獄の中に自分が一人ぼっちでいる夢。飯森に処女を散らされ、七海の幸せな人生が終わってしまったあの日に見た悪夢。夢の中で彼女は一人呟く。ああ、これは予知夢だったのか。この闇はJSPFの奴隷用カプセルベッドそのものじゃないか。そうか、あの時点で未来は既に決まっていたんだ。ここで、この狂った施設で、奴隷として男たちの嬲り者になりながら生きていくという絶望の未来が。4ヶ月も前に!

    ふん、バカみたい。無音でも無臭でもないよ、ここ。エアコンや換気扇の音がする。周りの奴隷たちの寝息や寝言も聴こえてくる。洗濯されたシーツの良い匂いもするし、絶頂して放尿したあと身体を洗わずにここまで来たから微かなアンモニア臭もする。もちろん精液の臭いも。色んな音がして、色んな匂いがして、でも無いのは光だけ。希望だけ……!

    そう、これが現実。夢じゃない。夢だったら…… 全部夢だったら良かったのに!!