『ブレーク・パーティー』…第4話〈 心強い?仲間達が大集合の巻・後編 〉

〈 心強い?仲間達が大集合の巻・後編 〉
「なに?。今の悲鳴は?」。ライラックが歩く足を止めた。
 ライラックは顔を左右に向けた。何処から聞こえてきた悲鳴か探そうとした。
「今のは悲鳴だったな?」。ルドが確認のため聞いてくる。
「あたしも聞きました」。チャームも答えた。
「うわぁぁぁぁ!」。今度ははっきりと聞こえた。近くの空き家からだ。
 ライラック達は空き家に近づいた。
 ライラックとルドは、危険を避ける為、空き家の壁に身体をつけた。
「やはり、正面から飛び込んだら、危険かも知れないな」
「あなたもそう思う・・・」。ルドの言葉に、ライラックも同意する。
 ライラックとルドは壁に耳を当てて、中の様子を窺った。
「何か聞こえるか?」。ルドが聞く。
「しっ。静かに」。ライラックは中の音や声を聞こうと、耳に神経を集中した。
 ライラックの耳に、家の中から声が聞こえてきた。
 それは・・・、
「ごめんくださーい。誰かいませんかー」。チャームの叫ぶ声だった。
「あ、あのねー・・・」。ライラックとルドは思わず顔を見合わせた。
「誰もいないんですかー?。入って行きますよー」    チャームはそう叫びながら、家の中にドンドンと入って行く。
「ライラックの連れは、随分と度胸があるな」
 ルドは感心したようにライラックに言った。
「単に怖い物知らずなだけよ」。ライラックは呆れたように答えた。
 少なくとも、チャームが歩いて行った所には、トラップは無いと言う事だ。
 ライラックとルドはチャームの後を追った。
 ライラック達が家の中に飛び込んだ時、奥の方から「あ、グリーンさん見っつけたぁ」とチャームの嬉しそうな声が聞こえてきた。
 それに続いて、「あれれ・・・。グリーンさん、魔物ともお知り合いだったんですか?」とチャームの突拍子もない声が聞こえてくる。
『なに?。魔物も一緒にいるのか?』
 ライラックは腰の剣の柄を握り、直ぐにでも剣を抜く事が出来るように用意をして、チャームの声が聞こえてきていた部屋へと走り込んだ。
「チャーム!」。ライラックはチャームの背中を確認すると、声を掛けた。
 見ると、正面に6本脚の昆虫のような姿の魔物がいた。
 その横にはグリーンが泣き顔で蹲っていた。
 ライラックはいかにしてグリーンを助け出すかと、頭の中の脳を回転させた。
『どうする?』。ライラックが一瞬思った時、サァァァーッと彼女の側を何かが旋風のごとく通り過ぎた。
「え?」。ライラックは今のは何だ?と言った顔になって、回りを見渡そうとした時、「もらったぁぁぁ!」とルドの大声が部屋中に響き渡った。
 ライラックはギョッとして声のした方向に急いで顔をむけた。
 見るとルドが腰の剣を抜いて、魔物に飛び掛かって行くところであった。
 ズバァァッ!。たちまちルドの剣が魔物の脚を切り落とした。
 ズシャッ。跳んだ脚が壁に当たって床に落ち、ザザザー、と砂に変わっていく。
「がははは。見たか!。戦いは先手必勝だっ!」。ルドは剣を上げて叫んだ。
『な、何なのよ?・・・この男は』
 ライラックは目を丸めて、キョトンと見つめてしまった。
「オギャァァァ」。脚を切り落とされた魔物が、雄叫びを上げた。
「まだ叫び声を上げる元気があるのか?」
 ズバアアッ。再びルドの剣が魔物の脚を切り落とした。
「ウギュウゥゥゥ」。両脚の傷口からドス黒い体液を流しながら、魔物が叫ぶ。
「どうだライラック見たか?。俺の剣の腕を!」
 魔物の声以上の大声で、ルドはライラックに向かって叫んだ。
『なんなのよ?』。呆れた顔で見ていたライラックは、急にひきつった顔になった。
 魔物の切り取られた脚が、傷口から段々と再生していっているのを、目にしたのだ。
 とかげの尻尾やかにの手足のように・・・。
 再生した前足を振り上げると、ルドの背後に爪を振り下ろした。
「伏せてっ!」。ライラックはルドに叫ぶ。
 ルドは「おわっ!」と大声を上げながら、飛び込むように床に伏せた。
 魔物の鋭い爪が音を上げて中を切った。
「な、何で切り取った脚が元通りになっているんだぁ?」
 ルドの叫びを聞いたライラックは、「魔物を前にして、有頂天になってあたしの方を見ていたからよ。んとに・・・少しは今の状況を考えなさいよ」と、頭を抱えながら呟いた。
 直ぐに、魔物の側にいたグリーンの方に目を移す。
 グリーンはチャームに助けられて、ライラックの側に戻ってきた。
 ルドも這いずくばって、ライラックの所に戻ってきた。
「グワオォォォォ」
 魔物は横にしている巨大な身体を持ち上げた。
 魔物の身体が、家の屋根を突き破って、家の外に出現する。
 ドドドドー。ズシュアズシュアズシュアー!。
 その衝撃で家が崩れだし始めた。
「いけない!。直ぐに脱出するわよ」
 ライラックの言葉で、みんなは外に向かって懸命に走った。
「あーん!。天井が崩れてくるぅ。当たると痛いよう」
 チャームも騒ぎながら走り続ける。
「おわあああ!。俺はまだ死にたくないぞう!」。ルドが必死に走る。
「わぁぁー。僕まだ裸のままなんだよう」
 ライラックに手を引かれているグリーンが訴えると、ライラックは「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ!。裸でいるくらい我慢しなさいっ!」と声を張り上げて答えた。
 ズドドドドドォォォォォー。
 音を立てて、家が崩れていった。
 ライラック達は、すんでの所で外に飛び出す事が出来た。
「ぜえぜえぜえぜえ・・・。何とか間に合ったわ・・・」
 ライラックは肩で大きく息をしながら、他の3人の姿を確認していた。
 ホッとした気持ちになったライラックの頭上で、「グギャァァー」と魔物の叫び声が響いてきた。
 ハッとして頭上を見上げる。
 家を崩した魔物が、ライラック達を見下ろしていた。
 一瞬どうしようか?・・・と思ったライラックであったが、いつものように取り敢えずは、
 ライラックの生き残りの原則その1、『危ない時は36計逃げるが勝ち』にしたがって、
 この場所から逃げる事にした。
 ライラックの後を追って、チャームとルドが後に続いた。
 グリーンはまだライラックに手を引っぱられたままだ。
「あーん。そんなに引っぱらないでよー。腕が抜けちゃうよー」
 グリーンの悲鳴に、「腕は2本有るんだから、1本ぐらい抜けても気にしないの!。男の子でしょう!」
 ライラックはむちゃくちゃな返答をして、グリーンを引っぱって走り続ける。
「おーい。いったいどこまで逃げるつもりだ?」。ルドが走りながら聞いてきた。
「そんな事、1番後ろから追い掛けて来る魔物に聞いてよ。どこまで追いかけて来るんだって」
 ルドは、ソッと後ろを眺めた。
 魔物が6本の脚を動かして迫って来る。
「げっっっ!」。ルドは直ぐ側まで迫って来ている魔物を見て、真っ青になって走るスピードを上げた。
 うわぁ。きゃぁ。わわぁ。ぎゅあぁ。・・・。
 走ってくるライラック達の後から、巨大な魔物がついて来るのを目にした町の人達は、大騒ぎとなった。
 家の中に隠れようとする者、町から逃げようとする者、・・・。
 ライラック達を追って、町の中に入り込んだ巨大な魔物は、目の前の家を壊しだした。
 ガラガラガラ・・・。
「ウグワオッ」。魔物は雄叫びを上げると、隣の家も破壊し出す。
 グワシャーン。ガラガラガラ・・・。
「おい。俺達、魔物を町の中に招き入れちゃったかな?」
 町を破壊し始めた魔物を見て、ルドが首を傾げながらライラックに言った。
「何を言っているのよ。あの魔物が勝手にあたし達を追い掛けて来て、この町の中に来たんじゃない。・・・絶対にあたし達に落ち度は無いんだから!」
 ライラックは暴れる魔物を睨みながら、はっきりと言った。
「そうそう。あの暴れている魔物が一番悪いんです」
 チャームもライラックに賛成の意見を言う。
 そ、そうなのか?。と、何となく思うルドであった。
「とにかく、あの魔物を倒して町を守るのよ!」。ライラックが無理矢理そう宣言をする。
 タタタタタ・・・。
 ライラックの回りに衛兵隊が集まってくる。
「援護をして!。・・・やぁぁぁぁっ!」
 ライラックは言うと、剣を抜いて魔物に飛び掛かって行った。
「氷刃!」。チャームは魔法書のページの1枚を魔物に向かって投げた。
 シュッッッッ!。ズバッ。ズババババッッッ。ズバァッ。
 魔法により、十数個の氷の刃になった刃物が、魔物の身体に突き刺さる。
「ウギャァァァァー」
 ライラックに行っていた魔物の注意が、チャームの方に向いた。
 ライラックはその隙を見逃さずに、魔物の身体に取り付いた。
 ズバァァァ!。ライラックは魔物の身体に、剣を力一杯突き刺した。
 ビュシュゥゥゥゥ。深く突き刺した剣を抜く。ドス黒い体液が傷口から噴き出る。
「たぁぁぁぁ!」。グサッ!。ライラックは再び剣を突き刺す。
 ビシュッ。剣を抜きさるとまた黒い体液が出て来る。
 魔物の顔が首を曲げてライラックを眺めている。
『くっ!。効き目がないか?・・・ダメかっ?』
 魔物の身体から離れようとした時、びゅんっ!。と言う空気を切る音がして、魔物の尻尾がライラックを跳ね飛ばした。
 ビシィィィン!。
「きゃっ」。ズシャッ。ライラックは、建っている家の壁に叩き付けられた。
「うぐっ」。ライラックは新しい鎧を着ていたので、衝撃をかなり防ぐ事が出来た。もし着ていなかったら、大怪我をしていただろう。
 ライラックは剣を杖がわりにして立ち上がろうとした時、ガッ!。と魔物の前足がゴムのように伸びてきて、ライラックの首を握りしめた。
「あぐっ!」
 回りにいたチャーム達も、魔物の前足がゴムのように伸びるなんて、考えもしなかったので、呆然と眺めていた。
「魔物の前足が十数メートルも、ゴムのように伸びるなんて・・・」
 ルドがポツリと呟く。
 地面に蹲っている裸のグリーンは、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。・・・だがグリーンの手にはブラッド・オパールの入っている皮の袋がしっかりと握られていた。
 この皮の袋だけは、自分も気が付かない内に持って来てしまったようだ。
「あっ。いけないっ!」。突然チャームが叫んだ。
 ライラックの首を握りしめていた魔物が、ゆっくりと立ちだしたのだ。
「あ・・・ぐ・・・。ぐ、ぐ、く、る、し、い・・・」
 首吊りにあった状態のライラックは、全身から汗が噴き出してくる。
 ライラックの両足が地面から離れて、ライラックの身体は中吊りになった。
「あーん・・・。どうしょう。どうしょう・・・。このままじゃ、ライラックさんが死んじゃう!」
 チャームは何かライラックを助ける魔法は無いかと、魔法書を急いでめくる。
 その時ルドが、「俺が助ける!」と言って、剣を抜いて魔物に向かって行った。
「衛兵のみなさーん。ボオーッと見ていないで、支援をして下さい!」
 チャームは回りで見ている衛兵達に叫ぶ。
「ゆ、弓矢で魔物を射るんだ!」。隊長が命令をする。
 ピュン、ピュン、ピュン・・・。
 ブスッ、ブスッ、ブスッ・・・。
 衛兵達の矢が、音を立てて魔物の身体に突き刺さる。
 魔物はいくら矢が当たっても、気に止めるような事がなかった。
「あーん。これじゃ、あたしの氷刃攻撃の方がまだましです」
 泣きそうになっているチャームの耳に、魔物を切り裂く剣の音がしてくる。
 見ると、ルドが魔物の足下で剣を振り回している。
「うおぉぉぉぉ!。この!。このっ!。このっ!」
 ズバァッ!。ズバァッ!。ズバァッ!。
 ルドの振り回す剣が、魔物の脚や身体を切り裂くが、直ぐに傷口が再生してしまうので、魔物にダメージを与える事が出来なかった。
「くっ・・・。あ・・・あ、脚を・・・切るんだっ」
 ライラックは息苦しさの中で、声を振り絞ってルドに聞こえるように叫んだ。
「うおぉぉぉぉ!。そうかぁぁぁ!。ライラック。今助けてやるからなっ!」
 バサッ。バサッ。バサーッ!。
 ルドはライラックからのアドバイスを聞いて、さっきより一層力を込めて剣を振り回し、魔物の脚を切り裂きだした。
 立っていた魔物は脚を切り裂かれて、バランスを崩して倒れそうになり、魔物は掴んでいたライラックの首を思わず放し、ライラックの身体は地面に落ちた。
 ドシャッ。「うーん・・・。げほげほげほ・・・」
 ライラックは自由になって息を整える。
 ライラックは手を首に持っていき、2,3回首筋をなでた後、力を振り絞って立ち上がり、槍を持っている衛兵の所に走り寄った。
「槍を貸してっ」。槍を手に取ったライラックは、魔物の方に向き直って槍を構えた。
「やぁぁっ!」。ライラックは手にした槍を、大きく開けた魔物の口めがけて投げた。
 ジュシャッ!。槍が口の奥に突き刺さり、槍先が魔物の首筋から突き出した
「ウギャァッ!」。魔物は叫びを上げると、ドドドォーと地面に身体を俯せにして倒れた。
 ライラックは止めを刺そうと、魔物の背中に駆け上がると、魔物の頭目掛けて剣を振り上げた。
「死ねっ!」。ライラックは叫ぶと、振り上げていた剣を一気に振り下ろした。
 その瞬間、バサァァァァッ!。と言う音と共に、「うわぁぁっ!」とライラックの身体が弾き飛ばされた。
「ライラックさん、大丈夫ですかぁ?」。チャームが走り寄って来る。
「なにっ?」。倒れた身体を起こしたライラックは、魔物の変化をした身体を目にした。
 魔物の背中から巨大な羽根が現れたのだ。
 羽根は4枚ある。トンボの羽根を巨大にしたような形だ。
 ライラックは剣を握り直して構える。
 ルドも剣を構えている。
 チャームはライラックの背後に隠れている。
 夜空に浮かんでいる2つの月の光を受けた魔物は、ライラックをギロリと睨むと、巨大な羽根を動かし出した。
 ブゥゥゥーンと言う音と共に、土煙が舞い上がった。
「うっ!」。土煙が一瞬、ライラックの視界を塞いだ。
 だが、魔物が高速でライラックの方向に突っ込んで来るのが、瞬間的にわかった。
「あぶないっ」。ライラックは背後にいるチャーム共々地面に伏せた。直ぐ頭上を魔物の羽根音と共に、ゴォォォォーと言う、魔物が通り過ぎて行った空気の速い流れが、ライラックとチャームの身体を包み込んだ。
 ガバッ。地面に伏せていたライラックは、急いで身体を起こして、夜空に飛んで行った魔物の後を目で追った。
 ライラックは夜空を見渡したが、もう魔物の姿は何処にも見あたらなかった。
「何処に行った?」
「見あたらないぞ!」
 ライラックの他に回りにいた人達も、夜空に消えた魔物を捜すように、夜空を見上げ続けていた。
 回りの人達と一緒に夜空を見上げていたグリーンは、みんなの注意が魔物の去った方向に向いている事に気が付いた。
「そうだ。誰も僕の事に気が付いていないぞ。今の内にここから逃げ出そう」
 グリーンは裸になっている事にはお構いなしに、ライラック達のいるこの場所から、一刻も早く逃げ出しにかかった。
 どうせ新しい服なんか、直ぐに手に入ると思っていた。
 なぜなら、グリーンは盗賊を仕事としているので、普通の服ぐらい何処からでも手に入れる事が出来た。それに彼の手にはブラッド・オパールが入った皮の袋が握られていた。
『それじゃ、さよなら。オパールはしっかりと貰って行くからね。・・・早いところ町のどこかに隠れよ。・・・ほとぼりが冷めた頃どこか他の土地でこれを売っぱっらってしまえばいいや。・・・くくく、きっと良い値段で売れる事まちがいなしだ』。と心の中で呟いたグリーンは、逃げようと身体を動かした時、自分の身体に今まで経験のした事がない違和感があるのを感じた。
「???・・・???」。グリーンにはそれが何であるのかは、ちょっと分からなかった。
 グリーンは視線を落として、自分の身体を見てみた。
 いつも見慣れている自分の胸部と腹部とその下半身が目に映っている。
 別にこれと言って変わったところは・・・。
 ん?。ちょっと左右の胸の部分が、腫れているように膨れてはいるが・・・。
 腰の辺りがキュッと締まったような?。
 股間の所だって、いつもの通りに・・・お毛毛に囲まれた、僕のオチンチンが付いて・・・?。
「ん?。・・・いっ!!!。・・・あ、う、あ・・・う。・・・あ、あああ、うっそぉぉぉぉっ!!!!!!」
 グリーンは自分の股間を凝視した時、信じられないと言った思いで、思わず大きな悲鳴を上げてしまった。
「どうぉぉぉしてぇぇぇー?。ないよぉ!。ないよぉ!。ぼ、ぼ、僕のオチンチンが無くなっているようぉ!」
 グリーンは叫びながら、股間の辺りに手を懸命に動かしていた。
 本来なら、その場所にしっかりと生えて付いているグリーンのペニスが、今の股間には消えたように無くなっていて、代わりに上から下へと、股間の間を小さな裂け目が出来ていた。ヴァギナだ。
 真っ青な表情になったグリーンは、ヘナヘナと力が抜けて、その場所に座り込んでしまった。
「うわぁぁぁん!。ぼ、ぼ、・・・僕は女の子になっちゃったよぉ!」
 ライラック達は、一斉に悲鳴を上げたグリーンの姿を見た。
「え?、ええー?」。と同時に、驚きの声が上がった。
「グリーン・・・あなたは・・・本当は女の子だったんじゃなかったの?」
 グリーンに近づいたライラックが、信じられないと言った風に聞いた。
「ち、違うよぉ。・・・僕は生まれた時から、ずっと男だよぉ!。・・・あーん。どうしょう・・・僕、女の子の身体になっちゃったぁ!」 
 グリーンはそう大声で叫ぶと、わあわあと泣き出した。
 ライラックはグリーンが泣いている姿を見下ろしながら、どうして女性の姿になってしまったのか、不思議でならなかった。
『本来の姿が、別の物に変化してしまう原因は・・・薬で?・・・手術で?・・・魔法で?・・・魔法に掛けられて?』
 ライラックは「はっ!」と気が付くと、チャームに話し掛けた。
「ね、チャーム。グリーンはもしかすると、先程の魔物に女の身体になる魔法を、掛けられたんじゃないかしら?」
 すると、魔法書を手にしているチャームが答えた。
「ライラックさん、その考え半分だけ、ピンポーン、です。・・・でもあの魔物が魔法を掛けた形跡は、ありませんね」
「何よ。その半分だけって?。・・・」
 チャームの答えに、ライラックは怪訝な顔をした。
「それじゃ、グリーンに魔法を掛けた人物は、他に誰かいたかしら?・・・」
 ライラックがそこまで言った時、「まさか?」とチャームの顔を見た。
「チャーム。あなたがグリーンに、女性になるような魔法を掛けたの?」
「残念ですけど、その答えは、ブゥー、です。あたしはグリーンさんに、傷が早く完治する魔法しか掛けていませんよ」
 チャームはニコニコとした笑顔で答える。
「ああ。グリーンが国境の近くの村で村人から付けられた傷を、あたしが治療した時に、チャームに頼んでグリーンに掛けてもらった魔法ね。・・・確かにあの魔法は効果があったわ。朝には傷口が治っていたんだから。・・・それではどうして?」
 ライラックは不思議に思って首を傾げた。
「はい。あの魔法はとっても効果がありました。・・・が・・・」
 チャームの口から出てくる言葉を聞いていたライラックは、最後の『が』の一言に、とっても不安になり聞き返した。
「チャ、チャーム・・・何よその最後の、が、って?」
「いえいえ、大した事ではないのですよ。ライラックさん。・・・ただあの魔法を掛けると、ちょっとした副作用があると言う事が、さっき魔法書を読み返してみたら、書いてあったんです。もしかすると、それが原因かな・・・と思いまして」
 ライラックはチャームの話を聞いていて、またあなたなの?、と言いたげに頭を抱えた。
「副作用って?」。ライラックの問い掛けに、チャームは、
「ズバリ、あの魔法を掛けられた人は、副作用で身体が男女逆になると言う変化なんですよ。男性ならば女性の身体になってしまい、女性ならば男性の身体になるという風に・・・。ね、大した事ではないでしょ?」
「あのねぇー・・・。それって十分大変な事だと思うわよ」
 微笑みの表情ひとつ変える事無く、平然と言ってのけるチャームに、ライラックは額を押さえながら呻くように答えるのであった。
「でもね、でもね、もしライラックさんが大怪我をしたら、グリーンさんに掛けた魔法を使って、傷を治して上げますからね。」
「ははは。・・・大怪我をしないように十分に気を付ける事にするわ」
「ライラックさん、何もそんなに遠慮する事はないんですよ。水くさいですよ。それにこの魔法、少なくとも効果がある事が分かったんですから」
「・・・ちょっと待てっ。・・・効果がある事が分かったって、・・・その魔法は今まで使った事がなかったの?。」
 ライラックは驚いて早口で聞き返した。
「ライラックさん・・・だって、今まで使う機会が無かったではありませんか。・・・でもこれで心配しないで大怪我をして下さいね。ちゃんと魔法で治して上げますからね」
『いやだ!。この年齢になってから・・・今頃になってから、男性の身体になんかには、変わりたくはないわよ』
 ライラックは冗談じゃないと、きっぱりと拒否する気持ちを固めた。
「とにかくそんな事よりも、グリーンの身体はどうなるの?。元には戻せるんでしょ?」
 ライラックは話題をグリーンの事に戻すと、チャームに聞いた。
「あーん。チャーム、僕の身体を元に戻してよぉぉぉー」
 グリーンは泣きながらチャームの足下にしがみついた。
 チャームは手にしている魔法書を開くと、中の文字を読み始めた。
 ライラックは読んでいるチャームにそっと近づいて、読んでいる魔法書の中を覗き見てみた。
「えっ?」。魔法書のページが真っ白で、何も文字が書かれていない、見えない。
 チャームは驚いているライラックに気が付くと、説明をした。
「この魔法書に書かれている文字は、持ち主であるあたし以外読む事が出来ないように、魔法が掛けてあるんですよ」
「ふーん」と、ライラックはちょっとガッカリする。ハーフエルフの魔道士がどのような魔法文字を使っているか、見てみたいと思っていたからだ。もちろんライラックには、その文字を読むことは出来ないのだけれども・・・。
「グリーンさん、わかりましたよ」。チャームが開いていた魔法書をパタンと閉じた。
「グリーンさんが女性の身体になっているのは、『日没から日の出までの夜の間だけ』で、『日の出から日没までの昼間は』本来の男性の姿に戻る事が出来るようですよ。よかったでしたね」
「それの何処がよかったんだよ!。僕は完全に男の身体に戻るの?。戻らないの?」
 グリーンは顔を青くして叫んだ。
「ズバリ、今は戻りませーん!。グリーンさんに掛かった副作用を消滅させる為の魔法を使うレベルまで、私の能力が達していませんので、あきらめて下さーい」
 チャームはケロッとした表情で、グリーンを地獄に落とすような宣告を告げ続ける。
「でもグリーンさん、何も悲観する事はありませんよ。・・・一度の人生で男と女の2つの身体を経験できるなんて、そんな人間はいませんよ。・・・それに『1人Hをする』時も、『相手の異性とHをする』時も、グリーンさんは『男と女の両方のタイプで体験』出来るんですよ。どうです夢のようでしょう?」
 チャームが、グリーンへの慰めのつもりで言っている言葉を聞いていたライラックは、『その言葉は、絶対に慰めにはなっていないぞ。』と思っていた。
 その証拠に、グリーンは驚きと失望感で、口をポカンと開けたままでいたのであった。
 流石にチャームもちょっとマズイかなと思ったのか、「グリーンさん、そう心配しないで下さい。その内レベルアップをして、その魔法を消滅させて上げますから。・・・1年先か・・・10年先か・・・あ、もしかすると50年先かもぉ」と笑顔で言った。
『あ。チャームのバカ!。そんな事を言ったら、余計不安になるだけじゃないの・・・』
 ライラックは心の中で叫び声を上げて、頭を再び抱え込んだ。
「そんなのイヤだぁぁぁぁぁー!」
 ライラックの心配通り、グリーンは火のような鳴き声を上げだした。
「やだぁ、やだぁ、やだぁ、やだよぉー!」
 ライラック達は、暫くの間、グリーンが泣き叫ぶままにしていた。
 その内、隣にいたルドの肘がライラックの腕を小突いた。
 ライラックはルドの方に顔を向けた。 
「こういう状態ですまないけどもよ。やっぱし盗賊のこの子を、逮捕しないとならないと思うんだけども。・・・」
 ルドが小声でライラックに語りかけた。
「う~ん・・・」。グリーンをかわいそうに思っているライラックは、隣にいるルドに「どうしても?」、と言った顔をむけた。
 ルドは、「厳しいようだが、公爵の持ち物を盗んだんだ、見逃す訳にはいかないだろう」と冷たい口調で言った。
「う~ん・・・」。ライラックは小さな声で唸った。
 ライラック達の前で、グリーンはわあわあと泣き続けていた。
 グリーンの泣き声は、今は公爵の館の中から聞こえてきている。
 罪人として、両手を後ろにロープで縛られているグリーンは、町の中ではわあわあと泣いていたが、フォレックス公爵の前に引き立てられて来たここでは、すっかりと大人しくなって、ただシクシクと静かに涙を流しているだけだった。
 少女のように可愛い顔に、全裸の姿で縛られている、この14歳の女の子が、男だとは公爵には信じられなかった。
 小さく盛り上がった左右の乳房。恥丘に薄く生え始めている緑色の陰毛。・・・髪の毛とやはり同じ色だ。ピッタリと1本の線のように閉じたヴァギナの口。・・・女の子に変身した今のグリーンのヴァギナは、まだ処女のままだろう。
 豪華な椅子に座っているフォレックス公爵は、「さて、盗賊のグリーンへの刑罰であるが・・・」と、ゆっくりと話し始めた。
 グリーンを見ていた皆の視線が、公爵の方に集中した。
 ライラックも、公爵の顔に視線を向けた。
 つられて、泣いていて目を赤くしたグリーンも、公爵の顔を見上げゴクリと唾を飲んだ。
 公爵は、グリーンの顔を見ながら、刑罰を言い渡した。
「盗賊グリーン。お前はこの土地の領主である私の持ち物の「ブラッド・オパール」を盗み出した罪は重罪なり。よって「死刑」を言い渡す」
 公爵の冷たい口調の宣告と同時に、グリーンの「えぇぇぇぇっ」と言った驚きの悲鳴が上がった。
「なお、刑の執行方法であるが・・・」
 公爵はそこまで言うと、秘書役のメイドの女性に目線で合図を送った。
 秘書役のメイドは「はい」と頷いて、手に持っている紙を広げると、書かれている文章を読み出した。
「死刑の前に、罪人グリーンに対して、鞭打ちの刑を3日間おこなう。昼間は男のグリーンに対して、夜は女のグリーンに対して・・・それぞれ百回おこなう」
「それじゃ・・・1日二百回も鞭で打たれるの?」。グリーンが声を上げた。
 秘書役のメイドの読み上げは、まだ続く。
「刑の執行4日目は、罪人グリーンの両腕を、肩の所からノコギリを持って切り落とす」
「ええー!」。驚くグリーン。
 秘書役のメイドの読み上げは、まだまだ続く。
「刑の執行5日目は、罪人グリーンの両足を、太股の所からノコギリを持って切り落とす」
「い、いやだぁー」。グリーンの顔がみるみる青くなっていく。
 秘書役のメイドの読み上げは、まだまだまだ続く。
「刑の執行6日目は、罪人グリーンに対して、昼間は男のグリーンに対して、男根と睾丸の切断除去をおこない、夜は女グリーンに対して、左右の乳房の切り取りと、ヴァギナとクリトリスの切り取りと、肛門を抉り取る事をおこなう」
「げ、げげーっ」。グリーンの両目から、枯れていたと思われた涙が、また流れ出した。しつこい用だが、秘書役のメイドの読み上げは、まだまだまだまだ続く。
「刑の執行7日目は、罪人グリーンの腹を割いて、内蔵を全て引きずり出す」
「ゆ、ゆるして・・・ごめんなさい・・・」。グリーンの顔が涙でグチャグチャになる。それでも秘書役のメイドの読み上げは、なおも続く。
「刑の執行8日目は、罪人グリーンの両目を抉り出し、両耳と舌を切り取る」
「もう・・・もう・・・も、も・・・」。グリーンはただ口をパクパクと、動かしているだけだった。
 くどいようだが、秘書役のメイドの読み上げは、なおもなおも続く。
「刑の執行9日目は、罪人グリーンの身体を、先の尖った鉄の杭を使って、肛門のあった穴から口に掛けて櫛刺しにして、町の広場でさらし者の刑にする」
 グリーンはただただ呆然とした表情になっている。
 秘書役のメイドの読み上げも、最後の方になってきた。
「刑の執行10日目は、櫛刺しにした罪人グリーンが、まだ息をして生きていたら、生きたまま火あぶりの刑をおこなう・・・以上です」
 秘書役のメイドは顔色ひとつ変える事無く、文章を全て読み上げてしまった。
 かわいそうにグリーンは腰を抜かして、その場所にペタンと座り込んでしまっていた。
 部屋の中にいるライラック達も、水を打ったように静かになってしまっていた。
 ライラックも、どうしたらよいか、わからなくなっていた。
 それでも、傍らにいるルドに「これじゃ死刑じゃなくて、子供のなぶり殺しと同じよ」と、ポツリと呟いた。
「何とかして、グリーンを助けられないかしら・・・?」
 ライラックは何とか救う道はないかと考えを巡らした。
 だが、公爵は「グリーン、直ぐに死なないで、刑を受けて苦しんでいるお前の姿を、長く見せて、私を楽しませてくれよ」と言うと、手を挙げて衛兵に合図を送った。
 2人の衛兵が入って来て、座り込んでいるグリーンの肩に手を掛けた。
 館の地下牢に連れて行く為にだ。
 その瞬間、人形のように白い顔で静かに座り込んでいたグリーンが、突然壊れたサイレンのように、わあーわあーと声を上げて泣きだした。
 しかも座りこんでいる床に、失禁の小便を漏らしてしまっていた。
「公爵さまー、まだ死にたくないよー!。どうか助けて下さい。お願いします!」
 グリーンは泣きながら公爵の足下まで張って行くと、床に額を付けて命乞いをしていた。いくら日頃から強がりを言っていたとしても、グリーンは所詮は14歳の子供である。
 自分の身に突き付けられた、現実味となった死の恐怖には、どうしても勝てるはずがなかった。
「助けて下さい。助けて下さい。助けて下さい・・・」
 グリーンは、繰り返し許しを求める哀願を、言い続けていた。
 グリーンの尿道の筋肉が恐怖で緩んでしまったのか、股間からはタラタラと小便の液が床に垂れ続けている。
 見ていたライラックは流石にいたたまれなくなって、グリーンを助けようと、公爵の方へ行こうとした時、ルドがライラックの行動を止めた。
「なぜ止めるの?。いくら公爵と言えども、あんな子供をいたぶって、何がおもしろいのよ!」。ライラックはそう言って、ルドの顔を睨んだ。
「公爵は、グリーンをいたぶって楽しんでいる訳じゃないのさ。グリーンに躾をしてやっているのさ。ま、見ていな」
 ルドはそう言うと、顎で公爵の方を見ろと、合図をした。
 ライラックは示された方向に目を移した。
 公爵が身体を屈めて、床に這い蹲っているグリーンに何かを話していた。
「グリーン、それほど言うのならば、お前の死刑を停止してやってもいいぞ」
 公爵の言葉に、グリーンは目を輝かせて顔を上げた。
「ほ、本当ですか?。公爵様!」
「ああ。その代わり・・・」。公爵は目で、秘書のメイドに合図を送った。
 秘書のメイドは、ケースの中から「隷属の首輪」を取りだして見せた。
 その首輪を填めるのが、死刑の停止の条件のようだ。
 グリーンは、まさに藁にもすがる思いで叫んだ。
「公爵様。どうかその首輪を僕の首に填めて下さい。お願いします!」
 フォレックス公爵は呪文を唱えると、グリーンの首に、光が輝いたかと思うと、隷属の首輪がしっかりと填められていた。
 フォレックス公爵は「ふっ」と笑ってイスから立ち上がると、足下で座り込んでいるグリーンに言った。
「グリーン。お前の小便で汚した床を、舌で舐めて綺麗にしておくんだぞ」
「は、はい」。今は少女の姿になっているグリーンは、床に舌を這わせると、小便水で出来た溜まりを目をつぶって、ペロペロと舐めだした。
 しかしその表情は、先程の恐怖に支配された顔とは違い、ホッとした安堵感のある顔になっていた。
 グリーンが床を舐めているのを見ていた公爵は、ライラックの所に近づいて来て、
「あのグリーンを、ライラックのパーティーに加えたら、役に立つかも知れないぞ」と告げると、笑いながら、部屋を出て行った。
 その後を、メイドの少女達が付いて行った。「公爵は、始めっからグリーンを死刑にするつもりはなかったのさ。自分から首輪を填めるように仕向けていたのさ。・・・グリーンもあの首輪を填めれば、もう盗賊のような、悪い事は出来なくなるからね」
 ルドの言葉を聞いたライラックは、改めて床を舐め続けているグリーンを見て、感心したようにポツリと呟いた。
「フォレックス公爵は・・・そこまで・・・考えていたの?・・・」
 だが突然、そんなライラックの気持ちを打ち崩すようなルドの言葉が、ライラックの耳に飛び込んで来た。
「親方の許可が出たら、ライラックと一緒に、ブラッド・オパール探しに参加してやるよ。その時はまたよろしく頼むな」
 ルドはライラックの肩をポンと叩くと、笑いながら部屋から出て行った。
「え・・・?。ちょっと・・・。そんな・・・。いざと言う時あまり期待出来ないハーフエルフの魔道士に・・・剣の腕は一流だけども、それ以上に指のテクニックが超一流なイヤラシイ猪突猛進剣士に・・・はっきり言って半人前の盗賊少年・・・こんなパーティーメンバーでどうしろと言うのよぉ・・・」
 ライラックはメンバー達の事を指を折りながら考えた時、目の前が暗くなり、全身から力が抜けていって、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
 そしてライラックは、「もうイヤっ!」と泣きながら叫んだ。
 その頃自分の部屋に戻ってきた公爵は、秘書役のメイドから聞かれていた。
「公爵様。グリーンに使う予定だった、拷問用と死刑用の器具と、広場にさらし者にする時に出すおふれ書を用意していましたが、どういたしますか?。もう使う事はありませんね?」
「・・・そうだなぁ。・・・せっかく人間の子供のグリーンを拷問に掛けて、苦しむところの楽しい光景を、見る事が出来ると思っていたんだが・・・、ライラック達の見ている前で、突然グリーンが命乞いを始めたからなぁ・・・。助けないわけにはいかなくなっちゃったよ。あれは予想外だったな・・・。ま、しかたがないか・・・」
 公爵が溜め息混じりに呟くのを、聞いていた秘書役のメイドは、「楽しい光景を見る事が出来なくなって、それは残念でございましたね。・・・」と言うと、クスッと小さく微笑んだが、直ぐに真顔になって「ライラック殿のパーティーに、あの2人を加えられたようですが、ブラッド・オパール探しは大丈夫なんでしょうか?」と心配になって聞いた。
 するとフォレックス公爵は、秘書役のメイドの顔に自分の顔を近づけると、
「ニーナ、君はどう思うかね?。・・・私はブラッド・オパール探しが失敗する方に、『一枚の銀貨』を賭けようと思うが・・・」と彼女以上の真顔でそっと囁いた。
「は?・・・。公爵さまぁ・・・。あのねぇ・・・」
 秘書役のメイドのニーナは、何を考えているんですか?、と言いたげに頭を抱えた。
 そんないろんな人々がいるこの館を、包んでいた夜の帳が薄らいでくる。・・・もうじき山の陰から、朝日が顔を出すことだろう。
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「ひぎゃっ!。・・・も、もうゆるして・・・もうやめてぇ」
 太陽の光がいっさい射さない地下深くに造られたこの中は、薄暗さとジメジメとした湿気だけが、この場所を支配していた。
 ここは北方にある、ある王国の王宮内の地下の拷問部屋である。
 普通の人なら、直ぐに息が詰まりそうになるこの場所で、今日も若い女性の悲鳴がこだましていた。
 悲鳴を上げている主は、この王宮の住人であった若い王妃である。
 王妃は両脚を大きく左右に開いた状態で、身体に巻き付いた鎖によって、中吊りにされていた。
 王妃のヴァギナを隠していた陰毛は、全て剃毛をされていて、貞操なヴァギナも慎ましいクリトリスも、全て露わにされてしまっていた。
 両手は背中に回せられて、鉄の枷を填められている。開かれた足首にも、鉄の枷が填められていた。首にも、鉄の首輪がガッチリと填められている。
 そして、以前は綺麗に輝いていたであろう純白の着ているドレスは、全体的に黒く汚れ、あちこちには鮮血が付着していた。
 そればかりか、王妃の身体を包んでいるドレスは、今や多くの部分が引き破られ、乳房やヴァギナの所が露わになっていた。もはやドレスとは言えないただのボロ布の残りが、王妃の体に巻き付いていると言った方が良かった。
 その中吊りにされている王妃の前には、頭から黒いフード付きのマントを被った、謎の魔女が立っていた。王室占い師として、この王宮に入り込んで来たこの魔女は、強力な魔法を使って、かつての主であった国王や抵抗をした人々を、尽く死へと追いやり、今では王宮ばかりか、平和であったこの国をも、残酷な恐怖で支配していた。
 ブシュッ!。「ぎゃっ!」
 魔女の持っている太い針が、王妃の大きく開かれたラビアを貫き通した。
 そして針が抜き取られ、素早く小さなリングが、鮮血を吹き出している針の穴に通される。ラビアから流れ出た鮮血は、黒く汚れたボロ布のようなドレスに、ドス黒い染みを着けた。「オーホホホホホ・・・。ラビアのこんな所に、リングを6個も着けている王妃なんて、世界広しと言えども、お前ぐらいだろうね。オホホホホホ・・・」
 魔女は、左右のラビアに取り付けた計6個のリングを、下から上へとなぞってみせた。
「あうっ。い、痛いっ。・・・や、やめてっ」
 リングが動く度に、開けたばかりの傷口から痛みが伝わって、痛さで王妃は身体を仰け反らせていた。
「ここは包皮を切り取った後にしようと思ったけれども、ついでだから、ここにもリングを着けてあげるわ。王妃様。ホホホホホ・・・」
 魔女はそう言うと、王妃のクリトリスの先端に、指を這わせ出した。
 ニュグ、ニュグ、ニュグ・・・。
「ひゃっ・・・。い、いあやぁ。あう、あ・・・。あ、う」
 ニュギュ、ニュギュ、ニュギュ、ニュギュ・・・。
「はぎゃ、は、うや・・・はんあん・・・」
 王妃の身体が、魔女のクリトリスへの刺激に反応を起こし始めた時、魔女の瞳が冷たく光った。
 ニュグ、ニュグ、ニュグ、ニュグ、ニュグ。
「ひゃ、あああ、ああぁぁぁぁ。あう、あ、う、・・・あぅぅぅぅぅ・・・」
 ブチュゥゥゥゥゥ。
 太く鋭い針先が、王妃のクリトリスの先端を、左右に貫き通した。
「うっぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
 全身を覆っていた快感が、突然激痛に変わり、王妃は身体を痙攣させながら、気を失ってしまった。
「この程度の痛さで一々気を失っているなんて、この王妃には、まだまだ厳しい躾が必要ね。」
 魔女は、王妃のクリトリスにリングの輪を通しながら呟いた。
 ガチャ。・・・ギギギー。
 拷問部屋の重い扉が開いて、数人の人間の男の姿をした魔物達が、王妃の幼い双子の王子と王女を、連れて入って来た。
 この魔物の男達は、魔女の強力な魔法によって作り出された、魔女の手下達であり私兵達でもあった。
 連れて来られた王子と王女の双子の兄妹は、首に填めた首輪以外、一切の衣服を剥ぎ取られた全裸姿で、お互い身体を寄せ合ってガタガタと震えていた。
 しかも首輪から伸びた鎖のリードを、魔物の男の手がしっかりと握っているので、何処にも逃げる事が出来なかった。
「いらっしゃい、王子様に王女様。・・・気を失ってしまったお前達のお母様の代わりに、お前達の身体を使って楽しませてもらうからね。・・・オーホホホホホ・・・」
 魔女はそう言うと、魔物の男が差し出した鞭を受け取ると、身体を小さくさせて脅えている幼い兄妹に近づいて行った。


< あとがき >
 こんにちは。九尾きつねです。
 ブレーク・パーティー、第4話をお届けしました。
 いかがでしたでしょうか?。
 今回ライラックのパーティーに、新たにルドとグリーンが加わる事になり、いよいよもって、ライラック達のブラッド・オパール探しの冒険が始まる事となりました。
 チャーム、ルド、グリーンを率いて、ライラックがどのような活躍を見せてくれるのか?。
 それにこの3人が、ライラックの良きパートナーとなるのか、それとも単なる足の引っぱるお邪魔虫の存在になっていくのか?。・・・どちらにせよ、ライラックの気苦労はまだまだ続きそうですが・・・(笑)。
 その上、フォレックス公爵は本当にブラッド・オパールを集める気があるのか?、と疑いたくなる言動をするし(笑)。
 ゲテークや謎の魔女とが、ブラッド・オパールとどのように関わっていくのか?。
 まだまだ謎を包んだ物語が続いていきますので、今後もライラック達への応援を、よろしくお願いいたします。
 それでは次回の作品で、またお会いいたしましょう。
(・・・って、あまり物語のフィールドを広げると、整理するのに苦労しそうだな。・笑)

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