〈 海は広いな大きすぎるぞ!。・・・の巻・前編 〉
ザザァー。ザザァー。ザザァー。
夜空の上に浮かんでいる満月の光が、大海原の上を波をかき分けて走る、2隻の大きな帆船を照らし出していた。
その2隻の船のマストの上には、フォレックス公爵所有の船である事を示す大きな旗印が、パタパタとたなびいていた。
この2隻の船は、公爵の住んでいる国の産物や宝物を積み込んで、今、南の地方を目指して、この大海原を渡っている最中なのである。
ザザァー。ザザァー。
先頭を走る船の甲板に、どこまでも広がる夜の海を眺めるライラックの姿があった。
ライラックは、墨を流し込んだように黒い海の表面を眺めながら、この船に乗り込むことになった訳を改めて思い出していた。
それは・・・この船が出航したムーサリアス王国の大きな港町から、始まっていたのだ。
「ちょっとぉぉぉ!。どうしてあたしが船に乗って、遠い南方の地方へと行かなくてはならないのよっ!。」
突然の叫び声が、活気で騒然としている港のざわめきを、一瞬止めた。
周りの人々の驚きの視線が、ある一団に集中する。
視線の先には身体を銀色の鎧で包んだ女性剣士が、彼女の前に立っている見るからに高貴な貴族の男性に向かって抗議の声を出していた。
もちろん騒ぎの元は、女性でありながら傭兵剣士のライラックだ。
そして彼女の前にいるのは、ライラックの主人であり、ここムーサリアス王国内で大貴族のフォレックス公爵だ。
その公爵の背後では、影のように寄り添い立っている秘書役のメイドのニーナが、ちょっと困ったような苦笑いの表情を浮かべていた。
そしてライラックと公爵の2人の側には・・・。
ニコニコと微笑んでいる、金髪のロングヘアで白い肌の人形のような顔立ちの少女は、チャームだ。
緑色と金髪の髪の毛をした女の子のような顔立ちの少年はグリーン。
小さなキャップの帽子を頭の天辺に被り、チャイナ服を着て細い口髭を生やした東洋人ふうの男、ミスター・商。
その彼の横には、がっしりとした身体の傭兵剣士ルドが、鎧を着て立っていた。
「簡単なことだ。例のゲテークとか言った男が、ブラッド・オパールの魔力で魔怪物に変身して、南方の方へ海を越えて飛んで行ったとの情報が届いたんだ。 それと砕け散ったブラッド・オパールのいくつかも、同じように南方へ飛んで行ったとのことだ。」
ライラックの正面にいる、フォレックス公爵は静かに答えた。
「そこで、我が公爵家から選ばれた『ブラック・オパール収拾隊兼魔怪物討伐隊』が、南方の国へと、派遣されることになったのだ。 ライラックはそのメンバーになったんだぞ。どうだ嬉しいだろう?。」
「あ・・・あのねぇー・・・勝手にメンバーに加えないでよね・・・」
ライラックはポツリと呟く。
「普通ならば船に乗って南方に行くには、それなりの船賃がいるのだが、ライラック達は公爵家公認の隊だから、船賃と旅費は全てこちら持ちなんだぞ。・・・しかも公爵家の関係する施設を使う時も、料金の心配をしなくてもいいのだぞ。」
公爵の胸を張った説明を聞いていたライラックは、「もしかすると、私達からも料金を取るつもりだったの?。」と、思わず言ってしまうところであった。
「とにかく南方行きは下ろさせてもらうわ。公爵。」とライラックは公爵にピシャリと言った。
「なぜ、そんなに南方に行く事を、嫌がるのだ?。」
フォレックス公爵は不思議そうに、ライラックに聞き返した。
「うっ・・・!。 そ、それは・・・。」
ライラックは奥歯に何かが挟まったような表情をつくった。
「何か訳ありの理由がありそうだな。・・・魔怪物を切り倒す傭兵のライラックが、船で南方へ行くことに対して、これほど取り乱す姿を見せるのだから・・・」
公爵はそう言うと、自分の顔をライラックの面前へと、グイッと近づけた。
「あ・・・あ・・・ありませんよ。 別に訳なんか・・・きゃはははは」
ライラックは無理な笑い声を上げた。
「ほぉぉぉ。 私に対して下手なウソをつくと、ライラックの首に填めている『隷属の首輪』を、10センチほど縮めてやっても良いのだぞ。」
公爵はそう言うと、何か呪文を口の中で呟きだした。
「わぁぁぁ!。 わかりましたよっ。 言います。言います。」
10センチも首輪を縮められては、かなわないと思ったのか、ライラックはポツリポツリと訳を言いだした。
周りにいるチャーム達も、ライラックの口から出てくる言葉を、固唾を呑んで待った。
「そ、それ・・・は・・・」 ライラックの口がもぐもぐと小さく動く。
「ふむふむ、それは・・・」 みんなの目と耳が、ライラックの次の言葉を注視した。
「な・・・南方の国の人間は、・・・あたしのような美人の女性を見ると、男性の・・・あの・・・男根を3本も勃起させて犯すんでしょう?。 それから2つの顔に付いている牙の生えた大きな口で、あたしのような綺麗な女性を頭からガリガリと食べてしまうんでしょう?。」
・・・・・・・・・・・ ド ッ カ ー ン ! ・・・・・・・・・・・・・・・・
周りにいた者達は、ライラックが指折り数えながら言う言葉を聞いて、思いっ切りコケてしまったのである。
「な、なんなんだそれは?。」
周りが大コケをしている状態の中で、どう言う訳だかひとり平然と立っている公爵は、小さな声でポツリと呟いた。
「しかしライラックは、傭兵として魔怪物やいろんな戦場で戦ってきたんだから、そんな事で恐れるとは思えないんだがな。」との公爵の言葉にライラックは、
「冗談じゃないわよ!。・・・考えてみてよ。・・・もしルドのような男の後ろ姿があたしの前にいたとするわよ。・・・あたし、いい男だと思って声を掛けた時に、その男がクルリとあたしの方を向いた時、その男の顔に目が3つもあったり、のっぺら坊だったり、首がにょろにょろと長くなったりしたら・・・それに足や手が8本も10本もある人間なんだったりしたら、・・・あたしそう言うのを見たら、まるっきりだめなのよ。・・・死んじゃう気持ちになっちゃうのよ。」と答える。
『な、南方の国の人も、怪物みたいに言われちゃって、・・・なんだか・・・あんまりな言われ方ね・・・。』
秘書役のニーナは、何と言っていいかわからないと言いたげな表情で、ライラックを見ていた。
「ふ~ん・・・。誰から聞いたんだ。そんな事を?。」と、公爵の問いに、
「誰って・・・あたしが子供の時に村に来て住み着いた、元傭兵剣士と名のっていた老人の男性ね。・・・なんでも地の果てにいた魔人の大魔王とたった1人で戦って、地の底に封印して世界の滅亡を防いだと豪語していたし、それにこうも言っていたわ。 ある国の山奥にいた数百年も生きている3本の尻尾を持つ巨大な妖狐と1週間も戦い続けて、99人もの兵隊の死人を出しながらも、最後の1人になっても戦い続けて、やっとその国から追い払う事が出来たと、胸を張って話していたのよ。・・・その元傭兵剣士の老人が南方の国に行った時に、南方の国の人間達はそのような姿で歩いていたと言っていたのよ。・・・ちがうの?。」
ライラックは真剣な表情で答えた。
それを聞いていた公爵は、先端が折れ曲がった髭を指で触りながら、「それはまたすごい傭兵剣士だな。・・・」と呟きながらも思案の表情になった。
『はて?・・・わたしは過去にそのような兵隊達と戦いをしたと言う記憶が無いのだが・・・。』
公爵は記憶のページをいくら開いても、そんな項目が頭の中に浮かんでは来なかった。
周りの人達が、ライラックの言うすごい元傭兵剣士の話を、驚きの表情で聞いているとき、秘書役のニーナが公爵の耳元でそっと聞いてきた。
「公爵様、本当なのですか?。」
公爵は、あんな話しお前まで信じるのか?・・・と言うようなウンザリとした顔でニーナに向かって、
「そんなにすごい傭兵剣士がいるならば、1度戦ってみたいものだね。・・・そもそも私はここ数百年この国に住み着いているが、話のような戦いも剣士にもあった事はないんだがね・・・。」と、苦笑いを堪えながら答えた。
「では、ライラック殿の話している元傭兵さんの体験談は・・・・?。 特に南方の国の人間のことは・・・?。」
ニーナは、あらあらと言った驚いた顔で公爵に聞き返した。
「ま、そう言うことだ・・・。 それにしても、その元傭兵の老人の話のことは別にしても、南方の国の人間のことに関しては、こんな間違った事をこの大陸中の国々に言い広められたら、私の交易に支障が出て来るな・・・。 本当に人間って言う生き物は・・・。」
溜め息をふぅぅと付きながら呟いた公爵は、ズイッと顔をライラックに近づけると、
「ライラック、『百聞は一見にしかず』と言うことわざを知っているかな?」
ライラックは驚いたような表情で、思わず顔を大きく左右に振った。
「い・・・いいえ」
「それならば1度南方の世界を見てくるといいぞ。」
思いも掛けない公爵の言葉に、ライラックが「だから・・・南方の人間は・・・」と言い掛けたとき、公爵は指をパチンと鳴らした。
それを合図に、周りにいた水夫達が「へぇーい!」と一斉に声を上げると、ドドドーっとライラックに飛び掛かって行った。
ドタン。バタン。バシーン。バタターン。ドシーン。
モクモクとライラックの立っていた場所を中心に、土煙が立ち上がっている光景を、チャーム、グリーン、ルドらは、目を丸めて見つめていた。
しばらくして土煙が薄れると、首から足の先まで縄でグルグル巻にされて、芋虫のようにされてしまっているライラックが現れた。
「ちょっ・・・ちょっとぅ。 なんなのよー。 縄を解いてよぉ。」
簀巻(すま)きにされて地面の上に転がらされているライラックは声の限り叫んだが、公爵はまるっきり無視をして、背後にいる秘書役のニーナの方に視線を向けた。
「はい。」とニーナは小さく頷くと、ミスター・商に声を掛けた。
「ミスター・商様、出航の準備をお願いします。」
「はいあるネ。・・・みんな出航の準備するあるヨ」
ミスター・商の命令を聞いた水夫達は、ドドドドーと2隻の船の中へと駆け込んで行った。
その先頭には、水夫達に担ぎ上げられ簀巻きにされているライラックの姿が見えていたが、そのまま水夫達と一緒に船の中へと消えていった。
「ちょっとー。 放してぇー。」とのライラックの悲鳴を、呆然と見送るチャームたちの耳に残して・・・。
それからしばらくの時が過ぎた。
港はさっきまでの騒動が嘘のように、いつもの水夫達の働いている騒然とした音が辺りを包んでいた。
積み荷を船の中に運び込む者。 船の甲板上で出航の準備をしている者。
船の下では運び込まれる積み荷を確認しているミスター・商とルドがいた。
フォレックス公爵はそんな光景を満足そうに見つめている。
ジャァァァァーン。ジャァン、ジャァン、ジャァン。
全ての荷物を積み込み、出航の準備が出来上がった2隻の船からは、出航を伝えるドラの音が勢いよく鳴らされていた。
チャームとグリーンはルドの後に従って、先頭の船に乗り込んでいった。
ルドはこの2隻の商船隊の指揮を、ミスター・商に代わって取るのである。
「いってらっしゃぁい。 気を付けてねぇ。」
公爵の背後にいるニーナが、チャームとグリーンに声を掛ける。
「行ってきまぁす。」
ニコニコと微笑んでいるチャームの横で、グリーンが上げた片手を大きく振っていた。
「商船隊と積み荷の事、しっかりと頼むあるネェ。」
ミスター・商が声の限りに叫ぶ。
「ああ。 親方まかせておけ。」
ルドはグッと右腕を曲げて力こぶを作る。
「ようし野郎ども!。 帆を上げろ!。 出航だ!。」
商船隊の総指揮を取るルドのかけ声が上がると、帆をいっぱいに張った2隻の船はゆっくりと岸を離れて行った。
そして岸辺にいるフォレックス公爵達と、船上のルドやチャーム達との間が少しづつ離れて行く。
ザザザー。ザザザー。
港から出て行く2隻の船は、南方の地方に向かうために、帆にいっぱいの風を受けて大海原へと進んで行くのであった。
船上で米粒のように小さくなっていく公爵達に、大きく手を振っていたグリーンは、ふと何かが足りない事に気が付いた。
グリーンはきょろきょろと船上を見渡した。
「どうかしましたか?。 グリーンさん。」
横に立っているチャームが、ニコニコとした顔で聞いてきた。
「あのぉー・・・。ライラックさんの姿が見えないんだよ。」
不思議そうに言うグリーンの言葉を聞いて、チャームはポツリと呟いた。
「そうですね。・・・そう言えばライラックさんは見あたりませんね。・・・確か水夫の人達と一緒に、最初に船に乗ったところまでは見たんですけども・・・。」
『最初に乗ったって・・・僕にはライラックさんが水夫達に無理矢理に担ぎ込まれて、乗せられたように見えたけども・・・』
あまり気にする事もなく、のんびりとした口調で答えるチャームを見て、グリーンはちょっと心配になってしまった。
『このメンバーに参加して、無事ブラッド・オパールが探し出せるのかな?』と、不安な顔でチャームを見つめていると、チャームは心配ないと言った表情でこう言った。
「でも気にすることは無いと思いますよ。・・・ライラックさんの事ですから、結構わたし達の足の下あたりに居るかも知れませんね。」
チャームの言葉を聞いたグリーンは、不思議そうな顔で自分の足下に目を落とした。
「足の下に・・・?。」
その頃、山のような積み荷を積み込んでいる船倉の隅っこで、縄でグルグル巻にされている蓑虫状態のライラックが、モゾモゾと這いずり回っていた。
「何であたしが、こんな目に会わなくちゃならないのよぉ!」と叫びながら・・・。
「・・・はぁぁぁぁー・・・。」
出航時のドタバタを思い出しながら、夜の海を見つめていたライラックは、大きな溜め息を1つついた。
「なんだか・・・とっても疲れたわ。」
そう呟くと、ライラックはまた溜め息を付いた。
その時ゾワッとした悪寒が、ライラックのお尻の辺りから全身に渡って、勢いよく流れるのが感じられた。
「な、なに?!」
ライラックの溜め息を付いていた表情が、サァーッと戦いの時の顔へと瞬時に代わっていった。
ライラックが気が付かない内に、何か得体の知れない怪物が、突然ライラックの背後から襲って来たのだと思ったからだ。
『くそっ!。 スキをつかれたか?。』
ライラックは腰の剣を抜こうと手を剣に掛け、身体を半回転させて背後の敵を確認しようとした。
グリッと痛いような感触を感じた。 何かがライラックの尻に噛みついているのか?。
身体を回転させたライラックが最初に目にしたのは、キラリと光る白い歯のような物だった。何と言うことだ。・・・怪物がライラックの首筋に噛みつこうと、ズラリと並ぶ白い歯を見せているではないか。
ライラックの脳裏に「死」の文字が浮かび上がる。
目の前の白く並んでいる歯がカッと大きく開いた。
「くっ!。・・・これまでか!。」
ライラックはグッと両目を閉じて、怪物が首筋に噛みついてくる時を、身を固めて待った。
「・・・・・・・・」
しかし、怪物は一向に襲ってくる気配は感じられなかった。 ただ先程から、ライラックの尻に噛みついているのか、掴んでいるのかよくわからないが、尻の肉を圧迫する感触のみが感じられていた。
「なに?。・・・どう言う事?。」
ライラックの頭の中でその言葉が浮かんだ時、前方の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「どうしたんだ?、ライラック。」
「え!?。・・・この声は・・・?」
急いで閉じていた目を開けると、声のした方向に視線を向けた。
そこには、先程目にした白く健康的な歯を並べた口を開けて、笑っているルドの顔があった。
「ル、ルド!。」
ライラックは思わず早口で、ルドの名前を叫んだ。
「がははは。 いったいどうしたんだ?。・・・あ、そうか。 俺の指技が心地よくて、感じていたのか?。」
ルドが笑いながらそう言うのを聞いたライラックは、目の前に見えるルドの右の腕を目で追っていくと、その先の手は、ライラックのお尻の臀部をしっかりと包むように掴んでいたり、揉んでみたりしているのを見た。
くにゅ。くにゅ。くにゅ。
「ライラックの尻は揉み心地がいいな。・・・どうだ?、気持ちがいいだろう?。」
最初、怪物が噛みついたと思われていたのは、ルドがライラックのお尻を掴んで揉んでいたり、いやらしくさすっていたりして、触っていたものであった。
くにゅ。くにゅ。くにゅ。
ルドの尻揉みは、ライラックが抵抗をしない事をいいことに、より一層ルドの指の動きが巧みになっていく。
そればかりか、ルドのもう片方の手がライラックの前のヴァギナの方に移ってきた。
ツツツツ・・・。 クリクリクリ。
「あう・・・ん・・・。」 ライラックの口から小さく声が漏れる。
ライラックの尻を揉んでいたルドの指が、アナルの周辺をなぞるように動いている。
くりゅ。くりゅ。くりゅ。・・・ぐいぐいぐい。
ライラックのヴァギナに指を押しつけたり、ヴァギナの縦の割れ目にそって、指をゆっくりと上下に動かしたりしている。
ツツツツーー。グリグリグリ。 ツツツツーー。グリグリグリ。
ルドの指の動きは実に巧みだ。 ライラックは船の縁に両手を掛け、何とか身体を支えて、ただ小さく吐息を洩らしているだけだ。 海の方に身体を向けたライラックの背後からライラックの身体を抱くようにして、右手をライラックのアナルの所に、左手をライラックのヴァギナの所に添えて、指姦を続けるルドの口の端は満足そうに歪んでいた。
「どうだ?、ライラック。 いくら硬い鎧を着ていても、ライラックの腰から下はこの通りガラ空きだからな。くくく・・・。」
ライラックの姿は、ルドの言う通りその上半身は身体を守る硬い銀色の鎧で固めているが、その鎧は股間の辺りまでしか無く、腰から下の下半身は僅かに両脚を守る銀色のすね当てを付けているだけなのだ。
ライラックの着けている鎧の下には、半袖タイプで股間の所までの長さのTシャツを着ているだけだ。 またそのTシャツの下はパンティーしか身に着けていないのだ。 しかし足元から見ればまるっきしの無防備のような姿も、戦場で剣を戦わせる場所では、そのような事は誰も気にしていない事なのだ。 同じように魔怪物と戦う時も、そのような姿であっても何ら問題の無い格好であった。
相手はそれに気が付く前に、ライラックの剣に切り倒されていたからだ。
ヌチュ。ヌチュ。ヌチュ。ヌチュ。ヌチュ。
ライラックのヴァギナとアナルを責めているルドの指先が、ライラックの穿いているパンティー越しに、濡れ始めだしてきた感触を感じていた。
「へへへ。 ライラック、お前のオマンコから濡れた音がし出してきたぞ。 それどころか、俺の指先にライラックのオマンコから溢れ出しているイヤラシイ汁が、絡み付いて来るぞ。」
ルドは顔を赤く上気させて小さく喘ぎ声を洩らしているライラックの耳元で、呟いてくる。
「あ・・・、ああ・・・。あう、・・・あ、ああぁん。」
ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。ニュチュ。
「くくく・・・。ライラック。 もうパンティーはビチョビチョになっているみたいだな。ライラックは淫乱な女だな。」 ルドがまた耳元で囁く。
ニュギュ。ニュギュ。ニュギュ。ニュギュ。ニュギュ。
「あ・・・ん。 ぁぁぁん。・・・そ、そんな事・・・い・・・言わないでぇ・・・。 はぁぁ~ん。」
ライラックは鼻から出すような喘ぎ声を洩らしながら、いつしか自分の腰を動かし始めているのであった。 ヴァギナとアナルをじらしながら責めてくるルドの指を、ライラックの方から招き入れようとしているかのように・・・。
ネチャ。ネチャ。ネチャ。ネチャ。ネチャ。
ライラックのパンティーは、失禁したように濡れまくって、ルドの指先を濡らしまくっていた。
「はう。はう。・・・はう、はう、・・・あは、う。」
ライラックの口の端から涎が垂れてきている。 どうもライラックはもうすぐエクスタシーを迎えてイクようであった。
ルドは「頃合い良し」と見て、ライラックのパンティーに手を掛けて、ゆっくりと膝の方へ下ろしていこうとした時、
「やめんかぁぁぁぁ!。」
ズ ガ ァ ァ ァ ァ ー ン ン ン!!!。
ライラックのアッパーカットが、ルドの顎を的確に捕らえた。
「あぐっ!。」 ルドは短い声を上げ空中で弧を描くように舞うと、数メートル先の甲板上に、ドターッ。と背中から落ちた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。 いい加減にしろよぉ・・・このセクハラ親父がっ!。 あたしはそこまでは許していないからね!。」
ルドの指技をヴァギナとアナルに受けて、エクスタシーを全身で感じていたライラックの顔が、180度ガラリと代わってしまっていた。
肩で大きく息をしながらライラックは殴り倒したルドの姿を睨み付けていたが、いっこうに起きあがってこないのを見ると、ちょっと心配な気持ちになってきた。
「あはっ。・・・もしかすると、ルド・・・死んじゃった?。」
もし死んだりしたら、さすがのライラックも、これはマズイ事になるぞ・・・と言う思いがしてきた。
「ね・・・ルド、生きてる?。・・・なんとか言ってよ。・・・死んでいるなら死んでいるって。」
ライラックは倒れているルドの身体に近づくと、手を掛けて揺すってみた。
「ね、ね・・・。ルド目を覚ましてよ。 生き返ってよ。・・・なんとか言ってよぉ。」
ライラックは段々と焦り気味になってきて、懸命にルドの身体を揺り動かしてみた。
「ルド。ルド。 死なないでよ。 お願いなんとか言ってよう。」
「ねぇ。ルド・・・なんとか言って・・・ひっ!。」
ライラックが涙声でルドに言いかけていた時、突然ライラックの涙声が途切れた。
ライラックの股間の所に違和感を感じたからだ。
見ると、ひざまついているライラックの股間の間に、ルドの右手がしっかりと潜り込んでいたのだ。
『信じられない!・・・』と言いたげな表情になってしまったライラックの目は、股間をいやらしく愛撫をする指の動きをしているルドの手を見つめていた。
「ライラック・・・。俺はこの程度で死ぬようなヤワじゃないぜ。 もっともライラックの手で殺されたなら、俺も思い残すことは無くあの世とやらに逝くことが出来るけどもな。・・・あ。それにな。 俺はまだ29歳で、ライラックとは10歳しか違わないんだぞ。まだ親父じゃネェ。 ガハハハ。」
そう言いながらルドは上半身をムクッと起きあがらせると、ライラックの顎を手のひらでそっと持ち上げ、驚いた表情をしているライラックにはお構いなしに、ライラックの唇に自分の唇を近づけていった。 あと数センチと言う所で、突然ルドの後頭部にとてつもない衝撃が襲ってきた。
「あ・の・なぁぁぁぁ!」
まさにその瞬間に、正気に戻ったライラックは大声で叫ぶと両手でルドの頭を掴み、思いっ切り甲板上に押し倒した。
ス ガ シ ャ ー ン ッ!!!。
ルドの頭は甲板の板を突き破って船内へと消えていた。側から見たらルドの身体が逆さまになって、首から下の身体が甲板の下から生えているみたいに見えていた。
偶々船上に居てこの貴重な(?)光景を目にしてしまった数人の水夫達は、誰もが『あんな女を恋人にしたら、命がいくらあっても足りないな』と心の中で秘かに思うのであった。
そしてこれ以後、ライラックを見て邪な妄想を考える水夫は、誰ひとりとして居なくなったのであった。
そんなこんなドタバタがあった船にも、やっと睡眠という安らぎの時が訪れた。
海原を走る船が静寂に包まれていく。・・・はずであった。
「わあぁぁぁぁ!。 やめてよぉぉぉぉ!。 たすけてぇぇぇぇ!。」
突然その静寂を引き裂くような、少年とも少女とも付かない悲鳴が、船中にこだました。
「何事?。 人がせっかく寝ようとしていたのに・・・。」
ライラックは何事かとベットから飛び起き、ドアを開けて廊下に出ようとした時、勢いよくドアが開いてひとりの少女が飛び込んで来た。
ズシーン!。 「きゃっ!。」 ライラックは悲鳴を一言上げると倒れ込んだ。
飛び込んで来た少女は、座り込んだ姿でポツリと呟いた。
「はあ。・・・勢いよくぶつかったけど、ケガをしなくて良かった。」
「そう、それはよかったわね。・・・それならばさっさと避けてくれる?。」
「え?。」 少女の足の下からしてくるライラックの声に、少女は慌てて視線を下に向けてみた。
倒れているライラックの身体の上に、少女が座り込むようにのっかっていたのだ。
「ご、ごめんなさーい。」
少女がライラックの身体から避けると、ライラックは「よっこいしょ」と起きあがった。
ライラックは目の前にいる少女の姿を見て首をひねった。
床まであるゆったりとしたスカートの綺麗で可愛いドレスを着て、頭の髪の毛には大きなリボンをした、13,4歳ぐらいの可愛い少女がそこにいたからだ。
この船に、こんな可愛い女の子が乗り込んでいたかしら?。・・・と、ライラックは港でこの船に乗り込んだ時の事を思い出していた。
目の前にいる少女は着ているドレスの着こなしといい、可愛い顔立ちと言い、ショートカットの髪の毛の頭に付けている可愛らしい大きなリボンと言い、どこか上品さが漂って来るその姿に、どう見ても身分の低い少女とは思えなかった。
・・・どこかの大商人の娘か?、・・・それともどこかの貴族の娘と言う事も考えられた、・・・まさかどこかの王家の姫君・・・かも?。
そう考えると、ライラックはよけいに頭をひねる事になってしまった。
それならば何故荒くれの水夫達が大勢いるこの船に、どうしてこの女の子が1人で乗り込んでいるのか、さっぱりわからなかった。
何かを言いたげにしている少女の顔を見ながら、ライラックの名(迷)推理が始まる。
『もしかすると、この少女はどこかの高貴なところの姫君で、13,4歳になった彼女に親が政略結婚をさせようとしたので、いやがった彼女はこの船に逃げ込んで来たんだわ。
きっと彼女の結婚相手というのは、どうせ豚のように太って脂ぎった顔の中年の男に決まってるわ。 そう言う男に限って女の子の汚れのない身体を陵辱するようにセックスをするのよね。』
ライラックは少女の身体をそっと抱くと、「もう何も怖がることは無いわ。 あたしがあなたを守って上げるからね。」と少女の耳元で言うのであった。
腕の中の少女はちょっと違うんだけどもなぁ・・・と言うような表情になっていたが、自分の世界にドップリとはまり込んでしまっているライラックには、そんな事は気が付かなかった。
それもそのはずで、ライラックの脳裏には幼い姫君を命を掛けて守る「気品高い剣士」の姿になっている妄想を描き出していたからであった。
しかしその幸せな妄想の時は、ひとつの発せられた声によって打ち切られた。
「見つけた!。 ここに居たんだ。」
ライラックの背後からしてきたその声を耳にした少女は「ひっ!。 たすけて。」と、ライラックの身体にしがみついた。
『何と言うことなの!。 この姫君を拉致して連れ戻そうとする悪人の手先が、この船の中にまで入り込んでいたの?。』
ライラックは瞬間的にそう思うと、サァァァー!と腰の剣を抜き去り、声がした背後の方向に振り下ろした。
「悪人めっ!。 かくごぉー!。」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!。」
「わぁぁぁぁ!。 ライラックさんやめてぇぇぇ!。」
ライラックの雄叫びに続いて、ふたつの悲鳴が船内から月夜の大海原に響き渡り、直後、ライラック達の乗っている船がまばゆい光と閃光に覆われた。
・・・そして直ぐに、静寂が夜の海を支配していった・・・。
カチャ。 鳥や動物の肉を焼いた料理が皿の上に乗せられ、スープの皿や果物を載せた容器が所狭しと置かれているテーブルの隅に、今ワインのグラスがおかれた。
「う~ん。 朝食の時に飲むこのワインは、また格別だな。」
部屋の中に差し込んでくる朝日の光を浴びながら、フォレックス公爵は満足そうにそう言うと、目の前にある鳥の焼き肉料理にナイフを入れた。
コッコッコッ。
そこへ公爵の秘書役のメイドのニーナが、ドアを開けて入ってきた。
「公爵様おはようございます。・・・先程届きました報告が2通ございます。」
ニーナはそう言うと、焼き肉の料理をうまそうに食べている公爵に、2通の報告書を手渡した。
「うん・・・。私の交易船が無事向こうの港に着いたようだ。」
公爵は「よしよし」と言った満足そうな相打ちを打ちながら、ワインのグラスを手に持つと、グイッと口に運んだ。
そして報告書の2枚目に視線が移った時、突然公爵の口に含んでいたワインが『ぶぐぁぁぁぁっ!』と勢いよく・・・まさに赤い色の噴水のごとく、公爵の口から空中に噴射されたのだった。
公爵の側にいたニーナも、周りで朝食の世話をしていたメイドの女の子達も、一瞬何が起きたのかと思ってしまうほどの状態が、この部屋の中で展開されたようで、ニーナもメイド達もただ目を丸めて、ポカンと眺めているだけであった。
「な、なにぃー。」 公爵は報告書を両手で持ち直すと、改めて報告文を読み直していた。
「ど、どうされましたか?。 公爵様。」
公爵の声に我を取り戻したニーナは、急いで公爵の側に近づいて報告書を覗き込んだ。
そこには、2隻の交易船の内のライラック達やルドが乗り込んでいた船が、目的の港に着く前の夜に、謎の光を放って一瞬にして消滅をしてしまったと書いてあったのだ。
「消滅って・・・?。公爵様、まさか・・・」
ニーナは驚いた顔で公爵に話し掛けた。
「残念ながらあの辺りには、『バミューダ・トライアングル』なんかは存在しないぞ。」
公爵は、不思議だな・・・と言った顔で答える。 ニーナは顎に手を当て少し顔を傾けて考えて、わかったと言うように両手をパチンと打つと、公爵に向かって彼女のひらめいた考えを述べだした。
「やはり巷で言われているように、海の彼方には地球の端があって、そこは絶壁になっていて、海の水が滝のように地の底へと落ちているんですわ。・・・ライラック殿達の船はその滝から地の底へ落ちたのですわ。」
ニーナのこれしかないっと言う意見を、胸を張って言うのを見た周りにいたメイドの少女達は、お互いに身体を抱き合ってブルブルと脅えだしていた。
これを聞いた公爵は、はぁーと溜め息を付き頭を抱えた。
「あ・の・なぁ・・・。 よりによって秘書役でメイド頭のお前まで、そんな人間の迷信を信じているとは・・・。 要するに船は一瞬にして沈んだと言う事だろう・・・。」
しかし公爵の考えは直ぐに別の方向に移っていた。
「船1隻分の積み荷がそのまま海の藻屑となったという方が、私にはショックだぞ。」
そう公爵の頭に中は、ライラック達の事よりも、船の積み荷の損害額の数字が支配していたのだった。
「あの・・・。 公爵様お言葉ですが・・・ライラック殿達の事は心配では無いのでございますか?。」
ニーナはそんな公爵の姿にちょっと腹だたしさを感じ、批判的な言葉を投げ掛けてしまった。
公爵はニヤリとした表情をニーナに向けると、「そうだな。 それじゃお前が地下の拷問部屋で、ライラック達の事を心配してやるといいぞ。」と言い放つと、右の指をパチンと鳴らした。
「ひっ!。」 その音を耳にしたニーナは思わずハッとした顔になって、自分がとんでもない態度を公爵に対して取ってしまったことを、今はっきりと気づいてしまったのである。
綺麗なピンク色のロングヘアが恐怖で逆立っているのが見える。
「も、申し訳ございません。 公爵様。 どうかお許し下さい。」
ニーナは泣きそうな声で謝罪をすると、土下座をして額を床にすり付けた。
ガシッ。 土下座をしているニーナの両腕を左右の衛兵が掴むと、悲鳴を上げることも出来ずに、ワナワナと脅えた表情になっているニーナを、地下の拷問部屋へとズルズルと引きずっていった。
引きずられて行ったニーナの後には、微かに水分が流れた後が見受けられた。 どうもニーナは、恐ろしさのあまりに小便を洩らしてしまったようだ。 当然この部屋の床を小便で汚した罰も、地下の拷問に加えられる事は火を見るよりも明らかであった。
その光景を、部屋中のメイド達が脅えた表情で見つめていた。
「・・・ったく、人間の奴隷女の分際で、この私に意見を言うとは300年早いわ。」
公爵の冷たい視線が、ジロリと振るえているメイド達にも向けられる。
『秘書役のメイド頭と言えども、所詮は牝奴隷に過ぎないんだからな。・・・ましてや只のメイドのお前達などは、虫けら同然の奴隷なんだからな。 私の許し無く勝手に言動をする事は許されないからな。 いいかこの事を肝に銘じておくんだぞ。』と公爵の冷たい視線は命じていた。
部屋の中にいたメイドの少女達は、ゾクッと全身に冷水を浴びたような冷たいものを感じていた。
しばらくして、その公爵の冷たい視線は窓の外へと向けられた。
「ライラック・・・か。・・・ま、あいつらならば、殺しても死ぬような連中じゃないからな。 悪運を束にして背負っているようなヤツらだからな。」
公爵はそう呟くと苦笑いをした。
青空の中央に浮かんでいる、太陽の放つ陽光が大海原に惜しげもなく注がれている。
その海原の中に木の葉のような小さなボートが、波間に弄ばれるように浮かんでいた。
ボートの中には、鎧姿のライラック、いつも着ているミニのワンピース姿のチャーム、今は女の子のドレスを着ているグリーンの3人が、身体を寄せ合うようにして乗り込んでいた。
どうもライラック達は、沈没した船から無事逃げ出す事が出来たようだ。
しかしボートの中のライラックの表情は、何か沈んだようになっていた。
「ライラックさん、浮かない表情をしていますけども、どうしたんですか?。 せっかく沈む寸前の船から逃げ出して来れたのに。」
チャームはいつものごとく、ニコニコとした顔でライラックに話し掛けた。
「チャーム何度言えばわかるのよ。逃げ出してきた訳ではなく脱出してきたの!。 このボートに乗り込んで。」
ライラックはチャームの脳天気な言葉に、ちょっとムッとして早口で答えた。
「そもそも、チャームがあの船の中で、攻撃魔法を手当たり次第に出しまくるから船が沈んじゃったのよ。 責任を感じてよね。」
思いも掛けないライラックからのチャームを責める言葉に、「な、な、何を言うのですか?。ライラックさん。・・・ライラックさんが急にわたしに斬り掛かってきたから、わたしは驚いてしまって、身に付けている魔法を出してしまったんですよ。 本当に死ぬかと思ったんですからねぇ。」、チャームはライラックが悪いと言いたげな言葉を返した。
「それはこちらの事よ!。 ヘタしたら今頃はこの海の底に沈んでいるところだったのよ。」
ライラックの言葉にチャームは「あー。あー。そんなことを言うのですか?。 今までいろんな場所で、ライラックさんを助けてきたわたしに・・・。それにあの船からは逃げ出せたのだから、それだけでも幸運だと思ってくれなければ・・・。」と叫んだ。
「だから『逃げ出しではなく、脱出』だってば。 チャーム!。」ライラックが叫ぶ。
その時、
「逃げ出してこようが、脱出してこようが・・・そんな事ここではもうどうでもいい事じゃない!。」
けんかをしているライラックとチャームの2人の間に、ドレス姿のグリーンが泣きそうな声で割り込んできた。
ライラックはキッとグリーンを見ると、「そもそもグリーンがそんなドレスを着た格好で、あたしの部屋に飛び込んで来た事が、問題の始まりだったんじゃないの。・・・何でそんな格好をして船の中を歩いていたのよ?」と言いながら詰め寄った。
「そうですよ、グリーンさん。・・・船の中は男性の水夫さん達しかいないんですから、そんな可愛い姿でいたら、朝までに水夫の人達にレイプをされていましたよ。 強姦ですよ。・・・女性のグリーンさんの身体の穴という穴の中に、男の人達の精液がたっぷりと注ぎ込まれていたかもしれないんですよ。」
チャームもライラックの後に続いてグリーンに意見を言った。
「あー!。チャーム何言ってんだよ。 女の身体の僕にドレスを着せてリボンを付けて喜んでいたのは、誰だったんだよう。」
グリーンは涙声でチャームに詰め寄った。
「そうでした?。」 チャームは記憶に無いなーと言いたげな顔をした。
「あーっ!。 それはないだろう。・・・『夜の間は女の身体だから、女の子らしくドレスアップさせて上げる。』と言って、いつも着ている僕の男の服を脱がせて、このドレスを無理矢理着せたんじゃないかー。」 グリーンは訴える。
「ふーん・・・。 この騒ぎの裏にはチャームが居たんだ・・・。」
ライラックは冷めた目でチャームの顔を見た。
「あーん。 そんなに睨まないで下さーい。 ライラックさん。」
チャームは可愛くブリッコの姿をして見せた。
そんなチャームにライラックが聞き始めた。
「チャーム、ちょっと聞くけども、グリーンが着ているドレスは、どこから持ってきたの?。
あたし達はこんなドレスを用意してなかったはずよ。」
チャームは指を顎に当てて、ちょっと考えたようにしてみて、「あの船の船倉に沢山積んでありましたよ。」と平然と答えるのだった。
「なに言ってるのよ!。・・・それって、港に運んでいる売り物の積み荷じゃないの!。・・・あなた、船の積み荷を勝手に持ち出してきて、グリーンの身体を使って着せ替え人形のようにして遊んでいた訳なのね?。」
ライラックの言葉に、チャームは只ニコニコとした顔をしているだけだった。
「あのねぇ。 少しは責任を感じてよ。・・・いくらエルフ族だからって、人間の習慣を守らなくていいとは言えないのよ。」
ライラックは溜め息を付きながら言った。
そこに、「それに、それに、女の子が男のパンツを穿いているのは変だと言って・・・、脱がされたから、僕はこのドレスの下は裸なんだよー。・・・ううう・・・、いま昼間だというのに・・・。」とグリーンの声。
「クスクスクス・・・。ま、そんな事は気にしないで下さい。 あの沈み掛けた船から、逃げ出せた事を考えたら、そんな事は小さな事ですよ。グリーンさん。」
チャームは平然とした顔でグリーンに向かって言うのであった。
「冗談じゃないよ!。 沈没寸前の船から脱出してきても、このボートの中には食料も水も何も無いんだよ。 しかもこんな海の上で、これからどうやって生きていくんだよ。」とグリーン。
ライラックは溜め息を付くと、「そうよね。 それが問題よね。・・・はぁぁ。先の事を考えると、気が落ち込んでしまうわ。」と言い、また浮かない表情に戻った。
「このままだと僕たち餓死しちゃうよ・・・。 グスン。グスン。・・・僕まだ死にたくないよう。・・・」 グリーンが言葉を続ける。
「グリーン。 子供みたいに、ピーピー泣かないでよ!。・・・泣きたいのはこっちの方よ。」
ライラックの叱責がグリーンに投げ掛けられる。
「えーん。 僕はまだ14歳の子供だよー。」 泣きながら答えるグリーン。
「何が14歳の子供よ。・・・あたしの村に居た従姉妹は14歳でお嫁に行ったのよ。 また幼なじみの女の子は、13歳の時に結婚して14歳の時にはもう子供を産んでいたのよ。」
ライラックがそう言うのを聞いていたチャームは口を開いた。
「ライラックさん・・・それで村に居づらくなって傭兵になったんですか?。・・・周りがドンドンお嫁に行くのに取り残されたから・・・」
「!!!!。」ライラックは一瞬氷のように固まってしまった。 どうもライラックの心にグサリと来る物があったようだ。 その証拠にライラックのこめかみに青筋の血管が浮かび上がりピクピクと痙攣をしていたからだ。
「あ・・・。もしかすると、聞いてはいけない事を言ってしまいましたか?。 わたし・・・。」
チャームはそんなライラックにお構いなく、ニコニコした表情で言った。
「・・・そ、そうよ・・・。」
身体中を小刻みに振るわせて、暗い顔でうつむいていたライラックは、小さな声でポツリポツリと喋り始めた。
「そうよ。そうよ。 どうせあたしは行かず後家(ごけ)よ。 あたしだってね、13,4歳の時にはそれなりの男性だっていたし、お見合いの話しだって来ていたんだから。・・・それもこれもみんなあの変質男がいけないんだぁー!。」
突然ライラックは空に向かって叫ぶように、自分の事を話し始めた。
「あの余所から来た変質男があたしの家に忍び込んで来て、あたしの下着を盗み出してそれもあろう事か、あの男が身に付けていたのよ。 それどころかあたしのパンティーを使ってマスターベーションをしていたのよ。・・・だから頭に来たあたしは、その変質男をボコボコにして半殺しの目に会わせてから、衣服を剥ぎ取って全裸にして木の枝に逆さ吊りにしてやったのよ。・・・」とライラック。
「そ・・・そうですか・・・」グリーンはそう相打ちを打つと、『ライラックさんて、そう言う過去を経験しているんだ』と思いながら、やはりちょっと身を引いてしまっているのを感じていた。
『それにしても・・・14歳の女の子が、男を半殺しにして裸にして逆さ吊りに吊しますか・・・それはそれで、ライラックさんらしいけれども・・・。あはははは。』
グリーンは心の中で苦笑いをしていた。
「あたしは被害者なのよ。 それなのに、それなのに・・・。 それ以来、お見合いの話しもあたしの周りにいた男性達も、ピタリと来なくなったのよ。・・・ううう・・・」
ライラックは涙声になりながら、段々と語尾を強くしていくのであった。
チャームとグリーンは、ライラックの身体から妙な殺気が漂って来始めた事に気が付いた。
「な・・・なに、この殺気は?。」 グリーンがそう思ったとき、突然ライラックが腰の剣を鞘から抜き出すと振り回し始めた。
「あたしは被害者なのよぉー!。 それなのに何で『おとこおんな』って言われるのよー。
どうして『化け物女』って噂されなくちゃならないのよ!。 何で何で『行かず後家』って言われなくちゃならないのよ!。・・・そうよそうよ。あたしはもう『女を捨てた』のよぉぉぉ!!。」
やけくそになっているライラックはボートの中で泣き叫びながら、剣をビュンビュンと振り回し続けた。
「きゃぁぁぁー!。」 チャームは頭を手で押さえると身を屈めていた。
「わぁー!。 ライラックさーん暴れないでーぇ。 ボートがひっくり返っちゃうよぉー!。」グリーンは真っ青になって、ライラックの背後から飛びつくと両腕を抱え込もうとした。
この状況はまさに、江戸城松の廊下で、吉良上野介に斬り掛かる浅野内匠頭を取り押さえようとしている時みたいであった。・・・まさに気分は「殿中でござる!。 殿中でござる!。」であった。
しかしライラックより身体の小さいグリーンは、ライラックの背中でブンブンと振り回されていた。
チャームは急いで魔法書を開くと、何かの呪文を唱えページを海面に投げ入れた。
バシャーーーン。 突然海面が2メートルほど盛り上がると、大立ち回りをしているライラックの身体に降り掛かった。
「・・・あ・・・。 ・・・あたし・・・何していた・・・の?。 ・・・いま?。」
頭から水を被って正気に戻ったライラックは、力が抜けるようにペタリとボートの中に座り込んだ。
握っていた剣がコトンとボートの床に落ちた。
ライラックは気が抜けると、お腹の中から「グー」と言った腹の虫が音を立てて鳴き出した。
「お腹が減った・・・」 ライラックの口からポツリと言葉が飛び出した。
「そ、そうですね・・・」 背後でホッとした表情をしているグリーンが返答する。
ボートの床に切られて落ちている、自分の金髪の髪の毛を指で拾いながら、ライラックの顔に近づけて見てみると、瞳はまだ焦点が定まっていないようであった。
チャームはグリーンの顔を見ると、自分の顔を左右に振って、「まだダメね。 正気に戻るには、まだ時間が掛かりそうよ。」と言った。
「はぁぁぁー。 ライラックさんじゃないけども、お腹が減ったなぁー・・・。」
「そうみたいですね」
緊張が解けたグリーンとチャームは空腹感を感じ始めていた。
だけども、このボートの中には何もない。
そう思うと、チャームとグリーンの2人も「はぁー」と溜め息を吐き、ガックリと頭を項垂れるのであった。
しばらくしてチャームは右側の海を眺めてみた。
見渡す限り海、海、海、水平線の彼方まで海しか見えなかった。
チャームはガックリとまたうつむいた。
それからまたしばらくして、今度はグリーンが左側の海を眺めだした。
どこまでも見渡してみても海、海、海、僅かにカーブを描いている水平線のあの奥さへも、この海が続いているんじゃないかと思われるぐらい、海原が広がっていた。
グリーンは全身から力が抜けるのを感じると、再びうつむいた。
それからいったいどのくらいの時が経っただろうか?。
ガックリと肩を落としているグリーンの男根に何かが触れている・・・と言うか、男根の部分に何かが握ったり蠢いたりしている感触が感じられてきた。
「え?。」 グリーンは最初、パンツを穿いていないから、自分の男根が着ているドレスのスカートの生地か、このボートの部分に触れているのかと思った。
そこでグリーンはどうなっているかと思って、視線を下に移してみた。
座っている両足の間に、チャームの右手がスカートの裾から潜り込んでいた。
「あ、あ、・・・あの、これ・・・。チャーム?。」
予測もしない事にグリーンは慌てふためいた声を上げ、逃げるように身体をチャームの側からずらした。
「あら。 ダメよ。 逃げたりしたら。」
チャームはニコニコ微笑みながら、グリーンの身体に左の腕をまわすと、右手をグイッと股間の間に入れた。
「あうっ!。」 グリーンは身体をピクンと一瞬動かした。
チャームの右手の指がグリーンの男根に触れて、その筒を指で軽く握ってやるのであった。
今は昼間だから、グリーンの身体は男性に戻っているのである。 それも下着の着けていないドレスだけの姿で・・・。
グニュ。グニュ。グニュ。グニュ。グニュ。
チャームの指が動いて、グリーンの男根の筒を弄び始めていた。
グリーンのまだ小さくなっている男根は、チャームの指の責めの動きに段々と反応を示していくようであった。
「あ・・・あ、い・・・。 チャ、チャームぅー・・・だめだよ。・・・やめてよ。」
グリーンは、息使いを何とか荒くしないように気を付けながら、チャームに辞めてくれるように懇願した。
「なにがダメなのかしら?。 グリーンさん。・・・あなたのここは逆にもっとしてくれと言っているわよ。 クスクスクス。」
チャームは微笑みながら、より一層グリーンの男根に指を這わせるのであった。
ブヨブヨ、グニャグニャだったグリーンの男根は、チャームの指の刺激に反応して、メキメキと硬く太くなっていくのであった。
クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。
男根の筒を、先端の亀頭のスベスベになっている所を、男根の根元にある玉が2つ収められているシワのある袋を、チャームの指が責め立てる。
「あ・・・あ・・・あ・・・いい・・・。 あう、あう・・・あ・・・い・・・。」
グリーンは男根や袋から背筋越に攻め上って来る、快感の波に飲み込まれようとしていた。
「クスクスクス・・・。 グリーンさんが快感を我慢する表情は、見ていて可愛いわよ。」
グリーンの股間の間で指を使って弄んでいるチャームは、クスクスと笑いながら言った。
クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。クニュ。
グリーンは次から次と攻め寄せる快感の波に、つい腰を浮かせてしまいそうになっていた。
「・・・チャー・・・ムぅー・・・。 どうしたんだよ?。 いつものチャームとは違うよ・・・。」 チャームがこんな事を自分に対してしてくるとはまだ考えられないグリーンは、チャームの身体に両手を当てて、押して引き離そうとした。
チャームは引き離されまいとして、逆にグリーンの身体をグイッと引き寄せると、グリーンの耳に口を近づけて何事かを囁くのであった。
「心配しなくてもいいですわ。 私はグリーンさんの知っているあのチャームですよ。 このボートの中でただぼんやりしていたら、希望を無くして命に関わる事になりますからね。 少なくとも、こんな事をしていれば、絶望感や失望感を今感じる事はありませんから。・・・それにその内きっと近くの海を船が通りますよ。」
「う、う~ん。」 グリーンの力を入れていた両手が止まる。
バサッ。 不意にチャームがグリーンの着ているドレスのスカートの裾をめくった。
グリーンは下着は着けていないから、直ぐにチャームの目に勃起している可愛いグリーンの男根が飛び込んで来た。
「きゃっ。 可愛い~。」 チャームが思わず甲高い声を上げる。
グリーンは見られた男根を隠そうと、捲られたドレスを両手で押さえようとした時、チャームが不思議そうに言った。
「あれ、グリーンさん。 確か衛兵に捕まって公爵様の所で裸にされた時、グリーンさんの股間には産毛程度とは言え陰毛が生えていましたよね。・・・それなのに、何故今はグリーンさんのオチンチンには陰毛が生えていないんですか?。 髪の毛と同じ、緑色の陰毛が・・・?。」
「うっ!。」 グリーンは隠していた物を発見されたような気持ちにならながらも、その訳をポツリポツリと言い出した。
それによると、グリーンが夜な夜な女の子の身体になる度に、陰毛が抜けてしまっているとの事であった。 そしてとうとう一本も残らず陰毛が無くなってしまったとの事だった。
それを聞いたチャームは頭を少し傾けた。 何故なのか理由が思い付かないからだ。
「チャーム。 僕の身体はちゃんと元通りの姿に戻るよね?。」
グリーンは半泣きになりながら、チャームに聞いてきた。
「大丈夫ですよ。 身体をちゃんと元通りにして上げますよ。 私はハーフとは言えエルフですよ!。」
チャームは任せろと言うように胸を張ったが、内心は『これはきっと魔法を掛けた時の副作用かもしれないわね。 このままほっておけばグリーンさんの身体がどのように変化をして行くのか、面白い結果が見れそうね。 楽しみだわ。』と言った、イケナイ気持ちが頭を持ち上げて来ているのがわかったが、ニコニコと微笑むチャームの表情からは、それを見つけ出す事はグリーンの目には出来なかった。
そんなとき、生気の無い瞳で前方を眺めていたライラックの目が、突然ピクッと動くとみるみる生気を取り戻していき、ライラック本来の光を放った瞳がそこに現れた。
ライラックはガバッと立ち上がると、驚いて見上げている2人に見えるように、ビッと右の人差し指を水平線の彼方に指し示した。
「チャーム、グリーン。 船が来るわ!。」
「ええー?。」「どこ?。」
2人は急いでライラックの側に集まると、ライラックの指の先を眺めて見た。
「・・・・・・・・・」
チャームとグリーンの2人は目を凝らして指の先の水平線を見ていると、小さい米粒ほどの大きさの船影が見えてきた。
「わぁー。 船だわ。 助かりましたね。」とチャームが喜びの声を上げた。
「・・・でもライラックさんはすごいな。 あんなに小さくて、見分けがつかない大きさなのに、船だと見抜いちゃうんだもの。」 グリーンは感心したように言った。
「すごいでしょう。・・・ライラックさんは空腹になった時、時たまこう言うような野生の動物のような5感を発揮し出す時があるのよ。」
チャームの説明に、グリーンは何となく分かったような頷きをするのであった。
「ふ~ん。 ライラックさんが、女を捨てたという意味が何となく分かったような・・・。」
そんな2人の頭上にライラックの大声が響いた。
「2人とも何をやっているのよ。 このボートを漕いであの船に近づくのよ。」
「えーっ。 私達がボートを漕ぐのですか?。」
チャームは目を丸くしてライラックに聞き返した。
「あなた達2人以外、誰がここに居るというのよ!。 ゴチャゴチャ言っていないで、さっさと漕ぐのよ!。」
ライラックの命令にも近い言葉に、チャームとグリーンはボートの床に置いてある櫓を手にすると、ボートを漕ぎだした。
ライラックはボートの舳先に立つと、両手を上げて船に向かって叫びだした。
しばらくして、船の方もライラックに気が付いたらしく、ボートの方に向かって進んで来たのだった。
「助かったわ!。 チャームもグリーンも手を抜かないで、どんどんボートを漕ぐのよ。」
ライラックの言葉に、チャームが先に音を上げだした。
「あ~ん。 もう手が疲れて動きませんよー。 休ませて下さいー。」
「僕も、もうダメだよー。」
続いてグリーンも根を上げだした。
「なに言っているのよっ!。 ここであの船に助けられなければ、もうあたし達はこの海の上でアウトになるのよ!。 ゴチャゴチャ言っていないで、さっさと手を動かしてボートを漕ぐのよ!。」
ライラックの命令の言葉を受けて、チャームとグリーンはいやいやながらも、櫓を漕ぐのであった。
「ぐすん・・・。エルフはこんな力仕事には向かない身体なんですよー。」
チャームは涙を流しながらボートを漕いでいる。
「あーん。 これじゃガレー船の奴隷だよー。」
グリーンも泣きべそをかきながらボートを漕いでいた。
ボートの舳先で仁王立ちになったライラックは、ありったけの大声を船に向かって上げ続けていた。
ボートと船の距離は段々と近づいて来た。
「見て見て。 もうすぐあの船に助けられるわよ。 だからもう少し漕ぐのをがんばるのよ。2人とも。」
そう叫ぶライラックの口ぶりは、嬉しさを感じているようであった。
あの船に行けば、空腹を満たしてくれる食べ物があると言う事が、ライラックの心と頭脳の中を支配していたのであった。
そしてそのライラックの唇の端から涎が一筋流れ落ちるところを見ると、いまライラックが何を思っているかは、想像が付くという物であろう。
「もうすぐ、もうすぐ、・・・もうすぐで食べ物にありつけるわ」
ライラックはそのような言葉を呟きながら舌なめずりをして、船を凝視する鷹のような目はボートの方を注目している船上の水夫達の姿を、しっかりと捕らえていた。
ボートと船の距離はドンドンと狭まってきた。 あと少し・・・と言う時になって、突然ライラックの思いとは違う状況が起こりだした。
ザバザバザバザバーーーッ。
「ええ?。」 ライラック達の目の前まで近づいていた船が、突然急ブレーキを掛けて止まると、Uターンをして全速力で離れだしたのだ。
「どうして?。どうして?。ライラックさん、何故船は行っちゃうんですかぁー?。」
チャームが悲鳴に近い声を上げた。
「知らないわよぉー!。 こうなったらとことん追って行って、あの船に救出してもらうのよ。 さあ、あの船に追い着くまで漕ぐのよっ。」
ライラックの号令一過、ボートは懸命に船に追い着こうと漕ぎ続けた。
バシャー。バシャー。バシャー。バシャー。
ビックリするぐらいのスピードで、ボ-トは船を追い続けた。 もしこの光景を見ている人が居たら、帆を張った船のスピードとほぼ同じ速度で船を追って行くボートを見て、とても驚くことだろう。
バシャー。バシャー。バシャー。バシャー。
「はひぃー。はひぃー。・・・いったいいつまで漕いでいるんですか・・・?。 全然距離が縮まりませんよぉー。」
びしょ濡れになりながら櫓を漕いでいるグリーンは、息も絶え絶えになりながらも声を上げた。
「知らないわよ!。 何故あたし達から逃げるのか、あの船に聞いてよ。」
ライラックがそう言うと、チャームがハヒー、ハヒー、言いながらライラックに言葉を掛けた。
「ライラックさーん。」
「なによチャーム?。忙しいんだから、意見は簡潔に言いなさいよ。」とライラック。
「あたし思うんですけども・・・。船はあたし達から逃げているんじゃなくて、・・・このボートの後ろにいる何かから逃げているんじゃないでしょうか?。」
チャームの的を得たような言葉に、前方ばかりを見ていたライラックは「え!?。」と小さく言うと、『まさかねぇ』と思いながらも、そーっと背後の方に顔を向けてみた。
同じようにチャームとグリーンも、一緒に視線を背後に移してみた。