黒水晶事務局

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    『女王国惨刑譚』 西洋のような東洋のような国の、中世の物語。  トルファン国の女王メイリンは父王の急逝により一八歳で王位を継承し、よく国を治めその治世は評判がよかった。  絶世の美貌と知性を兼ね備え、三七歳の現在でも全く容姿は衰えずその気貴さは近隣諸国にまで鳴り響いていた。  しかし、メイリンの声望と容姿に嫉妬し […]

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    名前:百合子
    年齢:24歳
    サイズ:B94(F)、W秘密、H90
    職業:男子校教師(社会)

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    ─── プロローグ[…]

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     元女性国民の“ひかる”さんをモデルにした官能小説です。

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    『少女狩り』 春休み。  4月から高校一年生になるユイは友達のリサと一緒にリサの叔父さん、敏也が経営しているペンションに遊びに来ていた。  ペンションといっても、中世ヨーロッパの城をそのまま模倣して作ってあり、なかなか豪勢である。  しかし、森の奥深くにあるということもあって、不気味だ。春休みだというのに、客 […]

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    〈 海は広いな大きすぎるぞ!。・・・の巻・後編 〉
    「・・・・・・・・・・・・・」 一瞬の沈黙の後。
    「ぎゃぁぁぁぁぁーーー!!。」
     ライラック、チャーム、グリーンの3人はほぼ同時に悲鳴を上げた。それはまさに『ムンクの叫び』のように。
     あまりの恐怖に、ライラック、チャーム、グリーンの髪の毛は、どれも同じように逆立っていた。
     なぜならボートの直ぐ後ろで、大きな口を開けて今にもライラック達をボートごと飲み込もうとしている、巨大な海獣が海面から姿を見せていたからだった。
     海面から見えているだけでも、海獣の大きさはゆうに5メートルはありそうに見えていた。
     それが見えていない海面の下の部分を合わせると、いったいどのくらいの大きさの海獣の化け物なのか、ライラック達にはまったく予測がつかなかった。
     海獣が開けている口の中にある鋭く太い刃物のような歯が、びっしりと並んでいるのが、ライラック達の目にはっきりと見えていた。
     あまりの光景に、呆然としているライラック達のボートを飲み込もうと、海獣の大きな口が迫って来た。
     バシャーーーン!。 海獣の口が巨大な水しぶきを上げて閉じられた。と同時に海獣の巨体も水しぶきを上げて海中に没した。
     空中に飛び散った水しぶきが、雨のようになって海面に落ちて来た。
     パラパラパラ・・・と、水煙が収まった後には、何とライラック達が乗っているボートが、木の葉のように波間に漂っているではないか。 まさに奇跡的に、海獣の口が閉まる寸前に、ライラック達はボートを懸命に漕いで、海獣の口の先の方に乗っているボートを進める事が出来たのであった。
    「はうー。 命が縮む思いがしました。」 チャームが全身の力が抜けるような思いで、やっと言葉を発した。
    「なにのんきな事を言っているのよ。 あたし達を飲み込み仕損なったあの海獣は、また来るわよ。 早く、あの船に追い着くのよ。なにが何でも救助してもらうんだからね!。」
     ライラックの言葉に、緊張の抜け掛かったチャームとグリーンは、必死の表情で櫓を漕ぐのであった。
     またあの海獣に会いたくないからだ。 命が縮むような思いは2度も経験したく無いと思うのは、ごく自然の摂理であったろう。
    「まって!!。」 突然のライラックの大声に、チャームとグリーンの2人は櫓を持つ手をピタリと止めた。
    「下から来るわっ」 海面を見ていたライラックはそう言うと、腰の剣をゆっくりと鞘から抜いた。
     耳をすませどのような小さな音さえも聞き逃すまいと、身構えているライラック。
     汗がにじんだ手で櫓を握って、不安そうに海面を見ているチャームとグリーン。
     緊張の時が静寂と共に過ぎていく。 ライラックの顔にも、チャーム、グリーンの顔にも、玉のような水玉が流れているが、それは海水を頭から被ってばかりいた為だけではなかった。
    『コポッ。』 ライラックの耳に海の下から小さな音が聞こえてきた。
     ライラックは『はっ。』と音がしてきた方の海面に目を向けると、チャームとグリーンに声を掛けた
    「チャーム、グリーン。 身体を伏せてっ!。」
     3人はボートの床に身を屈めたその時、海面が大きく盛り上がり、その中から海獣が空中に跳び上がりその姿を現した。
     ド バ ァァァァァー ー ー ッ。
     バ シ ャァァァァー ー ー ン。
     海獣は考えられないほどの力で空中に飛び跳ね、クルリと一回転すると大きな水しぶきを上げ頭から海中にその姿を消した。
     ライラック達はその時海獣の全身の姿を、その目に見ることが出来た。
     海獣の全身は鯨に似ていて黒い色をしていた。しかし普通の鯨では無い証拠に、海獣の下顎から尾ビレに掛けて灰色に染まった場所からは、数百ものムカデのような足が生えていたのだった。 頭部には3本もの角が生えていた。
     左右の前ビレには、数本の爪が生えているのが見えていた。
     ライラックの乗っているボートは、大きな波に翻弄されるように漂い、ライラック達は海の中に投げ出されないようにボートにしがみついていた。
     
    「あっ!!。」 ライラック達は、ボートの下を悠然と泳いで行く巨大な海獣の影を目にした。
     でかい!。 大きすぎる!。 その大きさはどう見ても、40~50メートルはあるのではないかと思われた。
     ライラック達はそんな影を見て息を飲んだ。
     巨大な影の海獣は、船の方に狙いを付けて向かっているようであった。
    「いけないっ。 海獣の前ではあの船はひとたまりも無いわ!。」
     船の方に向かって行く海獣の影を見ながら、ライラックは悔しさで歯ぎしりをした。
     船の方も懸命に逃げようとしていたが、海獣の速度には到底かなわないようで、その距離がジワジワと縮まって行くのが見えた。その為、船の上では慌てふためく水夫達の姿があった。
    「くそっ。周りが海だから、どうする事も出来ないわ。」 ライラックが呟く。
     チャームはライラックの言葉を聞くと、呪文を唱えて光の中から魔法書を出現させた。
    「チャ・・・チャーム・・・。」 グリーンは目を丸くしながら見つめていた。
     魔法書を開いたチャームは、ページをペラペラとめくりだしている。
     この魔法書の文字はチャームしか見る事が出来ない魔法が掛けられている為、側から魔法書の中を覗き見たところで、真っ白いページだけしか見えないのである。
    「チャーム!。」 ライラックがチャームの方に顔を向けた。何か使える魔法が無いかと聞いていたのだ。
     チャームはその真っ白いページを数枚めくった後、「あ。これあたりがいいですね。」と頷くと、ページを破り「冷波(れいは)。」と素早く叫び、高くうねっている海面に投げ入れた。
     するとどうだ!。 波打つ海面がピシピシピシ・・・と凍りつき船に近づいていた海獣の身体にまで、氷の道が一本出来上がったのだ。
    「ライラックさん、さあ早く行って下さい。 氷の道はあまり長くは持ちませんから。」
     ライラックはチャームの言葉を背中に聞くと、「わかったわ!。」と一言いって、氷の道を走りだした。海獣の背中に向かって。
    『確かあの海獣の弱点は、頭の上にある3本の角の内の真ん中の角が脳味噌に繋がっているから、それを攻めれば勝機があるはずだわ。』
     ライラックは走りながら戦いの戦略を考えていた。
     海獣の背中が近づいて来る。海獣の身体が氷の道にシバレ付いて、何とか離れようとして、巨体を動かしてもがいていた。
     タタタ・・・。 氷の道を走るライラック。 ピシピシ・・・バリンバリン。 海水を被って氷の道が溶け砕けていっている。 バリバリバリ・・・。海獣の巨体と怪力に耐えられずに氷が砕け始めた。
    「たぁぁぁぁ!。」 ライラックの足の下にあった氷が砕けて海水に溶けていった時、ライラックは海獣の背中に向かってジャンプをした。
     ガッ!。 ライラックは海獣の背中に飛びついた。
     ズッ!。 濡れてヌルヌルの背中に思わず滑り落ちそうになったライラックは、ズバァ!、と剣先を深々と海獣の背中に突き刺して、滑り落ちるのを防いだ。
     海獣の身体は厚い脂肪に包まれているのか、深く突き刺した背中の傷口からは、一滴も海獣の血液は出てこなかった。 ましてやこれだけの巨体だ。 ライラックが突き刺したことさえも、この海獣は気が付いていないのかもしれない。
    「ブファー。」 海獣が叫び声を上げて身体を大きく震わせた。
     バリバリバリ。 海獣の動きを押さえていた氷が音を立てて割れだした。
    「わあー。 このままじゃ、ライラックさんが海の底に引きずり込まれてアウトだよ。 チャーム、何とかならないの?。」
     握り拳を作って見ているグリーンがチャームに叫んだ。
    「わかっていますよー。 冷波!。」
     再び氷の道が海獣の身体まで繋がって海獣の動きを止める。
     その間に、背中にいるライラックは3本の角が生えている海獣の頭のところに、剣を支えに何とかにじり寄って行った。
     ブ ル ン !。
     海獣は氷の狭間から抜け出そうと、また背中に取り付いているライラックを振り落とそうとして、巨体を振るわせた。
    「うわっ!。」 ライラックの身体が一瞬海獣の背中から落ちそうになった。
     ズサッ!。 ライラックは海獣の背中に持っている剣先を深々と突き刺し、何とか落ちそうになった身体を防いだ。
    「わぁぁぁ。 このままじゃライラックさんが海の中に落ちちゃうよ。 チャーム何かライラックさんを援護する魔法はないの?。」
     ハラハラしながら見ていたグリーンは、思わずチャームに訴えた。
    「はいはい・・・。 ちょっと待って下さいよ。・・・これあたりいいかしら?。」
     魔法書のページをめくっていたチャームは呟くと、ページを剥ぎ取り海獣に向かって投げた。 「氷刃(ひょうは)!。」
     サァァァァァーッ!。 ズバッ!。ズバッ!。ズバッ!。ズバッ!。
    「ヴァッフォ!。」
     チャームの魔法の氷刃は、空気を切り裂く音を立てて暴れている海獣の身体に、次から次へと命中した。
     しかし、海獣の暴れる動きは一向に収まる気配がなかった。
    「チャーム!。 あんな大きな身体の海獣に、氷の刃物が通用すると思っているの?。 しかも普通のナイフと同じ大きさだろう?。・・・相手の大きさを考えて魔法を使ってよ。 それでも魔法使いなの?。」
     グリーンは『チャーム、なにを考えてるの?。 信じられなーい。』と言った表情で、批判的な顔をチャームに向けた。
    「あらら。 グリーンさん、わたしは魔法使いでは無く『エルフの魔道士』なんですよ。 魔法を使う人間とは一緒にしないで下さいね。」
     人形のような整った顔立ちで、ニコニコと微笑みながらグリーンに反論したチャームの言葉には、丁寧な言葉の中にもどこか語尾が強くトゲのある物になっていた。 めずらしくチャームは怒っているようだった。 それはまるで、魔法を使う人間と一緒にされた事に、エルフのプライドを傷つけられたと言っているようだった。
    「はいはい。 エルフの魔道士ですか・・・。 半分人間の血が混じったハーフエルフのくせに・・・。」
     人間の事を下等に見ているようなチャームに対して、グリーンは腹を立てて思わず呟いた。
     その呟きをチャームの耳は見逃さなかった。 チャームはグリーンの顔にグイッと近づくと、「ん・・・?。 ハーフエルフがどうかしましたか?。 グリーンさんは男と女の半分ずつの身体で一生を送りたいようですね?。 あたしは構わないんですけども。」とニコニコしながらハッキリと言うのであった。完全にトゲのある言葉を・・・。
    「あーん!。 チャームぅー。 ごめーん!。 僕が悪かったよう。 見捨てないでぇー。チャームは立派なエルフの魔道士だよう!。」
     チャームの言葉にビックリしたグリーンは、泣きながら謝った。
    「グリーンさん、わかればいいんですよ。」
     チャームは勝ち誇ったように胸を張って静かに言い放った。 相も変わらずニコニコとした表情で・・・。
     チャームとグリーンの漫才にも似た会話が終わった頃、2人の耳にバリーン、バリバリバリーン、と言った氷が割れる音が飛び込んで来た。
     2人は向かい合っていた顔を、ほぼ同時に音のした方向に向けた。
    「いっ!。」「えっ!。」 2人はやはりほぼ同時に息を飲む声を上げた。
     2人がライラックと海獣の事を忘れて、つまらない喧嘩をしている間に、ライラックは海獣の頭部の真ん中の角にしがみついていた。 そしてライラックを載せている海獣は身体を固めていた氷を砕いて、海中に没する為に空中へと飛び跳ねる瞬間であった。
     このまま海中にでも潜られたら、頭部にしがみ付いているライラックの命は、まちがいなく無くなってしまうだろう。
    「ゴワッ!」 海獣は大きく叫び声を上げた。
    「くっ!。 くらえっ!。」 ライラックは真ん中の角の根元向かって、手にしている剣の先を突き刺そうと振り上げた。
    「危なーい!。」 グリーンは出る限りの叫び声を上げた。
    「雷破(らいは)!!」 チャームは一気に魔法書のページを破り取ると、海獣の方に投げた。
     ドバァァァーッ!。 ライラックの剣が角の根元に深く深く突き立てられた。
     バシャァァァー。 海獣の角の根元から鯨の潮吹きのように大量の血液が噴き出した。
     ピカッ。バリバリバリバリー!。 突然空中が光って雷光が海獣の左目に直撃をした。
    「ボワァァッ!」 ドバシャーーン。 海獣は雷撃で受けた左目から煙を出しながら、空中に跳び上がると頭から氷を突き破って、海中の中へと消えていった。
    「わぁぁぁぁー。」 ライラックはその衝撃で、海獣の頭部から海面へと振り落とされた。
     海獣とライラックは、大きな水柱の中に消えた。
     バシャァァァァーーーーッ!。
     空中に舞い上がった海水の水しぶきが、豪雨のようにボートの中にいるチャームとグリーンの頭上に降り注ぎ、2人の身体をずぶ濡れにした。
     チャームとグリーンはそんな事には気にも止める事もなく、ライラックと海獣が海中に没した辺りの海面を懸命に眺めていた。
     霧のような水しぶきが晴れると、目の前の海面は静かな波の動きをしていた。
     今起こっていた戦いがまるで嘘のように静かな海を現していた。
     ザァァァー。ザァァァー。
    「ね、ね、・・・ラ、ライラックさんがどこにも居ないよ。」
     グリーンがボートから身を乗り出すようにして海面を見ながら、不安そうに言った。
     チャームはグリーンの言葉を聞きながら、ボートの周りの海面を見渡している。
    「どうしょう。どうしょう。・・・ライラックさん、海の底に沈んじゃったのかな?。」
     グリーンは泣きそうな顔になっていく。
     その時チャームのブルーの瞳が、波間に浮き沈みしながら浮かんでいる人影を見つけた。
     それはキラキラと太陽の光を反射している。
     ライラックは銀色の鎧とすね当てを着けているので、それが反射しているようだ。
    「見つけた。」 チャームはそう言うとグリーンに知らせる為、その光り輝く人影を指差した。
     2人はその浮いている人影の所に向かって、懸命にボートを漕いで行った。
     近づいてみると、それはやはり探しているライラックの姿であった。
     ライラックは仰向けになって、波間に漂っていた。
     2人はライラックの名前を呼び掛けてみるが、ライラックの身体はピクリとも動かない。
    「ライラックさん!。ライラックさん!。 今ボートに引き上げるから、死なないでね!」
     グリーンは涙目になりながら、浮いているライラックをボートの上に引き上げようとしていた。
     しばらくして、チャームとグリーンは何とかライラックの身体をボートの上に引き上げる事が出来た。
     2人は心配そうな顔でライラックを見下ろした。
     ボートに引き上げられたライラックの身体は、波間に浮かんでいた時同様に、まるっきり動く気配が見えず、まるで死んでいるように見えていた。
     それでもライラックは剣士らしく、右の手には自分の剣がしっかりと握られていた。
    「チャーム。・・・ライラックさんは死んじゃったのかな・・・?。」
     グリーンの問いに、チャームは自分の右手でライラックの鎧の上から胸に手を添えると、「・・・いいえ。 ライラックさんは死んではいません。 気を失っているだけですね。」と答えた。
    「ええ?。 ほんとう。 ライラックさんは・・・死んではいないんだね。」
     グリーンはホッとしたように言うと、ライラックの名前を呼びながらライラックの身体を揺り動かし続けた。
     チャームはその光景を黙って見ていると、その内ライラックの顔の表面に生気が現れ出し、ライラックの唇が僅かに動いて、「う~ん・・・。」と言う声が漏れた。
    「わっ。ライラックさんが気が付いた。」
     グリーンの嬉しそうな声を聞きながら、ライラックの目がゆっくりと開けていった。
     グリーンは嬉しさのあまりライラックの身体に飛びついた。
    「あれ・・・?。 あたし・・・どうしてここに・・・?。」
     ライラックの頭脳がやっと活動を始めたらしく、まだボーッとした頭のままで呟くのがやっとだった。
     ライラックに抱き付いているグリーンの姿を、ニコニコ微笑みながら見ていたチャームは、
     突然自分たちの回りがスゥゥゥっと、薄暗い影に覆われていくのに気が付いた。
    『何です?。』 チャームは急いで背後に目を向けた。
     見るとチャームの背後の海には、先程海獣に追われ逃げていた大きな船が音も無く近づいて来ていた。
     チャームは顔を上げて、船の上からチャーム達を見下ろしている水夫達を見た。
     船上からはライラック達3人の事を、興味があるような、敵意を持つような、はたまた恐れを持つような・・・様々な視線が3人達に注がれているのを、チャームは全身で感じていた。
     しかも水夫達の真ん中からは、ひときわ強い視線を感じていた。 どうもこの船の船長の視線なのかもしれない。
     船上を見上げていたチャームは、ある事に気が付いた。
    『・・・え?。 どう言うこと?。・・・この船の水夫さん達は・・・、女の子ばかりだわ・・・。』
     チャームの目は船の水夫達が女性ばかりである事を見抜き、奇異な気持ちになるのであった。
    ----------------------------------------
     ニュチャ、ニュチャ、ニュチャ、ニュチャ、ニュチャ。
     薄暗い地下牢の奥から、湿った汁音が響いてきていた。
     それに続いて、若い女性の許しを請う哀願の声が微かに聞こえたかと思うと、パシーン!と言う鞭の乾いた音がこだまし、女性の悲鳴が響き渡った。
     ここは北方にある、ある国の王宮だ。
     しかしこの王宮の主は、今は悪魔のような魔女が玉座に座っていた。
     そして、その魔女は地下牢の中できらびやかな椅子に座って、拷問を受けて苦しみの姿を晒している女性を笑いながら見ていた。
     万歳の姿で両手両足を鎖で繋がれ、宙に浮いたようにされている裸姿の若い女性は、この国の元王妃である。
     元王妃の周りには同じく全裸姿の男達がいた。 しかしこの男達は、魔女が造り上げた人外の生き物であった。 その証拠に元王妃の裸体を舐めまわしているその男達の舌が、数十センチもの長さを持ち、蛇のような舌で舐める者もいれば、猫のようなザラザラの舌で舐め回す者もいる。 その為、元王妃は強制的な快感を何度も何度も経験され続けていた。この快楽責めは、すでに休み無く数日間続けられているのである。
     快感の波状攻撃の責めをその身体中で受け、もう何度も気を失ったが、そのつど強制的に覚醒され責めを受け続けていた。
    「くくく・・・。 さすがはあの種族出身の王妃ね。 良く持つわ。・・・普通の人間ならば、もうとっくに発狂死しているところよ。・・・くくく。  そろそろいいかもしれないわね。」
     魔女はそう言うと、人外の男の1人に目で合図をした。
    「ガルッ。」 男達はテーブルに置いてある刃物を手にすると、快楽責めを受けてビチョビチョに淫液で汚しているヴァギナに近寄り、刃物の刃をヴァギナのラビアとクリトリスにあてがった。
    「よく見ておくがいいよ。 お前達の母様が、女としてもう使い物にならなくなるようすをね。 男達が持っているあの刃物で、クリトリスやラビアや乳房を切り取られるんだからね。 お前達の母様はさぞやいい声で悲鳴を上げてくれるだろうね。」
     魔女は椅子の側で後ろ手に手枷を付けられ、全裸姿で座らさせられている、元王妃の2人の子供の王子と王女に向かって、冷たく言い放つのであった。
     王子と王女は鎖の付いた首輪を填められ口枷を噛まされて、この残酷な光景を無理矢理見せられているのであった。
     この2人にただ出来る事は、涙を流しながらこの光景を見続ける事だけであった。
     魔女はこの2人を見て地下牢中に響く笑い声を上げるのであった。 それと同時に、ヴァギナと乳房に刃物を突き入れられた元王妃の悲鳴が響き渡るのであった。

     こんにちは。九尾きつねです。
     久しぶりに、ほんとうに久しぶりに「ブレーク・パーティー」をお届けいたしました。
     前回の第5話から今回の第6話を書くまで、いったい何ヶ月のブランクがあったんだろうかな?。(笑)。
     さて今回のライラック達は、フォレックス公爵のいる国を離れて、ブラッド・オパールを追って南方への船の旅編です。
     はたして未知の南方の国では、何がライラック達を待っているのでしょうか?。 今後もどうぞこのシリーズをお楽しみ下さい。
     では次回作でまたお会いいたしましょう。

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 20年, 11か月前

    〈 海は広いな大きすぎるぞ!。・・・の巻・前編 〉
     ザザァー。ザザァー。ザザァー。
     夜空の上に浮かんでいる満月の光が、大海原の上を波をかき分けて走る、2隻の大きな帆船を照らし出していた。
     その2隻の船のマストの上には、フォレックス公爵所有の船である事を示す大きな旗印が、パタパタとたなびいていた。
     この2隻の船は、公爵の住んでいる国の産物や宝物を積み込んで、今、南の地方を目指して、この大海原を渡っている最中なのである。
     ザザァー。ザザァー。
     先頭を走る船の甲板に、どこまでも広がる夜の海を眺めるライラックの姿があった。
     ライラックは、墨を流し込んだように黒い海の表面を眺めながら、この船に乗り込むことになった訳を改めて思い出していた。
     それは・・・この船が出航したムーサリアス王国の大きな港町から、始まっていたのだ。
    「ちょっとぉぉぉ!。どうしてあたしが船に乗って、遠い南方の地方へと行かなくてはならないのよっ!。」
     突然の叫び声が、活気で騒然としている港のざわめきを、一瞬止めた。
     周りの人々の驚きの視線が、ある一団に集中する。
     視線の先には身体を銀色の鎧で包んだ女性剣士が、彼女の前に立っている見るからに高貴な貴族の男性に向かって抗議の声を出していた。
     もちろん騒ぎの元は、女性でありながら傭兵剣士のライラックだ。
     そして彼女の前にいるのは、ライラックの主人であり、ここムーサリアス王国内で大貴族のフォレックス公爵だ。
     その公爵の背後では、影のように寄り添い立っている秘書役のメイドのニーナが、ちょっと困ったような苦笑いの表情を浮かべていた。
     そしてライラックと公爵の2人の側には・・・。
     ニコニコと微笑んでいる、金髪のロングヘアで白い肌の人形のような顔立ちの少女は、チャームだ。
     緑色と金髪の髪の毛をした女の子のような顔立ちの少年はグリーン。
     小さなキャップの帽子を頭の天辺に被り、チャイナ服を着て細い口髭を生やした東洋人ふうの男、ミスター・商。
     その彼の横には、がっしりとした身体の傭兵剣士ルドが、鎧を着て立っていた。
    「簡単なことだ。例のゲテークとか言った男が、ブラッド・オパールの魔力で魔怪物に変身して、南方の方へ海を越えて飛んで行ったとの情報が届いたんだ。 それと砕け散ったブラッド・オパールのいくつかも、同じように南方へ飛んで行ったとのことだ。」
     ライラックの正面にいる、フォレックス公爵は静かに答えた。
    「そこで、我が公爵家から選ばれた『ブラック・オパール収拾隊兼魔怪物討伐隊』が、南方の国へと、派遣されることになったのだ。 ライラックはそのメンバーになったんだぞ。どうだ嬉しいだろう?。」
    「あ・・・あのねぇー・・・勝手にメンバーに加えないでよね・・・」
     ライラックはポツリと呟く。
    「普通ならば船に乗って南方に行くには、それなりの船賃がいるのだが、ライラック達は公爵家公認の隊だから、船賃と旅費は全てこちら持ちなんだぞ。・・・しかも公爵家の関係する施設を使う時も、料金の心配をしなくてもいいのだぞ。」
     公爵の胸を張った説明を聞いていたライラックは、「もしかすると、私達からも料金を取るつもりだったの?。」と、思わず言ってしまうところであった。
    「とにかく南方行きは下ろさせてもらうわ。公爵。」とライラックは公爵にピシャリと言った。
    「なぜ、そんなに南方に行く事を、嫌がるのだ?。」
     フォレックス公爵は不思議そうに、ライラックに聞き返した。
    「うっ・・・!。 そ、それは・・・。」
     ライラックは奥歯に何かが挟まったような表情をつくった。
    「何か訳ありの理由がありそうだな。・・・魔怪物を切り倒す傭兵のライラックが、船で南方へ行くことに対して、これほど取り乱す姿を見せるのだから・・・」
     公爵はそう言うと、自分の顔をライラックの面前へと、グイッと近づけた。
    「あ・・・あ・・・ありませんよ。 別に訳なんか・・・きゃはははは」
     ライラックは無理な笑い声を上げた。
    「ほぉぉぉ。 私に対して下手なウソをつくと、ライラックの首に填めている『隷属の首輪』を、10センチほど縮めてやっても良いのだぞ。」
     公爵はそう言うと、何か呪文を口の中で呟きだした。
    「わぁぁぁ!。 わかりましたよっ。 言います。言います。」
     10センチも首輪を縮められては、かなわないと思ったのか、ライラックはポツリポツリと訳を言いだした。
     周りにいるチャーム達も、ライラックの口から出てくる言葉を、固唾を呑んで待った。
    「そ、それ・・・は・・・」 ライラックの口がもぐもぐと小さく動く。
    「ふむふむ、それは・・・」 みんなの目と耳が、ライラックの次の言葉を注視した。
    「な・・・南方の国の人間は、・・・あたしのような美人の女性を見ると、男性の・・・あの・・・男根を3本も勃起させて犯すんでしょう?。 それから2つの顔に付いている牙の生えた大きな口で、あたしのような綺麗な女性を頭からガリガリと食べてしまうんでしょう?。」
    ・・・・・・・・・・・ ド ッ カ ー ン ! ・・・・・・・・・・・・・・・・
     周りにいた者達は、ライラックが指折り数えながら言う言葉を聞いて、思いっ切りコケてしまったのである。
    「な、なんなんだそれは?。」
     周りが大コケをしている状態の中で、どう言う訳だかひとり平然と立っている公爵は、小さな声でポツリと呟いた。
    「しかしライラックは、傭兵として魔怪物やいろんな戦場で戦ってきたんだから、そんな事で恐れるとは思えないんだがな。」との公爵の言葉にライラックは、
    「冗談じゃないわよ!。・・・考えてみてよ。・・・もしルドのような男の後ろ姿があたしの前にいたとするわよ。・・・あたし、いい男だと思って声を掛けた時に、その男がクルリとあたしの方を向いた時、その男の顔に目が3つもあったり、のっぺら坊だったり、首がにょろにょろと長くなったりしたら・・・それに足や手が8本も10本もある人間なんだったりしたら、・・・あたしそう言うのを見たら、まるっきりだめなのよ。・・・死んじゃう気持ちになっちゃうのよ。」と答える。
    『な、南方の国の人も、怪物みたいに言われちゃって、・・・なんだか・・・あんまりな言われ方ね・・・。』
     秘書役のニーナは、何と言っていいかわからないと言いたげな表情で、ライラックを見ていた。
    「ふ~ん・・・。誰から聞いたんだ。そんな事を?。」と、公爵の問いに、
    「誰って・・・あたしが子供の時に村に来て住み着いた、元傭兵剣士と名のっていた老人の男性ね。・・・なんでも地の果てにいた魔人の大魔王とたった1人で戦って、地の底に封印して世界の滅亡を防いだと豪語していたし、それにこうも言っていたわ。 ある国の山奥にいた数百年も生きている3本の尻尾を持つ巨大な妖狐と1週間も戦い続けて、99人もの兵隊の死人を出しながらも、最後の1人になっても戦い続けて、やっとその国から追い払う事が出来たと、胸を張って話していたのよ。・・・その元傭兵剣士の老人が南方の国に行った時に、南方の国の人間達はそのような姿で歩いていたと言っていたのよ。・・・ちがうの?。」
     ライラックは真剣な表情で答えた。
     それを聞いていた公爵は、先端が折れ曲がった髭を指で触りながら、「それはまたすごい傭兵剣士だな。・・・」と呟きながらも思案の表情になった。
    『はて?・・・わたしは過去にそのような兵隊達と戦いをしたと言う記憶が無いのだが・・・。』
     公爵は記憶のページをいくら開いても、そんな項目が頭の中に浮かんでは来なかった。
     周りの人達が、ライラックの言うすごい元傭兵剣士の話を、驚きの表情で聞いているとき、秘書役のニーナが公爵の耳元でそっと聞いてきた。
    「公爵様、本当なのですか?。」
     公爵は、あんな話しお前まで信じるのか?・・・と言うようなウンザリとした顔でニーナに向かって、
    「そんなにすごい傭兵剣士がいるならば、1度戦ってみたいものだね。・・・そもそも私はここ数百年この国に住み着いているが、話のような戦いも剣士にもあった事はないんだがね・・・。」と、苦笑いを堪えながら答えた。
    「では、ライラック殿の話している元傭兵さんの体験談は・・・・?。 特に南方の国の人間のことは・・・?。」
     ニーナは、あらあらと言った驚いた顔で公爵に聞き返した。
    「ま、そう言うことだ・・・。 それにしても、その元傭兵の老人の話のことは別にしても、南方の国の人間のことに関しては、こんな間違った事をこの大陸中の国々に言い広められたら、私の交易に支障が出て来るな・・・。 本当に人間って言う生き物は・・・。」
     溜め息をふぅぅと付きながら呟いた公爵は、ズイッと顔をライラックに近づけると、
    「ライラック、『百聞は一見にしかず』と言うことわざを知っているかな?」
     ライラックは驚いたような表情で、思わず顔を大きく左右に振った。
    「い・・・いいえ」
    「それならば1度南方の世界を見てくるといいぞ。」
     思いも掛けない公爵の言葉に、ライラックが「だから・・・南方の人間は・・・」と言い掛けたとき、公爵は指をパチンと鳴らした。
     それを合図に、周りにいた水夫達が「へぇーい!」と一斉に声を上げると、ドドドーっとライラックに飛び掛かって行った。
     ドタン。バタン。バシーン。バタターン。ドシーン。
     モクモクとライラックの立っていた場所を中心に、土煙が立ち上がっている光景を、チャーム、グリーン、ルドらは、目を丸めて見つめていた。
     しばらくして土煙が薄れると、首から足の先まで縄でグルグル巻にされて、芋虫のようにされてしまっているライラックが現れた。
    「ちょっ・・・ちょっとぅ。 なんなのよー。 縄を解いてよぉ。」
     簀巻(すま)きにされて地面の上に転がらされているライラックは声の限り叫んだが、公爵はまるっきり無視をして、背後にいる秘書役のニーナの方に視線を向けた。
    「はい。」とニーナは小さく頷くと、ミスター・商に声を掛けた。
    「ミスター・商様、出航の準備をお願いします。」
    「はいあるネ。・・・みんな出航の準備するあるヨ」
     ミスター・商の命令を聞いた水夫達は、ドドドドーと2隻の船の中へと駆け込んで行った。
     その先頭には、水夫達に担ぎ上げられ簀巻きにされているライラックの姿が見えていたが、そのまま水夫達と一緒に船の中へと消えていった。
    「ちょっとー。 放してぇー。」とのライラックの悲鳴を、呆然と見送るチャームたちの耳に残して・・・。
     それからしばらくの時が過ぎた。
     港はさっきまでの騒動が嘘のように、いつもの水夫達の働いている騒然とした音が辺りを包んでいた。
     積み荷を船の中に運び込む者。 船の甲板上で出航の準備をしている者。
     船の下では運び込まれる積み荷を確認しているミスター・商とルドがいた。
     フォレックス公爵はそんな光景を満足そうに見つめている。
     ジャァァァァーン。ジャァン、ジャァン、ジャァン。
     全ての荷物を積み込み、出航の準備が出来上がった2隻の船からは、出航を伝えるドラの音が勢いよく鳴らされていた。
     チャームとグリーンはルドの後に従って、先頭の船に乗り込んでいった。
     ルドはこの2隻の商船隊の指揮を、ミスター・商に代わって取るのである。
    「いってらっしゃぁい。 気を付けてねぇ。」
     公爵の背後にいるニーナが、チャームとグリーンに声を掛ける。
    「行ってきまぁす。」
     ニコニコと微笑んでいるチャームの横で、グリーンが上げた片手を大きく振っていた。
    「商船隊と積み荷の事、しっかりと頼むあるネェ。」
     ミスター・商が声の限りに叫ぶ。
    「ああ。 親方まかせておけ。」
     ルドはグッと右腕を曲げて力こぶを作る。
    「ようし野郎ども!。 帆を上げろ!。 出航だ!。」
     商船隊の総指揮を取るルドのかけ声が上がると、帆をいっぱいに張った2隻の船はゆっくりと岸を離れて行った。
     そして岸辺にいるフォレックス公爵達と、船上のルドやチャーム達との間が少しづつ離れて行く。
     ザザザー。ザザザー。
     港から出て行く2隻の船は、南方の地方に向かうために、帆にいっぱいの風を受けて大海原へと進んで行くのであった。
     船上で米粒のように小さくなっていく公爵達に、大きく手を振っていたグリーンは、ふと何かが足りない事に気が付いた。
     グリーンはきょろきょろと船上を見渡した。
    「どうかしましたか?。 グリーンさん。」
     横に立っているチャームが、ニコニコとした顔で聞いてきた。
    「あのぉー・・・。ライラックさんの姿が見えないんだよ。」
     不思議そうに言うグリーンの言葉を聞いて、チャームはポツリと呟いた。
    「そうですね。・・・そう言えばライラックさんは見あたりませんね。・・・確か水夫の人達と一緒に、最初に船に乗ったところまでは見たんですけども・・・。」
    『最初に乗ったって・・・僕にはライラックさんが水夫達に無理矢理に担ぎ込まれて、乗せられたように見えたけども・・・』
     あまり気にする事もなく、のんびりとした口調で答えるチャームを見て、グリーンはちょっと心配になってしまった。
    『このメンバーに参加して、無事ブラッド・オパールが探し出せるのかな?』と、不安な顔でチャームを見つめていると、チャームは心配ないと言った表情でこう言った。
    「でも気にすることは無いと思いますよ。・・・ライラックさんの事ですから、結構わたし達の足の下あたりに居るかも知れませんね。」
     チャームの言葉を聞いたグリーンは、不思議そうな顔で自分の足下に目を落とした。
    「足の下に・・・?。」
     その頃、山のような積み荷を積み込んでいる船倉の隅っこで、縄でグルグル巻にされている蓑虫状態のライラックが、モゾモゾと這いずり回っていた。
    「何であたしが、こんな目に会わなくちゃならないのよぉ!」と叫びながら・・・。
    「・・・はぁぁぁぁー・・・。」
     出航時のドタバタを思い出しながら、夜の海を見つめていたライラックは、大きな溜め息を1つついた。
    「なんだか・・・とっても疲れたわ。」
     そう呟くと、ライラックはまた溜め息を付いた。
     その時ゾワッとした悪寒が、ライラックのお尻の辺りから全身に渡って、勢いよく流れるのが感じられた。
    「な、なに?!」
     ライラックの溜め息を付いていた表情が、サァーッと戦いの時の顔へと瞬時に代わっていった。
     ライラックが気が付かない内に、何か得体の知れない怪物が、突然ライラックの背後から襲って来たのだと思ったからだ。
    『くそっ!。 スキをつかれたか?。』
     ライラックは腰の剣を抜こうと手を剣に掛け、身体を半回転させて背後の敵を確認しようとした。
     グリッと痛いような感触を感じた。 何かがライラックの尻に噛みついているのか?。
     身体を回転させたライラックが最初に目にしたのは、キラリと光る白い歯のような物だった。何と言うことだ。・・・怪物がライラックの首筋に噛みつこうと、ズラリと並ぶ白い歯を見せているではないか。
     ライラックの脳裏に「死」の文字が浮かび上がる。
     目の前の白く並んでいる歯がカッと大きく開いた。
    「くっ!。・・・これまでか!。」
     ライラックはグッと両目を閉じて、怪物が首筋に噛みついてくる時を、身を固めて待った。
    「・・・・・・・・」
     しかし、怪物は一向に襲ってくる気配は感じられなかった。 ただ先程から、ライラックの尻に噛みついているのか、掴んでいるのかよくわからないが、尻の肉を圧迫する感触のみが感じられていた。
    「なに?。・・・どう言う事?。」
     ライラックの頭の中でその言葉が浮かんだ時、前方の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
    「どうしたんだ?、ライラック。」
    「え!?。・・・この声は・・・?」
     急いで閉じていた目を開けると、声のした方向に視線を向けた。
     そこには、先程目にした白く健康的な歯を並べた口を開けて、笑っているルドの顔があった。
    「ル、ルド!。」
     ライラックは思わず早口で、ルドの名前を叫んだ。
    「がははは。 いったいどうしたんだ?。・・・あ、そうか。 俺の指技が心地よくて、感じていたのか?。」
     ルドが笑いながらそう言うのを聞いたライラックは、目の前に見えるルドの右の腕を目で追っていくと、その先の手は、ライラックのお尻の臀部をしっかりと包むように掴んでいたり、揉んでみたりしているのを見た。
     くにゅ。くにゅ。くにゅ。
    「ライラックの尻は揉み心地がいいな。・・・どうだ?、気持ちがいいだろう?。」
     最初、怪物が噛みついたと思われていたのは、ルドがライラックのお尻を掴んで揉んでいたり、いやらしくさすっていたりして、触っていたものであった。
     くにゅ。くにゅ。くにゅ。
     ルドの尻揉みは、ライラックが抵抗をしない事をいいことに、より一層ルドの指の動きが巧みになっていく。
     そればかりか、ルドのもう片方の手がライラックの前のヴァギナの方に移ってきた。
     ツツツツ・・・。 クリクリクリ。
    「あう・・・ん・・・。」 ライラックの口から小さく声が漏れる。
     ライラックの尻を揉んでいたルドの指が、アナルの周辺をなぞるように動いている。
     くりゅ。くりゅ。くりゅ。・・・ぐいぐいぐい。
     ライラックのヴァギナに指を押しつけたり、ヴァギナの縦の割れ目にそって、指をゆっくりと上下に動かしたりしている。
     ツツツツーー。グリグリグリ。 ツツツツーー。グリグリグリ。
     ルドの指の動きは実に巧みだ。 ライラックは船の縁に両手を掛け、何とか身体を支えて、ただ小さく吐息を洩らしているだけだ。 海の方に身体を向けたライラックの背後からライラックの身体を抱くようにして、右手をライラックのアナルの所に、左手をライラックのヴァギナの所に添えて、指姦を続けるルドの口の端は満足そうに歪んでいた。
    「どうだ?、ライラック。 いくら硬い鎧を着ていても、ライラックの腰から下はこの通りガラ空きだからな。くくく・・・。」
     ライラックの姿は、ルドの言う通りその上半身は身体を守る硬い銀色の鎧で固めているが、その鎧は股間の辺りまでしか無く、腰から下の下半身は僅かに両脚を守る銀色のすね当てを付けているだけなのだ。
     ライラックの着けている鎧の下には、半袖タイプで股間の所までの長さのTシャツを着ているだけだ。 またそのTシャツの下はパンティーしか身に着けていないのだ。 しかし足元から見ればまるっきしの無防備のような姿も、戦場で剣を戦わせる場所では、そのような事は誰も気にしていない事なのだ。 同じように魔怪物と戦う時も、そのような姿であっても何ら問題の無い格好であった。
     相手はそれに気が付く前に、ライラックの剣に切り倒されていたからだ。
     ヌチュ。ヌチュ。ヌチュ。ヌチュ。ヌチュ。
     ライラックのヴァギナとアナルを責めているルドの指先が、ライラックの穿いているパンティー越しに、濡れ始めだしてきた感触を感じていた。
    「へへへ。 ライラック、お前のオマンコから濡れた音がし出してきたぞ。 それどころか、俺の指先にライラックのオマンコから溢れ出しているイヤラシイ汁が、絡み付いて来るぞ。」
     ルドは顔を赤く上気させて小さく喘ぎ声を洩らしているライラックの耳元で、呟いてくる。
    「あ・・・、ああ・・・。あう、・・・あ、ああぁん。」
     ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。
    「くくく・・・。ライラック。 もうパンティーはビチョビチョになっているみたいだな。ライラックは淫乱な女だな。」 ルドがまた耳元で囁く。
     ニュギュ。ニュギュ。ニュギュ。ニュギュ。ニュギュ。
    「あ・・・ん。 ぁぁぁん。・・・そ、そんな事・・・い・・・言わないでぇ・・・。 はぁぁ~ん。」
     ライラックは鼻から出すような喘ぎ声を洩らしながら、いつしか自分の腰を動かし始めているのであった。 ヴァギナとアナルをじらしながら責めてくるルドの指を、ライラックの方から招き入れようとしているかのように・・・。
     ネチャ。ネチャ。ネチャ。ネチャ。ネチャ。
     ライラックのパンティーは、失禁したように濡れまくって、ルドの指先を濡らしまくっていた。
    「はう。はう。・・・はう、はう、・・・あは、う。」
     ライラックの口の端から涎が垂れてきている。 どうもライラックはもうすぐエクスタシーを迎えてイクようであった。
     ルドは「頃合い良し」と見て、ライラックのパンティーに手を掛けて、ゆっくりと膝の方へ下ろしていこうとした時、
    「やめんかぁぁぁぁ!。」 
     ズ ガ ァ ァ ァ ァ ー ン ン ン!!!。
     ライラックのアッパーカットが、ルドの顎を的確に捕らえた。
    「あぐっ!。」 ルドは短い声を上げ空中で弧を描くように舞うと、数メートル先の甲板上に、ドターッ。と背中から落ちた。
    「はぁ、はぁ、はぁ・・・。 いい加減にしろよぉ・・・このセクハラ親父がっ!。 あたしはそこまでは許していないからね!。」
     ルドの指技をヴァギナとアナルに受けて、エクスタシーを全身で感じていたライラックの顔が、180度ガラリと代わってしまっていた。
     肩で大きく息をしながらライラックは殴り倒したルドの姿を睨み付けていたが、いっこうに起きあがってこないのを見ると、ちょっと心配な気持ちになってきた。
    「あはっ。・・・もしかすると、ルド・・・死んじゃった?。」
     もし死んだりしたら、さすがのライラックも、これはマズイ事になるぞ・・・と言う思いがしてきた。
    「ね・・・ルド、生きてる?。・・・なんとか言ってよ。・・・死んでいるなら死んでいるって。」
     ライラックは倒れているルドの身体に近づくと、手を掛けて揺すってみた。
    「ね、ね・・・。ルド目を覚ましてよ。 生き返ってよ。・・・なんとか言ってよぉ。」
     ライラックは段々と焦り気味になってきて、懸命にルドの身体を揺り動かしてみた。
    「ルド。ルド。 死なないでよ。 お願いなんとか言ってよう。」
    「ねぇ。ルド・・・なんとか言って・・・ひっ!。」
     ライラックが涙声でルドに言いかけていた時、突然ライラックの涙声が途切れた。
     ライラックの股間の所に違和感を感じたからだ。
     見ると、ひざまついているライラックの股間の間に、ルドの右手がしっかりと潜り込んでいたのだ。
    『信じられない!・・・』と言いたげな表情になってしまったライラックの目は、股間をいやらしく愛撫をする指の動きをしているルドの手を見つめていた。
    「ライラック・・・。俺はこの程度で死ぬようなヤワじゃないぜ。 もっともライラックの手で殺されたなら、俺も思い残すことは無くあの世とやらに逝くことが出来るけどもな。・・・あ。それにな。 俺はまだ29歳で、ライラックとは10歳しか違わないんだぞ。まだ親父じゃネェ。 ガハハハ。」
     そう言いながらルドは上半身をムクッと起きあがらせると、ライラックの顎を手のひらでそっと持ち上げ、驚いた表情をしているライラックにはお構いなしに、ライラックの唇に自分の唇を近づけていった。 あと数センチと言う所で、突然ルドの後頭部にとてつもない衝撃が襲ってきた。
    「あ・の・なぁぁぁぁ!」
     まさにその瞬間に、正気に戻ったライラックは大声で叫ぶと両手でルドの頭を掴み、思いっ切り甲板上に押し倒した。
     ス ガ シ ャ ー ン ッ!!!。
     ルドの頭は甲板の板を突き破って船内へと消えていた。側から見たらルドの身体が逆さまになって、首から下の身体が甲板の下から生えているみたいに見えていた。
     偶々船上に居てこの貴重な(?)光景を目にしてしまった数人の水夫達は、誰もが『あんな女を恋人にしたら、命がいくらあっても足りないな』と心の中で秘かに思うのであった。
     そしてこれ以後、ライラックを見て邪な妄想を考える水夫は、誰ひとりとして居なくなったのであった。
     そんなこんなドタバタがあった船にも、やっと睡眠という安らぎの時が訪れた。
     海原を走る船が静寂に包まれていく。・・・はずであった。
    「わあぁぁぁぁ!。 やめてよぉぉぉぉ!。 たすけてぇぇぇぇ!。」
     突然その静寂を引き裂くような、少年とも少女とも付かない悲鳴が、船中にこだました。
    「何事?。 人がせっかく寝ようとしていたのに・・・。」
     ライラックは何事かとベットから飛び起き、ドアを開けて廊下に出ようとした時、勢いよくドアが開いてひとりの少女が飛び込んで来た。
     ズシーン!。 「きゃっ!。」 ライラックは悲鳴を一言上げると倒れ込んだ。
     飛び込んで来た少女は、座り込んだ姿でポツリと呟いた。
    「はあ。・・・勢いよくぶつかったけど、ケガをしなくて良かった。」
    「そう、それはよかったわね。・・・それならばさっさと避けてくれる?。」
    「え?。」 少女の足の下からしてくるライラックの声に、少女は慌てて視線を下に向けてみた。
     倒れているライラックの身体の上に、少女が座り込むようにのっかっていたのだ。
    「ご、ごめんなさーい。」
     少女がライラックの身体から避けると、ライラックは「よっこいしょ」と起きあがった。
     ライラックは目の前にいる少女の姿を見て首をひねった。
     
     床まであるゆったりとしたスカートの綺麗で可愛いドレスを着て、頭の髪の毛には大きなリボンをした、13,4歳ぐらいの可愛い少女がそこにいたからだ。
     この船に、こんな可愛い女の子が乗り込んでいたかしら?。・・・と、ライラックは港でこの船に乗り込んだ時の事を思い出していた。
     目の前にいる少女は着ているドレスの着こなしといい、可愛い顔立ちと言い、ショートカットの髪の毛の頭に付けている可愛らしい大きなリボンと言い、どこか上品さが漂って来るその姿に、どう見ても身分の低い少女とは思えなかった。
     ・・・どこかの大商人の娘か?、・・・それともどこかの貴族の娘と言う事も考えられた、・・・まさかどこかの王家の姫君・・・かも?。
     そう考えると、ライラックはよけいに頭をひねる事になってしまった。
     それならば何故荒くれの水夫達が大勢いるこの船に、どうしてこの女の子が1人で乗り込んでいるのか、さっぱりわからなかった。
     何かを言いたげにしている少女の顔を見ながら、ライラックの名(迷)推理が始まる。
    『もしかすると、この少女はどこかの高貴なところの姫君で、13,4歳になった彼女に親が政略結婚をさせようとしたので、いやがった彼女はこの船に逃げ込んで来たんだわ。
     きっと彼女の結婚相手というのは、どうせ豚のように太って脂ぎった顔の中年の男に決まってるわ。 そう言う男に限って女の子の汚れのない身体を陵辱するようにセックスをするのよね。』
     ライラックは少女の身体をそっと抱くと、「もう何も怖がることは無いわ。 あたしがあなたを守って上げるからね。」と少女の耳元で言うのであった。
     腕の中の少女はちょっと違うんだけどもなぁ・・・と言うような表情になっていたが、自分の世界にドップリとはまり込んでしまっているライラックには、そんな事は気が付かなかった。
     それもそのはずで、ライラックの脳裏には幼い姫君を命を掛けて守る「気品高い剣士」の姿になっている妄想を描き出していたからであった。
     しかしその幸せな妄想の時は、ひとつの発せられた声によって打ち切られた。
    「見つけた!。 ここに居たんだ。」
     ライラックの背後からしてきたその声を耳にした少女は「ひっ!。 たすけて。」と、ライラックの身体にしがみついた。
    『何と言うことなの!。 この姫君を拉致して連れ戻そうとする悪人の手先が、この船の中にまで入り込んでいたの?。』
     ライラックは瞬間的にそう思うと、サァァァー!と腰の剣を抜き去り、声がした背後の方向に振り下ろした。
    「悪人めっ!。 かくごぉー!。」
    「きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!。」 
    「わぁぁぁぁ!。 ライラックさんやめてぇぇぇ!。」
     ライラックの雄叫びに続いて、ふたつの悲鳴が船内から月夜の大海原に響き渡り、直後、ライラック達の乗っている船がまばゆい光と閃光に覆われた。
     ・・・そして直ぐに、静寂が夜の海を支配していった・・・。
     カチャ。 鳥や動物の肉を焼いた料理が皿の上に乗せられ、スープの皿や果物を載せた容器が所狭しと置かれているテーブルの隅に、今ワインのグラスがおかれた。
    「う~ん。 朝食の時に飲むこのワインは、また格別だな。」
     部屋の中に差し込んでくる朝日の光を浴びながら、フォレックス公爵は満足そうにそう言うと、目の前にある鳥の焼き肉料理にナイフを入れた。
     コッコッコッ。
     そこへ公爵の秘書役のメイドのニーナが、ドアを開けて入ってきた。
    「公爵様おはようございます。・・・先程届きました報告が2通ございます。」
     ニーナはそう言うと、焼き肉の料理をうまそうに食べている公爵に、2通の報告書を手渡した。
    「うん・・・。私の交易船が無事向こうの港に着いたようだ。」
     公爵は「よしよし」と言った満足そうな相打ちを打ちながら、ワインのグラスを手に持つと、グイッと口に運んだ。
     そして報告書の2枚目に視線が移った時、突然公爵の口に含んでいたワインが『ぶぐぁぁぁぁっ!』と勢いよく・・・まさに赤い色の噴水のごとく、公爵の口から空中に噴射されたのだった。
     公爵の側にいたニーナも、周りで朝食の世話をしていたメイドの女の子達も、一瞬何が起きたのかと思ってしまうほどの状態が、この部屋の中で展開されたようで、ニーナもメイド達もただ目を丸めて、ポカンと眺めているだけであった。
    「な、なにぃー。」 公爵は報告書を両手で持ち直すと、改めて報告文を読み直していた。
    「ど、どうされましたか?。 公爵様。」
     公爵の声に我を取り戻したニーナは、急いで公爵の側に近づいて報告書を覗き込んだ。
     そこには、2隻の交易船の内のライラック達やルドが乗り込んでいた船が、目的の港に着く前の夜に、謎の光を放って一瞬にして消滅をしてしまったと書いてあったのだ。
    「消滅って・・・?。公爵様、まさか・・・」
     ニーナは驚いた顔で公爵に話し掛けた。
    「残念ながらあの辺りには、『バミューダ・トライアングル』なんかは存在しないぞ。」
     公爵は、不思議だな・・・と言った顔で答える。 ニーナは顎に手を当て少し顔を傾けて考えて、わかったと言うように両手をパチンと打つと、公爵に向かって彼女のひらめいた考えを述べだした。
    「やはり巷で言われているように、海の彼方には地球の端があって、そこは絶壁になっていて、海の水が滝のように地の底へと落ちているんですわ。・・・ライラック殿達の船はその滝から地の底へ落ちたのですわ。」
     ニーナのこれしかないっと言う意見を、胸を張って言うのを見た周りにいたメイドの少女達は、お互いに身体を抱き合ってブルブルと脅えだしていた。
     これを聞いた公爵は、はぁーと溜め息を付き頭を抱えた。
    「あ・の・なぁ・・・。 よりによって秘書役でメイド頭のお前まで、そんな人間の迷信を信じているとは・・・。 要するに船は一瞬にして沈んだと言う事だろう・・・。」
     しかし公爵の考えは直ぐに別の方向に移っていた。
    「船1隻分の積み荷がそのまま海の藻屑となったという方が、私にはショックだぞ。」
     そう公爵の頭に中は、ライラック達の事よりも、船の積み荷の損害額の数字が支配していたのだった。
    「あの・・・。 公爵様お言葉ですが・・・ライラック殿達の事は心配では無いのでございますか?。」
     ニーナはそんな公爵の姿にちょっと腹だたしさを感じ、批判的な言葉を投げ掛けてしまった。
     公爵はニヤリとした表情をニーナに向けると、「そうだな。 それじゃお前が地下の拷問部屋で、ライラック達の事を心配してやるといいぞ。」と言い放つと、右の指をパチンと鳴らした。
    「ひっ!。」 その音を耳にしたニーナは思わずハッとした顔になって、自分がとんでもない態度を公爵に対して取ってしまったことを、今はっきりと気づいてしまったのである。
     綺麗なピンク色のロングヘアが恐怖で逆立っているのが見える。
    「も、申し訳ございません。 公爵様。 どうかお許し下さい。」
     ニーナは泣きそうな声で謝罪をすると、土下座をして額を床にすり付けた。
     ガシッ。 土下座をしているニーナの両腕を左右の衛兵が掴むと、悲鳴を上げることも出来ずに、ワナワナと脅えた表情になっているニーナを、地下の拷問部屋へとズルズルと引きずっていった。
     引きずられて行ったニーナの後には、微かに水分が流れた後が見受けられた。 どうもニーナは、恐ろしさのあまりに小便を洩らしてしまったようだ。 当然この部屋の床を小便で汚した罰も、地下の拷問に加えられる事は火を見るよりも明らかであった。
     その光景を、部屋中のメイド達が脅えた表情で見つめていた。
    「・・・ったく、人間の奴隷女の分際で、この私に意見を言うとは300年早いわ。」
     公爵の冷たい視線が、ジロリと振るえているメイド達にも向けられる。
    『秘書役のメイド頭と言えども、所詮は牝奴隷に過ぎないんだからな。・・・ましてや只のメイドのお前達などは、虫けら同然の奴隷なんだからな。 私の許し無く勝手に言動をする事は許されないからな。 いいかこの事を肝に銘じておくんだぞ。』と公爵の冷たい視線は命じていた。
     部屋の中にいたメイドの少女達は、ゾクッと全身に冷水を浴びたような冷たいものを感じていた。
     しばらくして、その公爵の冷たい視線は窓の外へと向けられた。
    「ライラック・・・か。・・・ま、あいつらならば、殺しても死ぬような連中じゃないからな。 悪運を束にして背負っているようなヤツらだからな。」
     公爵はそう呟くと苦笑いをした。
     青空の中央に浮かんでいる、太陽の放つ陽光が大海原に惜しげもなく注がれている。
     その海原の中に木の葉のような小さなボートが、波間に弄ばれるように浮かんでいた。
     ボートの中には、鎧姿のライラック、いつも着ているミニのワンピース姿のチャーム、今は女の子のドレスを着ているグリーンの3人が、身体を寄せ合うようにして乗り込んでいた。
     どうもライラック達は、沈没した船から無事逃げ出す事が出来たようだ。
     しかしボートの中のライラックの表情は、何か沈んだようになっていた。
    「ライラックさん、浮かない表情をしていますけども、どうしたんですか?。 せっかく沈む寸前の船から逃げ出して来れたのに。」
     チャームはいつものごとく、ニコニコとした顔でライラックに話し掛けた。
    「チャーム何度言えばわかるのよ。逃げ出してきた訳ではなく脱出してきたの!。 このボートに乗り込んで。」
     ライラックはチャームの脳天気な言葉に、ちょっとムッとして早口で答えた。
    「そもそも、チャームがあの船の中で、攻撃魔法を手当たり次第に出しまくるから船が沈んじゃったのよ。 責任を感じてよね。」
     思いも掛けないライラックからのチャームを責める言葉に、「な、な、何を言うのですか?。ライラックさん。・・・ライラックさんが急にわたしに斬り掛かってきたから、わたしは驚いてしまって、身に付けている魔法を出してしまったんですよ。 本当に死ぬかと思ったんですからねぇ。」、チャームはライラックが悪いと言いたげな言葉を返した。
    「それはこちらの事よ!。 ヘタしたら今頃はこの海の底に沈んでいるところだったのよ。」
     ライラックの言葉にチャームは「あー。あー。そんなことを言うのですか?。 今までいろんな場所で、ライラックさんを助けてきたわたしに・・・。それにあの船からは逃げ出せたのだから、それだけでも幸運だと思ってくれなければ・・・。」と叫んだ。
    「だから『逃げ出しではなく、脱出』だってば。 チャーム!。」ライラックが叫ぶ。
     その時、
    「逃げ出してこようが、脱出してこようが・・・そんな事ここではもうどうでもいい事じゃない!。」
     けんかをしているライラックとチャームの2人の間に、ドレス姿のグリーンが泣きそうな声で割り込んできた。
     ライラックはキッとグリーンを見ると、「そもそもグリーンがそんなドレスを着た格好で、あたしの部屋に飛び込んで来た事が、問題の始まりだったんじゃないの。・・・何でそんな格好をして船の中を歩いていたのよ?」と言いながら詰め寄った。
    「そうですよ、グリーンさん。・・・船の中は男性の水夫さん達しかいないんですから、そんな可愛い姿でいたら、朝までに水夫の人達にレイプをされていましたよ。 強姦ですよ。・・・女性のグリーンさんの身体の穴という穴の中に、男の人達の精液がたっぷりと注ぎ込まれていたかもしれないんですよ。」
     チャームもライラックの後に続いてグリーンに意見を言った。
    「あー!。チャーム何言ってんだよ。 女の身体の僕にドレスを着せてリボンを付けて喜んでいたのは、誰だったんだよう。」
     グリーンは涙声でチャームに詰め寄った。
    「そうでした?。」 チャームは記憶に無いなーと言いたげな顔をした。
    「あーっ!。 それはないだろう。・・・『夜の間は女の身体だから、女の子らしくドレスアップさせて上げる。』と言って、いつも着ている僕の男の服を脱がせて、このドレスを無理矢理着せたんじゃないかー。」 グリーンは訴える。
    「ふーん・・・。 この騒ぎの裏にはチャームが居たんだ・・・。」
     ライラックは冷めた目でチャームの顔を見た。
    「あーん。 そんなに睨まないで下さーい。 ライラックさん。」
     チャームは可愛くブリッコの姿をして見せた。
     そんなチャームにライラックが聞き始めた。
    「チャーム、ちょっと聞くけども、グリーンが着ているドレスは、どこから持ってきたの?。
     あたし達はこんなドレスを用意してなかったはずよ。」
     チャームは指を顎に当てて、ちょっと考えたようにしてみて、「あの船の船倉に沢山積んでありましたよ。」と平然と答えるのだった。
     
    「なに言ってるのよ!。・・・それって、港に運んでいる売り物の積み荷じゃないの!。・・・あなた、船の積み荷を勝手に持ち出してきて、グリーンの身体を使って着せ替え人形のようにして遊んでいた訳なのね?。」
     ライラックの言葉に、チャームは只ニコニコとした顔をしているだけだった。
    「あのねぇ。 少しは責任を感じてよ。・・・いくらエルフ族だからって、人間の習慣を守らなくていいとは言えないのよ。」
     ライラックは溜め息を付きながら言った。
     そこに、「それに、それに、女の子が男のパンツを穿いているのは変だと言って・・・、脱がされたから、僕はこのドレスの下は裸なんだよー。・・・ううう・・・、いま昼間だというのに・・・。」とグリーンの声。
    「クスクスクス・・・。ま、そんな事は気にしないで下さい。 あの沈み掛けた船から、逃げ出せた事を考えたら、そんな事は小さな事ですよ。グリーンさん。」
     チャームは平然とした顔でグリーンに向かって言うのであった。
    「冗談じゃないよ!。 沈没寸前の船から脱出してきても、このボートの中には食料も水も何も無いんだよ。 しかもこんな海の上で、これからどうやって生きていくんだよ。」とグリーン。
     ライラックは溜め息を付くと、「そうよね。 それが問題よね。・・・はぁぁ。先の事を考えると、気が落ち込んでしまうわ。」と言い、また浮かない表情に戻った。
    「このままだと僕たち餓死しちゃうよ・・・。 グスン。グスン。・・・僕まだ死にたくないよう。・・・」 グリーンが言葉を続ける。
    「グリーン。 子供みたいに、ピーピー泣かないでよ!。・・・泣きたいのはこっちの方よ。」
     ライラックの叱責がグリーンに投げ掛けられる。
    「えーん。 僕はまだ14歳の子供だよー。」 泣きながら答えるグリーン。
    「何が14歳の子供よ。・・・あたしの村に居た従姉妹は14歳でお嫁に行ったのよ。 また幼なじみの女の子は、13歳の時に結婚して14歳の時にはもう子供を産んでいたのよ。」
     ライラックがそう言うのを聞いていたチャームは口を開いた。
    「ライラックさん・・・それで村に居づらくなって傭兵になったんですか?。・・・周りがドンドンお嫁に行くのに取り残されたから・・・」
    「!!!!。」ライラックは一瞬氷のように固まってしまった。 どうもライラックの心にグサリと来る物があったようだ。 その証拠にライラックのこめかみに青筋の血管が浮かび上がりピクピクと痙攣をしていたからだ。
    「あ・・・。もしかすると、聞いてはいけない事を言ってしまいましたか?。 わたし・・・。」
     チャームはそんなライラックにお構いなく、ニコニコした表情で言った。
    「・・・そ、そうよ・・・。」
     身体中を小刻みに振るわせて、暗い顔でうつむいていたライラックは、小さな声でポツリポツリと喋り始めた。
    「そうよ。そうよ。 どうせあたしは行かず後家(ごけ)よ。 あたしだってね、13,4歳の時にはそれなりの男性だっていたし、お見合いの話しだって来ていたんだから。・・・それもこれもみんなあの変質男がいけないんだぁー!。」
     突然ライラックは空に向かって叫ぶように、自分の事を話し始めた。
    「あの余所から来た変質男があたしの家に忍び込んで来て、あたしの下着を盗み出してそれもあろう事か、あの男が身に付けていたのよ。 それどころかあたしのパンティーを使ってマスターベーションをしていたのよ。・・・だから頭に来たあたしは、その変質男をボコボコにして半殺しの目に会わせてから、衣服を剥ぎ取って全裸にして木の枝に逆さ吊りにしてやったのよ。・・・」とライラック。
    「そ・・・そうですか・・・」グリーンはそう相打ちを打つと、『ライラックさんて、そう言う過去を経験しているんだ』と思いながら、やはりちょっと身を引いてしまっているのを感じていた。
    『それにしても・・・14歳の女の子が、男を半殺しにして裸にして逆さ吊りに吊しますか・・・それはそれで、ライラックさんらしいけれども・・・。あはははは。』
     グリーンは心の中で苦笑いをしていた。
    「あたしは被害者なのよ。 それなのに、それなのに・・・。 それ以来、お見合いの話しもあたしの周りにいた男性達も、ピタリと来なくなったのよ。・・・ううう・・・」
     ライラックは涙声になりながら、段々と語尾を強くしていくのであった。
     チャームとグリーンは、ライラックの身体から妙な殺気が漂って来始めた事に気が付いた。
    「な・・・なに、この殺気は?。」 グリーンがそう思ったとき、突然ライラックが腰の剣を鞘から抜き出すと振り回し始めた。
    「あたしは被害者なのよぉー!。 それなのに何で『おとこおんな』って言われるのよー。
     どうして『化け物女』って噂されなくちゃならないのよ!。 何で何で『行かず後家』って言われなくちゃならないのよ!。・・・そうよそうよ。あたしはもう『女を捨てた』のよぉぉぉ!!。」
     やけくそになっているライラックはボートの中で泣き叫びながら、剣をビュンビュンと振り回し続けた。
    「きゃぁぁぁー!。」 チャームは頭を手で押さえると身を屈めていた。
    「わぁー!。 ライラックさーん暴れないでーぇ。 ボートがひっくり返っちゃうよぉー!。」グリーンは真っ青になって、ライラックの背後から飛びつくと両腕を抱え込もうとした。
     この状況はまさに、江戸城松の廊下で、吉良上野介に斬り掛かる浅野内匠頭を取り押さえようとしている時みたいであった。・・・まさに気分は「殿中でござる!。 殿中でござる!。」であった。
     しかしライラックより身体の小さいグリーンは、ライラックの背中でブンブンと振り回されていた。
     チャームは急いで魔法書を開くと、何かの呪文を唱えページを海面に投げ入れた。
     バシャーーーン。 突然海面が2メートルほど盛り上がると、大立ち回りをしているライラックの身体に降り掛かった。
     
    「・・・あ・・・。 ・・・あたし・・・何していた・・・の?。 ・・・いま?。」
     頭から水を被って正気に戻ったライラックは、力が抜けるようにペタリとボートの中に座り込んだ。
     握っていた剣がコトンとボートの床に落ちた。
     ライラックは気が抜けると、お腹の中から「グー」と言った腹の虫が音を立てて鳴き出した。
    「お腹が減った・・・」 ライラックの口からポツリと言葉が飛び出した。
    「そ、そうですね・・・」 背後でホッとした表情をしているグリーンが返答する。
     ボートの床に切られて落ちている、自分の金髪の髪の毛を指で拾いながら、ライラックの顔に近づけて見てみると、瞳はまだ焦点が定まっていないようであった。
     チャームはグリーンの顔を見ると、自分の顔を左右に振って、「まだダメね。 正気に戻るには、まだ時間が掛かりそうよ。」と言った。
    「はぁぁぁー。 ライラックさんじゃないけども、お腹が減ったなぁー・・・。」
    「そうみたいですね」
     緊張が解けたグリーンとチャームは空腹感を感じ始めていた。
     だけども、このボートの中には何もない。
     そう思うと、チャームとグリーンの2人も「はぁー」と溜め息を吐き、ガックリと頭を項垂れるのであった。
     しばらくしてチャームは右側の海を眺めてみた。
     見渡す限り海、海、海、水平線の彼方まで海しか見えなかった。
     チャームはガックリとまたうつむいた。
     それからまたしばらくして、今度はグリーンが左側の海を眺めだした。
     どこまでも見渡してみても海、海、海、僅かにカーブを描いている水平線のあの奥さへも、この海が続いているんじゃないかと思われるぐらい、海原が広がっていた。
     グリーンは全身から力が抜けるのを感じると、再びうつむいた。
     それからいったいどのくらいの時が経っただろうか?。
     ガックリと肩を落としているグリーンの男根に何かが触れている・・・と言うか、男根の部分に何かが握ったり蠢いたりしている感触が感じられてきた。
    「え?。」 グリーンは最初、パンツを穿いていないから、自分の男根が着ているドレスのスカートの生地か、このボートの部分に触れているのかと思った。
     そこでグリーンはどうなっているかと思って、視線を下に移してみた。
     座っている両足の間に、チャームの右手がスカートの裾から潜り込んでいた。
    「あ、あ、・・・あの、これ・・・。チャーム?。」
     予測もしない事にグリーンは慌てふためいた声を上げ、逃げるように身体をチャームの側からずらした。
    「あら。 ダメよ。 逃げたりしたら。」
     チャームはニコニコ微笑みながら、グリーンの身体に左の腕をまわすと、右手をグイッと股間の間に入れた。
    「あうっ!。」 グリーンは身体をピクンと一瞬動かした。
     チャームの右手の指がグリーンの男根に触れて、その筒を指で軽く握ってやるのであった。
     今は昼間だから、グリーンの身体は男性に戻っているのである。 それも下着の着けていないドレスだけの姿で・・・。
     グニュ。グニュ。グニュ。グニュ。グニュ。
     チャームの指が動いて、グリーンの男根の筒を弄び始めていた。
     グリーンのまだ小さくなっている男根は、チャームの指の責めの動きに段々と反応を示していくようであった。
    「あ・・・あ、い・・・。 チャ、チャームぅー・・・だめだよ。・・・やめてよ。」
     グリーンは、息使いを何とか荒くしないように気を付けながら、チャームに辞めてくれるように懇願した。
    「なにがダメなのかしら?。 グリーンさん。・・・あなたのここは逆にもっとしてくれと言っているわよ。 クスクスクス。」
     チャームは微笑みながら、より一層グリーンの男根に指を這わせるのであった。
     ブヨブヨ、グニャグニャだったグリーンの男根は、チャームの指の刺激に反応して、メキメキと硬く太くなっていくのであった。
     クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。
     男根の筒を、先端の亀頭のスベスベになっている所を、男根の根元にある玉が2つ収められているシワのある袋を、チャームの指が責め立てる。
    「あ・・・あ・・・あ・・・いい・・・。 あう、あう・・・あ・・・い・・・。」
     グリーンは男根や袋から背筋越に攻め上って来る、快感の波に飲み込まれようとしていた。
    「クスクスクス・・・。 グリーンさんが快感を我慢する表情は、見ていて可愛いわよ。」
     グリーンの股間の間で指を使って弄んでいるチャームは、クスクスと笑いながら言った。
     クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。
     グリーンは次から次と攻め寄せる快感の波に、つい腰を浮かせてしまいそうになっていた。
    「・・・チャー・・・ムぅー・・・。 どうしたんだよ?。 いつものチャームとは違うよ・・・。」 チャームがこんな事を自分に対してしてくるとはまだ考えられないグリーンは、チャームの身体に両手を当てて、押して引き離そうとした。
     チャームは引き離されまいとして、逆にグリーンの身体をグイッと引き寄せると、グリーンの耳に口を近づけて何事かを囁くのであった。
    「心配しなくてもいいですわ。 私はグリーンさんの知っているあのチャームですよ。 このボートの中でただぼんやりしていたら、希望を無くして命に関わる事になりますからね。 少なくとも、こんな事をしていれば、絶望感や失望感を今感じる事はありませんから。・・・それにその内きっと近くの海を船が通りますよ。」
    「う、う~ん。」 グリーンの力を入れていた両手が止まる。
     バサッ。 不意にチャームがグリーンの着ているドレスのスカートの裾をめくった。
     グリーンは下着は着けていないから、直ぐにチャームの目に勃起している可愛いグリーンの男根が飛び込んで来た。
    「きゃっ。 可愛い~。」 チャームが思わず甲高い声を上げる。
     グリーンは見られた男根を隠そうと、捲られたドレスを両手で押さえようとした時、チャームが不思議そうに言った。
    「あれ、グリーンさん。 確か衛兵に捕まって公爵様の所で裸にされた時、グリーンさんの股間には産毛程度とは言え陰毛が生えていましたよね。・・・それなのに、何故今はグリーンさんのオチンチンには陰毛が生えていないんですか?。 髪の毛と同じ、緑色の陰毛が・・・?。」
    「うっ!。」 グリーンは隠していた物を発見されたような気持ちにならながらも、その訳をポツリポツリと言い出した。
     それによると、グリーンが夜な夜な女の子の身体になる度に、陰毛が抜けてしまっているとの事であった。 そしてとうとう一本も残らず陰毛が無くなってしまったとの事だった。
     それを聞いたチャームは頭を少し傾けた。 何故なのか理由が思い付かないからだ。
    「チャーム。 僕の身体はちゃんと元通りの姿に戻るよね?。」
     グリーンは半泣きになりながら、チャームに聞いてきた。
    「大丈夫ですよ。 身体をちゃんと元通りにして上げますよ。 私はハーフとは言えエルフですよ!。」
     チャームは任せろと言うように胸を張ったが、内心は『これはきっと魔法を掛けた時の副作用かもしれないわね。 このままほっておけばグリーンさんの身体がどのように変化をして行くのか、面白い結果が見れそうね。 楽しみだわ。』と言った、イケナイ気持ちが頭を持ち上げて来ているのがわかったが、ニコニコと微笑むチャームの表情からは、それを見つけ出す事はグリーンの目には出来なかった。
     そんなとき、生気の無い瞳で前方を眺めていたライラックの目が、突然ピクッと動くとみるみる生気を取り戻していき、ライラック本来の光を放った瞳がそこに現れた。
     ライラックはガバッと立ち上がると、驚いて見上げている2人に見えるように、ビッと右の人差し指を水平線の彼方に指し示した。
    「チャーム、グリーン。 船が来るわ!。」
    「ええー?。」「どこ?。」
     2人は急いでライラックの側に集まると、ライラックの指の先を眺めて見た。
    「・・・・・・・・・」
     チャームとグリーンの2人は目を凝らして指の先の水平線を見ていると、小さい米粒ほどの大きさの船影が見えてきた。
    「わぁー。 船だわ。 助かりましたね。」とチャームが喜びの声を上げた。
    「・・・でもライラックさんはすごいな。 あんなに小さくて、見分けがつかない大きさなのに、船だと見抜いちゃうんだもの。」 グリーンは感心したように言った。
    「すごいでしょう。・・・ライラックさんは空腹になった時、時たまこう言うような野生の動物のような5感を発揮し出す時があるのよ。」
     チャームの説明に、グリーンは何となく分かったような頷きをするのであった。
    「ふ~ん。 ライラックさんが、女を捨てたという意味が何となく分かったような・・・。」
     そんな2人の頭上にライラックの大声が響いた。
    「2人とも何をやっているのよ。 このボートを漕いであの船に近づくのよ。」
    「えーっ。 私達がボートを漕ぐのですか?。」
     チャームは目を丸くしてライラックに聞き返した。
    「あなた達2人以外、誰がここに居るというのよ!。 ゴチャゴチャ言っていないで、さっさと漕ぐのよ!。」
     ライラックの命令にも近い言葉に、チャームとグリーンはボートの床に置いてある櫓を手にすると、ボートを漕ぎだした。
     ライラックはボートの舳先に立つと、両手を上げて船に向かって叫びだした。
     しばらくして、船の方もライラックに気が付いたらしく、ボートの方に向かって進んで来たのだった。
    「助かったわ!。 チャームもグリーンも手を抜かないで、どんどんボートを漕ぐのよ。」
     ライラックの言葉に、チャームが先に音を上げだした。
    「あ~ん。 もう手が疲れて動きませんよー。 休ませて下さいー。」
    「僕も、もうダメだよー。」
     続いてグリーンも根を上げだした。
    「なに言っているのよっ!。 ここであの船に助けられなければ、もうあたし達はこの海の上でアウトになるのよ!。 ゴチャゴチャ言っていないで、さっさと手を動かしてボートを漕ぐのよ!。」
     ライラックの命令の言葉を受けて、チャームとグリーンはいやいやながらも、櫓を漕ぐのであった。
    「ぐすん・・・。エルフはこんな力仕事には向かない身体なんですよー。」
     チャームは涙を流しながらボートを漕いでいる。
    「あーん。 これじゃガレー船の奴隷だよー。」
     グリーンも泣きべそをかきながらボートを漕いでいた。
     ボートの舳先で仁王立ちになったライラックは、ありったけの大声を船に向かって上げ続けていた。
     ボートと船の距離は段々と近づいて来た。
    「見て見て。 もうすぐあの船に助けられるわよ。 だからもう少し漕ぐのをがんばるのよ。2人とも。」
     そう叫ぶライラックの口ぶりは、嬉しさを感じているようであった。
     あの船に行けば、空腹を満たしてくれる食べ物があると言う事が、ライラックの心と頭脳の中を支配していたのであった。
     そしてそのライラックの唇の端から涎が一筋流れ落ちるところを見ると、いまライラックが何を思っているかは、想像が付くという物であろう。
    「もうすぐ、もうすぐ、・・・もうすぐで食べ物にありつけるわ」
     ライラックはそのような言葉を呟きながら舌なめずりをして、船を凝視する鷹のような目はボートの方を注目している船上の水夫達の姿を、しっかりと捕らえていた。
     ボートと船の距離はドンドンと狭まってきた。 あと少し・・・と言う時になって、突然ライラックの思いとは違う状況が起こりだした。
     ザバザバザバザバーーーッ。
    「ええ?。」 ライラック達の目の前まで近づいていた船が、突然急ブレーキを掛けて止まると、Uターンをして全速力で離れだしたのだ。
    「どうして?。どうして?。ライラックさん、何故船は行っちゃうんですかぁー?。」
     チャームが悲鳴に近い声を上げた。
    「知らないわよぉー!。 こうなったらとことん追って行って、あの船に救出してもらうのよ。 さあ、あの船に追い着くまで漕ぐのよっ。」
     ライラックの号令一過、ボートは懸命に船に追い着こうと漕ぎ続けた。
     バシャー。バシャー。バシャー。バシャー。
     ビックリするぐらいのスピードで、ボ-トは船を追い続けた。 もしこの光景を見ている人が居たら、帆を張った船のスピードとほぼ同じ速度で船を追って行くボートを見て、とても驚くことだろう。
     バシャー。バシャー。バシャー。バシャー。
    「はひぃー。はひぃー。・・・いったいいつまで漕いでいるんですか・・・?。 全然距離が縮まりませんよぉー。」
     びしょ濡れになりながら櫓を漕いでいるグリーンは、息も絶え絶えになりながらも声を上げた。
    「知らないわよ!。 何故あたし達から逃げるのか、あの船に聞いてよ。」
     ライラックがそう言うと、チャームがハヒー、ハヒー、言いながらライラックに言葉を掛けた。
    「ライラックさーん。」
    「なによチャーム?。忙しいんだから、意見は簡潔に言いなさいよ。」とライラック。
    「あたし思うんですけども・・・。船はあたし達から逃げているんじゃなくて、・・・このボートの後ろにいる何かから逃げているんじゃないでしょうか?。」
     チャームの的を得たような言葉に、前方ばかりを見ていたライラックは「え!?。」と小さく言うと、『まさかねぇ』と思いながらも、そーっと背後の方に顔を向けてみた。
     同じようにチャームとグリーンも、一緒に視線を背後に移してみた。

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 20年, 11か月前

    〈 心強い?仲間達が大集合の巻・後編 〉
    「なに?。今の悲鳴は?」。ライラックが歩く足を止めた。
     ライラックは顔を左右に向けた。何処から聞こえてきた悲鳴か探そうとした。
    「今のは悲鳴だったな?」。ルドが確認のため聞いてくる。
    「あたしも聞きました」。チャームも答えた。
    「うわぁぁぁぁ!」。今度ははっきりと聞こえた。近くの空き家からだ。
     ライラック達は空き家に近づいた。
     ライラックとルドは、危険を避ける為、空き家の壁に身体をつけた。
    「やはり、正面から飛び込んだら、危険かも知れないな」
    「あなたもそう思う・・・」。ルドの言葉に、ライラックも同意する。
     ライラックとルドは壁に耳を当てて、中の様子を窺った。
    「何か聞こえるか?」。ルドが聞く。
    「しっ。静かに」。ライラックは中の音や声を聞こうと、耳に神経を集中した。
     ライラックの耳に、家の中から声が聞こえてきた。
     それは・・・、
    「ごめんくださーい。誰かいませんかー」。チャームの叫ぶ声だった。
    「あ、あのねー・・・」。ライラックとルドは思わず顔を見合わせた。
    「誰もいないんですかー?。入って行きますよー」    チャームはそう叫びながら、家の中にドンドンと入って行く。
    「ライラックの連れは、随分と度胸があるな」
     ルドは感心したようにライラックに言った。
    「単に怖い物知らずなだけよ」。ライラックは呆れたように答えた。
     少なくとも、チャームが歩いて行った所には、トラップは無いと言う事だ。
     ライラックとルドはチャームの後を追った。
     ライラック達が家の中に飛び込んだ時、奥の方から「あ、グリーンさん見っつけたぁ」とチャームの嬉しそうな声が聞こえてきた。
     それに続いて、「あれれ・・・。グリーンさん、魔物ともお知り合いだったんですか?」とチャームの突拍子もない声が聞こえてくる。
    『なに?。魔物も一緒にいるのか?』
     ライラックは腰の剣の柄を握り、直ぐにでも剣を抜く事が出来るように用意をして、チャームの声が聞こえてきていた部屋へと走り込んだ。
    「チャーム!」。ライラックはチャームの背中を確認すると、声を掛けた。
     見ると、正面に6本脚の昆虫のような姿の魔物がいた。
     その横にはグリーンが泣き顔で蹲っていた。
     ライラックはいかにしてグリーンを助け出すかと、頭の中の脳を回転させた。
    『どうする?』。ライラックが一瞬思った時、サァァァーッと彼女の側を何かが旋風のごとく通り過ぎた。
    「え?」。ライラックは今のは何だ?と言った顔になって、回りを見渡そうとした時、「もらったぁぁぁ!」とルドの大声が部屋中に響き渡った。
     ライラックはギョッとして声のした方向に急いで顔をむけた。
     見るとルドが腰の剣を抜いて、魔物に飛び掛かって行くところであった。
     ズバァァッ!。たちまちルドの剣が魔物の脚を切り落とした。
     ズシャッ。跳んだ脚が壁に当たって床に落ち、ザザザー、と砂に変わっていく。
    「がははは。見たか!。戦いは先手必勝だっ!」。ルドは剣を上げて叫んだ。
    『な、何なのよ?・・・この男は』
     ライラックは目を丸めて、キョトンと見つめてしまった。
    「オギャァァァ」。脚を切り落とされた魔物が、雄叫びを上げた。
    「まだ叫び声を上げる元気があるのか?」
     ズバアアッ。再びルドの剣が魔物の脚を切り落とした。
    「ウギュウゥゥゥ」。両脚の傷口からドス黒い体液を流しながら、魔物が叫ぶ。
    「どうだライラック見たか?。俺の剣の腕を!」
     魔物の声以上の大声で、ルドはライラックに向かって叫んだ。
    『なんなのよ?』。呆れた顔で見ていたライラックは、急にひきつった顔になった。
     魔物の切り取られた脚が、傷口から段々と再生していっているのを、目にしたのだ。
     とかげの尻尾やかにの手足のように・・・。
     再生した前足を振り上げると、ルドの背後に爪を振り下ろした。
    「伏せてっ!」。ライラックはルドに叫ぶ。
     ルドは「おわっ!」と大声を上げながら、飛び込むように床に伏せた。
     魔物の鋭い爪が音を上げて中を切った。
    「な、何で切り取った脚が元通りになっているんだぁ?」
     ルドの叫びを聞いたライラックは、「魔物を前にして、有頂天になってあたしの方を見ていたからよ。んとに・・・少しは今の状況を考えなさいよ」と、頭を抱えながら呟いた。
     直ぐに、魔物の側にいたグリーンの方に目を移す。
     グリーンはチャームに助けられて、ライラックの側に戻ってきた。
     ルドも這いずくばって、ライラックの所に戻ってきた。
    「グワオォォォォ」
     魔物は横にしている巨大な身体を持ち上げた。
     魔物の身体が、家の屋根を突き破って、家の外に出現する。
     ドドドドー。ズシュアズシュアズシュアー!。
     その衝撃で家が崩れだし始めた。
    「いけない!。直ぐに脱出するわよ」
     ライラックの言葉で、みんなは外に向かって懸命に走った。
    「あーん!。天井が崩れてくるぅ。当たると痛いよう」
     チャームも騒ぎながら走り続ける。
    「おわあああ!。俺はまだ死にたくないぞう!」。ルドが必死に走る。
    「わぁぁー。僕まだ裸のままなんだよう」
     ライラックに手を引かれているグリーンが訴えると、ライラックは「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ!。裸でいるくらい我慢しなさいっ!」と声を張り上げて答えた。
     ズドドドドドォォォォォー。
     音を立てて、家が崩れていった。
     ライラック達は、すんでの所で外に飛び出す事が出来た。
    「ぜえぜえぜえぜえ・・・。何とか間に合ったわ・・・」
     ライラックは肩で大きく息をしながら、他の3人の姿を確認していた。
     ホッとした気持ちになったライラックの頭上で、「グギャァァー」と魔物の叫び声が響いてきた。
     ハッとして頭上を見上げる。
     家を崩した魔物が、ライラック達を見下ろしていた。
     一瞬どうしようか?・・・と思ったライラックであったが、いつものように取り敢えずは、
     ライラックの生き残りの原則その1、『危ない時は36計逃げるが勝ち』にしたがって、
     この場所から逃げる事にした。
     ライラックの後を追って、チャームとルドが後に続いた。
     グリーンはまだライラックに手を引っぱられたままだ。
    「あーん。そんなに引っぱらないでよー。腕が抜けちゃうよー」
     グリーンの悲鳴に、「腕は2本有るんだから、1本ぐらい抜けても気にしないの!。男の子でしょう!」
     ライラックはむちゃくちゃな返答をして、グリーンを引っぱって走り続ける。
    「おーい。いったいどこまで逃げるつもりだ?」。ルドが走りながら聞いてきた。
    「そんな事、1番後ろから追い掛けて来る魔物に聞いてよ。どこまで追いかけて来るんだって」
     ルドは、ソッと後ろを眺めた。
     魔物が6本の脚を動かして迫って来る。
    「げっっっ!」。ルドは直ぐ側まで迫って来ている魔物を見て、真っ青になって走るスピードを上げた。
     うわぁ。きゃぁ。わわぁ。ぎゅあぁ。・・・。
     走ってくるライラック達の後から、巨大な魔物がついて来るのを目にした町の人達は、大騒ぎとなった。
     家の中に隠れようとする者、町から逃げようとする者、・・・。
     ライラック達を追って、町の中に入り込んだ巨大な魔物は、目の前の家を壊しだした。
     ガラガラガラ・・・。
    「ウグワオッ」。魔物は雄叫びを上げると、隣の家も破壊し出す。
     グワシャーン。ガラガラガラ・・・。
    「おい。俺達、魔物を町の中に招き入れちゃったかな?」
     町を破壊し始めた魔物を見て、ルドが首を傾げながらライラックに言った。
    「何を言っているのよ。あの魔物が勝手にあたし達を追い掛けて来て、この町の中に来たんじゃない。・・・絶対にあたし達に落ち度は無いんだから!」
     ライラックは暴れる魔物を睨みながら、はっきりと言った。
    「そうそう。あの暴れている魔物が一番悪いんです」
     チャームもライラックに賛成の意見を言う。
     そ、そうなのか?。と、何となく思うルドであった。
    「とにかく、あの魔物を倒して町を守るのよ!」。ライラックが無理矢理そう宣言をする。
     タタタタタ・・・。
     ライラックの回りに衛兵隊が集まってくる。
    「援護をして!。・・・やぁぁぁぁっ!」
     ライラックは言うと、剣を抜いて魔物に飛び掛かって行った。
    「氷刃!」。チャームは魔法書のページの1枚を魔物に向かって投げた。
     シュッッッッ!。ズバッ。ズババババッッッ。ズバァッ。
     魔法により、十数個の氷の刃になった刃物が、魔物の身体に突き刺さる。
    「ウギャァァァァー」
     ライラックに行っていた魔物の注意が、チャームの方に向いた。
     ライラックはその隙を見逃さずに、魔物の身体に取り付いた。
     ズバァァァ!。ライラックは魔物の身体に、剣を力一杯突き刺した。
     ビュシュゥゥゥゥ。深く突き刺した剣を抜く。ドス黒い体液が傷口から噴き出る。
    「たぁぁぁぁ!」。グサッ!。ライラックは再び剣を突き刺す。
     ビシュッ。剣を抜きさるとまた黒い体液が出て来る。
     魔物の顔が首を曲げてライラックを眺めている。
    『くっ!。効き目がないか?・・・ダメかっ?』
     魔物の身体から離れようとした時、びゅんっ!。と言う空気を切る音がして、魔物の尻尾がライラックを跳ね飛ばした。
     ビシィィィン!。
    「きゃっ」。ズシャッ。ライラックは、建っている家の壁に叩き付けられた。
    「うぐっ」。ライラックは新しい鎧を着ていたので、衝撃をかなり防ぐ事が出来た。もし着ていなかったら、大怪我をしていただろう。
     ライラックは剣を杖がわりにして立ち上がろうとした時、ガッ!。と魔物の前足がゴムのように伸びてきて、ライラックの首を握りしめた。
    「あぐっ!」
     回りにいたチャーム達も、魔物の前足がゴムのように伸びるなんて、考えもしなかったので、呆然と眺めていた。
    「魔物の前足が十数メートルも、ゴムのように伸びるなんて・・・」
     ルドがポツリと呟く。
     地面に蹲っている裸のグリーンは、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。・・・だがグリーンの手にはブラッド・オパールの入っている皮の袋がしっかりと握られていた。
     この皮の袋だけは、自分も気が付かない内に持って来てしまったようだ。
    「あっ。いけないっ!」。突然チャームが叫んだ。
     ライラックの首を握りしめていた魔物が、ゆっくりと立ちだしたのだ。
    「あ・・・ぐ・・・。ぐ、ぐ、く、る、し、い・・・」
     首吊りにあった状態のライラックは、全身から汗が噴き出してくる。
     ライラックの両足が地面から離れて、ライラックの身体は中吊りになった。
    「あーん・・・。どうしょう。どうしょう・・・。このままじゃ、ライラックさんが死んじゃう!」
     チャームは何かライラックを助ける魔法は無いかと、魔法書を急いでめくる。
     その時ルドが、「俺が助ける!」と言って、剣を抜いて魔物に向かって行った。
    「衛兵のみなさーん。ボオーッと見ていないで、支援をして下さい!」
     チャームは回りで見ている衛兵達に叫ぶ。
    「ゆ、弓矢で魔物を射るんだ!」。隊長が命令をする。
     ピュン、ピュン、ピュン・・・。
     ブスッ、ブスッ、ブスッ・・・。
     衛兵達の矢が、音を立てて魔物の身体に突き刺さる。
     魔物はいくら矢が当たっても、気に止めるような事がなかった。
    「あーん。これじゃ、あたしの氷刃攻撃の方がまだましです」
     泣きそうになっているチャームの耳に、魔物を切り裂く剣の音がしてくる。
     見ると、ルドが魔物の足下で剣を振り回している。
    「うおぉぉぉぉ!。この!。このっ!。このっ!」
     ズバァッ!。ズバァッ!。ズバァッ!。
     ルドの振り回す剣が、魔物の脚や身体を切り裂くが、直ぐに傷口が再生してしまうので、魔物にダメージを与える事が出来なかった。
    「くっ・・・。あ・・・あ、脚を・・・切るんだっ」
     ライラックは息苦しさの中で、声を振り絞ってルドに聞こえるように叫んだ。
    「うおぉぉぉぉ!。そうかぁぁぁ!。ライラック。今助けてやるからなっ!」
     バサッ。バサッ。バサーッ!。
     ルドはライラックからのアドバイスを聞いて、さっきより一層力を込めて剣を振り回し、魔物の脚を切り裂きだした。
     立っていた魔物は脚を切り裂かれて、バランスを崩して倒れそうになり、魔物は掴んでいたライラックの首を思わず放し、ライラックの身体は地面に落ちた。
     ドシャッ。「うーん・・・。げほげほげほ・・・」
     ライラックは自由になって息を整える。
     ライラックは手を首に持っていき、2,3回首筋をなでた後、力を振り絞って立ち上がり、槍を持っている衛兵の所に走り寄った。
    「槍を貸してっ」。槍を手に取ったライラックは、魔物の方に向き直って槍を構えた。
    「やぁぁっ!」。ライラックは手にした槍を、大きく開けた魔物の口めがけて投げた。
     ジュシャッ!。槍が口の奥に突き刺さり、槍先が魔物の首筋から突き出した
    「ウギャァッ!」。魔物は叫びを上げると、ドドドォーと地面に身体を俯せにして倒れた。
     ライラックは止めを刺そうと、魔物の背中に駆け上がると、魔物の頭目掛けて剣を振り上げた。
    「死ねっ!」。ライラックは叫ぶと、振り上げていた剣を一気に振り下ろした。
     その瞬間、バサァァァァッ!。と言う音と共に、「うわぁぁっ!」とライラックの身体が弾き飛ばされた。
    「ライラックさん、大丈夫ですかぁ?」。チャームが走り寄って来る。
    「なにっ?」。倒れた身体を起こしたライラックは、魔物の変化をした身体を目にした。
     魔物の背中から巨大な羽根が現れたのだ。
     羽根は4枚ある。トンボの羽根を巨大にしたような形だ。
     ライラックは剣を握り直して構える。
     ルドも剣を構えている。
     チャームはライラックの背後に隠れている。
     夜空に浮かんでいる2つの月の光を受けた魔物は、ライラックをギロリと睨むと、巨大な羽根を動かし出した。
     ブゥゥゥーンと言う音と共に、土煙が舞い上がった。
    「うっ!」。土煙が一瞬、ライラックの視界を塞いだ。
     だが、魔物が高速でライラックの方向に突っ込んで来るのが、瞬間的にわかった。
    「あぶないっ」。ライラックは背後にいるチャーム共々地面に伏せた。直ぐ頭上を魔物の羽根音と共に、ゴォォォォーと言う、魔物が通り過ぎて行った空気の速い流れが、ライラックとチャームの身体を包み込んだ。
     ガバッ。地面に伏せていたライラックは、急いで身体を起こして、夜空に飛んで行った魔物の後を目で追った。
     ライラックは夜空を見渡したが、もう魔物の姿は何処にも見あたらなかった。
    「何処に行った?」
    「見あたらないぞ!」
     ライラックの他に回りにいた人達も、夜空に消えた魔物を捜すように、夜空を見上げ続けていた。
     回りの人達と一緒に夜空を見上げていたグリーンは、みんなの注意が魔物の去った方向に向いている事に気が付いた。
    「そうだ。誰も僕の事に気が付いていないぞ。今の内にここから逃げ出そう」
     グリーンは裸になっている事にはお構いなしに、ライラック達のいるこの場所から、一刻も早く逃げ出しにかかった。
     どうせ新しい服なんか、直ぐに手に入ると思っていた。
     なぜなら、グリーンは盗賊を仕事としているので、普通の服ぐらい何処からでも手に入れる事が出来た。それに彼の手にはブラッド・オパールが入った皮の袋が握られていた。
    『それじゃ、さよなら。オパールはしっかりと貰って行くからね。・・・早いところ町のどこかに隠れよ。・・・ほとぼりが冷めた頃どこか他の土地でこれを売っぱっらってしまえばいいや。・・・くくく、きっと良い値段で売れる事まちがいなしだ』。と心の中で呟いたグリーンは、逃げようと身体を動かした時、自分の身体に今まで経験のした事がない違和感があるのを感じた。
    「???・・・???」。グリーンにはそれが何であるのかは、ちょっと分からなかった。
     グリーンは視線を落として、自分の身体を見てみた。
     いつも見慣れている自分の胸部と腹部とその下半身が目に映っている。
     別にこれと言って変わったところは・・・。
     ん?。ちょっと左右の胸の部分が、腫れているように膨れてはいるが・・・。
     腰の辺りがキュッと締まったような?。
     股間の所だって、いつもの通りに・・・お毛毛に囲まれた、僕のオチンチンが付いて・・・?。
    「ん?。・・・いっ!!!。・・・あ、う、あ・・・う。・・・あ、あああ、うっそぉぉぉぉっ!!!!!!」
     グリーンは自分の股間を凝視した時、信じられないと言った思いで、思わず大きな悲鳴を上げてしまった。
    「どうぉぉぉしてぇぇぇー?。ないよぉ!。ないよぉ!。ぼ、ぼ、僕のオチンチンが無くなっているようぉ!」
     グリーンは叫びながら、股間の辺りに手を懸命に動かしていた。
     本来なら、その場所にしっかりと生えて付いているグリーンのペニスが、今の股間には消えたように無くなっていて、代わりに上から下へと、股間の間を小さな裂け目が出来ていた。ヴァギナだ。
     真っ青な表情になったグリーンは、ヘナヘナと力が抜けて、その場所に座り込んでしまった。
    「うわぁぁぁん!。ぼ、ぼ、・・・僕は女の子になっちゃったよぉ!」
     ライラック達は、一斉に悲鳴を上げたグリーンの姿を見た。
    「え?、ええー?」。と同時に、驚きの声が上がった。
    「グリーン・・・あなたは・・・本当は女の子だったんじゃなかったの?」
     グリーンに近づいたライラックが、信じられないと言った風に聞いた。
    「ち、違うよぉ。・・・僕は生まれた時から、ずっと男だよぉ!。・・・あーん。どうしょう・・・僕、女の子の身体になっちゃったぁ!」 
     グリーンはそう大声で叫ぶと、わあわあと泣き出した。
     ライラックはグリーンが泣いている姿を見下ろしながら、どうして女性の姿になってしまったのか、不思議でならなかった。
    『本来の姿が、別の物に変化してしまう原因は・・・薬で?・・・手術で?・・・魔法で?・・・魔法に掛けられて?』
     ライラックは「はっ!」と気が付くと、チャームに話し掛けた。
    「ね、チャーム。グリーンはもしかすると、先程の魔物に女の身体になる魔法を、掛けられたんじゃないかしら?」
     すると、魔法書を手にしているチャームが答えた。
    「ライラックさん、その考え半分だけ、ピンポーン、です。・・・でもあの魔物が魔法を掛けた形跡は、ありませんね」
    「何よ。その半分だけって?。・・・」
     チャームの答えに、ライラックは怪訝な顔をした。
    「それじゃ、グリーンに魔法を掛けた人物は、他に誰かいたかしら?・・・」
     ライラックがそこまで言った時、「まさか?」とチャームの顔を見た。
    「チャーム。あなたがグリーンに、女性になるような魔法を掛けたの?」
    「残念ですけど、その答えは、ブゥー、です。あたしはグリーンさんに、傷が早く完治する魔法しか掛けていませんよ」
     チャームはニコニコとした笑顔で答える。
    「ああ。グリーンが国境の近くの村で村人から付けられた傷を、あたしが治療した時に、チャームに頼んでグリーンに掛けてもらった魔法ね。・・・確かにあの魔法は効果があったわ。朝には傷口が治っていたんだから。・・・それではどうして?」
     ライラックは不思議に思って首を傾げた。
    「はい。あの魔法はとっても効果がありました。・・・が・・・」
     チャームの口から出てくる言葉を聞いていたライラックは、最後の『が』の一言に、とっても不安になり聞き返した。
    「チャ、チャーム・・・何よその最後の、が、って?」
    「いえいえ、大した事ではないのですよ。ライラックさん。・・・ただあの魔法を掛けると、ちょっとした副作用があると言う事が、さっき魔法書を読み返してみたら、書いてあったんです。もしかすると、それが原因かな・・・と思いまして」
     ライラックはチャームの話を聞いていて、またあなたなの?、と言いたげに頭を抱えた。
    「副作用って?」。ライラックの問い掛けに、チャームは、
    「ズバリ、あの魔法を掛けられた人は、副作用で身体が男女逆になると言う変化なんですよ。男性ならば女性の身体になってしまい、女性ならば男性の身体になるという風に・・・。ね、大した事ではないでしょ?」
    「あのねぇー・・・。それって十分大変な事だと思うわよ」
     微笑みの表情ひとつ変える事無く、平然と言ってのけるチャームに、ライラックは額を押さえながら呻くように答えるのであった。
    「でもね、でもね、もしライラックさんが大怪我をしたら、グリーンさんに掛けた魔法を使って、傷を治して上げますからね。」
    「ははは。・・・大怪我をしないように十分に気を付ける事にするわ」
    「ライラックさん、何もそんなに遠慮する事はないんですよ。水くさいですよ。それにこの魔法、少なくとも効果がある事が分かったんですから」
    「・・・ちょっと待てっ。・・・効果がある事が分かったって、・・・その魔法は今まで使った事がなかったの?。」
     ライラックは驚いて早口で聞き返した。
    「ライラックさん・・・だって、今まで使う機会が無かったではありませんか。・・・でもこれで心配しないで大怪我をして下さいね。ちゃんと魔法で治して上げますからね」
    『いやだ!。この年齢になってから・・・今頃になってから、男性の身体になんかには、変わりたくはないわよ』
     ライラックは冗談じゃないと、きっぱりと拒否する気持ちを固めた。
    「とにかくそんな事よりも、グリーンの身体はどうなるの?。元には戻せるんでしょ?」
     ライラックは話題をグリーンの事に戻すと、チャームに聞いた。
    「あーん。チャーム、僕の身体を元に戻してよぉぉぉー」
     グリーンは泣きながらチャームの足下にしがみついた。
     チャームは手にしている魔法書を開くと、中の文字を読み始めた。
     ライラックは読んでいるチャームにそっと近づいて、読んでいる魔法書の中を覗き見てみた。
    「えっ?」。魔法書のページが真っ白で、何も文字が書かれていない、見えない。
     チャームは驚いているライラックに気が付くと、説明をした。
    「この魔法書に書かれている文字は、持ち主であるあたし以外読む事が出来ないように、魔法が掛けてあるんですよ」
    「ふーん」と、ライラックはちょっとガッカリする。ハーフエルフの魔道士がどのような魔法文字を使っているか、見てみたいと思っていたからだ。もちろんライラックには、その文字を読むことは出来ないのだけれども・・・。
    「グリーンさん、わかりましたよ」。チャームが開いていた魔法書をパタンと閉じた。
    「グリーンさんが女性の身体になっているのは、『日没から日の出までの夜の間だけ』で、『日の出から日没までの昼間は』本来の男性の姿に戻る事が出来るようですよ。よかったでしたね」
    「それの何処がよかったんだよ!。僕は完全に男の身体に戻るの?。戻らないの?」
     グリーンは顔を青くして叫んだ。
    「ズバリ、今は戻りませーん!。グリーンさんに掛かった副作用を消滅させる為の魔法を使うレベルまで、私の能力が達していませんので、あきらめて下さーい」
     チャームはケロッとした表情で、グリーンを地獄に落とすような宣告を告げ続ける。
    「でもグリーンさん、何も悲観する事はありませんよ。・・・一度の人生で男と女の2つの身体を経験できるなんて、そんな人間はいませんよ。・・・それに『1人Hをする』時も、『相手の異性とHをする』時も、グリーンさんは『男と女の両方のタイプで体験』出来るんですよ。どうです夢のようでしょう?」
     チャームが、グリーンへの慰めのつもりで言っている言葉を聞いていたライラックは、『その言葉は、絶対に慰めにはなっていないぞ。』と思っていた。
     その証拠に、グリーンは驚きと失望感で、口をポカンと開けたままでいたのであった。
     流石にチャームもちょっとマズイかなと思ったのか、「グリーンさん、そう心配しないで下さい。その内レベルアップをして、その魔法を消滅させて上げますから。・・・1年先か・・・10年先か・・・あ、もしかすると50年先かもぉ」と笑顔で言った。
    『あ。チャームのバカ!。そんな事を言ったら、余計不安になるだけじゃないの・・・』
     ライラックは心の中で叫び声を上げて、頭を再び抱え込んだ。
    「そんなのイヤだぁぁぁぁぁー!」
     ライラックの心配通り、グリーンは火のような鳴き声を上げだした。
    「やだぁ、やだぁ、やだぁ、やだよぉー!」
     ライラック達は、暫くの間、グリーンが泣き叫ぶままにしていた。
     その内、隣にいたルドの肘がライラックの腕を小突いた。
     ライラックはルドの方に顔を向けた。 
    「こういう状態ですまないけどもよ。やっぱし盗賊のこの子を、逮捕しないとならないと思うんだけども。・・・」
     ルドが小声でライラックに語りかけた。
    「う~ん・・・」。グリーンをかわいそうに思っているライラックは、隣にいるルドに「どうしても?」、と言った顔をむけた。
     ルドは、「厳しいようだが、公爵の持ち物を盗んだんだ、見逃す訳にはいかないだろう」と冷たい口調で言った。
    「う~ん・・・」。ライラックは小さな声で唸った。
     ライラック達の前で、グリーンはわあわあと泣き続けていた。
     グリーンの泣き声は、今は公爵の館の中から聞こえてきている。
     罪人として、両手を後ろにロープで縛られているグリーンは、町の中ではわあわあと泣いていたが、フォレックス公爵の前に引き立てられて来たここでは、すっかりと大人しくなって、ただシクシクと静かに涙を流しているだけだった。
     少女のように可愛い顔に、全裸の姿で縛られている、この14歳の女の子が、男だとは公爵には信じられなかった。
     小さく盛り上がった左右の乳房。恥丘に薄く生え始めている緑色の陰毛。・・・髪の毛とやはり同じ色だ。ピッタリと1本の線のように閉じたヴァギナの口。・・・女の子に変身した今のグリーンのヴァギナは、まだ処女のままだろう。
     豪華な椅子に座っているフォレックス公爵は、「さて、盗賊のグリーンへの刑罰であるが・・・」と、ゆっくりと話し始めた。
     グリーンを見ていた皆の視線が、公爵の方に集中した。
     ライラックも、公爵の顔に視線を向けた。
     つられて、泣いていて目を赤くしたグリーンも、公爵の顔を見上げゴクリと唾を飲んだ。
     公爵は、グリーンの顔を見ながら、刑罰を言い渡した。
    「盗賊グリーン。お前はこの土地の領主である私の持ち物の「ブラッド・オパール」を盗み出した罪は重罪なり。よって「死刑」を言い渡す」
     公爵の冷たい口調の宣告と同時に、グリーンの「えぇぇぇぇっ」と言った驚きの悲鳴が上がった。
    「なお、刑の執行方法であるが・・・」
     公爵はそこまで言うと、秘書役のメイドの女性に目線で合図を送った。
     秘書役のメイドは「はい」と頷いて、手に持っている紙を広げると、書かれている文章を読み出した。
    「死刑の前に、罪人グリーンに対して、鞭打ちの刑を3日間おこなう。昼間は男のグリーンに対して、夜は女のグリーンに対して・・・それぞれ百回おこなう」
    「それじゃ・・・1日二百回も鞭で打たれるの?」。グリーンが声を上げた。
     秘書役のメイドの読み上げは、まだ続く。
    「刑の執行4日目は、罪人グリーンの両腕を、肩の所からノコギリを持って切り落とす」
    「ええー!」。驚くグリーン。
     秘書役のメイドの読み上げは、まだまだ続く。
    「刑の執行5日目は、罪人グリーンの両足を、太股の所からノコギリを持って切り落とす」
    「い、いやだぁー」。グリーンの顔がみるみる青くなっていく。
     秘書役のメイドの読み上げは、まだまだまだ続く。
    「刑の執行6日目は、罪人グリーンに対して、昼間は男のグリーンに対して、男根と睾丸の切断除去をおこない、夜は女グリーンに対して、左右の乳房の切り取りと、ヴァギナとクリトリスの切り取りと、肛門を抉り取る事をおこなう」
    「げ、げげーっ」。グリーンの両目から、枯れていたと思われた涙が、また流れ出した。しつこい用だが、秘書役のメイドの読み上げは、まだまだまだまだ続く。
    「刑の執行7日目は、罪人グリーンの腹を割いて、内蔵を全て引きずり出す」
    「ゆ、ゆるして・・・ごめんなさい・・・」。グリーンの顔が涙でグチャグチャになる。それでも秘書役のメイドの読み上げは、なおも続く。
    「刑の執行8日目は、罪人グリーンの両目を抉り出し、両耳と舌を切り取る」
    「もう・・・もう・・・も、も・・・」。グリーンはただ口をパクパクと、動かしているだけだった。
     くどいようだが、秘書役のメイドの読み上げは、なおもなおも続く。
    「刑の執行9日目は、罪人グリーンの身体を、先の尖った鉄の杭を使って、肛門のあった穴から口に掛けて櫛刺しにして、町の広場でさらし者の刑にする」
     グリーンはただただ呆然とした表情になっている。
     秘書役のメイドの読み上げも、最後の方になってきた。
    「刑の執行10日目は、櫛刺しにした罪人グリーンが、まだ息をして生きていたら、生きたまま火あぶりの刑をおこなう・・・以上です」
     秘書役のメイドは顔色ひとつ変える事無く、文章を全て読み上げてしまった。
     かわいそうにグリーンは腰を抜かして、その場所にペタンと座り込んでしまっていた。
     部屋の中にいるライラック達も、水を打ったように静かになってしまっていた。
     ライラックも、どうしたらよいか、わからなくなっていた。
     それでも、傍らにいるルドに「これじゃ死刑じゃなくて、子供のなぶり殺しと同じよ」と、ポツリと呟いた。
    「何とかして、グリーンを助けられないかしら・・・?」
     ライラックは何とか救う道はないかと考えを巡らした。
     だが、公爵は「グリーン、直ぐに死なないで、刑を受けて苦しんでいるお前の姿を、長く見せて、私を楽しませてくれよ」と言うと、手を挙げて衛兵に合図を送った。
     2人の衛兵が入って来て、座り込んでいるグリーンの肩に手を掛けた。
     館の地下牢に連れて行く為にだ。
     その瞬間、人形のように白い顔で静かに座り込んでいたグリーンが、突然壊れたサイレンのように、わあーわあーと声を上げて泣きだした。
     しかも座りこんでいる床に、失禁の小便を漏らしてしまっていた。
    「公爵さまー、まだ死にたくないよー!。どうか助けて下さい。お願いします!」
     グリーンは泣きながら公爵の足下まで張って行くと、床に額を付けて命乞いをしていた。いくら日頃から強がりを言っていたとしても、グリーンは所詮は14歳の子供である。
     自分の身に突き付けられた、現実味となった死の恐怖には、どうしても勝てるはずがなかった。
    「助けて下さい。助けて下さい。助けて下さい・・・」
     グリーンは、繰り返し許しを求める哀願を、言い続けていた。
     グリーンの尿道の筋肉が恐怖で緩んでしまったのか、股間からはタラタラと小便の液が床に垂れ続けている。
     見ていたライラックは流石にいたたまれなくなって、グリーンを助けようと、公爵の方へ行こうとした時、ルドがライラックの行動を止めた。
    「なぜ止めるの?。いくら公爵と言えども、あんな子供をいたぶって、何がおもしろいのよ!」。ライラックはそう言って、ルドの顔を睨んだ。
    「公爵は、グリーンをいたぶって楽しんでいる訳じゃないのさ。グリーンに躾をしてやっているのさ。ま、見ていな」
     ルドはそう言うと、顎で公爵の方を見ろと、合図をした。
     ライラックは示された方向に目を移した。
     公爵が身体を屈めて、床に這い蹲っているグリーンに何かを話していた。
    「グリーン、それほど言うのならば、お前の死刑を停止してやってもいいぞ」
     公爵の言葉に、グリーンは目を輝かせて顔を上げた。
    「ほ、本当ですか?。公爵様!」
    「ああ。その代わり・・・」。公爵は目で、秘書のメイドに合図を送った。
     秘書のメイドは、ケースの中から「隷属の首輪」を取りだして見せた。
     その首輪を填めるのが、死刑の停止の条件のようだ。
     グリーンは、まさに藁にもすがる思いで叫んだ。
    「公爵様。どうかその首輪を僕の首に填めて下さい。お願いします!」
     フォレックス公爵は呪文を唱えると、グリーンの首に、光が輝いたかと思うと、隷属の首輪がしっかりと填められていた。
     フォレックス公爵は「ふっ」と笑ってイスから立ち上がると、足下で座り込んでいるグリーンに言った。
    「グリーン。お前の小便で汚した床を、舌で舐めて綺麗にしておくんだぞ」
    「は、はい」。今は少女の姿になっているグリーンは、床に舌を這わせると、小便水で出来た溜まりを目をつぶって、ペロペロと舐めだした。
     しかしその表情は、先程の恐怖に支配された顔とは違い、ホッとした安堵感のある顔になっていた。
     グリーンが床を舐めているのを見ていた公爵は、ライラックの所に近づいて来て、
    「あのグリーンを、ライラックのパーティーに加えたら、役に立つかも知れないぞ」と告げると、笑いながら、部屋を出て行った。
     その後を、メイドの少女達が付いて行った。「公爵は、始めっからグリーンを死刑にするつもりはなかったのさ。自分から首輪を填めるように仕向けていたのさ。・・・グリーンもあの首輪を填めれば、もう盗賊のような、悪い事は出来なくなるからね」
     ルドの言葉を聞いたライラックは、改めて床を舐め続けているグリーンを見て、感心したようにポツリと呟いた。
    「フォレックス公爵は・・・そこまで・・・考えていたの?・・・」
     だが突然、そんなライラックの気持ちを打ち崩すようなルドの言葉が、ライラックの耳に飛び込んで来た。
    「親方の許可が出たら、ライラックと一緒に、ブラッド・オパール探しに参加してやるよ。その時はまたよろしく頼むな」
     ルドはライラックの肩をポンと叩くと、笑いながら部屋から出て行った。
    「え・・・?。ちょっと・・・。そんな・・・。いざと言う時あまり期待出来ないハーフエルフの魔道士に・・・剣の腕は一流だけども、それ以上に指のテクニックが超一流なイヤラシイ猪突猛進剣士に・・・はっきり言って半人前の盗賊少年・・・こんなパーティーメンバーでどうしろと言うのよぉ・・・」
     ライラックはメンバー達の事を指を折りながら考えた時、目の前が暗くなり、全身から力が抜けていって、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
     そしてライラックは、「もうイヤっ!」と泣きながら叫んだ。
     その頃自分の部屋に戻ってきた公爵は、秘書役のメイドから聞かれていた。
    「公爵様。グリーンに使う予定だった、拷問用と死刑用の器具と、広場にさらし者にする時に出すおふれ書を用意していましたが、どういたしますか?。もう使う事はありませんね?」
    「・・・そうだなぁ。・・・せっかく人間の子供のグリーンを拷問に掛けて、苦しむところの楽しい光景を、見る事が出来ると思っていたんだが・・・、ライラック達の見ている前で、突然グリーンが命乞いを始めたからなぁ・・・。助けないわけにはいかなくなっちゃったよ。あれは予想外だったな・・・。ま、しかたがないか・・・」
     公爵が溜め息混じりに呟くのを、聞いていた秘書役のメイドは、「楽しい光景を見る事が出来なくなって、それは残念でございましたね。・・・」と言うと、クスッと小さく微笑んだが、直ぐに真顔になって「ライラック殿のパーティーに、あの2人を加えられたようですが、ブラッド・オパール探しは大丈夫なんでしょうか?」と心配になって聞いた。
     するとフォレックス公爵は、秘書役のメイドの顔に自分の顔を近づけると、
    「ニーナ、君はどう思うかね?。・・・私はブラッド・オパール探しが失敗する方に、『一枚の銀貨』を賭けようと思うが・・・」と彼女以上の真顔でそっと囁いた。
    「は?・・・。公爵さまぁ・・・。あのねぇ・・・」
     秘書役のメイドのニーナは、何を考えているんですか?、と言いたげに頭を抱えた。
     そんないろんな人々がいるこの館を、包んでいた夜の帳が薄らいでくる。・・・もうじき山の陰から、朝日が顔を出すことだろう。
    ----------------------------------------
    「ひぎゃっ!。・・・も、もうゆるして・・・もうやめてぇ」
     太陽の光がいっさい射さない地下深くに造られたこの中は、薄暗さとジメジメとした湿気だけが、この場所を支配していた。
     ここは北方にある、ある王国の王宮内の地下の拷問部屋である。
     普通の人なら、直ぐに息が詰まりそうになるこの場所で、今日も若い女性の悲鳴がこだましていた。
     悲鳴を上げている主は、この王宮の住人であった若い王妃である。
     王妃は両脚を大きく左右に開いた状態で、身体に巻き付いた鎖によって、中吊りにされていた。
     王妃のヴァギナを隠していた陰毛は、全て剃毛をされていて、貞操なヴァギナも慎ましいクリトリスも、全て露わにされてしまっていた。
     両手は背中に回せられて、鉄の枷を填められている。開かれた足首にも、鉄の枷が填められていた。首にも、鉄の首輪がガッチリと填められている。
     そして、以前は綺麗に輝いていたであろう純白の着ているドレスは、全体的に黒く汚れ、あちこちには鮮血が付着していた。
     そればかりか、王妃の身体を包んでいるドレスは、今や多くの部分が引き破られ、乳房やヴァギナの所が露わになっていた。もはやドレスとは言えないただのボロ布の残りが、王妃の体に巻き付いていると言った方が良かった。
     その中吊りにされている王妃の前には、頭から黒いフード付きのマントを被った、謎の魔女が立っていた。王室占い師として、この王宮に入り込んで来たこの魔女は、強力な魔法を使って、かつての主であった国王や抵抗をした人々を、尽く死へと追いやり、今では王宮ばかりか、平和であったこの国をも、残酷な恐怖で支配していた。
     ブシュッ!。「ぎゃっ!」
     魔女の持っている太い針が、王妃の大きく開かれたラビアを貫き通した。
     そして針が抜き取られ、素早く小さなリングが、鮮血を吹き出している針の穴に通される。ラビアから流れ出た鮮血は、黒く汚れたボロ布のようなドレスに、ドス黒い染みを着けた。「オーホホホホホ・・・。ラビアのこんな所に、リングを6個も着けている王妃なんて、世界広しと言えども、お前ぐらいだろうね。オホホホホホ・・・」
     魔女は、左右のラビアに取り付けた計6個のリングを、下から上へとなぞってみせた。
    「あうっ。い、痛いっ。・・・や、やめてっ」
     リングが動く度に、開けたばかりの傷口から痛みが伝わって、痛さで王妃は身体を仰け反らせていた。
    「ここは包皮を切り取った後にしようと思ったけれども、ついでだから、ここにもリングを着けてあげるわ。王妃様。ホホホホホ・・・」
     魔女はそう言うと、王妃のクリトリスの先端に、指を這わせ出した。
     ニュグ、ニュグ、ニュグ・・・。
    「ひゃっ・・・。い、いあやぁ。あう、あ・・・。あ、う」
     ニュギュ、ニュギュ、ニュギュ、ニュギュ・・・。
    「はぎゃ、は、うや・・・はんあん・・・」
     王妃の身体が、魔女のクリトリスへの刺激に反応を起こし始めた時、魔女の瞳が冷たく光った。
     ニュグ、ニュグ、ニュグ、ニュグ、ニュグ。
    「ひゃ、あああ、ああぁぁぁぁ。あう、あ、う、・・・あぅぅぅぅぅ・・・」
     ブチュゥゥゥゥゥ。
     太く鋭い針先が、王妃のクリトリスの先端を、左右に貫き通した。
    「うっぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
     全身を覆っていた快感が、突然激痛に変わり、王妃は身体を痙攣させながら、気を失ってしまった。
    「この程度の痛さで一々気を失っているなんて、この王妃には、まだまだ厳しい躾が必要ね。」
     魔女は、王妃のクリトリスにリングの輪を通しながら呟いた。
     ガチャ。・・・ギギギー。
     拷問部屋の重い扉が開いて、数人の人間の男の姿をした魔物達が、王妃の幼い双子の王子と王女を、連れて入って来た。
     この魔物の男達は、魔女の強力な魔法によって作り出された、魔女の手下達であり私兵達でもあった。
     連れて来られた王子と王女の双子の兄妹は、首に填めた首輪以外、一切の衣服を剥ぎ取られた全裸姿で、お互い身体を寄せ合ってガタガタと震えていた。
     しかも首輪から伸びた鎖のリードを、魔物の男の手がしっかりと握っているので、何処にも逃げる事が出来なかった。
    「いらっしゃい、王子様に王女様。・・・気を失ってしまったお前達のお母様の代わりに、お前達の身体を使って楽しませてもらうからね。・・・オーホホホホホ・・・」
     魔女はそう言うと、魔物の男が差し出した鞭を受け取ると、身体を小さくさせて脅えている幼い兄妹に近づいて行った。

     こんにちは。九尾きつねです。
     ブレーク・パーティー、第4話をお届けしました。
     いかがでしたでしょうか?。
     今回ライラックのパーティーに、新たにルドとグリーンが加わる事になり、いよいよもって、ライラック達のブラッド・オパール探しの冒険が始まる事となりました。
     チャーム、ルド、グリーンを率いて、ライラックがどのような活躍を見せてくれるのか?。
     それにこの3人が、ライラックの良きパートナーとなるのか、それとも単なる足の引っぱるお邪魔虫の存在になっていくのか?。・・・どちらにせよ、ライラックの気苦労はまだまだ続きそうですが・・・(笑)。
     その上、フォレックス公爵は本当にブラッド・オパールを集める気があるのか?、と疑いたくなる言動をするし(笑)。
     ゲテークや謎の魔女とが、ブラッド・オパールとどのように関わっていくのか?。
     まだまだ謎を包んだ物語が続いていきますので、今後もライラック達への応援を、よろしくお願いいたします。
     それでは次回の作品で、またお会いいたしましょう。
    (・・・って、あまり物語のフィールドを広げると、整理するのに苦労しそうだな。・笑)

  • 黒水晶事務局 さんが新しい記事を投稿しました。 20年, 11か月前

    〈 心強い?仲間達が大集合の巻・前編 〉
     バサッ!。
     檻を覆っているシートが捲り上げられ、檻の外側に1人の男の顔が現れた。
     手には食べ物の入った食器が握られていた。
    「ほらよ、今日の分の餌だぞ」
     ガチャ。男はそう言いながら、ライラックの入れられている檻の扉を開けると、手に持っている食器をライラックの前に置いた。
     檻の中のライラックは、一糸まとわぬ全裸の姿にさせられ、両手は後ろ手に枷によって拘束されていた。
     また、両足首にも鎖でつながった足枷を填められていた。
     入れられている檻は縦横1メートル四方の大きさしかないので、中のライラックは一日中そして寝る時も、身体と足を折り曲げた息苦しい姿勢でいなければならなかった。
     この苦痛を心身に与える姿勢は、檻の中にいる者の反抗心を、完全に奪い取っていくのである。
     しかし、ライラックはこのような檻の中に入れられて、すでに半月位たっているが、ライラックの心の中には、屈服すると言う気持ちは一切無かった。
    「相も変わらず、くさい臭いの小便と糞だな」
     男は檻の隅にある、ライラックの排泄した大小便が入っている容器を、檻の外に取り出した。
     この容器は、昨日の朝に食べた餌を入れていた容器である。
     ライラック達に与えられる餌を入れた容器は、食べ終わったらそのままライラック達が排泄をする、大小便を入れる便器になるのである。
     最初このような扱いを受ける事に、怒りを覚えていたが、とにかく今は生き延びていく為に、屈辱的な扱いにも堪えていこうと思っていた。
     だから犬のように容器の中に顔を入れて、餌を食べる事もしている。
     また、空の容器の中に大小便をこぼさずにする事も、出来るようになった。
     だが初めのうちは、1メートル四方の檻の中で、後ろ手に拘束され、足首には肩幅程度の長さの鎖の付いた足枷を填められた姿では、容器の上に上手く身体をしゃがませられなくて、容器の中に大小便を排泄する事がなかなか出来なかった。
     よく回りにこぼしてしまい、そのつど男に屈辱的な事を、言われ続けたのであった。
     それにこの容器は、あまり綺麗に洗っていないようで、餌を食べる時に顔を近づけると、プーンと大小便の臭いがしてくるのである。
     もちろんこの臭いがライラック自身の排泄した物とは限らないのだ。
     それよりも別の檻に入れられている、女奴隷達の出した臭いの可能性の方が高かった。
    「大きな1本糞と・・・色のない小便水か。・・・よしよし、病気はしていないようだな」男は鼻をつまみながら、容器の中を観察するように眺め、ライラックに聞こえるように言った。
    「それに最近は、小便や糞を容器からまき散らさずに出来るようになってきたようだな。檻の床が濡れていないから」
     ライラックは男の話す言葉を、顔を赤らめながら聞いていた。
     この狭い檻の中では、何処にも逃げていく場所はない。
     両手は後ろ手に拘束されているので、声を聞かないように耳を塞ぎたくても、それも出来ない。
     男に反論したくても、口枷が噛まされているので、声を立てる事もできない。
     ライラックは、男の卑猥なそしてライラックを屈辱する言葉を、怒りでブルブルと震えながら聞いていることしかできなかった。
     睨み付けているライラックの目には、涙がこみ上げてきていた。
     しかし男はそんな事は気にもしないで、更なる屈辱の姿になることを、ライラックに命令をした。
    「おいライラック。尻とオマンコを、俺の方に見えるように向けるんだ。・・・いつものように、手が使えないお前に代わって、俺が代わりに大小便をして汚れている尻とオマンコを拭いてやるから。へへへへ・・・」
     男のゴツゴツとした手が、薄汚れた布を取り出し、向けられたライラックの排泄器官の出口を、ネチネチとした動きで拭きだした。
     ヌチャ、ヌチャ、ヌチャ。
    「うぐっ」。ライラックは、恥ずかしさで目をつぶり、噛まされているボールギャグを強く噛んだ。
     ライラックは、他人には見せたくない自分の排泄器官の場所を、誰とも知らない男の手によって、綺麗に拭かれているとはいっても、それは屈辱の何者でもなかった。
     ニュチュ、ニュチュ、ニュチュ・・・。
     布を持つ男の指が、ライラックの尿道口や肛門の周辺を、イヤらしく撫で回す。
    「ひぐっ」。ライラックは低く声を飲み込むと、身体をヒクヒクと震わせた。
     ネチュ、ネチュ、ネチュ、ネチュ、ネチュ。
    「おいライラック。オマンコに付いていた小便の残りカスを拭いてやっているのに、オマンコの中から、トロトロとした液が流れ出て来ているが、これは何だ?。・・・ははは。お前の小便は、ネトーとしていて糸を引いているのか。・・・ははは・・・」
     男が笑いながら言った言葉を聞いたライラックは、恥ずかしさで開いていた両脚を閉じようとした。
     パシーン!。「ひぐっ!」。
     突然、男の平手がライラックの尻を強くひっぱたき、ライラックは口枷の奥から低い悲鳴を上げた。
    「こらっ!。誰が脚を閉じろと言った。命令されていない事をするな!」
     ビシッ!。男の平手が、ライラックのヴァギナを強く叩いた。
    「ふぎっ!」。ライラックは小さな悲鳴を上げると、恥ずかしさと痛さで目に涙を溜めて、身体をフルフルと小刻みに震わせた。そして脚を開き続けた。
     男はニヤッとすると、自分の3本の指を、ライラックのヴァギナの中に入れてきた。
    「うぐっ!」。ライラックの口から苦痛の呻きが出た。
    「いくらライラックでも、オマンコに3本の指を入れたら、やはりキツイか。・・・へへへ・・・、てっきり3本の指でも、お前のオマンコはもうユルユルかと思っていたよ」
     ヴァギナの口に指を3本も入れられて、もうこれ以上は裂けるんじゃないかと思われるくらい広げられた痛さで、顔を歪めているライラックを男は笑いながら眺めていた。
    「うぐぐぐぐぅぅぅ」。ライラックは、口に填められているボールギャグを強く噛んだ。
    「ライラック、随分と辛そうだな。・・・それじゃ、楽にさせてやるか。くくく・・・」
     男はそう言うと、ヴァギナの中に挿入している3本の指を、動かし始めた。
     ズニュ!。「ぐあぅっ!」。ヴァギナからの痛さが、ライラックの身体中の神経を切り刻む。
    「ぐふふふふ・・・。痛いのは最初のうちだけさ。次期良くなるぜ」
     男は笑いながらそう言うと、ヴァギナの中の指を、何度も何度も上下に動かした。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
    「ふぎゃっ。ふぎゃっ。ふぎぇぇ。あぐっ!」
     ライラックはヴァギナから受ける激痛で、涙を溜めた目を大きく見開き、塞がれた口からは、涎を垂らしながらくぐもった悲鳴を上げ続けた。
     男は、そんな苦しむライラックにお構いなく、いやそれどころか、それを楽しむように、残酷な指の上下運動を続けている。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
    「うぎゃ。ふぎゃ。うあっ。あうっ。ああ!」
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。ズニュ。
    「あぐっ。うあっ。あうっ。ひゃっ。ひぇっ」
     痛撃がライラックの身体と神経を引き裂いていき、身体全体がフルフルと小刻みに震えてくる。
     ズニュ。ズニュ。ズニュ。ギュニュ。グニュ。
     グニュ。ジュニュ。ジュニュ。ニュチャ。ニュチャ。
     ヴァギナを上下に摩擦している男の指に、生暖かいライラックの淫液が絡み付いてきた。
     ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ニュチャ。ギュニュ。
    「うぐっ。あうっ。あう、ひゃっ、う、ああ、あん・・・」
     男は、ライラックの身体の反応が、苦痛から別の方向に変化を始めた事を、見逃さなかった。
    「おい、ライラック。オマンコの奥からのイヤラシイ汁が、俺の指に絡み付いてくるぞ。どうした?。苦痛だったんじゃなかったのか?。へへへへへ・・・」
     男の指は、最初ライラックの身体に痛撃を与えていたが、しだいに淫靡なオーガズムへと変えていった。
    「はがっ・・・あがっ・・・あう、えぐっ。・・・えげっ」
     ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。
     ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。ニャチャ。
     ヴァギナの奥から溢れ出したライラックの白い淫液が、男の指を伝って手首へと流れていき、檻の床に滴り落ちていく。
     そしてヴァギナからの淫液が潤滑油となって、きつく辛かった指の動きが滑らかになっていった。
     ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。
     湿った音を立てて、指がヴァギナの口を上下に出入りをする。
    「は、はぁ、あうう、あん、あ、ん、はぁぁん・・・」
     涎を垂れ流しているライラックの口からは、艶めかしい喘ぎ声を洩らし続けていた。
     ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。ジュニュ。
     いつしかライラックの腰は、快感を自ら求めるかのごとく、独りでに動かし出していた。
     男の指をライラックのヴァギナは、ぎゅっぎゅっと、強く締め付けてくる。
     グチュ。グチュ。ヴァギナが指を締め付ける度に、溢れ垂れている淫液が、回りに飛び散った。
    「ははははは。ライラック、自分から腰を動かすほど、お前の身体は淫らになってきたんだな。剣士では無くまさに牝奴隷の姿だぞ」
     男は笑いながら、指をヴァギナにくわえ込んで、ひたすら腰を上下に動かし続けるライラックに告げた。
     だがライラックの耳にはそんな言葉は、すでに聞こえていなかったようであった。
     ライラックの頭の中は、オーガズムをひたすらその身に感じ続ける事だけしか、ないようであった。
    「ひゃが。ひゃが。・・・ひゃ、あう、・・・ひゃ、あ、ん」
     グチェ。グチェグチェ。グチェ。グチェ。
     ライラックの瞳が、快感を感じてトロンとしている。
     背中の陰に隠れて気が付かなかったのだが、ライラックの胸の乳首が飛び出るように尖っている。指で乳首を触ってやれば、きっと電気を流されたような痺れを、感じる事だろう。
     だが男は、ライラックのこの姿を見ていて、別の事を考えていた。
     男の目の前には、無防備になっている、ライラックの尻の穴が見えていた。
     指をくわえ込んでいるヴァギナの締めつけに気がいって、オーガズムを感じているせいなのか、アナルの締まりが驚くほど緩くなっていて、ヒクヒクとヒクついていた。
    「それじゃ、そろそろフィニッシュと行くか」
     男はそう言いながら、もう片方の人差し指を、ヒクヒクとだらしなく生き物の口のような丸い穴をひくつきさせながら、開いている穴に目掛け、狙いを付けて指を差し込んだ。
     グニュッ!。「ふぎゃっ!!」
     小さな叫びを上げて、ライラックの腰の動きは、突然止まってしまった。
     人差し指がアナルの中に深々と刺されている。
    「うぐ、うぐ、うぐ・・・」
     アナルの中に指を入れられて、違和感を感じたライラックは身体を小刻みに震わせている。
    「くくくく・・・」
     男はヴァギナとアナルに入れている指先を、L字に折り曲げると、アナルに差し込んでいる指を、グリグリと円を描くように動かし出した。
     グニュ、グニュ、グニュ、グニュ、グニュ。
    「ひぎゃ。ひぎゃ。ひぎゃ。ひぎゃぁぁぁぁ」
     ライラックは、アナルからの責めに背筋を反り返して、オーガズムを全身に感じて、身体全体を痙攣させて、イッテしまった。
    「あはははは・・・。何かあっけなくイッテしまったな。・・・あははは・・・」
     ヴァギナとアナルから、ビチョビチョになった指を引き抜いた男は、強制的にイカされて気を失って、俯せに倒れているライラックを見下ろしながら、せせら笑った。
     男はボールに水を注ぐと、淫液で汚れた手を洗った。そしてその水の入ったボールを手にすると、気を失っているライラックの頭に中の水を掛けた。
     ザバァァァァー。「あうっ!」。驚いたようにライラックが目を覚ました。
    「ライラックいつまで寝ているんだ。・・・俺様の指は、気を失うほど気持ちが良かったみたいだな。ライラックのよがり狂う姿はいつ見ても面白いぜ。あははははは・・・」
     男の言葉を聞いて、また無理矢理にイカされた、屈辱感を感じたライラックは、顎に力を入れてボールギャグをガチッと噛んで、男を睨み付けた。
     ライラックの顔が赤くなっているのは、イッタ事による高揚のせいなのか、それとも怒りのせいなのかは分からない。そんな事は男に取ってどうでも良い事であった。
     ぐっ!。「起きな」。男はライラックの髪の毛を掴んで、身体を引き起こした。
    「ひぃぢゃ!」。痛さでライラックの顔が歪んだ。
    「それじゃ、いま口枷を外してやるからな」
     男がそう言うと、ライラックのギャグの口枷が外され、やっと容器の中の餌を食べる事を許された。
    「よし、ライラック餌を食べろ。但し分かっていると思うが、餌を食べる時間は5分間だけだぞ。時間が過ぎたら、食べている最中でも、お前の口にギャグの口枷を填めるからな」
     男はそう言って、砂時計を床に置いた。
     砂時計の砂がサラサラと落ち始めた。
    「どうした?。・・・俺の顔を睨んでいたら、餌を食う時間が無くなるぞ。くくく・・・」
     男の顔を睨んでいたライラックは、ギュッと唇を噛んで、目の前の容器に顔を埋めた。
     容器の中の食べ物は、明らかに目の前にいる男達の、食べ残しの残飯であった。
     それでも、日に1度しか与えられない餌と呼ばれている食べ物なので、ライラックは何も考えずに懸命に食べ続けた。
     少ない量でも食べ物を食べて、体力と精神力を維持すれば、必ずここから脱出できると考えていたし、その間にどんなに屈辱を受けたとしても、最良のチャンスは必ずあると思ってもいた。
     その証拠に、砂時計や男の顔をチラチラと横目で見るライラックの瞳には、今も強い輝きを失っていなかったのである。
     ライラックは長い間、傭兵の剣士をしているので、絶望とか失望とか言う気持ちを持たないようにしているのだ。なぜなら戦場での闘いや妖魔の怪物との闘いで、この気持ちを少しでも持ったら、それはそく死へと繋がるからだ。
     はぐはぐはぐ・・・。がつがつがつ・・・。
     ライラックは動く事の出来ない檻の中にいて、何処にこんなに食べる体力があるのかと思われるほど、勢いよく容器の中の食べ物を胃袋の中へと入れていった。
     もちろん食べる時間が限られていると言う事もあるが・・・。
    「それにしても、お前の意志の強さには驚くよ。何処からそんな強い気持ちが涌いて来るんだ?。・・・普通の女達ならば、半月もこの檻に入れられていたら、どんなに反抗的な心を持った女でも屈辱的な行為に屈服して、最後にはすっかり牝の奴隷になって従順な気持ちと姿になるのによ。・・・なのにお前は今も抵抗の意志を持っている・・・。いや抵抗どころか、チャンスがあれば俺様の寝首をかく事を考えている目だぞ」
     男が話をしている間中、ライラックは容器の中の餌をガツガツと勢いよく食べ続けていた。
     しかしライラックの男を睨み付けている瞳は、獣が獲物を狙うみたいに冷たく、そして威圧感を投げ掛けていた。
     がつがつがつがつがつ・・・。
     もぐもぐもぐもぐもぐ・・・。
     ライラックの目の視線が、砂時計の砂に注がれる。
     はぐはぐはぐはぐはぐ・・・。
     むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ・・・。
     砂時計の砂の残りがあと僅かとなってきた。
     ぺろぺろぺろぺろぺろ・・・。
     砂が全て落ち終わった時、ライラックは容器の中の餌を全て食べ終わり、残り物がないように容器の中を綺麗に舐め終わっていた。
    「ほほー。時間内に全部食べ終わったのか」
     男はクスッと笑いながら、容器の中を覗き込んだ。
     その後男は、檻の扉を閉めて、ライラックの排泄物が入った容器を手に持つと、シートの外に出て行った。
     暫くして、シートの外から男の声がしてきた。
    「ほら、お前を奴隷として買ってくれるかも知れない、お客さんの屋敷に着いたぞ」
     男はそう言うと、ライラックの檻に掛けてあるシートを勢いよく引き剥がした。
     ガバァァァァー。
     音と共に薄暗かった檻の中に、太陽の明るい光が強烈に射し込んできた。
    「うっ」。ライラックは一瞬まぶしさで目をつぶった。
    「おいおい。こんな所で目をつぶすなよ。お前の売値が下がっちまうからな・・・」
     男は檻に掛けていたシートをたたみながら、ライラックに話し掛けた。
    「いいか言っておくが、ここの貴族様は、質の良い物や、品の良い物しか買ってはくれないんだ。だからお前も出来るだけレディーらしく振る舞えよ。きっと高値で買ってくれることは間違いないから」
    『冗談じゃないわよ。レディーらしくなんて出来るわけないでしょう!。・・・そもそも何であなた達の金儲けの為に、あたしがそんな事をしなくてはならないのよ!。・・・そうだわ、もし檻から出された、思いっ切り暴れてやれば、うまくいったら逃げる事が出来るかも知れないわね。・・・今に見てなさいよ』
     ライラックはそう考えると、話をしている男に気が付かれないように、急に従順な姿を取り出した。
    「はい・・・貴族様に、ライラックを高く買ってもらえるように、レディーらしく振る舞わせてもらいます」
     ライラックのしおらしい姿に、男は「やっと自分の立場が分かったようだな。・・・そうだライラック、その気持ちでいれば、辛い思いをしなくてすむんだぞ。忘れるなよ」と告げると、ライラックの口の中にまたボールギャグの口枷を押し込んで、ベルトで固定をした。
     そうこうしているうちに、ライラックの入れた檻を積んでいる馬車が、動きを止めた。
     その大貴族の館に着いたようだ。
     明るさに目が慣れてきたライラックは、檻の鉄格子の間から回りを見渡した。
     まず、大きな館の建物が目に飛び込んできた。まるで檻の中にいるライラックを、威圧するような感じの大きさだ。
    『こんなでかい屋敷に住んでいる貴族なんて、きっと領民達から税金を搾り取って、そのお金で若い女性達を奴隷として買い取って、調教とか拷問とか夜伽なんかをさせて楽しんでいる、イヤラシイ、エロじじーのやつに違いないわ。そんなやつはあたしがきっと天罰を与えてやるから!』
     ライラックはそんな事を考えながら、建物を見続けていた。
    『?。・・・でも・・・、この建物・・・どこかで見た事があるような・・・?。』
     傭兵家業をしているライラックとしては、今までいろんな所の貴族のもとで働いてきたから、目の前の建物を見て、直ぐに建物の主の顔を思い出す事が出来なかった。
    『う~ん。思い出せない・・・あの貴族かな?、それともこの貴族だったかな?・・・』
     ライラックの頭の中では、たくさんの貴族達の顔が浮かんできていた。
     その中には、ハンサムで紳士的でライラックを能力ある剣士と認めてくれていた若い貴族がいれば、歳を取ってイヤラシイ事しか興味がなく、ライラックを剣士とは見ずに1人の女としてしか見ず、ライラックに夜伽を命じた老貴族もいたのだ。
     ライラックとしては、もしそのようなイヤラシイ貴族にでも買われたら、どうしょうかと思ってしまうのであった。
     それでもライラックは、逃げ出せる場所を探して目を回りに移した。
     大きな庭中に、多くの芝生や草木が植えられている。
     しかもそれらの芝生や草木は、綺麗に剪定作業がされている。
    『う~ん。・・・この庭も・・・どこかで見た事があるような・・・?。うっ!。思い出せない・・・』
     懸命に記憶を絞り出しているライラックの目に、この館のメイドの姿が飛び込んで来た。メイドの少女は、館で飼っている子犬を散歩させているようで、手に持った手綱の先には2匹の子犬が歩いていた。
    『・・・ん?』
     ライラックは見ていた2匹の子犬の姿に違和感を感じて、よく見えるように檻の鉄格子に身体を張りつけた。
    『なにっ!?。・・・あれは?』
     2匹の子犬だと思っていた、四つん這いになっているあれは、裸の2人の少女達であった。
     2人の少女達の首には、犬の首輪が填められていたのだ。
    『じょ、冗談じゃないわ。・・・ここの館の貴族は、奴隷の女の子を犬のようにあつかうの?。・・・いったい何者なのぉ?』
     ライラックが驚きで目を丸くして見ていると、メイドの少女が顔を上げ、ライラックが入れられている檻の方を見た。
     檻の中のライラックと、手綱を握っているメイドの少女との両方の視線が合った。
    『えっ!。あのメイドの子は・・・?』
     ライラックが一瞬狼狽したように、口枷の奥から声を捻り出すように上げた。
     メイドの少女も檻の中のライラックを確認すると、一瞬、困ったような顔をしたが、直ぐにニコリと微笑むと、ぺこりと頭を下げた。
    『ふぇぇぇぇー!。ここの館って?、ここの貴族って?、もしかして・・・えぇぇぇぇー!』
     ライラックのくぐもった悲鳴が、青空に響いた。
    ----------------------------------------
     それから暫くして、館の謁見室から、この館の主人であり貴族の大笑いをする声が外にまで聞こえてきていた。
    「わあーははははは・・・」
     今までの話を聞いていたフォレックス公爵は、大笑いをして椅子から転げ落ちるのではないかと、思われるほどであった。
    「公爵!。笑い事じゃないわよっ!」
     ライラックは顔を真っ赤にして公爵に噛みついた。
     フォレックス公爵の前には、檻から出されて自由になったライラックとチャームが立っていた。2人は胸と腰を薄汚れた布で隠しただけの、半裸の姿であった。なぜなら、ライラックとチャームが奴隷商人に捕まった時、着ていた唯一の服を男達の手で、引き破られたので、いま身を包む物と言えばこれしかなかったのである。
    「ひゃははは・・・こ、これは失礼した・・・くくくくく・・・」
     いつまでも笑いを止めない公爵に頭に来たライラックは、ズカズカと座っている所まで近づくと、公爵の顔の前に自分の顔を近づけて睨み付けながら質問をした。   「こうしゃくぅー!。どうしてあたし達が奴隷商人の檻に入れられなくてはならいのよ!。・・・帰りは食事付きの馬車を用意するって、あたしに言わなかったですか?」
     公爵を睨み付けるライラックの目が血走っている。
    「ラ、ライラック、そんな怖い顔を近づけるな。・・・綺麗な顔が台無しだぞ」
     公爵がポツリと呟く。
    「こうーしゃーくっ!」。ライラックが怒鳴る。
    「わかった、わかったから・・・そんなに怒鳴るな。」
     公爵はライラックを宥めるように言った。
    「しかし私は嘘は伝えていないぞ。ちゃんと食事付きの馬車に乗って、この屋敷まで帰って来ただろう」
     公爵の言葉を聞いて、ライラックは思わず「え?。」と声を上げてしまった。
    「え?・・・え?・・・それじゃ・・・食事付きの馬車って・・・あ、あ、あれの事だったの?・・・」
     ライラックは、一瞬、目が点になってしまった。
     公爵はひとつ咳払いをすると、眼鏡を掛け直し、「ライラックは、王侯貴族の貴婦人や姫君が乗るような馬車に乗って、帰って来るつもりだったのか?」と、ライラックに聞いた。「うっ・・・」。ライラックは一瞬答えに詰まる。
    「そうですね・・・。よく考えれば、一応毎日食べ物はもらえたし、ここまでずっと馬車に載せられて来たのですから、公爵様の言われた通りですね」
     ライラックの代わりにチャームが答えた。
    「チャーム何を言っているのよ、食べ物と言ったってこいつらの残した残飯じゃないの、馬車に載っけられたって檻の中に入れられてよ!。しかも食器と便器の容器は一緒の物だし。チャーム不満じゃなかったの?」
     それを聞いたライラックは腹が立ってきて、チャームに質問をした。
    「奴隷として捕まっちゃったんだから、仕方ありませんよ。それに、あたしまだ死にたくなかったでしたから・・・。それはそれであたしの運命ですもの。エルフ族は身に降り掛かった事は、運命として受け入れるんですよ」
     チャームは平然とした顔で答える。
    「それにですよ・・・」
     チャームはそう言いつつライラックに近づき、耳元でそっと囁いた。
    「ライラックさん・・・結構いい思いをしていたんじゃありませんか?。・・・毎日ライラックさんの喘ぎ声が聞こえていましたよ」
     ライラックの顔がサァと赤くなった。檻に入れられていたライラックは、毎日食事を与えられる時、男によって色々な屈辱的な行為をされた後に、必ず乳房やヴァギナや肛門などをなぶられて、強制的にイカされていたのであった。
    「それは・・・あのあの・・・」
     顔を赤くしたライラックは、慌てたように口ごもってしまった。
     チャームはそんなライラックを見て、キャッキャッと笑いながらライラックの側を離れた。
    「どうだ。納得したか?」。公爵の声に、ライラックは「うー」と唸りながらも、もといた場所に戻るのであった。
     そして横目でチャームを睨み付けた。『チャーム、あなたはいったい誰の味方よ?』と。
     取り敢えず問題は解決したと理解したフォレックス公爵は、ライラックとチャームの立っている姿を、改めて見直した。
     身体に傷の跡が無く綺麗な肌の19歳の女性剣士。
     人形のように白い肌に綺麗な顔立ち、それに整ったプロポーションの15歳のハーフエルフの少女魔道士。
     この2人が公爵の目の前で、乳房と股間を布で隠すだけの姿になって、立っているのである。しかも首には「隷属の首輪」を填めた姿で。
     事情を知らない人が見たら、絶対に、2人の女奴隷が品定めをされるために、公爵の前に立たされているのだと、思う事であろう。
     少しの間、謁見室の中は静寂に包まれていたが、突然「ゴホン」というライラックの咳払いの声が響き渡った。
     ニヤ付きながら、ライラックとチャームの身体を眺めていた公爵が、「あっ」と言うと急いで普通の顔に戻った。
     ライラックは部屋の隅にいる商人の一団の方にも、キッと目を向けた。
     彼らも公爵同様、ライラックとチャームの身体に色んな意味での視線を、投げ掛けていたのであった。
     ライラックには、その視線が痛いほど突き刺さって来るのが分かっていた。
     商人の一団は、ライラックと目線を合わせないようにと、急にあらぬ方向に視線を向けた。「こいつらは・・・」。そう小さく呟くと、ライラックは両手を腰に当て公爵に質問をした。しかしその姿格好がまた公爵達の目には、とても色っぽく見えていた。
    「ところで公爵。あそこにいる奴隷商人の一団とは、どういう関係なんですか?。・・・ただの貴族と商人との関係とは見えないのですけども・・・」
    「ああ・・・、彼は『ミスター・商(しょう)』と言って、遠い東方にある『大中乃国』の出身の貿易商人だ。・・・」
     公爵は一団の前にいる、小さなキャップの帽子を被り、四角い顔に細い目で細長い口髭を左右に生やし、足下までの長いチャイナ服を着た、年齢50歳代の男を指差しながら、話しだした。
     公爵は、ミスター商の隊商のオーナーであるとも言った。
     この他にも公爵は、このような隊商を数隊所有しているとの事であった。
    「貿易商人?。奴隷商人とは違うの?・・・あの檻は?、町の市場に送られた別の馬車に載せられた檻の中には、数人の女の子達がいたわよ」
     ライラックはちょっと首を傾げて聞き返した。
    「私はあくまでも普通の貿易商人あるネ」。と答えたのはミスター商であった。
    「普通の品物を取り引きして、いろんな市場で売るのが私の仕事あるネ。その中に女奴隷が含まれているだけあるネ。あくまでも奴隷は貿易商品の一部分あるネ。・・・言うなる需要と供給との関係と言う事あるネ。お客様が求めている物を集めてきて販売するのが、私達商人の崇高なる仕事あるネ。お客さんはそれに対して、対価として金銭を払って求めていた商品を手に入れるあるネ。分かったあるカ?。何かおかしな所があるカ?」
     ミスター商の口から、矢のように飛び出してくる言葉を聞いていたライラックは、隣りに立っているチャームに話し掛けた。
    「・・・だってさ。・・・チャームわかった?」
     そう聞かれて、チャームはニコニコしながら言葉を言い始めた。
    「女奴隷は、貿易商品の一部分・・・、需要と供給との関係・・・、集めてきて販売するのが、商人の崇高なる仕事・・・、対価として金銭を払って求めていた商品を手に入れる・・・。どうです、ちゃんと商さんが言った言葉を覚えていますよ。・・・ライラックさんは覚えていないんですか?」
     今度は、チャームから聞かれたライラックが、どきまきしながら答えた。
    「うっ。・・・そ、そんな事はないわよ。ちゃ、ちゃんと覚えているわよ・・・。お、女奴隷が・・・需要と・・・供給で・・・対価で・・・崇高を販売するんでしょう・・・。どう、間違いないでしょう?」
     ライラックはどうだと言わんばかりに、布で覆った自分の胸を張った。
    「さすがはライラックさんですね。チャームと同じ才能ですね」
     チャームはニコニコしながらライラックを誉めた。
     しかし、ライラックとチャームの頭の中では、それがどういう意味なのかは、全然分からなかったのであった。
     そんな知ったかぶりを、お互いに自慢し合っている2人を、公爵の横から見ていた秘書役のメイドは、「絶対に分かっていないと思うわ・・・」と、苦笑いをしながら呟くのであった。
    「では、ライラック達も納得をしたようなので、・・・ライラックとチャームは、下がって闘いと旅の疲れを癒やすがいい」
     フォレックス公爵はそう言うと、秘書役のメイドが部屋の隅にいる、1人のメイドの少女に指示を出した。
     ライラックとチャームはメイドに連れられて、この館にある浴室へと足を運んだ。
     そこは大浴場と言ってもいい程の大きさの浴室で、壁や天井や浴槽、それにお湯を排出している女性の彫像の置物は、どれもこれも大理石で出来ていた。
     しかもこのお湯は・・・温泉だ。
     ザバァァー。ライラックとチャームは身に付けている物を取ると、・・・と言っても胸と腰に巻き付けている布だけであるが、・・・並々と浴槽に溢れている温泉の中に飛び込んだ。
    「ふあぁぁぁー。久しぶりに気持ちがいいわ」。浴槽の中でライラックが背伸びをする。「ええ。生き返ったような気持ちですね」。チャームも浴槽の中で手足を伸ばした。
     このような温泉に入るのは、久しぶりな感じだ。
     もし檻に入れられたまま、本当にどこかの奴隷市場で売られたりしたら、2度とこのように浴槽の中で手足を伸ばす日は来なかっただろうと、ライラックは思ってしまうのであった。
     バシャァァッ!。突然ライラックの顔に、浴槽の湯が浴びせられた。
     見ると、チャームがライラック目掛けて、湯を掛けている最中であった。
    「きゃっ、きゃっ。ライラックさんどうですか?。気持ちいいでしょう?」
    「こらっ。チャーム、やったわねっ!。お返しよっ!」
     バシャァァァーン。ライラックが両手でお湯をすくうと、思いっ切りチャーム目掛けて、浴びせかけた。
     今までの緊張が解けた反動なのか、ライラックとチャームの2人は浴槽の中で、子供のように相手に向かって、浴槽の湯を掛け合った。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     2人の浴槽内での湯の掛け合いは、いつ果てる事なく続いた。ライラックとチャームは子供に戻った心境で「きゃーきゃー」叫びながら遊んでいた。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     バシャァァ。ビシャァァ。バシャァァー。
     ビシャビシャになりながら、湯を掛け合う2人の耳に、メイドの声がしてきた。
    「あのー・・・」。バシャァァァーン。「きゃっ」
     掛け合っていた湯がメイドの身体を直撃した。メイドは頭から湯を浴びせ掛けられてしまい、メイド服も身体中も、ずぶぬれになってしまった。
    「ご、ごめんなさい」
     ライラックはメイドの少女に謝ると、浴槽の中に身体を沈めた。
     ふと横を見ると、チャームがポツネンと立っていた。
     ライラックは急いでチャームの手を引っぱって、浴槽の中に沈めた。
    「な、何か用ですか?。私達別に呼んでいないですけども・・・」
     メイドの少女に、とんでもない所を見られちゃったと思い、顔を赤くしながらライラックは聞いた。
     濡れたメイド服を搾りながら、メイドの少女は、
    「公爵様のご命令で、ライラック様とチャーム様の新しい服を脱衣場にご用意しました。・・・それと公爵様から、お2人を公爵様のご夕食にお連れしろと言われました」と告げた。
     メイドに言われて脱衣場に戻ると、新しい衣服に靴、下着が用意されていた。
    「ライラック様の着けられる鎧と剣は、お部屋の方に置いてありますから」
     メイドの少女はそう告げると、新しい服に着替えたライラックとチャームをフォレックス公爵の部屋に案内していった。
     ガチャ。
    「ライラック様とチャーム様をお連れいたしました」
     公爵の部屋に入ったライラックは、夕食が沢山並んだ大きなテーブルに、公爵以外の人物がいる事に気が付いた。
     1人は・・・特徴ある顔の、貿易商人の「ミスター商」だ。
     それにもう1人は・・・。
    「いっ!。何であいつがここに居るの?」。一瞬ライラックは自分の目を疑った。
     ミスター商の横に座っていたのは、ライラックが檻に入れられていた時、散々屈辱を与え続けたあの男であった。
     この男は、ミスター商の代わりに隊商を町の市場まで連れて行って、女奴隷を含む商品を、売買してきたのであった。
     それで、さっきはこの館では姿を見なかったのであった。
     ライラックは男の顔を睨みながら、テーブルに近づいた。
     メイドが椅子を引いた。ライラックが座る。目の前にはミスター商と男が座っている。
     男は何かバツが悪そうに、視線を天井に向けていた。
     最初に公爵の話しが始まり、夕食が始まった。
     話の中で、男は、「ルド=ナボル」と言う名前で、ライラックと同じ傭兵の剣士との事だった。
     年齢は29歳。傭兵としては剣と槍を使うとの事だった。
     ライラックはルドの姿を観察するように眺めまくった。
     茶色の髪の毛に顎まであるもみあげの顔。
     キリリとした目は茶色だ。首が隠れるくらいのタートルネックの服に普通のズボンを身に着ている。
     元々は隊商護衛の傭兵だったが、今はミスター商の右腕的存在になっているのだ。
     それで、先程もミスター商の代わりに、隊商を率いて町の市場で商売を取り仕切ってきたのであった。
     ライラックは心の中で、『へー』と驚いていた。
     なぜなら、この男の印象は、檻の中のライラックに卑猥な言葉を浴びせ、ライラックを屈辱し続ける姿しか、浮かんでこなかったからだ。
     太陽が山に傾き、少し薄暗くなってきた。
     公爵は秘書役のメイドに何かを囁いた。
     秘書役のメイドが何かを合図をすると、脚に小さな車が付いたテーブル2つが、メイドの少女の手によって、押されてきた。
     テーブルには、何か大きな物が載っているようで、掛けてある白いテーブルクロスが、山のように盛り上がっている。
     2つのテーブルは、ライラック達とルド達の背後の壁際に置かれた。
    「何ですか?」と、ライラックは怪訝な顔をした。
    「暗くなって来たからな。燭台だよ」。公爵が答える。
     バザッとテーブルクロスが引き取られた。
    「え!」。とライラックは声を上げ掛けた。
     テーブルの上には、全裸姿の幼い少女がヴァギナとアナルを天井を向くように、身体を曲げて寝かされていて、動けないように身体をベルトで拘束されていた。
     口にも特別製の口枷が填められている。先端に長い1本の棘が付いている。
     身体を縮められて、苦しそうに息をしている2人の少女達は、ここに帰って来た時に見た、メイドの少女が犬のように四つん這いで散歩をさせていた、あの幼い2人と思われた。
     ライラックの背後に置かれているテーブルの上の少女は、ロングのヘアをしている・・・ナナーだ。
     当然ルドの背後のテーブルには、同じ姿にさせられている、ニニーがいた。
     メイドの少女達は蝋燭を取り出すと、ナナーとニニーの身体に蝋燭を置きだした。
     まず、口枷に付いている棘の部分に蝋燭を刺した。
     続いて、少女のヴァギナを指で左右に開くと、太い蝋燭を埋め込んだ。少女は痛さで一瞬顔を歪めた。開いている目には大粒の涙を溜めている。
     最後にアナルには、細い蝋燭がゆっくりと埋め込まれた。
     そして3本の蝋燭に火が点けられた。
     幼い少女の身体に装着された3本の蝋燭が、明かりを発して異様な輝きを見せている。
    「公爵・・・この子達は・・・」。ライラックはちょっと狼狽した気持ちになった。
    「ははは・・・。奴隷の姉妹を燭台として使っているだけだ。気にする事はない。・・・さあ。食事を続けよう」
     公爵は笑いながら、次の料理を持ってこさせた。
     ふと、いつもならにぎやかなチャームが、静かだなと思って隣の席を見ると、出て来る料理、出て来る料理を、片っ端から食べまくっていた。
    「チャーム、少しはレディーらしく食べなさいよ。恥ずかしいわよ。それにお腹を壊すわよ」
     ライラックがそっとチャームに注意をする。
    「ライラックさん、食べれる内に食べて置かなくては、またいつ野宿の生活になるか、わからないんですよ。それにレディーよりも生きる事です。格好なんか構っていられませんよ」
     チャームは答えて、なおもパクパクと料理を食べ続けた。
     確かに仕事柄、野宿生活をする事が多い事はわかっているが、しかしこの場所では、流石にマナー通りの食事をしなくては・・・。
     ライラックは奥の手を出すことにした。
    「チャーム、そんなに急いで食べると太るわよ。象やダルマのようにマルマルに太った姿のハーフエルフなんて、きっとみっともないわね」
    「うっ」と言ってチャームの手が止まった。
     そして「や、やっぱり・・・お食事はレディーらしく上品にマナー通りにしないといけませんわね。・・・おほほほ・・・」と言うと、さっきとはうって変わって、上品な姿で料理を口に運び出した。
     ライラックは、チャームの突然の変わり様に、思わず吹き出しそうになった。
     その間にも、燭台にされている少女達の白い素肌には、溶けた蝋燭がポタポタと落ちて来ていた。溶けた蝋が肌に落ちて、その熱さで身体を震わせれば、蝋燭の中に溜まっている蝋が、揺らされてまた素肌に落ちて来るのである。
     顔に胸にヴァギナにアナルに・・・。
     それどころか、ヴァギナとアナルに深く埋め込まれた蝋燭は、全て燃え尽きて消えるまで、新しい蝋燭と取り替えて貰えないのである。
     それは幼い彼女達が、ヴァギナとアナルを蝋燭で焼かれる恐怖と苦痛を、長時間味わい続けるという事でもあった。
     ナナーとニニーは声を上げる事も出来ずに、辛さを表現する事として、ひたすら涙を流し続ける事しか出来なかった。
    「さて、そろそろブラッド・オパールを渡してもらおうか」
     夕食が終わりになった頃、公爵はミスター商に向かって言った。
     ミスター商は頷くと、足下に置いてある小さな小物箱をテーブルの上に置いた。
    「この箱の中に、その宝石が3個入っているあるネ」
    「中のブラッド・オパールは、あたし達が命がけで戦って集めたんですからね」
     ライラックは、公爵にブラッド・オパール集めの功績をしっかりとアピールした。
    「そうそう、その『達』の中には、チャームも入っていますからね。公爵様」
     チャームは口の中の料理の粒を飛ばしながら、ライラックの言葉の後に急いで付け加えた。
     ライラックは「行儀が悪いわよ」と、チャームをギロリと睨んだ。
     睨まれたチャームは、あっと思って急いで口を両手で塞いだ。
     公爵は笑いながら小物箱を取り上げると蓋を開けた。中にはブラッド・オパールを入れている皮の袋が入っていた。
    「ふむふむ・・・。この袋の中に、ブラッド・オパールが入っているんだな」
     公爵は皮の袋を取り出すと、口を開いて袋を逆しにした。
     コロコロコロ・・・。中から2つのブラッド・オパールが転がり出てきた。
    「ん・・・?。2つしかないぞ」。そう言うと公爵は、一瞬キョトンとした顔になった。
     テーブルの上の2つのブラッド・オパールを見ていたライラック達も、唖然とした表情をしていた。
    「1つ足りないぞ。どう言う事だ?。ライラック・・・」
     公爵はライラックの顔を見て、「何故だ?」と問いただしてきた。
     ライラックは「聞きたいのは私の方よ」と言うと、ミスター商の方に顔を向けた。
    「わ、私は猫ばばはしていないあるネ」。ミスター商が公爵に向かって言った。
    「それじゃ、どうして2つしかないんだ?」。公爵がライラックに聞いてくる。
    「ね。どうしてなのよ?」。ライラックがミスター商を問いただす。
    「私に聞かれても、困るあるネ」。ミスター商は不思議そうに答えた。
    「本当に3個集めたのか?。正直に言うのならば今の内だぞ」
     公爵はライラックに言った。
    「商さん、間違いなく3個を管理していたんでしょうね!」
     ライラックは、せっかくの苦労が水の泡になりそうなので、怒りだした。
    「ちゃんと、朝には3個あったあるネ」。ミスター商が困った顔で公爵に答える。
    「では、なぜないのだ?」。公爵はライラックに聞くと、「なぜなのよ?」と、今度はミスター商に質問の矛先が向かって行く、
     終わりそうもない、質問の堂々巡りのトライアングル状態を聞いていたルドは、笑いを堪えながら公爵に答えた。
    「朝まであって今ないと言う事は、その間に誰かが盗み出したと考えられますね。・・・たぶんそいつは、この町に来た時に隊商から居なくなったヤツでしょう。・・・さっそく確認してみましょう」
     ルドはそう言うと、イスから立ち上がった。
     ライラックは、相も変わらずに静かにしているチャームが気になって、チャームの席を見ると、チャームはメイドの少女に空になった皿を渡して、「これ美味しかったですね。もう1人前おかわりします」と言っていた。
     ライラックとメイドの少女は、同時に苦笑いをした。
    「親方わかりましたぜ」。そう言ってルドが戻って来た。
    「それは誰なの?」。ライラック達の視線がルドに集中する。
    「それは・・・」
     ルドの調べによると、この町に隊商が着いた後、『ゲテーク』と言う髭面の男が突然居なくなったのだ。ゲテークはミスター商の隊商が隣の国にいた時に、隊商に加わった謎の男であった。
     そのゲテークがオパールの1つを、盗んで逃げて行ったようだ。
     そしてその男は、ライラックとチャームをミスター商に売り飛ばした少年グリーンの身体に、執拗な執着を見せていた人物でもあった。
    「そう言えば・・・あの男が我々の隊商に加わった時、その地域では幼い少年達がレイプされて、殺されると言う事件が起きていたな。・・・まさかアイツが・・・」
     ルドはそこまで言いかけて絶句した。
    「よし!。直ぐにその男を捜し出すんだ。衛兵隊長に知らせろ!」
     公爵は傍らに立っている、秘書役のメイドに指示を出した。
     それから暫くして、館の廊下を秘書役のメイドが歩いて来る。
     コッコッコッ・・・。秘書役のメイドはブラッド・オパールを入れた皮の袋を持って、館の宝物庫の部屋に向かって歩いていた。
     その彼女を追うように、小さな影が音も無くついて来る。
     歩いていた秘書役のメイドは、突然足を止めた。
     それと同時に、ついて来ていた謎の影も、動きをピタリと止まった。
     秘書役のメイドは、謎の影がずっとついて来ているのを、それとなく気がついていた。
     しかし館の宝物庫まで、その影を連れて行く訳にはいかなかった。
    「誰なの?。隠れていないで出てきなさい。そこに隠れているんでしょ?」
     秘書役のメイドは、謎の影が息を殺して隠れている場所に向かって、声を掛けた。
     暫くの間、静寂が秘書と謎の影を包んでいた。
    「ちぇっ。・・・見つかっちゃった。・・・どうもまだ修行が足りないなぁー」
     そう言いながら物陰から、小さな人物が出てきた。
    「あ、あなたは・・・?」。秘書役のメイドは、驚きの声を上げた。
     出てきたのは、グリーンであった。
    「ど、どうして、ここに子供が?。・・・館の警備は厳重なはずなのに・・・」
     秘書役のメイドは不思議そうに小首を傾げた。
    「クスクスクス・・・。あの程度の警備なんか、僕の目から見たら穴だらけだよ」
     グリーンは自慢げに言う。
    「あなたはいったい何者?。・・・何をするつもりなの?」
     秘書役のメイドがそこまで言いかけた時、突然グリーンが体当たりをしてきた。
     ドシーン。「きゃっ!」。秘書役のメイドは、悲鳴を上げて倒れ込んだ。
     その拍子に、持っていた皮の袋を床に落としてしまった。
     グリーンはその袋を素早く拾い上げ、倒れている秘書役のメイドに向かって、「これは貰っていくよ」と言うと、館の外の方へと走り去って行った。
    「たいへーん!。直ぐに公爵様に伝えなければ!」
     秘書役のメイドは真っ青な顔になった。
     それから暫くして、公爵の館から衛兵の一団が町に向かって行った。
     秘書役のメイドから報告を受けた公爵が、館に忍び込んでブラッド・オパールを奪い取って行った盗賊の少年の探索を命令したのだ。
    「せっかくブラッド・オパールが3個、我が手に戻ってきたと思ったのに・・・何が何でも探し出さねばならんぞ!。・・・グズグズしていたら大変な事になる。」
     公爵は力説した後、横に控えている秘書に顔を近づけて囁いた。
    「この件が解決したら、奪われた責任を取らせる為に、お前を厳しく調教しなおすからな。覚悟していろ」
    『えーん。どうして私なんですか?。私は被害者なんですよー。・・・グスン』
     秘書役のメイドは、公爵から不条理な言いがかりを言われて、当惑の表情をしたが、どうした事か彼女のヴァギナの奥からタラリと汁が涌いて来て、ヴァギナを濡らしていくのがわかって、彼女はほんのり顔を赤らめるのであった。
    『いやだわ・・・私ったら・・・公爵様からお仕置きの調教を受けるというのに・・・クスクス・・・』
     一方、自らもブラッド・オパールの捜索をする為に部屋に戻ったライラックは、新しい鎧を身に着けていた。
     以前着けていた鎧よりも材質がよい鎧だ。しかもそれほど重くも無く、身体にピッタリだ。
     続いて脚にすね当ての防具を着ける。鎧とすね当ての色は銀色で統一されている。これはライラックのトレードマークだ。
     両手に皮の手袋をして、同じく革の靴を履き、腰に愛用の剣を下げる。
     この姿を鏡に映して見た。以前からの自分がそこにいた。
    「公爵は、あたしの注文通りの物を用意してくれたな」
     ライラックは「よしっ!」と一言いうと、部屋を飛び出して行った。
     館から馬で町に急ぐ。
     ライラックの馬にはチャームも乗り込んでいる。そしてライラックと一緒に、ルドも馬で同じように町に向かっていた。
    「どうしてあなたが付いて来るのよ?」
    「今度は町の人達に、俺の指であんたがよがってイク姿を、見せてやろうかと思ってよ」
    「何ですって?」。ライラックがルドの顔を睨み付ける。
    「あはははは・・・。冗談だよ。俺はお頭から、ブラッド・オパールの捜索を命令されたんだ」
     ルドはそんなに睨むな、と言うような顔でライラックに答えた。
    「それにしても話を聞くと、館に忍び込んだ賊は、グリーンとか言う小僧らしいな」
    「グリーン?。・・・私達をあなた達に売り飛ばした、あの少年ね。・・・」
     ルドの言葉を聞いて、ライラックはグリーンの事を思い出していた。
     ライラック達が町に着くと、衛兵達の探索が行われていた。
     他の町に行く道には、検問所も出来ていた。
     酒場や宿屋に捜索隊は調べに入る。
     普通のオパールの宝石だと思って、盗み出した髭面の男に盗賊の少年。早く取り返さないと、2人の人間はブラッド・オパールに取り付かれて、魔物の怪物に変身してしまうのである。
     衛兵達が探し回っている町の裏通りを、隠れるように移動している男がいる。髭面のあの男・・・ゲテークだ。
    「くそ。こんなに兵隊達がウロウロされたんじゃ、この町から逃げ出す事も出来ないや。それにしても、宝石一つ頂いただけで、こんなに大騒ぎになるなんて、思ってもみなかったぞ」
     兵隊達の足音が聞こえてくる。ゲテークは物陰に隠れて息を殺す。
    「どうだ、いたか?」
    「いえ。まだ見つかりません」
    「いいか。宝石を盗み出したのは、30歳代の痩せた髭面の顔の男と14,5歳の緑色の髪の少年だ。2人は必ず宝石を隠し持っているはずだ。探し出せ!」
     兵隊達は別の場所へと走って行った。
    「とにかく、この宝石を持っていたら、見つかった時にどうにも逃げられないな。・・・どうする?・・・」
     ゲテークはふと何を考えたのか、ポケットから隠し持っているブラッド・オパールを取り出すと、それを口の中にくわえ込んだ。そして顔を上に向けると、ブラッド・オパールをゴクンと無理矢理飲み込んでしまった。
    「はあ、はあ、ゲホゲホ、・・・こ、これで俺が宝石を持っていると言う証拠はなくなったぞ。後はこの町を上手く出て、どこかで宝石を高く売ってしまえばいいぜ。その前に、腹に入れた宝石を糞と一緒に出さなくちゃならないな」
     ゲテークはまた隠れるように移動をして行った。
     その頃グリーンは、町の中の裏道が繋がっている、ゴミゴミとした場所に逃げ込んでいた。
     グリーンが身を隠した場所から、公爵の衛兵達が血眼になって探し回っている光景が、よく見えていた。
    「くすくすくす・・・。ここまで来れば、もう僕を見つけ出す事は出来ないよ」
     グリーンはそう言いながら、手にしている皮の袋を眺めた。
    「この宝石を、ライラックとか言う剣士から奪い取ったのはこの僕なのに、あの商人のおかげで、宝石は取られて、身体は縛られて木に吊されたんだ。・・・宝石を取り返そうと隊商の隙を狙って、後を付けてここまで来ちゃったけども、・・・やっと隙だらけの領主の館の中で、宝石を手に入れる事が出来たんだ。また奪い取られてたまるものか!。
     もう少しここに隠れていて、兵隊達がいなくなったらこの町から出て行こう。・・・そして、他の町でこのオパールを高く売ってやろう。・・・どれ、袋の中のお宝をちょっと眺めて見ようとするかな」
     グリーンは皮の袋の口を開けて、中のブラッド・オパールを見ようとした時、ギュッと、誰かの手がグリーンの右腕を掴んだ。
    「ひっっっ!」。グリーンは思わず大声を出しかけた。
    「静かにしな!。こんな所で大声を出したら、自分の居場所を兵隊達に教える事になるぜ」そう言いながらグリーンの口に手を当てたのは、ゲテークであった。
    「お前は確か、グリーンとか言っていた小僧だな。・・・ははー。宝石を盗み出した小僧はお前のことか」
     ゲテークは、さっき衛兵達が言っていた盗賊少年の特長を、思い出して言った。
     グリーンは皮の袋を背後に隠す。
    「図星かい。・・・取り敢えずどこかに隠れて、夜まで待とう。夜になれば逃げ出せる魂胆が浮かぶだろう」
     夕暮れの裏町の隅を、ゲテークと彼に腕を取られたグリーンとが、暗闇へと消えて行く。
    「くそ、もうじき夜になってしまう。いったい何処に消えてしまったんだ?」
     町の広場にいるライラックは、歯軋りをしながら呟いた。
    「今夜は徹夜かな?」。一緒にいるルドが言った。
    「とにかくこの町の外には、まだ出ていないはずだ。もう一度、町の中を探してみよう」
     ライラック達は町の中にへと走って行った。
     夜の空に月が浮かぶ頃、グリーンとゲテークはある空き家を見つけて入り込んでいた。
     小屋の隅でグリーンは、疲れの為かウトウトと薄い睡魔に襲われていた。
     グリーンの背後から、ゲテークが忍び寄って来る。
    「へへへ・・・。何度見てもお前の身体は、抱き締めたいほどのいい身体だぜ」
     ゲテークは、グリーンのお尻を半ズボンの上からそっと撫で回した。
    「この肉付き、たまらねぇや」
     ゲテークは、横になっているグリーンのシャツを捲り上げ、半ズボンのベルトを外して、下ろしに掛かった。白い小さなパンツが姿を現す。
    「げへへへ・・・。どんな可愛い物を持っているのかな?」
     ゲテークの片手が、グリーンの穿いているパンツの中に潜り込まされた時、異変に気が付いたグリーンが目を覚ました。
    「うわっ!。な、何をするんだよっ!」
     グリーンは驚いて逃げようともがいた。
     しかしグリーンの身体はゲテークにしっかりと押さえ付けられていた。
     ビリリッ。ビッ!。ゲテークの手によって、グリーンのシャツとパンツが引き破られた。
    「わっ!。やだっ。恥ずかしいよ」
     グリーンはゲテークの手によって、一糸纏わぬ全裸の姿にされてしまった。
    「やめろっ。やだやだっ」
     ビシッ。ビシッ。・・・声を立てているグリーンの顔に、ゲテークの平手打ちが数発入った。
    「ギャーギャーうるせぇと、ぶっ殺すぞ!。もっと痛い目に遭いたいかっ?。俺はな、他の国で何人ものお前のような少年を、レイプをして殺してきているんだ。言うことを聞かないと、お前も同じ目に遭うんだぞ。わかったか?」
     脅えた表情を見せるグリーンを見て、ゲテークの手が、グリーンの股間の薄い陰毛の中に生えているペニスをまさぐりだした。
     グニュ、グニュ、グニュ・・・。
     脅えているグリーンの身体は、性的快感を覚える事がなかったので、若いグリーンのペニスが太く勃起する事はなかった。
     次にゲテークは、グリーンをうつ伏せにさせ、これまた可愛い2つのお尻の膨らみを、いやらしく撫で回しだした。
     ゲテークの口から、「はあ、はあ」と息使いが荒くなっていくのが聞こえていた。
     グリーンは唇を噛んで、屈辱的な行為に堪えていた。
    「いっ!」。ゲテークの舌がグリーンのお尻をペロリと舐め、グリーンは思わず息を飲み込んだ。
    「げへへへ・・・。さて、ここはどうかな?」
     ゲテークはそう言うと、2つのお尻の膨らみの間にある、アナルの周辺を撫で回し始めた。
    「あ、あ、あ、・・・う、ん・・・あうっ」
     グリーンは背筋に何とも言えない悪寒を感じながら、じっと堪え続けていた。
     ゲテークの指がアナルの所を行き来すると、アナルが反応をして、キュッと口を縮めてしまう。
    「それじゃ、いよいよやるとするか。・・・へへへ。痛いのは最初の時だけだからな。我慢をしろよ」
     ゲテークは自分のズボンから勃起した太い男根を出すと、フルフルと震えて口を窄めている、グリーンのアナルに擦り付けた。
     再び「ぞわっ」とした嫌悪感のある悪寒が、擦り付けられたアナルから身体全体へと駆け抜けていき、グリーンは全身をブルッと震わせた。
     涙を溜めた目を強く閉じ、唇をギュッと噛み、おぞましい物が無理矢理自分の身体の中に入って来るのを、ひたすら待ち構えていた。
     その時、背後のゲテークから苦しさで呻く声がしてきた。
    「おうっ。あううううううう・・・」
     グリーンはハッとして、背後にいるゲテークの方に目をやった。
     ゲテークは頭を抱えて苦しがっている。
    「な、なに?」。グリーンは急いでゲテークの側から離れて、部屋の隅に逃げ込んだ。
     ゲテークの姿が、グリーンの目の前で、段々と異形の姿になっていくのであった。
     髭面のゲテークの顔が、・・・口には牙が生えた大きなくちばしが生えてきた。頭には先の尖った耳が生え、長い2本の触角が生えてきていた。
     額には、赤いブラッド・オパールが浮かび上がっていた。
     それ以上に、ゲテークの身体は巨大になり両手両足は人間とは思えないほど長くなり、しかももう一対の同じ様な脚が腰の所から生え出してきた。
     胸から腹に掛けて皮膚が縦に割れ、その中に無数の牙が見えていた。それは口を縦にしたような感じであった。しかも肋骨が、皮膚から突き出し大きな牙のように動いていた。
     しかも長い尻尾が生えてきているのが見えた。
     6本の長い脚を持ったゲテークは、床に身体を前のめりに倒し、蜘蛛のように自分の身体を6本の脚で吊り支えていた。
    「うわぁぁぁぁ。たすけてぇー!」
     魔物の姿へと身体を変化させていくゲテークを見て、グリーンは悲鳴を上げた。

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