帝国軍広報局

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窓のない部屋には、何台もの大型モニターが並び、印刷前の新聞記事が映し出されていた。

 その中央にあるのは、最新号の『帝国軍報』。

 大見出しには、こう書かれている。

 ――「王国令嬢たちが自ら帝国軍へ投降!」

 その下には、帝国製の安物の白いスポーツブラ、ショートパンツに戦闘用装備を身に着け、満面の笑みで銃を掲げる三人の女性の写真が掲載されていた。

「先輩、次のプロパガンダ記事は、こんな感じでいいですか?」

 若い広報官のエルネが、印刷見本を両手で持ち上げた。

 向かいの机に座っていた先輩広報官グラウスは、眼鏡の位置を直しながら紙面を眺める。

「ほう。例の王国令嬢たちか」

「はい。新設された第23徴収兵団、通称『御令嬢部隊』の記事です」

「……御令嬢部隊、ねえ」

 グラウスは鼻で笑った。

「上層部も、なかなか悪趣味な名前を考えるものだ」

「でも、新聞の見出しとしては目を引くと思います。王国の貴族令嬢たちが、帝国軍のために働いている。しかもあんな恰好なのに笑顔で……」

 写真ではうら若い御令嬢が下着同然の恰好だけでもおかしいのに、スポーツブラは素材が悪く薄いのか乳首が透けて見えている。ショートパンツに至っては股間部にチャックはなく大きな穴が開いて精気が丸見えだ。

「そうだな。王国民にとっては、実に見たくない光景だろう」

 グラウスは椅子から立ち上がり、壁一面のモニターへ歩み寄った。

 そこには、記事に使われた写真が大きく表示されている。

 赤い髪の女性。金髪の女性。銀髪の女性。

 かつて王国の社交界で名を知られ、国民からも尊敬を集めていた令嬢たち。

 その三人が、今は自分達の敵のはずの帝国軍の装備を身に着け笑っていた。

「しかし、よく撮れているな。特にこの赤髪の娘。以前は、王国の騎士団に所属していたんだったか?」

「はい。王族直属の近衛騎士団に所属していた、アリシア・フォン・ベルクハイムです。王国では、若き女騎士として人気があったそうです」

「その彼女が、今では帝国軍のために銃を持ち、帝国の旗の下で笑っているとは……」

 グラウスは写真を指で叩いた。

「王国の人間が見たら、どう思うだろうな?」

「……裏切り者だと思うでしょうか?」

「そうではない。自分たちが信じてきたものが、根底から崩れるんだ」

 グラウスは、別のモニターを操作した。

 そこには、王国領内から収集された市民の反応が表示されていた。

 新聞記事の閲覧数。街頭での会話記録。軍の検閲部門がまとめた投書。

 その中には、こんな言葉が並んでいた。

『あの方々まで帝国についたのか』

『王国を守るために戦っている兵士たちは、何のために戦っているのだ?』

『貴族でさえ国を見捨てるのなら、我々に何ができるというのか』

 エルネは、画面を見つめた。

「……すごいですね。記事を出してから、元王国民の抵抗が減っているそうです」

「前線にも影響が出ている。自分たちが命を懸けて守った国の令嬢たちが、帝国軍の制服を着て笑っているんだからな」

「でも、先輩。これって……」

 エルネは言いかけて、口を閉じた。

 グラウスが彼女を見た。

「なんだ?」

「いえ……。普通なら、こういう記事は偽造ですよね。敵国の貴族を裏切り者に仕立て上げるために、写真を加工したり、発言を捏造したり」

「その通りだ」

「でも、今回の令嬢たちは……」

 エルネは、再び写真を見た。

 その写真には、加工の形跡は一切なかった。

「本当に、あんなことを言っているんですよね?」

「お前は写真担当だったな。発言は編集しているぞ? だいぶマイルドにな。原文のままだと閲覧が通らん。全く仕様だか知らんが……もう少しちゃんと調整して欲しいものだ」

 代わりに、机の引き出しから一枚の薄い書類を取り出した。

 表紙には、帝国軍の機密印が押されている。

 ――《精神調整計画・第23徴収兵団適用報告》。

「エルネ。君は、彼女たちがどうして帝国軍にいるのか、どこまで知っている?」

「……精神調整を受けた、という話は聞いています」

「どこまで?」

「詳しくは……」

「そうか」

 グラウスは書類を机に置いた。

「彼女たちは、帝国軍に捕らえられた。そこで、非公開の精神調整を受けた。自分たちの過去も、家族も、王国への忠誠も、すべて覚えている」

「覚えているんですか?」

「もちろんだ。忘れさせる必要はない」

 彼は淡々と続けた。

「むしろ、覚えているからこそ意味がある。王国の誇りを知っている者が、その誇りを自ら捨てたと見せかける。王国民にとっては、何よりも耐え難いだろう」

 エルネの顔から、少しずつ笑みが消えていった。

「……では、彼女たちの今の言動は」

「精神調整によって作られたものだ。帝国軍に従うことを喜びと感じ、命令に疑問を持たず、帝国のために戦うことを自分の意志だと思い込んでいる」

グラウスは資料の束を手でたたいた。

「上層部からの指示だ。精神調整など架空の技術。彼女たちは自分の意志で投降し、自分の意志で帝国軍に加り、あんな恥知らず……ではなく王国時代に抑え込まれた欲求を発散している。それが公式見解だ」

「でも、そんなの……」

「詐欺だと思うか?」

 エルネは黙った。

「事実を公表するのではない。帝国軍の為になる情報を事実にする。広報とは、そういう仕事だ」

 グラウスは新聞を手に取り、最終チェックを行う。

 彼は紙面の下段を指さした。

 そこには、赤髪のアリシアが拡声器を持ち、群衆へ向かって演説している写真が掲載されていた。

 記事には、彼女の言葉として、こう記されている。

『私はもう王国の騎士ではありません。これからは帝国の兵士として、帝国のために戦います!』

「この台詞、本人が言ったんだっけ?」

「はい。精神調整後の公開演説で、本人が話したものです」

「ならば、問題ない」

 グラウスは満足そうに頷いた。

「言葉そのものは、間違いなく彼女の口から出た。こちらは、その意味を都合よく説明するだけだ」

「……本人が、どういう状態なのかは書かないんですね」

「書くわけがないだろう。目の焦点が合わずへらへら笑いながらあそこから汁垂らして興奮していたなど……ゴシップ紙ではないんだぞ?」

「うええぇ!? それ本当ですか!? でも、渡された写真は……」

「何枚か撮った写真で使えそうなやつを厳選したんだ。ドン引きの民衆の顔が写っていない奴を何とか探して……」

 グラウスは、エルネの肩を軽く叩いた。

「まあ、今後はこいつらがまともな人間じゃないって知られればそんな手間はなくなるから……お前も手伝えよ?」

「……」

 その時、部屋に備え付けの電話が鳴った。グラウスはそれを取り内容を聞くと何度か返事をして受話器を戻す。

「おい! 出かけるぞ。お偉いさんが御令嬢を使ってパフォーマンスするからそれを使ってプロパガンダ記事を作れって!」

 彼らは急いで取材道具を準備し、編纂室からでていった……。

 その夜、帝国宮殿では、王国攻略の成功を祝う晩餐会が開かれていた。

 大広間には帝国の貴族や将軍、各国の外交官が集まり、豪華な料理と酒が振る舞われている。

 女性たちは華やかなドレスをまとい、男性たちは勲章の輝く礼服に身を包んでいた。

 その中で、ひときわ目を引く一団があった。

「皆様、本日は帝国の勝利を祝うこの場に、特別な客人をお招きしております」

 司会者が声を張り上げる。

「かつて王国の王女であられた、エレノア・フォン・ローデリア殿下です!」

 号令と共に扉が開いた。

 現れたのは、豪華なドレスを着た王女ではなく……白い下着同然の服に、腰には弾薬ポーチ。頭には軍帽。胸元には帝国軍の徽章。

 エレノアは背筋を伸ばし、指先をぴんと伸ばした行進で広間へ入ってきた。

「1! 2! 1! 2! ぜんた~い! 止まれ! 帝国軍エレノア三等兵! ただいま入場いたしました!」

 彼女は誰に命じられるでもなく、広間の中央で立ち止まる。

 そして、勢いよく敬礼した。

「帝国の栄光のために! いつでも出撃できます!」

 一瞬、広間が静まり返った。

 次の瞬間。

「……ぷっ」

 誰かが吹き出した。

「おいおい、あれが本当に王女殿下なのか?」

「晩餐会に軍服で来るとは、王国の晩餐会はあんな作法なのか?」

 小さな笑い声が、あちこちから漏れ始めた。

 エレノアは、そんな反応を気にする様子もなかった。

 むしろ、注目を集められたことが嬉しいらしい。

「そうです! エレノア3等兵はいつもマナー教師に褒められました! け~れい♡」

 彼女は胸を張り、敬礼をする。

「本日は、帝国軍の戦闘員として、皆様の警護を担当いたします!」

「警護?」

 帝国貴族の一人が、隣の将軍へ顔を寄せた。

「ここは宮殿だぞ。警備兵なら廊下にいる」

「本人は、あれが仕事だと思っているのだろう」

「……なるほど」

 二人はグラスを傾けながら、苦笑した。

 そんな声を聴きながら軍の将校が一人エレノアに近づいて話しかける。

「いえいえ。今日は王国の代表として呼んだのですが……それなら本官の随伴兵になりますか?」

「おお! いまだ訓練も終了していない私にそんな重要な! 失敗したら自害する覚悟で任務を遂行いたします!」

 彼はこの晩餐会に招待はされているが若く、階級は少佐だ。この場所では下から数えたほうが早い身分。

 しかし、王女はそんな彼に媚びへつらい従者のように付き従っている。

 その様子を見ていた若い貴族が、思わず笑い声を上げた。

「まるで子供の兵隊ごっこだな」

「王女殿下が、あんなことを……」

「いや、もう王女ではないのだろう? 帝国軍の一兵士なのだから」

 その言葉に、周囲の貴族たちがまた笑った。

 しかし、笑い声は長く続かなかった。

 晩餐会の主役は、あくまでも帝国の勝利を祝う将軍たちだった。

 貴族たちはすぐに戦利品や領地の分配、今後の外交について話し始める。

 エレノアの存在は、いつしか話題の中心から外れていった。

 余興はもう終わったのだ。そんな中エレノアは無様なオブジェとして晩餐会上で立ち続けていた……。

 晩餐会は予定通り盛り上がり終了した。会場の一室を借りて一部の軍関係者が今回の反省会を行っていた。

「広報部。今回の余興はしっかり撮影できたかね?」

 自分よりはるか身分の将軍に話しかけられ、グラウスはやや緊張した顔で返答する。

「はっ! しっかりと……ですが……これをそのまま掲載するのは……」

 グラウスの視線の先には元王女……エレノア3等兵が立っていた。ただし、履いていたショートパンツを完全に脱いでマンコが丸見え。

 おまけにマンコにはパーティーに出ていた料理が詰め込まれており、お尻の穴からはワインが垂れていた。

「エレノア! 任務完了しました! 帝国を讃えるためにパンツを脱ぎました! 食料を無駄にしないために残った料理をおまんこバックに収納! 景気づけにお尻の穴にワインボトルを差し込んで一気飲み! 完璧であります! 将軍閣下!」

 エレノアは、帝国軍の将軍の方を向いて敬礼した。

「そうか。ご苦労。まあ、そこは削りなさい。元王女が場違いな恰好で晩餐会に出たということを広めればいい。後は参加者からこのキチガイ行為が勝手に広がるであろう」

 将軍は軽く咳払いした。

「少なくとも、上層部はしばらく続ける方針だ。王国民への宣伝効果が思った以上にあったようでな」

 将軍は手元のワイングラスを見つめた。

 エレノアはへらへら笑って敬礼し続けている。一見自分の意志で喜んでしているように見えるが、エレネは恐怖を感じた。生きてる人間のはずなのに人に操られてるマリオネットのように見えたからだ。

 

      *

 翌朝。

 帝国軍報の編集室では、エルネが晩餐会の写真を確認していた。

 写真の中央には、元王女エレノアが晩餐会で帝国貴族に笑われてるのに喜んでいる。。

 何人かは見世物の動物を見る目で笑っている。

 何人かは、すでに彼女から目を逸らしている。

「先輩、この写真はどうしましょう?」

 エルネが尋ねた。

 グラウスは写真を覗き込み、しばらく考えた。

「使えるな。ギリギリ検閲を通せて、なおかつ彼女の痴態がばっちりと写ってる」

 グラウスは、写真を受け取り、合格品を入れる箱にいれた。。

「晩餐会での様子も記事で載せますか?」

「必要な部分だけだ。彼女が笑顔で敬礼している写真を使え。周囲の貴族が笑っているところは、わざわざ説明する必要はない」

「……分かりました」

 エルネは記事の見出しを入力した。

 ――「元王女エレノア、晩餐会で兵隊ごっこ!」

 グラウスは、その見出しを確認して頷いた。

「これでいい」

 エルネは画面を見つめた。

 写真の中のエレノアは、誇らしげに笑っている。

 けれど、その笑顔を見ている者たちが、彼女をどう思っているのか。

 それは記事のどこにも書かれない。

 王国民には、かつての王女が帝国に忠誠を誓った姿を見せる。

 帝国民には、敗れた王国の象徴が帝国軍の一兵士となった姿を見せる。

 そして、帝国の貴族たちは、彼女の振る舞いを一時の余興として笑い、すぐに忘れていく。

 エレノアだけが、その場で与えられた役割を、心から誇りに思っていた。

 その事実こそが、帝国軍広報局にとって、何よりも都合のよい宣伝材料だった。

 数日後。

 帝国軍報の最新号は、王国領内の各都市へと運ばれていった。

 王都の広場では、新聞売りの少年が声を張り上げていた。

「帝国軍報! 帝国軍報だよ! 王国の令嬢たちが帝国軍に入隊!」

 新聞を受け取った市民たちは、最初こそ興味深そうに紙面を眺めていた。

 しかし、写真を見た瞬間、その表情は変わった。

「……アリシア様?」

 一人の老人が、震える手で新聞を握りしめた。

「そんな……。あの方が、帝国軍の兵士になっただと?」

「嘘だろう? あの近衛騎士団の令嬢が?」

「しかも、こんな格好で……」

 周囲の人々が、次々と新聞を覗き込む。

 そこに写っているのは、かつて王国の式典で国旗に忠誠を誓っていた女性たちだった。

 その彼女たちが、今は帝国軍の旗の下で笑っている。

「……もう、何を信じればいいんだ」

 若い兵士が、新聞を見つめながら呟いた。

 彼は休暇で王都へ戻ってきたばかりだった。

「俺たちは、あの人たちのような貴族を守るために戦っているんじゃないのか……?」

「馬鹿を言うな!」

 隣にいた年配の兵士が怒鳴った。

「記事なんて、帝国の嘘に決まっている!」

「でも、写真が……」

「写真など、いくらでも偽造できる!」

 そう言い返したものの、年配の兵士の声にも、以前のような力はなかった。

 周囲の人々は、新聞を見ては顔をしかめ、互いに目を合わせては沈黙する。

 誰もが、心のどこかで同じ疑問を抱いていた。

 ――もし、本当に彼女たちが自分の意志で帝国に従っているのなら。

 ――自分たちは、何のために戦っているのだろう。

 その疑問は、口に出されるたびに、少しずつ広がっていった。

     *

 一方、帝国の首都では、まったく違う光景が広がっていた。

 広場に設置された大型スクリーンには、帝国軍報の特集映像が映し出されている。

 帝国軍の制服を着た三人の令嬢が、帝国の旗の前で敬礼していた。

『帝国のために、全力で戦います!』

 映像が終わると、広場の人々から拍手と笑い声が上がった。

「おい、見たか? あの王国の令嬢様たちを! 王国の貴族はあそこ丸出しが嗜みってか♪」

「昔は、帝国人を野蛮人呼ばわりしていたんだろう?」

「それが今じゃ、帝国軍の兵士だ! おまけに自分から志願したらしいぜ! 普通、敵対している国の兵士になるか?」

「普通じゃないんだろ? あんな格好で笑って人前にでるんだし! お嬢様は欲求不満ってか!

 酒場の主人が、新聞を片手に笑った。

「いやあ、帝国も粋なことをするもんだ。王国の誇り高いお嬢様方が、帝国のために働いてくださるとはね!」

 客たちがどっと笑った。

「おい、次はどんな仕事をさせるんだ?」

「さあな。帝国のためなら、何でも喜んでやるんじゃないか?」

「今度役所に要望だそうぜ! あいつ等…王国のせいでこっちは色々大変なんだ! 帝国兵になったとしても償ってもらわなくちゃ!」

 彼らにとって、令嬢たちの姿は娯楽だった。

 かつて帝国を見下していた者たちが、今は帝国の命令に従っている。

 その光景を眺め、笑い、酒を飲む。

 それだけで、彼らは自分たちが勝者であることを実感できた。

 だが、その笑い声の届かない場所で、三人の令嬢たちは今日も命令を受けていた。

     *

 編集室に戻ったエルネは、次号の紙面を確認していた。

 王国領内での反応は、予想以上だった。

 記事を読んだ市民の間では、王国貴族への不信が広がり、前線の兵士たちからも厭戦的な発言が増えている。

 帝国側では、令嬢たちの映像が娯楽として消費され、新聞の売り上げも伸びていた。

「……先輩」

「なんだ?」

「これで、王国の人たちは……」

 エルネは、モニターに映る市民の反応を見つめた。

「本当に、戦う気をなくしていくんでしょうか」

「そうだな」

 グラウスは、次号の見出し案を書き込みながら答えた。

「王国軍の兵士が剣を捨てる理由は、必ずしも戦場で負けたからとは限らない」

「……」

「自分たちが守るべき国を信じられなくなったとき、人間は戦う理由を失う」

 彼は、完成したばかりの見出し案をエルネへ渡した。

 そこには、こう書かれていた。

 ――「元王国騎士、帝国軍で新たな人生を宣言!」

 エルネは、その文字をじっと見つめた。

 記事の中では、アリシアは帝国軍への入隊を誇りに思い、かつての王国を過去のものとして語っていた。

 けれど、エルネは知っている。

 彼女が帝国軍に入ったのは、自分の意志ではない。

 その事実を知っている者は、編集室の中にもほとんどいなかった。

「……次の記事も、同じように書くんですか?」

「当然だ」

 グラウスは、何事もなかったかのように答えた。

「それが仕事だからな。ほら、次の記事の作成命令だ。今度の内容は「お嬢様!銃の組み立て訓練で銃身を使ってオナニー」だとさ。王国では命を預ける武器でオナニーをするのが常識……ってことにして辱めたいらしい。実際にやらせた写真もあるぞ」

「あの……俺はこの前の晩餐会での詳細記事の作業中で……」

「ん? ああ! 評判がいいから追加でってきた奴だな。分かった。こっちは俺がやるわ」

 こうして2人はいつものように作業を始める。

 机には晩餐会でパンツを脱ぎ捨て、王国伝統の歌を歌っている元王女の写真があった。

 晩餐会の参加者が冗談で言ったことを、実際にやって笑い者にされた時の写真だ。

 王女という王国の顔とも言える存在が帝国の貴族にはやし立てられて、娼婦もしないような行為をやったという事実。

 王国民がこれを見たらどんな反応になるのだろう。自分は真実を知っているが、王国民……いや世界中がこれが真実になるのだろう。

「帝国の一兵として、死ぬまで戦うでありま~す♪」

 彼女の宣言……あれは言わされてるのか……それとも本心になってしまったのか……。

 もう彼女は王国の王女ではなく、敵対国の兵士になった痴女として生きて、死ぬまで使われ、後世まで名が残るのだろう。

 窓のない編集室に、印刷機の低い駆動音が響き始めた。

 新しい新聞が、次々と刷り上がっていく。

 その紙面には、今日も帝国のために笑う令嬢たちの姿があった。

 そして、その笑顔を見た誰かが、また一人、戦う理由を失っていくのだった。

 

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